"ヘスティア・ファミリア"が結成されて半月ほど経った。
恩恵を刻んで直ぐに宿屋に戻って荷物を持って、ヘスティア・ファミリアのホームへ向かった。
ホームは西のメインストリートの少し奥まったところにあった。廃協会となった場所の地下にあった。
神様は恥ずかしそうに、そして申し訳なさそうな顔で案内してくれた。俺は特に気にしないので、そのままホームに入る。地下だからそれなりに広いのかと思っていたが、予想よりも狭かった。
壁は土だったので、掘れば広げられそうだ。もしもの為に神様には地上で待機してもらって、ホームの拡張に一日費やした。運よく崩れることもなく拡張は成功。自分の部屋と神様の部屋、共用空間と簡易ながら調理場も出来た。
神様は大層喜んだ。ピョンピョン飛び跳ねて壁に頭を打ち付けて、床に蹲るほどに喜んでもらえた。
ホーム拡張の翌日にギルドに行って、新規ファミリア登録と自分の冒険者登録を済ませた。ギルド職員のハーフエルフのお姉さんが「登録を完了しました」と言ったのでそのままサヨナラしてダンジョンに行った。後ろから慌てる声が聞こえたが、貧乏ファミリアにとっては些細なことだった。
そのままダンジョンで半日ぐらいこもって魔石を集めた。10階層までを行ったり来たりして、モンスターを斬り殺し、魔石を集める作業を続け
いい時間だったし、モンスターも大体狩りつくしたので地上に戻って換金した。
初日のと合わせて200000ヴァリスとなった。まあ、こんなもんかと思っていたら、今朝のギルド職員が鬼のような形相で来て説教をされた。なんでも新人には担当アドバイザーというのがついてダンジョンの決まり事等を教えるのが決まりらしい。
説教の大半を右から左へと聞き流し、ゼエゼエと息を荒げてるところに、「あ、終わりました?」って言ったら更に怖い形相で説教が長引いた。
換金所のすぐ近くで説教を受けている俺の姿はさぞ滑稽だっただろう。冒険者が来るたびに俺の姿を見て忍び笑いを浮かべるのだから。
説教は夜がどっぷり暮れる頃まで続いた。というか、お姉さんの喉が枯れるまで続いた。最後の方はコヒューコヒューという人の息の音ではない音を出して倒れた。
頭とかぶつけると危ないから一応抱き留めてあげた。俺が原因みたいなもんだし。
やっと説教が終わったので凝り固まった体を伸ばすように動かしたら何故か肩の辺りからバキボキと音がした。なんで肩なんだよ。
このまま床に倒れさせておくのもアレなので、お姫様抱っこの要領でもちあげ(意外と軽かった)、ギルド内にある長椅子に寝かせておく。
「よし、腹減ったし飯行こ」と、俺が言ったら、今まで見物していた冒険者たちが爆笑しだした。何が琴線に触れたのかは知らんが、特に関わりあうこともせずにホームへと戻った。
神様は大量のお金に驚いていたが突然、「よーし、ファミリア結成祝いだ!!」とホームを出て食材を買いに行っていた。勿論調理するのは俺だ。
その翌日には、再び神ヘファイストスの所へお邪魔して剣の整備を頼んだ。
剣を見た神ヘファイストスは今までに見たことがないほどに驚いていた。心なしか手が震えている。どこで手に入れたのかと聞かれたので、祖父から持ってけといわれたと正直に言うと、驚きつつも懐かしそうな顔をしていた。
「にしても、なんでここに整備を頼みに?」
「ここでなら剣の整備ぐらいなら無料でやってくれるって、爺さんが」
「あの野郎!」
といったやり取りがあった。その時の神ヘファイストスの顔はちょっと見せられない感じだった。
ただ、爺さんの言う通り剣の整備は無料でやってくれるそうだ。やったぜ。
どうにもこの剣は神ヘファイストスが作った一品らしくて、ヘファイストス・ファミリアの団長でも満足に整備が出来ない代物らしい。自分が作ったものだから自分が面倒みると言っていた、神ヘファイストスは苦笑していた。
そして今……
俺は何故か知らんが5階層でミノタウロスに追っかけられている。
遭遇して直ぐに斬り殺そうとも思ったんだが、他の冒険者もいたので人気のない場所に誘導中という訳だ。
ブモオオオと、叫び声(?)を上げて追いかけてくるミノタウロスを引き離さないように適度な速度で走る。そうこうしているうちに5階層の端っこに来ていたようだ。行き止まりだ。
「さて、それじゃあ、やろうか」
相も変わらずブモオオオと声を荒げているミノタウロスは手に持った斧で襲い掛かってきた。
それを剣で弾く。適当に弾くと剣に負担がかかるので最小限の負担になるように弾かなければならない。
ミノタウロスは今までで一番手ごたえがある相手だ。前世だと雑魚の部類に入るがな。
そのまま斬り合いを続けて、そろそろ終いにしようとして、技を出す。
両腕を切断し、後は首を断つだけというところで、ミノタウロスの背後から剣が突き出てきた。
俺の剣と突き出て来た剣。どちらが勝つかといえば、向こうだ。俺の剣は半ばからポッキリと折れた。いや、斬られた。
おかげで俺は臭いミノタウロスの血を頭から被る羽目になった。
目の前の金色の髪の人形みたいな女にキョトンとした視線をされながら……