第3の人生は冒険者   作:紫蒼慧悟

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ファミリア

 オラリオの北西メインストリートに居を構える、世界に名を轟かせる"ヘファイストス・ファミリア"の支店の一つで、説教が始まっていた。

 椅子に腰かけて待っている俺の直ぐ傍で説教が行われているというだけです。

 床というか、地面に正座したストーカー女神こと神ヘスティア。そのヘスティアを見下ろしてガチ説教しているのがカウンター(に居た)女神こと神ヘファイストス。

 爺さんの話によると神ヘスティアは神ヘファイストスの伯母だって話だが、これじゃそうは見えないな。

 店の外に視線を向けると陽が落ちようとしていた。壁に隠れて見えないが、地平線に沈む夕陽を見ているとたまにこう思ってしまう。

 

 「どうすれば、あの夕陽を斬れるんだろう……」

 

 前世から考えてはいた。剣聖なんて大層な呼び名があるにも関わらず、俺には斬れないものが多すぎる。

 いつからこんなことを考え出したのかは覚えていない。だが、太陽の光や夜の帳はなぜ斬れないのかと子持ちの大人が考えることじゃないと今更ながらに思う。

 その為に剣を振るった。すべてを斬り裂くことが出来ないのなら未完成もいいところだと。

 剣を鞘から抜いて刀身に映った自分を見る。そこに映っているのはどこにでもいそうな只の少年だ。

 ふと、静かになった店内が気になり説教が終わったのかと思い、視線を店内に戻すと、二人の神が俺を見ていた。

 

 「説教は終わったんですか?」

 「へっ!?……そ、そうね。次やったら親族の縁を切ることにするわ」

 「えっ!?そ、そんなことを言わないでおくれよ、ヘファイストス!!」

 

 神ヘスティアが神ヘファイストスの足元に縋り付き泣き叫んでる。

 みっともないことこの上ないし、顔から出る液体が全て出てる今の姿は百年の恋も冷めるようだ。

 

 「まるで、離婚を突き付けられて慌てて妻の説得を試みる駄目夫みたいだ」

 「ヘスティア(これ)が夫とか絶対に嫌ね。死にたくなる」

 「酷いよ、ヘファイストス!!」

 「じゃあ……ヘラに捨てられそうなゼウス」

 「「冗談でも止めて!!」」

 

 ふむ。こういう時にはこの例えが一番いいって言ってたヤハウェの言葉の通りにこの話は終わりとなった。

 そして、最初からやり直し。自己紹介から始まり、何故、神ヘスティアが俺をストーカーしていたか、俺がこの店に来た目的は剣の整備のためなので一言で済ませた。

 ストーカーしていた理由は、俺をファミリアに誘おうとしていたらしい。

 

 「だったら何故早く声をかけなかったんですか?俺は10回も無駄にファミリアの入団断られ続けた意味は?」

 「だ、だって……なんか緊張してしまって……」

 「乙女か!!」

 「乙女だよ!!」

 「いい年こいて何言ってんだコイツ」

 「じょ、女性に歳の話をするのはマナー違反だぞ!!」

 「はっ」

 「は、鼻で笑われた!?」

 

 そりゃ、笑うだろ。千年以上も股に蜘蛛の巣が張った女に価値はない。とっとと婚活でもしていろ。

 まあ、丁度良かった。どこのファミリアも入団拒否してくるから、入団拒否したファミリアの主神は全員天界送りにしてやろうかと思ってたし。

 最近短絡的になってきた気がしないでもないが、今は気にする必要もないだろう。

 正座から四つん這いの体勢になり落ち込んでいるヘスティアに手を差し伸べる。

 首を傾げるヘスティアに苦笑し、無理やり立たせる。「あ、足が!!」とか叫んでいるが気にせず立たせる。

 

 「ファミリアに入れてくれるんでしょ?」

 「う、うん!!」

 

 満面の笑みを浮かべて俺の手を両手で握りしめる。もう逃がさないといわんばかりに。

 神ヘファイストスの手を打ち鳴らす音で神ヘスティアは喜ぶのを止め、恥ずかしそうに俺の後ろに隠れる。

 なんで俺を壁代わりにしたのかはわからないが、特に実害もないので放っておく。

 神ヘファイストスのクスクスと声を押し殺して笑う姿に、神ヘスティアは顔を赤くして膨れる。

 

 「なにさ……」

 「フフフ……なんでもないわ」

 「くぅぅ……」

 

 女神二人のじゃれあいを横目に店の外を確認すると、既にとっぷりと日が暮れて夜の帳が降りてきていた。

 街灯が点き、ある程度の明るさはあるが既に外を歩いているものは片手で数えるほどしかおらず、どこからか聞こえてくる笑い声はどこかの酒場の酔っぱらいだろう。

 故郷ではなかった光景だ。途中の町でも見られはしたが、オラリオ程騒がしくは無かった。冒険者がいるからだろうか?

 

 「それじゃあ、ヘファイストス。僕たちはこれで失礼するよ!」

 

 神ヘスティアに引っ張られる形でおれは神ヘファイストスの店を後にする。満足に別れの挨拶も交えないまま。

 あ、剣の整備頼んでない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神ヘスティアが向かったのはとある本屋だった。

 なんでもここの2階の雰囲気が気に入ってるとかで、初めての眷属はここで恩恵を授けると決めていたらしい。店長のお爺さんが店を閉めようとしていたところに神ヘスティアの一声がかかり、お爺さんはやれやれといった表情で店を開けてくれた。

 神の"お願い"にただのヒトが逆らえる訳もない。まあ、神ヘスティアの"お願い"は脅しという感じではなく誠意をもってのキチンと頭を下げているあたり好感を持てるものだ。

 他の神だったらもれなく"神威"を発動させている。

 

 「それじゃあ、服を脱いでくれるかな」

 「変態?」

 「違うよ!?神の恩恵(ファルナ)を刻むためだよ!!」

 

 そういうことか。割と本気で心配した。大体はフレイのせいだから俺は悪くない。

 上半身だけでいいそうなので、上だけ脱ぐ。特に恥ずかしいという感情はないが、目の前で顔を赤くしている女神を見ていると少しだけ羞恥心が浮いてくる気がする。

 店主の人にも長時間開けて貰っているのは悪いので、早々に刻んでもらう。

 うつ伏せになり、神の血で俺の背中に恩恵を刻む。刻み終わったのか、神ヘスティアが俺の背中からどいた。

 服を着なおして、神ヘスティアに向き直る。そこに居たのは俺のステイタスを見て唸っている我が主神様がいた。

 

 「これは……まぁ、いいや。改めて、僕が君のファミリアの主神のヘスティアさ。よろしくね、ベル君」

 「こちらこそ。神様」

 

 満面の笑みを浮かべた"神様"の手を取り、ここに"ヘスティア・ファミリア"は結成された。

 ニコニコ顔の神様と共に下に降り、店長さんに頭を下げて謝罪とお礼を言い店の外へ出る。暗い闇の中、星の光が一際強く光り輝いていた。




感想でもあったのですがここらでちょっとした補足。

ベル君の強さについてですが、
 現時点では14歳という年齢とファルナが無い時点ではカドモスより少し弱い程度の強さしかありません。
 ファルナを授かったことによりこれからどう成長するかは作者の私も決め切れていません。
 因みに、前世の絶頂期であれば隻眼の黒竜は一人で討伐が可能です。 
 なんだそれと言われるかもしれませんが、「そうなんだ」とご納得ください。
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