第3の人生は冒険者   作:紫蒼慧悟

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ダンジョン

 宿屋は割と直ぐに見つかったので、一泊だけの契約で部屋に荷物を置いて宿屋を出る。

 オラリオに入る前から感じていた視線は今は落ち着いているみたいだ。バベルの上の方から来ていたみたいだがなんだったんだ?

 まあ、そんなどうでもいいことは置いておこう。さして興味もないし、敵対してくるなら斬ればいいだけだし。

 確か、ダンジョンはバベルの真下にあるって話だったな。入り口も解らないし、適当な冒険者っぽい奴の後を続いていけば行けるだろう。

 俺の予想通りに目の前の適当に目に付いた冒険者に(無断で)ついていったらダンジョンに入れた。気配を可能な限り隠したのもあるが、誰にも気づかれた様子はない。俺よりも上の実力があるやつにはバレてるだろうが一々気にしても仕方ないのでいないものとする。

 大地よりも下にあるこのダンジョンは陽の光が差さない。入り口近くはバベルの方から引っ張ってきているのか、カンテラのようなものがそこかしこについているが、ここより下の階層は期待できそうにない。まあ、暗闇でも気配で何がいるかは大体わかるから問題はないんだが。

 薄青色の壁で統一された空間はそれなりに広く、戦闘には支障がなさそうだ。試しに壁の強度を見るために剣の柄で小突いてみるが、それなりの強度はあるようだ。試しに斬ってみた。本気ではなかったのに普通に斬れた。思ったよりも脆い。斬った壁は直ぐに修復されたので割と無茶苦茶な戦闘法でも行けるかもしれないが、下手なことすると面倒なことになりかねないからなるべく安全に処理しておこう。

 歩いていると、前方にモンスターが見えた。村に迷い込んでくることもあった個体だ。"ゴブリン"と"コボルト"だ。

 村の近くのは石を頭に投げるだけで死んでしまうので、どれだけ強いのか楽しみだ。

 小手調べに手近な奴を斬る。特に何の抵抗もなく真っ二つになり絶命する。え、弱すぎるんだが……

 大した展開もなく全滅したモンスターを呆然とした気持ちで見下し、残った魔石を回収する。

 数も少ないし、更に下に行こう。詰まらなすぎる。階段を見つけて下層へと向かう。

 さっきよりは数が多いが、それでも微々たるもの。作業になりつつある戦闘に若干辟易しつつも、先へと向かう。

 階段の手前に、ヤモリのようなモンスターが10体ほどいた。こちらを見つけたのか一斉にこちらへと向かってくる。床を、壁を天井を縦横無尽に這い回るその姿は嫌悪感を覚える。

 俺にある程度近づくと一瞬止まり飛びつくように突撃してくる。それも10体同時に。

 後方に一歩下がり、目の前の10の的全てを切り捨てるように剣を滑らせるように薙ぐ。然したる抵抗もなく両断し、魔石が落ちる。やはり弱い。

 そのまま歩を進め、更に下層へと下る。カエルも黒い人型も少しだけ硬い蟻も特に抵抗らしい抵抗も見せずに絶命した。

 この程度なのか?この程度は前世だったらそこらの農家の子供でも出来るくらいの難題だった。

 10階層の広場で殺した豚面の大型モンスターの死体を前に溜息をつく。魔石を回収して帰路に就こう。

 そういえば祖父の話では竜種を狩るのにもこの世界は苦労するのだったか。だったら仕方ないのか?だが、いくら何でも弱すぎるのにもほどがあるだろう。

 特に何の感慨も持たずにダンジョンを後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁ……」

 

 ため息をつきたくもなる。

 まさか、魔石の換金にファミリアに入る必要があるとは……

 だからこそ、適当なファミリアでいいやと思って行ってみるとまさかの門前払い。それが30連敗。

 

 「はぁ……」

 

 そして、20連敗辺りから尾行されている。子供よりも下手糞な尾行だ。どこまで着いてくるか試してみるか。

 決めたら即実行の精神のもとに、行動に移す。腰を上げて、歩き出す。真後ろの気配は慌てたように俺に(バレバレだが)見つからないように尾行を再開する。

 現在地が東と北東のメインストリートの間。そのまま東のメインストリートに出て、ダイダロス通りに入る。迷路のようなここをぐるっと回るように入ってきた場所と同じ場所から出て、バベルへ向かう。

 時間は大体夕方。バベルから帰ってきた冒険者が出てくるので、その中を針の穴に糸を通すようにスルスルとぶつからずに抜けていく。

 後ろに意識を向けると、だいぶ離れた位置にストーカーがいるのが分かった。

 バベル近くのベンチに腰を下ろして少し休憩する。ストーカーの方を見ると、声しか聞こえなかった。

 

 「はぶっ!?ご、ごめんよ。こちらも急いでいたんだ。はぶっ!?」

 

 冒険者とぶつかって謝罪。そして少し進んで別の冒険者とぶつかる。まさに無限ループ。

 30分程かけて俺の姿が見えるところまで来たので、俺は腰を上げて北西のメインストリートへと向かう。

 背後から、「待っておくれよ~!!」とか聞こえるが聞こえないふりしてそのまま目的地まで歩く。

 背後で誰かが転んだようだが、気にしない。目的の店の看板が見えたのでそちらへと足を向ける。

 "ヘファイストス 北西支店"。ここが目的の店。武器屋だな。

 爺さんから貰ったこの剣はこの店のオーナーじゃないと整備できないといわれている。軽い点検ぐらいなら俺も毎晩やってるが、本格的なものは無理だ。

 適材適所。プロの仕事はプロに任せるほかない。素人が弄った剣なんて怖くて触りたくもない。

 扉を開けるとドアベルが鳴り来店を示す。カウンターに居た女性がこちらを見る。

 右目に眼帯をした赤髪の女性で神だ。男装をしているから大丈夫だがオーディンと被るなぁ。オーディンは胸元を強調しすぎてるからわかりやすいし、区別はしやすいからあんまり被らないか。

 

 「いらっしゃい。初めて見る顔ね」

 「こんにちは。今日オラリオに来たばっかだから当然だと思うよ」

 

 世間話から初めて、剣の整備を頼もうとしたときに大きな音を立ててストーカーが転がり込んできた。

 ストーカーはバレバレの尾行をしてきた時からわかっていたことだけど、神だった。最近神にしか会ってない気がしてきたが気にしないでおこう。

 黒い髪を頭の横で結んだ、確かツインテールって髪型だったはずだ。故郷のお姉さん方が一時期こんな髪型だったな。3日で飽きて別の髪型にしてたな。

 小柄で裸足の紐を纏った女神だ。ハァハァしてるのはなけなしの体力を使い果たしたからだと思う。そうだといいなぁ。

 

 「ハァ……ハァ……」

 

 息を荒げたまま俺へと手を伸ばして近づいてくる姿は、そのまんま変質者そのものだった。

 一歩下がって手の届かないようにすると、ストーカー女神はそのまま倒れた。

 その姿はまるで「立ち止まるな」と言っているようだった。

 

 「え?ヘスティア?何やってるのこの子は……」

 「何故か尾け回されたんで軽く逃げてただけですけどね、おれは」

 

 まともな方の女神様はため息をついてダメな方の女神の介抱に向かう。

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