今回はベル君視点ではなく、他者の視点でお送りします。
「うーん……」
僕、ヘスティアの目の前にある一枚の紙。その紙自体は何の変哲もないそこらに有り触れている普通の紙。問題なのはその紙に書かれている内容だ。
僕のたった一人の
ベル・クラネル
Lv.1
力:I0 耐久:I0 器用:I0 敏捷:I0 魔力:I0
《魔法》
【】
《スキル》
【剣聖一途】(ブレイド・ブルーム)
・成長する
・刀剣類装備時のみ効果発動
・格上の相手との戦闘時のみ効果上昇
「確実に……レアスキルだね……」
どうするべきか……
このレアスキルはベル君には教えていない。教えたことによって、メリットよりもデメリットのほうが大きいと判断したからだ。
いや、ベル君だったらそのデメリットも意味がないのかもしれない。けど、僕の初めての眷属を希望的観測で不幸にしてたまるかってんだよ!!
ベル君が拡張してくれたホームの自室にて僕の唸り声が響く。これ以上考えてもいい案は浮かばないというのは解っているんだけど、問題がある。
誰に相談するか……
案として友神の
う~ん。う~ん。と、いつまで僕は悩んでいるんだろうと悟りを開きかけている僕に天啓が降りてきた。いや、比喩表現であって本当に天啓が降りてきたわけじゃない。大体、神である僕にいったい誰が天啓を降ろすんだ?
真面目に考えてみた。…………………………アルテミスか?
と、下らないことを考えてるんじゃなかった。そうだよ、適任がいないなら僕とベル君の秘密にしておこう。秘密には出来そうにないからベル君にちゃんと説明すればいいんだよ。
なんだ。何も心配する必要なんてなかったんじゃないか!
フラグが建った気がするけど、大丈夫。僕のベル君はその程度のフラグをポキポキ折ってくれるよ。いや、斬るのか?
心配事が
思い出すのは少し前のこと。あれは僕が、下界に降りて来たばかりの頃。初めて見るオラリオの町並みは初めて見るものばかりで新鮮だった。歩き疲れた頃にデメテルと会って、会いに来たうちの二人が既にオラリオに居ないのを知った。
もう少し詳しいことを聞くためにヘファイストスの所にいった。そこで聞いた内容で更に、ロキが嫌いになってフレイヤが苦手になった。
呆然としすぎて何もする気が起きないぐらいにはショックだった。
「そっか。もう君たちは居ないんだね……」
会えるとしたら、それは何時のことになるやら……
「さて、バイトの準備をしよう。ベル君にばかり稼がせてばかりじゃいけないからね!」
その日は、不思議な日だった。
私、ヘファイストスが打った、二度と会うことのない剣を見た日だった。ついでに私の親族がその持ち主の子供にバカやった日でもあった。
その剣は、私がオラリオに来てファミリアを作って少し時が経った頃だった。鍛冶ファミリアとして新米だった私の所へ一つの依頼が舞い込んできた。というか、依頼者は
「眷属が使うものかしら?」
「いや、儂が使う」
「何のために?」
「儂もダンジョンでモンスターを狩るんじゃ!!」
「馬鹿じゃないの?」
本当に目の前の
結局のところ依頼は受けた。だが、最強ファミリアの主神がダンジョンに行くとかさせるわけにはいかないので、
力を使わずに剣を打つのは下界に来てから何度もやって来た事なので慣れてきていたが、今回は"神が使う下界の剣"を打たなければいけない。幾ら力を抑えて、ヒトと同じ力しか出せないといっても神が使うとなると普通の剣を打っても意味がない。私の全力で打つ。勿論
三日三晩かけて打った剣は神が持つに問題ない程度に仕上がった。問題ない程度といっても"神剣"というカテゴリでいえば底辺。ただ、神が使った剣というその程度の付加価値しかない。ただ、それだけの剣。
ゼウスは剣を受け取ってそのままの勢いで走ってバベルへと走っていった。私も追った。あの人を失うのは損失以外の何でもないから。ゼウスは自分の眷属の制止を振り切り、バベルへと爆走して……
ヘラにドロップキックされて止められた。
その場で一安心した。それはゼウスファミリアの全員も一緒だろう。
ゼウスはヘラに首根っこを掴まれて連れていかれたので私はヘラがどんな説教をしたのか知らない。
ただ、ゼウスはダンジョンに潜ろうとするのを止めた。それだけは事実だ。
私の打った剣はヘラに折られたらしく、悔しそうにゼウスが修理をしてくれと言ってきた。
「またダンジョンに潜るつもりじゃないでしょうね?」
「もうそんな気はないわい。ただ、折角打ってくれたこの剣が可哀想じゃろう?」
「それなら別にいいけど……」
受け取った剣は半ばから折れていた。ヘラはこれをどうやって折ったのかしら。
ただ、素材が無いので直ぐには無理だと伝えると、"構わない"と言って、去っていった。
ゼウスが何のためにこの剣を預けたのかは解らない。最後の表情も見たことがないほどだった。ヘラに説教されて顔が腫れていたのもあるが。
私は良い素材が手に入るまでこの剣を私のプライベートルームの片隅に置いておくことにした。
素材はミスリルが好ましいという私の希望は、その入手難度から断念せざるを得なかった。だが、一人の鍛冶師として妥協はしたくはない。幸い、ゼウスは何時でもいいと言っているのでミスリルが手に入ってから修理しよう。
そう、あの剣は……
彼が、ベル・クラネルが持っていたあの剣は私がゼウスに打った剣だ。神が振るえる剣だ。
あの剣をどうやって手に入れたのかは知らないが……。いや、十中八九ゼウスから手渡されたのだろうけど……
彼は今やヘスティアの眷属だ。私が打ったゼウスの剣がヘスティアの下にあるなんてどんな廻りあわせなのかしら。
「さて、この剣の整備は私しか出来ないし、さっさと仕事を済ませてしまいましょう」
目の前の剣を見る。
私の名が銘として刻まれた、古い剣を……
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