ゲイムギョウ界に来てしまった!?〔改稿中〕 作:ULTRA-7
話しは少し前に遡る――
順調にコインを集めていく俺達。ロムちゃんとラムちゃんは途中、はしゃぎ合い
笑いながら、お互いに集めたコインを見せ合う。ブランさんのためとはいえ、な
んだかんだで楽しんでいる様だ。
「これで四枚目~!ロムちゃんは?」
「私は三枚…」
「俺は五枚、しっかしよくこんなにレアコインが捕れるな」
だがこれだけの枚数のレアコイン、こんなに捕れたらレアの意味がなくなってし
まうのでは?と内心思ったり。あれだよ、チート機材を使ってレアアイテムを量
産するような感じ。あれは良くない、そんな方法じゃ苦労も苦労と思わなくなっ
てしまう。それにレアアイテムをゲットするのは、その間の道のりが険しいから
楽しいのに。でもまあ、今はその事は置いておこう。今こうして二人が楽しんで
いるのだ、そこに水を差す行為はしたくない。
「む~!真司は背が高いんだからもう少し手加減してよ!」
「ずるい…」
(あれ?いつの間にか勝負になってらっしゃる…)
膨れっ面をしたロムちゃんとラムちゃんが俺にもう抗議、何故か途中からコイン
集めの勝負となっていた様だ。確かに俺は背が高いから、二人の手が届かない場
所のコインもちゃっかり手に入れてたけど…
俺はそんなつもりはなかったんだけどな。だけど相手はまだ幼い、それにこう言
った集める作業に関して何故か闘争心を燃やしてしまうんだよな。俺も小さい頃
はそんな感じだったし。と、そんな事は今はいいとして。
「ごめんごめん。それよりさ、あっちの方にもたくさんあるしそっちも捕りに行
こうか?下手したら俺が二人に負けちゃうかも…」
「ロムちゃん!」
「うん!」
二人の機嫌を損ねないようにしつつやる気を起こさせる作戦!俺の言葉を聞いた
ロムちゃんとラムちゃんは元気よく駆け出し、曲がり角付近にあるコインを集め
にかかった。
だけどこうやって、この二人がコインを集めているのはブランさんのためでもあ
る。俺が提案した事とはいえ、ロムちゃんとラムちゃんはお土産を持って帰ろう
と一生懸命頑張っているのだ。ブランさんは愛されてるな、二人を見て微笑みな
がら心の中で呟いた。
だが、そんな事を思っていた時だ。
「「きゃあああああああ!?」」
「え…?ロムちゃん?ラムちゃん!?」
突如としてロムちゃんとラムちゃんの悲鳴が、俺の耳に突き抜けた。尋常ではな
いその叫び声は、俺の足を自然と二人のいる場所へと走らせるには十分すぎるほ
どだった。
とにかく急ぐ、二人が曲がった建物の角に。息を切らし、動悸も激しくなってく
る。不安と緊張が入り混じった様な気持ちとなり、俺は建物の角を曲がり切った
のだ。するとどうだろうか、俺は思いもよらぬ光景を目にする事になる。
「ぐへへ…幼女をGET~!!」
「へへへ…」
「お前ら!一体誰だ!!二人を離せ!!」
俺の目の前には二人の人物。いや、一人は人ではなく怪物だった。大きな舌を
涎を垂れ流しながら蠢き回している怪物、そしていかにもガラの悪そうな人相
でパーカーを着た女。だが問題はそこではない、その二人にロムちゃんとラム
ちゃんが捕まっていたのだ。
俺は二人を助けようと怪物に向かって走り出す。だが怪物は、その長い舌を勢
いよく俺に向けて叩き付けてきた。長い舌は、俺の腹の部分に直撃し、その衝
撃で俺は建物の壁に激突してしまう。
「ぐふ!?げほぉっ…!」
「幼女以外、しかも男のお前などに興味はないわ!」
「真司!?」
「真司さん!?」
「ぐう…!ふ、二人とも待ってろ…必ず助けるから!!」
俺はその後も何度も何度も二人を助け出そうとするが、怪物の猛攻に成す術な
く倒されてしまう。気が付けば壁に激突したせいで身体のあちこちがボロボロ
になっていた。その後もネプギアとユニちゃんがきてくれたが、二人ともやら
れてしまいロムちゃんもラムちゃんも助け出せなかった…二人に手を伸ばして
も届かない、そんな悔しさの中で俺は意識を手放した。
――――――――
「う、ん…」
目が開く。ぼやけた様な景色が次第に鮮明になり始め、俺は目を覚ました。あ
れ?俺は確か…そうだ、俺はあの時ロムちゃんとラムちゃんを助けようとして
返り討ちにあって…それからどうしたんだ?
思考を巡らせようにもまだぼやける。あれからどうなったのか、それは今の俺
では知り得ない事だ。そんな事を考えていた時だ。
「あ!真司!!」
「あ、れ?ね、ネプテューヌ?ノワールにベールさんも…」
唐突に響く女の子の声、その声の主はネプテューヌだった。心配そうな表情で
俺の顔を覗き込む。それは彼女だけではない、ノワールとベールさんも心底心
配そうな顔つきで俺を見つめていた。
「真司大丈夫?どこか痛いところとかない?」
「ああ…大丈夫だよノワール」
ノワールが心配して、俺の肩に手を置いて話しかけてくれた。正直身体中が痛
いけど…心配をかけたくないからなのか、それともロムちゃんとラムちゃんの
事がショックだったのか、そんな返答しか出来なかった。
そんな思いを抱えている中、ベールさんが話し出した。
「悲鳴が聞こえたと思って来てみたら真司くん達が倒れていたんですもの、び
っくりしましたわ」
「ご心配をおかけして…ロムちゃんとラムちゃんは!?っつう!?」
「真司!!」
ベールさんの言葉を聞いた俺は、勢いよく起き上がる。だが案の定、激痛が身
体中を駆け巡り、その激痛のせいで身体を押さえる事を余儀なくされた。痛み
で顔が歪む、そんな様子を見ていたネプテューヌ達は、俺の身体を支えながら
痛みを和らげまいと優しく擦ってくれた。
「大丈夫じゃないじゃない!無理しちゃだめよ!」
「今は身体を休めないと…」
「それどころじゃないんだ!ロムちゃんとラムちゃんが誘拐されて…」
ネプテューヌとノワールが、叱りながらも心配してくれる。その気持ちはすご
く嬉しかった。だけど自分の身よりも、今はロムちゃんとラムちゃんの事で頭
がいっぱいになってしまっているのだ。
力任せに立ち上がろうと試みる、だが痛みがその行動の邪魔をする。そしてそ
んな俺を見たネプテューヌは、両肩に手を掛けて少し悲しそうな目つきになり
話し出す。
「ネプギア達にその事は聞いたよ。まさか誘拐事件が起きるなんて夢にも思わ
なかったけど…」
「…ネプギアとユニちゃんは?」
「二人なら隣の部屋よ。かなり落ち込んじゃってるみたい…ロムとラムを助け
るのを真司に任されたのに何も出来なかったって…」
「くそ!!あの時…俺は二人の傍にいたのに!!」
悔しさに拳を握りしめ思いっきりベッドに叩き付ける。何であの時二人と一
緒に行かなかったのだろう?何でもっと警戒していなかったのだろう?あの
時の自分を殴りたい気持ちでいっぱいだ。ネプギア達のせいじゃない、俺が
悪い…俺があの時もっとしっかりしていればあんなことにはならなかった筈
だ。無意識に歯を食いしばる、そのせいで唇から血が流れるのがわかった。
だがそこに、誰かが肩に手を置く。その手の主は、ノワールだった。
「真司のせいじゃないわ。誰のせいでもない、それより今は二人の救出が最
優先よ」
「…そうだな」
少しだけ微笑みながら、そして真剣な表情となったノワール。ノワールのお
かげでほんの少しだが冷静さを取り戻す事が出来た。そうだ、今ここで悔し
がっても何も始まらない。ロムちゃんとラムちゃんを一刻も早く助け出す、
それが最優先事項の筈だ。
「ロムちゃんとラムちゃんも心配だけど、ブランの方も心配だね…」
「あ…」
ネプテューヌの言葉にハッとなる。ロムちゃんとラムちゃんの事で頭がいっ
ぱいになっていたが、今俺より二人の事を気にかけている筈の人物の事を思
いだした。
ロムちゃんとラムちゃんのお姉さんであるブランさん、間違いなく誘拐の事
は耳に入っている筈だ。俺より心を痛めている筈だ、俺より悔しい思いをし
ている筈だ。誘拐された原因の中には俺だって入っている、だからこそ俺は
、それに責任を持たなければならない。ブランさんに償わないといけない!
「そうと決まったらまずはブランさんに謝らないとっ!?つう…」
「真司!だから無理しちゃダメだって…」
いざ立ち上がろうとしたが、やはり痛みは引く事なく押し寄せてくる。身体
を押さえ、その場にうずくまってしまった。その姿を見たネプテューヌは、
慌てて俺の身体を支え声をかけてくれる。だがそれでも、俺は立ち上がろう
とするのを止めようとは思わなかった。
「それでも俺は行かなきゃ、ブランさんに謝らないといけない。そして二人
を絶対に助けないと…」
ブランさんに謝る、そして二人を絶対に助ける、その思いが今の俺を突き動
かす。身体中が痛い?そんな事はどうだっていい、今俺なんかより苦しんで
いるのはブランさんでありロムちゃんとラムちゃんだ。痛みを感じる身体に
鞭を撃ち、もう一度俺は立ち上がろうと試みる。
「はぁ…もう、仲間を頼れって言ったのはどこの誰よ?」
「ノワール?」
そんな時だ、ノワールはため息をつきながら俺に肩を貸してくれた。頬を少
し赤くしてそっぽを向いていたが、今のノワールの優しさは俺に染みた。
「ありがとう、ノワール…」
「べ、別に!途中で倒れられたら困るってだけなんだからね!勘違いしない
でよ!?」
俺の言葉を、赤くしていた頬を更に赤くしながら大慌てで否定するノワール
。素直じゃない言葉、だがそれでも今の彼女の行動は俺にとってとても嬉し
く思う。そう思いながら、俺はノワールに笑いかけた。そのノワールは目を
逸らしながら、俺を見ないようにしていたが…そんなやり取りをしている時
だ。
「む~!だったら私は右だよ!」
「ちょっ!?ネプテューヌ!?」
ネプテューヌが負けじと俺の右肩を強引に支える。少しバランスが崩れそう
になるが、なんとか持ちこたえる事が出来た。いきなりだったからびっくり
して、驚いた表情でネプテューヌへ視線を向ける。そのネプテューヌ自身は
ものすごく勝ち誇った表情をして鼻を鳴らしていた。
「ふふん!この方が楽でいいでしょ?」
「あはは…サンキュ、ネプテューヌ」
「えへへ♪」
何だかんだで俺の事を心配してくれているんだよな、ネプテューヌ。その心
遣いがノワールと同様、嬉しくなるのを感じた。俺は二人に支えなられなが
ら、ゆっくりとだが確実に歩みを進めていく。目指す場所はブランさんがい
る場所、まずはそこからだ。
俺達はその後、廊下でばったり会ったネプギアとユニちゃんとともにブラン
さんの部屋へと向かった。
◇
「そう言われましても、誰も通すなとブラン様から申しつけられていますの
で…」
俺達はブランさんの部屋の前に辿り着く。だがメイドさんがドアの前に立ち
塞がる、どうやらブランさんが命じて俺達を自分の部屋に入れない様にして
いるみたいだ。だがそれでも、俺達は説得する事を止めなかった。
「え~!私達女神仲間なんだからいいでしょ!」
「いえ女神様と言えど…」
「せめて…謝らせてほしいんです!二人が捕まったのは俺の責任だから…」
「真司さんだけのせいじゃないんです!!」
「私だって…」
「既に警部兵を総動員させて捜索中ですので…」
「それは知ってるけど!」
俺達は必死で説得を続けた。だがそれでも、頑なに言葉を拒み続けるメイド
さん。断固として俺達を通してくれない、そのやり取りを繰り返していると
、段々と苛立ちを覚え始める。一体どうしたらいい?そう考えていると。
「帰って…」
部屋の中からブランさんの声が聞こえてきた。その声は悲しい様な、苛立っ
ている様なそんな声。原因は間違いなくロムちゃんとラムちゃんの事、俺は
ドア越しにブランさんに話しかけようと試みた。
「ブランさん!俺…」
「ここにいられても迷惑よ、貴女達も。そして加賀美真司、貴方とは縁も所
縁もない赤の他人よ、それこそここにいられたら迷惑…」
「っ…」
ブランさんの返答が心に突き刺さる。赤の他人、はっきりとそうブランさん
の口から発せられる。痛い、その言葉がとてつもなく痛く感じる。だがそれ
を、歯を食いしばってグッと耐えた。だってそうだろう?今のブランさんは
俺以上に心が痛い筈なのだから。
「ブラン!アンタ、そんな言い方!!」
「いいから…帰って」
その言葉を最後にブランさんは口を閉ざしてしまう、俺はただ俯くしかなか
った。だがこうなることは覚悟の上でここにきたんだ、甘んじて受けよう。
「真司…その…」
そんな俺を見兼ねたのか、ネプテューヌは声をかけようとする。だけどその
次の言葉が出てこない、どう話したらいいのかわからない様だ。だけど俺は
、そんなネプテューヌに微笑みを向ける。今のネプテューヌの気遣いがすご
く嬉しかったから。
「いいんだネプテューヌ、ブランさんは今冷静になれてないだけなんだ、家
族が誘拐されてこうならない方がおかしいんだよ」
「まったく…真司ってお人好しなのね」
呆れた様に溜息をつき、だが若干微笑んでいる様に見えるノワール。お人好
し、強ち間違いじゃないのかもしれない。そう思いながら少しだけ笑った。
そして俺達は一旦外に出ることにした。ブランさんには今気持ちの整理が必
要だと思う、後でもう一度ここに来ることにした。
――――――――
「ロム…ラム…私のせいで…」
フラフラになりながら、私ことブランは歩き出す。今私の心の中は自責の念
でいっぱいだ、何であの時私はあの子達について行かなかったの?一緒に行
けば誘拐は未然に防げた筈なのに、あの時の私を殴りたい…そんな気持ちで
いっぱいになる。
だけど今の私には泣き言など許されない、一刻も早くロムとラムを救出する
手立てを考えなければならないのだから。
だけどさっきネプテューヌ達に酷い事を言ってしまった反面、協力してほし
いなど虫がよすぎる。そして彼には、加賀美真司には特に酷い事を言ってし
まった。
加賀美真司がロムとラムを助けようとしてくれた事は報告で聞いている。そ
れなのに私は彼に対して赤の他人などと、頑張ってくれた彼に対して自分の
不甲斐なさを彼のせいにするかの如く言葉を言い放ってしまった。いくらあ
の時自分が冷静ではなかったからと言って、あんな事を言うものでは無かっ
た。私は、最低だ…
「何とかしなきゃ…私が…そうだ!あれを…」
とにかく自分でどうにかしなければならない、そう思い考え込んでいるとふ
とある事を思いだす。今現在進めているあのプロジェクト、そのシステムを
使えばロムとラムの居場所が掴める事に気が付いた。善は急げ、そう思い私
は歩き出そうとする。
「み~つけた!!」
「っ!?」
それは唐突だった、いきなり部屋のドアが開いたかと思うとずかずかと誰か
が入ってくる。一体何者?第一に思ったのはそれだった。頭にドクロのアク
セサリーと大きなリボンを身に着け、ピンクのアマロリの様な服を着た女。
そして黒子の様な人物が二人、カメラとマイクを手に持っていた。
「誰?」
「私はアブネス!幼年幼女の味方よ!」
名前を聞いて思わず首を傾げてしまう。アブネス?幼年幼女の味方?その単
語の一つ一つに疑問を感じるのと同時に目の前の人物を怪しむ。いい事を言
っていそうな人物だが、今ここにいる時点でどう考えても不自然だと思った
。私の許可がなければネプテューヌ達ですら入れないのに、それに教会の人
間が通すとも考えづらい。ここで出た結論は一つ、彼女達はここに不法侵入
したとしか考えられなかった。私はより一層警戒心を強める、一体彼女達は
何を企んでいるのか?そう考えずにはいられなかった。
「大人気ネット番組『アブネスちゃんねる』の看板レポーターじゃない!知
らないの?さあ!今日も中継スタートよ!!」
「中継…?」
アブネスと言う人物が怒り口調で叫びながら言い張る。そして中継?一体ど
う言った事なのか、すぐに反応出来なかった。でも最初に見た黒子達がカメ
ラとマイクを回している事に気が付く。それでようやく理解した、今私はテ
レビ中継で映し出されているのだ。それも許可なく、不法侵入した輩に。
「全世界のみんな~!幼年幼女のアイドル!アブネスちゃんで~す!今日は
ルウィーの幼女女神ブランちゃんのところに来てるぞ☆」
「てめぇ…いい加減に」
私はアブネスと言う人物に怒りを覚える。不法侵入し、挙句勝手に中継まで
されているのだ。流石にここまでされたらプライバシーもあったものではな
い、そのせいか段々と顔が歪んでくるのがわかった。だが、その表情は次の
彼女の言葉で一変する。
「ところで!妹のロムちゃんラムちゃんが誘拐されたって言う噂は本当なの
かな?ブランちゃん?」
「っ!?どうしてそれを…」
アブネスの言葉で身体が固まってしまう。ロムとラム、今現在誘拐されて行
方がわからない二人の名前を口に出されたからだ。何故アブネスがその情報
を知りえたのかは不明だが、私は思わず声を上げてしまう。だがそれがいけ
なかった、その声に食い付くかの如くアブネスは私にマイクを向けて来たの
だ。
「本当なんだ!アブネスちゃん心配…で!可愛い妹を誘拐された気分はどう
ですか?ブランちゃん?」
「っ…」
まるで私の事を食い物にするかの様な言葉使い、いつもならそれに食って掛
かっただろう。でも今の私はそれが出来なかった、妹二人を誘拐されたと言
う事実、そして自分への罪悪感がそうさせたのだ。
そこからだ、私はアブネスにポツリポツリと話し始めてしまった。話したく
ない筈なのに、私が感じる罪悪感が自然とそうさせてしまった。自分で自分
を責める様に、自分への戒めの様に。
「つまり妹が誘拐されたのは貴女の責任と言うのですねブランちゃん!」
「そ、それは…」
「見て下さい!幼女女神は何の釈明ができません!やっぱり幼女に女神は無
理なんです!」
言い返せる筈がなかった。誘拐は偶然だったのかもしれない、だけどもしあ
の時私が一緒にいれば、それを未然に防げたのは事実だ。そしてアブネスの
言葉、私には女神は無理だと言う言葉が無情にも胸に突き刺さる。私はそれ
すらも釈明することが出来ない、だってそうじゃない?妹二人も守れない様
な私が女神としての資格があると言うの?そして国民を、この国を背負って
行けると言うの?それは否だ。結局私は国民を守る事は愚か、大事な家族さ
えも守る事が出来なかった。私は、何のために…っ
「アブネスちゃんねるは幼女女神に断固n『ガシャアアアアアアアン!!』
なっ!?何!?」
自己嫌悪に浸っている最中、何かが砕かれる様な音が私の耳を突き刺した。
ハッとなり顔を上げる、するとそこには驚愕の表情を浮かべるアブネスが、
そしてここにはいなかった筈の人物が一人…
「っ!?あ、貴方…!?」
「………」
加賀美真司、私が八つ当たりの如く攻めたててしまった人。何でこんなとこ
ろにいるの?第一に思った事はそれだった。あの時確かにネプテューヌ達と
その場を後にした筈なのに、一体何故?だけどそう思う時間は長くは続かな
かった。どうしてか?それは今目の前にいる彼がそうさせたのだ。
「何を…してるんだ?」
静かに、そしてピリピリと伝わる怒気。思わず背筋がゾクッとする、女神で
ある私が思わず感じたほどの恐怖、そんな怒気を放っていたのは加賀美真司
であった。そしたら彼はゆっくりと、アブネスを睨みつけるかの如く顔を上
げる。それも、鬼の様な表情で…
――――――――
俺は少し落ち着いた後、一人でもう一度ブランさんのところへ戻った。あの
時は拒絶されてしまったが、ブランさんの様子も気になり戻って来たと言う
訳だ。もし出来たら、ブランさんにちゃんと会って謝りたい。例え許されな
くても、それは俺にとって責任を取るうえで必要な事だと思うから。
教会の廊下の角を曲がり、先ほど来たブランさんの部屋の前に辿り着く。ド
アの前に立ち、俺はノックしようと手を上げた。だがその動作を俺はピタリ
と止めたのだ、それはどうしてか?その理由は部屋の中から聞こえた声が原
因だった。
「声が聞こえる?ブランさん、誰かと話してるのかな?」
だけど先ほどの事を考えると、部屋に誰かを招き入れて話をする可能性は低
いと思う。頑なに自分の部屋に入れようとしなかったのだからそう思うのは
必然だ、俺は悪いとは思ったのだが、少しだけその会話に耳を傾ける事にし
た。一体何の話を…
「つまり妹が誘拐されたのは貴女の責任と言うのですねブランちゃん!」
「…は?」
いきなりの事で一瞬固まってしまった。だが俺はすぐに頭を横に振り、思考
を回復させる。俺が気になったその会話の内容、それはブランさんの妹であ
るロムちゃんとラムちゃんの誘拐事件の内容だった。
だがそれ以上に気になったのは、ブランさんとは別の女性の声。その声の主
が、ブランさんに問いただしている様なのだ。俺は思わず部屋のドアを思い
っきり開けそうになった、だがそこをどうにかして思い止まり、ほんの少し
だけドアを開き中の様子を探った。
するとどうだろうか、今ブランさんはカメラを回され、マイクを向けられて
インタビューを受けている。だけど今のブランさんの表情はとても苦しそう
で、今にも泣きだしそうな表情だった。そんな彼女に向けて、インタビュー
をしている女性は何の躊躇もなく根掘り葉掘りと聞き返す。
その行動に、俺は怒りを覚えた。今インタビューをしている女性は何処で誘
拐事件の情報を得たのかは知らない、だけどその事で一番傷心しているブラ
ンさんに対して何故あそこまでしつこく聞く必要がある?何故彼女を責め立
てる様な言動を言う必要がある?何故傷心の人の心を踏み躙る様な行為を平
然としているんだ?そんな想いの中、俺は拳を握りしめた。
それに、真に責められるべき人物は俺の筈だ。あの時俺がもっとしっかりし
ていれば、もっと誘拐犯に喰らいつくくらいの力があればこんな事にはなら
なかった。あの時程自分を悔いた事は無い、そのせいでブランさんが傷つい
たと言っても過言ではないからだ。思わず歯を食いしばる、今感じている怒
りを必死で抑える様に。だけど、その努力は次の言葉で泡となり消える事に
なるのだった。
「見て下さい!幼女女神は何の釈明ができません!やっぱり幼女に女神は無
理なんです!」
その言葉を聞いた瞬間、身体が勝手に動いていた。気がつけばドアを開け、
ずんずんと足を進めカメラを回している人物の場所まで歩み寄っていく。
「アブネスちゃんねるは幼女女神に断固n『ガシャアアアアアアアン!!』
なっ!?何!?」
「……」
カメラを掴むと、それを勢いよく床に叩き付けぶっ壊した。それを目撃した
ブランさんは、驚愕の表情を浮かべて声をかけてくる。だが、今の俺はそれ
すら気にならなかった。
「あ、アンタ!一体誰なのよ!しかもカメラまで壊してくれちゃって!!」
すると、先ほどまでブランさんをインタビューしていた女性が怒りを露わに
して俺に突っかかって来た。大事なカメラを壊された事に腹を立て、睨みな
がら騒ぎ立てている。俺はそれを、ただじっと聞き流す。
「何か言いなさいよ!営業妨害と器物破損罪でアンタの事訴えてやるんだか
ら!!聞いてるの!?」
「それだったら、アンタが今やっている事は罪にはならないのか?」
「はぁ?何言って…ひぃ!?」
女性は奇声を上げて後ずさる、その原因は自分でも分かった。先ほどの俺の
声は恐ろしく低く、殺意にも似た怒気を含めていたからだ。女性を睨みつけ
ながら俺はゆっくりと近づいていく、当の女性本人はその視線から逃げる様
に後ずさるが、壁際にまで追い詰められ逃げ場を失う結果となったのだ。
女性は目に涙を浮かべながら震えている。だが俺はそれに構わず、睨みつけ
たままの状態で女性に言葉を投げかけた。
「傷心のブランさんの心に土足で踏み躙る様な真似をして、根掘り葉掘り聞
きまくって、そう言う事は罪にはならないって言うのか?」
「な、何言ってるのよ…だ、第一誘拐された事は事実でしょ!?私はそれを
証明しに来ただけよ!それの何がいけないのよ!?」
「…そうだな。確かにお前の言う通り誘拐事件が起きた事は紛れもなく事実
だよ」
俺の言葉を聞いた女性は胸を張り、ふふんと鼻を鳴らす。対するブランさん
は目を逸らし、顔を俯せて拳をギュッと握っていた。すると、勝ち誇った様
に女性は声を張り上げて話し出す。
「そうでしょそうでしょ!だからこそ私は幼女に女神は無理だと言ったの!
そんな事せずに幼女は幼女らしくお遊戯をして楽しく過ごしていれば…」
「だけど…」
「は?何…っ!?」
女性の、余裕を持った表情はそう長くは続かなかった。俺がその女性を更に
強い視線で睨みつけ、胸ぐらを掴んだからだ。それを見た目の前の女性、そ
してブランさんは息を飲んで見つめていた。そして俺は、そんな二人をよそ
に怒気を含めた声で叫ぶ。
「そんな事をする権利はお前には無い筈だ!確かにロムちゃんとラムちゃん
が誘拐されてしまった事は紛れもない事実だ、だけどそれを出汁にしてブラ
ンさんを責め立てる権利なんてお前にはない!!ブランさんを追い詰める様
な真似をしていい筈がないだろ!!」
「っ…!」
「くっ…う、うるさいわね!!私はアブネスちゃんねるの…」
「それに!!」
怒号をぶつけている女性に対し、俺は更に言葉を繋げる。今目の前の奴に喋
る隙を与えてはならない、与えてたまるか!そう心で思いながら。
「ブランさんが女神が無理だなんて絶対にありえない、お前はこの国に来て
思わなかったのか?この国の人達は笑顔に溢れて、道でパッと目が合っただ
けでもすごく優しい笑顔を向けてくれる。それは国全体が幸せで、満たされ
ている証拠だろ?ならその国を築き上げたのは誰だ?紛れもなく今ここにい
るブランさんだろ!?」
「え…っ、あ…」
「そ、それは…」
「ずっと、ずっと頑張って来た筈だ。苦しい思いも悲しい思いも抱えながら
歯を食いしばって頑張って来た筈だ!それだけ頑張って来たから、今この国
がある。この国の人々の笑顔がある!女神が無理だなんて言葉、お前なんか
が軽々しく、へらへら笑いながら口に出していい様な言葉じゃねぇんだ!」
「ぐ、うう…」
俺の言葉に、目の前の女性は言い返せないでいた。許せなかった、ブランさ
んの心を踏み躙った行為だけじゃない、ブランさんそのものを否定したその
言葉に。ブランさんの今まで築き上げてきたその努力に泥を塗る行為に我慢
が出来なかった。
俺はしきりに叫んだ後、胸ぐらを掴んだ手をそっと放す。女性はその場でへ
たりこみ、ブランさんはただ茫然と見ていた。俺はまず深呼吸、心を落ち着
かせると同時に再び話を続ける。
「それに、責める相手を間違えている。あの時ロムちゃんとラムちゃんが誘
拐されたのは俺がしっかりしてなかったから、俺があの時ちゃんとしていれ
ばあんな事にはならなかった。責任は俺にある」
「は、はぁ!?」
「え…?ち、違う!貴方のせいじゃ…」
俺の言葉に目を丸くした女性とブランさん。俺の言葉を否定しようとしてく
れているのか、ブランさんはとっさに声を上げた。だがそれに覆い被さる様
に、目の前にいた女性は俺の言葉に食い付いてきた。
「何よ何よ!?じゃあアンタが悪いって事じゃない!幼女女神を問いただし
て損した!まあいいわ、カメラや私の事を含めてきっちりアンタの事を…」
「ま、待って!?彼は関係ない!」
女性の言葉に対して、ブランさんは俺を庇う様に叫んだ。だがそんな言葉を
聞き入れる事をする筈もなく、女性は俺を睨みつける様にジリジリと近づい
て来る。
「何か言いなさいよ?どうせ釈明の余地はないだろうけど?」
「ああ、別に逃げも隠れもしない。俺が悪いんだって言うなら責め立てるも
好きにするといいさ」
「そう?殊勝な心がけじゃない。それじゃあ遠慮なくアンタを…っ!?」
「え…?っ!?」
女性はそれ以上声を出さなかった。声を出すどころか、顔から段々と血の気
が失せていき青ざめていくのがわかる。それは何故か?理由は至極簡単だ、
俺が彼女に対して殺気にも似た怒気を放っているからだ。
「だがな、もし今後ブランさんを責め立てる様な真似を、心に土足で踏み込
む様な真似をしてみろ?その時は地の果てまでお前を追いかけて…」
再び女性の胸ぐらを掴み、耳元で一言――
「お前を、ぶっ殺す…っ!!」
「ひ…ひぃいいいいいい!?」
女性は俺の手を振りほどき、一目散に部屋のドアの前へ走り出す。カメラと
マイクを回していた者達も同様に、時々こけながら慌てて逃げ出そうとして
いた。そしたら女性は、涙目になりながらも強がりながら叫んだ。
「こ、今回の事は見逃してあげるわ!!で、でも次はないんだから!!覚え
ておきなさいよ!!」
「……そーかよ」
それっきり、女性達は言葉を発せずに一目散に逃げ出した。俺はそれを遠目
で見つめる、その時ふと、ドアの近くに目を向けた。そこには見知っていた
人が、その内の一人はへたり込み、二人はお互いに抱き合いながら身体をガ
タガタと震わせていた。
「ね、ねぷぅ…」
「…ネプテューヌ?」
「「はわわわわわわ…」」
「ネプギア?ユニちゃん?」
ネプテューヌ達がドアの外にいたのだ。何故かネプテューヌは顔を青ざめて
いる、ノワールとベールさんに至っては冷や汗を掻き、ネプギアとユニちゃ
んは涙目になっていた。一体何がどうなったのか、考えても全然思いつかな
かったんだけど…とりあえず声をかけてみようと思う。
「えっと、どうかしたのか?」
「し、真司が…怖かった…」
「…え?」
ネプテューヌの恐る恐るの言動に、俺は一瞬間が空き目が点になった。その
様子を見ていたノワールが、少し呆れた様な感じで話しかけてくる。
「自覚なかったの?」
「…まったく」
確かに俺は怒っていた、ブランさんが言われた事に対して許せない気持ちで
いっぱいだったから。だけどネプテューヌ達がドン引きのレベルって…無自
覚が怖いと思った瞬間でもあった。
「と、とりあえず誰かヘルプ…」
ネプテューヌは未だに腰が砕けて立てそうになかった。それを見たノワール
はため息をつきながら、ネプギアは慌てながらネプテューヌに肩を貸し立ち
上がらせる。…そこまで怖がられると逆に落ち込むなー、そんなに怖かった
のか?さっきまでの俺って。そう思いながらしょんぼり、その時ベールさん
が近づいて来て肩にポンと手を当て微笑みかけてくれた。
「まあまあ、真司くん。元気を出して下さいな?」
「ベールさん?」
「確かに先ほどまでの真司くんは、その…怖かったですけど。それでもそれ
はブランのために怒ってくれたのでしょう?だったら気にする事はありませ
ん、堂々と胸を張るべきですわ」
「そうね。ブランが真司にあんな事言って、普通なら嫌われてもおかしく無
い筈なのに。真司の人の好さに感謝しなさいよ、ブラン?」
「あ…う…」
ベールさんもノワールも、俺に励ましの言葉を送ってくれる。それが何だか
気恥ずかしくて、目を伏せて頬を掻く行為で誤魔化した。そしてノワールの
言葉に狼狽えながら、言葉を発せられないブランさん。俺はそんなブランさ
んの前に、歩み寄った。
「ブランさん…」
「あ、あの…」
「…ありがとうございます」
「え?」
俺がブランさんにお礼を言うと、ブランさんの目はキョトンとなり戸惑いの
表情を見せた。たぶんいきなりだったからそうなったのかもしれない、それ
に俺の事を悪く言ったはずなのに何でお礼を言われるのかとも思っているの
かもしれない。そんなブランさんを見ながら、俺は言葉を続ける。
「あの時、あの人に詰め寄られた時に俺を庇おうとしてくれたでしょう?ま
さかそんな事してくれるなんて思わなかったから。俺のせいでロムちゃんと
ラムちゃんが誘拐されたのに、そんな俺を庇おうとしてくれるなんて…」
「ち、違う…っ!誘拐事件は貴方のせいじゃ…」
「ブランさん…」
ブランさんが何かを言おうとしたが、俺はそれを遮った。俺が勘違いしなけ
ればたぶん、俺のせいじゃないからと言うつもりなのかもしれない。だけど
その言葉を俺は受け取るわけにはいかない、最後まで責任を取る、自分が犯
してしまった罪を償うためにも。
ブランさんの両肩に手を置く俺、その行動でブランさんの身体はビクッと跳
ね上がる。俺の目を見まいと、目を逸らす。俺に言った事を気にしているせ
いだと思うからそうなる事は必然だ、だがそれでも構わない。俺はその状態
のまま、ブランさんに話しかけた。
「ブランさん、ロムちゃんとラムちゃんの事本当にごめんなさい。謝っても
許されるような事じゃないと思う、俺はブランさんの大事な家族を守る事が
出来なかったから…」
「…っ、加賀美、真司…」
「でも、これだけは言わせて下さい。二人は必ず見つけ出します、必ず助け
出してみせます!俺に出来る事はそれだけだけど、それが俺の責任の取り方
です。ブランさん」
今の俺に答えられる精一杯の言葉。ロムちゃんとラムちゃんを助け出して必
ずブランさんの下へ送り届ける、それが例え困難な事だとしても絶対にやり
遂げる!それが俺の責任と取り方であり、実行しなければならない事だ。
ブランさんにはしっかり伝えた、俺が言いたかった事を全部。思わず息を吐
き出して肩を落とす、その時だ、ブランさんがふいにふらっと倒れ込んでし
まったのだ。
「ブランさん!?」
慌てて俺はブランさんを抱き留める。顔を覗き込むと、疲労困憊の顔で息も
心なしか上がっていたのだ。今まで気が付かなかった、これほどまでに思い
悩んでいたと言う事なのだろうか?
ネプテューヌ達もブランさんが心配になり、俺の周りを囲む様に集まった。
ブランさんが倒れ込んだ原因はやはり誘拐事件が原因だったのか?そう思う
俺、そしてネプギアがある事を口にした。
「ブランさん…」
「今の番組をルウィーの国民が見てシェアが一気に下がったからとか?」
「確かシェアが少なくなると女神は力が出なくなるって、イストワールさんか
ら聞いたけど…」
さっきあの連中がカメラを回していた、その事がルウィーの国全体に広がって
いてその様子を見ていた国民から信仰が無くなってしまった。そう考えていた
が、その疑問をノワールが打ち消す形で言葉を繋げる。
「いくらなんでもそれは早過ぎよ」
「じゃあ…」
やはり誘拐事件の事が原因で、そして根掘り葉掘り聞かれたから精神的にも疲
労が溜まってしまったと言う事なのだろうか?原因は未だに不明だが、今はそ
う考える事にしようと思う。
「みなさん」
ブランさんの事を考えている最中、ベールさんがこの場にいる全員に声をかけ
た。ベールさんの方へ視線を向ける、今のベールさんの表情はまさに真剣その
ものだ。そんな彼女が一呼吸置くと、俺やみんなにとって朗報な言葉を口にす
る事になる。
「方法があるんです、ロムちゃんとラムちゃんを見つける方法が」
これは、最高の転機でもあった。
いかがでしょうか?今日は連続投稿しますのでお見逃しなく!