ゲイムギョウ界に来てしまった!?〔改稿中〕   作:ULTRA-7

14 / 64
通算UA12000越え!そしてお気に入り件数102件!こんな小説を読んでいただき感謝です!

今回の小説を書いてて思ったこと、かなり甘いんじゃないかこの展開?とりあえずバケツ
のご用意を!


第十四話 これはある意味デートと言うものなのだろうか?

「それでこの技術を…」

 

「それならもっとここを…」

 

 

 俺は今ノワールと共にラステイションの工場の視察に来ている。

 技術者と共に情報交換、そしてアドバイスなどを的確にするノワールは本当にすごい、見習いたくなる。

 

 

「それでは今日はこの辺でお開きにしましょうか?」

 

「ありがとうございます、ノワール様」

 

「真司、行くわよ」

 

「あ、はい…」

 

 

 これで機嫌が直ってたら素直に尊敬できたのになぁ…

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 すたすたと早歩きで進むノワールの後ろに小走りでついて行く俺、この状態が朝から続いている。

 昨日、マーベラスの話をした途端急に怒り出してその後もご機嫌斜め、声をかけてもツンツンの一点だ。これがツンデレと言う奴なのか! 

 

 …ふざけてる場合じゃないですよね、すいません、それにツンデレの意味が違うし…

 

 

「あの~…ノワール? ノワールさん?」

 

「何よ」

 

「昨日から何をそんなに怒ってらっしゃるので…?」

 

「別に怒ってないわよ、私は至極冷静にいるわ」

 

(その割には不機嫌じゃん…)

 

 

 俺は何度この質問をしたのだろうか、その度に自分は怒ってない、冷静だと目を鋭くさせながら返答してくる。

 どう考えても怒っている……ギクシャクしたこの空気、どうにかならないかな……

 

 

「そんなところに突っ立ってないで、次行くわよ」

 

「はい…」

 

 

 だが現実は残酷だ、ノワールの氷の刃の如き言葉は俺の胸に突き刺さり、余計に俺と距離を伸ばしていく。

 うん、これは早急にどうにかせねばなるまい。そう思いながら、俺はノワールの後ろに小走りでついて行った。

 

 

 

*     *     *

 

 

 

「これで今日の視察は終了ね」

 

「おう…」

 

 

 まぁあれだよ、出来る限りの努力はした。だけど結果は…あ! あんなところにスライヌが!! …すいません、見ての通り進展なしです。

 

 

 あの後どれだけ話かけても返事をくれなかったノワール。返事を返してくれてもやはり怒っていない、冷静だなどの一言。

 これはもう会話すら成立していない、そのせいで俺の心はボドボドダ!? いかんいかん、そんな事を言ってる場合じゃなかった。

 とにかく、ノワールの機嫌を直さないことには今後の事に支障がでてしまう。

 

 こうなれば…っ!

 

 

「あのさ、ノワール?」

 

「何よ? 今から早く戻って書類整理に入らないといけないんだけど?」

 

「…ごめん! 」

 

「…え? 」

 

 

 男は度胸! 俺が何をしたのかはわからない、だけど怒っている原因は間違いなく俺の筈だ。だったらここで俺がちゃんと謝る、それしかない。

 

 

「俺が何やったかわからないんだけどノワールの機嫌が悪いのは俺のせいなんだよな?だったら謝る! ごめん、ノワール!」

 

「べ、別にそう言うわけじゃ…」

 

「俺に出来る事があれば何でもする! だから機嫌を直してくれないか?」

 

 

 とにかく謝る、誠心誠意。すると俺の言葉にピクッと、ノワールは反応した、どうやら食い付いてくれた様だ。

 ノワールは口元に指を当てて考える。その間はまさに緊張の一言、ゴクリと喉を鳴らしてノワールの返答を待つ。

 

 

「…何でも?」

 

「お、俺の出来る範囲で…」

 

「そう、ね…な、なら……い、今からの時間は私に付き合いなさい!」

 

「……はい?」

 

 

 ノワールはビシッと人差し指を俺に向けて言い放つ。

 えっと…正直もっと別の事を要求されるものかと思ってた、この後書類整理があると言ってたからその手伝いとかクエストとか。実はもっと酷いものを想像してたけど…

 

 

「い、いいのか? そんな事で…と言うより書類整理の方は?」

 

「きゅ、急にそれが無くなったのよ! それとも何? 真司は一度言った言葉を撤回するつもりなの?」

 

「う!? それを言われると…」

 

「だったらこのまま私に付き合いなさい! 異論は認めないわ!」

 

 

 ノワールは頬を膨らまして、怒った口調で食って掛かった。

 確かに俺は出来る事なら何でもすると言った、それを今更撤回する気はない、例えそれがノワールにただ付き合うだけの簡単な事だとしてもノワールがそうしてくれと言ったんだ。

 だったら俺は自分が言った言葉通り、自分に出来る事をしないといけないよな。

 

 

「…わかった、俺も男だ。一度言った事に二言はないよ、それでノワールが満足するなら」

 

「それじゃあ決まりね♪」

 

 

 意を決し、ノワールに声をかける。そしたらノワールは一日ぶりに笑顔を見せてくれ、軽い足取りで歩き出した。

 どうやら機嫌を良くしてくれたみたい、とりあえずホッと胸を撫で下ろした。このままずっと口を利かないままラステイションの体験入国が終わってしまうなんて事態、それだけは回避したかったから尚の事。 

 とにかくこれで一安心……

 

 

「真司には奢ってもらいたいスイーツがあったのよね~♪」

 

 

 ……散々な目に合う自分の未来が見えるぜ…俺は自分の財布を見ながら冷や汗を垂れ流し続けた。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

「ん~♪おいしい! ここのパフェ一回でいいから食べてみたかったのよ。疲れた後は甘いものに限るわ」

 

「さいですか…」

 

 

 ノワールに連れてこられた場所、ラステイションで新しくできたスイーツ専門店だ。

 ここの人気メニューはフルーツパフェ、新鮮なフルーツや厳選した素材を惜しみなく使った一品だ。しかもそれに見合う様な値段、俺の財布の中がまずいことになっている。まさかここまでするとは……御見それいったよスイーツ店。

 目の前のノワールは笑顔でパフェを頬張る。味に舌鼓を打ち、左頬に手を添えて実に幸せそうな表情だ。余程このパフェがおいしいのだろう、見てるこっちも何故か満足してしまう、まぁこんな笑顔になってくれているのなら…

 

 

「ノワールが喜んでるならいいか…」

 

「んぐ? 何か言った?」

 

「いんや、何にも」

 

 

 俺はパフェを頬張るノワールを見ながらコーヒーを啜った。

 うん、この店のコーヒーもおいしい、香りも良く味も申し分ない。いい豆を使っている証拠だ。だがここに来た時に最初に飲んだノワールが入れてくれたコーヒー、あの味も俺は好き…いや、あっちの方が俺好みかも。ここのコーヒーがまずいわけじゃない、だけどやっぱり好みと言うものは人それぞれ、そう思いながら手に持つコーヒーカップに再び口を付けた。

 

 

「…あ、あの! し、真司?」

 

「何? ノワール?…っぶ!」

 

 

 コーヒーを飲みながら思いに耽っていた時、ふとノワールから声がかかった。

 視線を向けた先にあるノワールの表情、若干頬を赤くしての上目使いだ、飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになるがそこはグッと堪える。

 ふぅ…危うく汚い場面を見せてしまうところだった、いきなりの不意打ち、だがもう大丈夫、まさかこれ以上の事が起こる筈なんて……

 

 

「あ、あ~ん…」

 

「…ひょ?」

 

 

 起こる筈がない、まさしくこれはフラグが立つ言葉と聞いた事がある、俺が言った結果はどうだ? 今目の前にいるノワールはパフェを掬ったスプーンを俺に向けてきた。しかもご丁寧にあ~ん…だと!?

 あまりに突然の出来事に変な声を出してしまったじゃないか、瞬きが止まらず何が何だかわからん!? 思考が追い付かない!?

 すると、ノワールは赤くしていた頬を更に赤くして叫び出した。

 

 

「わ、私だけ食べて真司が食べないのは不公平でしょ! 変な意味じゃないから…それとも、甘いのは嫌い?」

 

「い、いや! そう言う訳じゃない! 甘いのは好きだぞ!?」

 

「だ、だったらいいじゃない! だから…ね?」

 

 

 俺は今心臓がバックバクだ、生まれてこの方女性にこんな事された事など一度もない、彼女いない歴=年齢の始末なのだから。

 そんな俺がノワールほどの美女にあ~んなんてされたら平常心でいられると思うか?いや、無理だ。

 こうなったら成すがされるままになる他ない、今目の前にはノワールが差し出すスプーンに乗っているパフェのアイスクリームの部位、俺はそのまま吸い込まれる様に口を近づけた。

 

 

「あ、あ~ん…」

 

「あー…ん、ムグ…」

 

「ど、どうかしら?」

 

「あ、うん、おいしいよ?」

 

 

 嘘だ、本当は味なんてわかったもんじゃない。

 今俺は混乱している、まさかノワールほどの可愛い女の子にあ~んなんてされるなんて思ってもみなかったから、俺には無縁なものとばかり思っていたし…それにただでさえノワールが口に付けた物を俺が食べたんだ、こうなってしまうのもしょうがないと言うもの…

 

……ん?ちょっと待て、俺今何て言った?

 

 口に付けた? 何を? ノワールが口に付けた物だ、するとどうやって口に付けた?それはあのスプーン…あ。

 

 こ、ここれって間接キスじゃねぇか!? ハッとしてノワールの方へ振り向く、彼女の顔も真っ赤に染まっていた、俺と同じく気づいてしまったのか!?

 

 

「ノワール!? お、俺…」

 

「き、気にしないで!? 私が自分でやったことだし!? それに私は全然気にしてないから!!」

 

「で、でもこれ…「気にしてないって言ってるでしょ!?」は、はい!?」

 

 

 さすがに悪いと思い謝ろうとした、だけどノワールは顔を真っ赤にしたまま、混乱した様な口調と慌ただしさで叫び返した。

 だが気にしていないと言われても今のこの状態じゃ全然説得力がない、完全に言い訳にしか聞こえない、今の俺が言っても人の事言えないと思うが…

 

 この後お互いに押し黙ってしまった。

 そして沈黙が続く、すごく気まずい空気になってしまった事は言うまでもない……

 

 

 

*     *     *

 

 

 

「「…」」

 

 

 顔を俯かせて歩く俺とノワール、一体どれほどの時間この状態が続いているのだろう?

 

 スイーツ店での一件、ノワールは俺にあ~んでパフェを食べさせてくれた。

 そしてお互いに後から気づいた事、それは間接キス…ノワールが差し出してくれたスプーンを俺はそのまま口にしてしまい、気がつくとお互いに混乱状態。何でもっと早くあそこで気がつかなかった、俺ェ…

 だ、だが今の状態のままの訳にはいかん! せっかく朝までの機嫌も直って会話もまともに出来る様になったんだ! ここは意を決して話すべき場面、そうだろう! ならすぐに実行、ノワールの方へ振り向きいざ!

 

 

「「あ、あの!」」

 

「あ、ノワールから…」

 

「し、真司の方からで…」

 

「「…」」

 

 

 意を決したと言うのに結果はこれかよコンチクショウ!? しかもお互いに声をかけようとしたら言葉が重なり、譲り合ったら挙句の果てにまた黙り込んでしまう。

 完全に詰まったじゃんこれ…

 もう一度声をかけようにも先ほどの失敗も相まって中々言葉が出てこない、もしまた声をかけられたとしても、さっきの様にまた言葉が重なってしまったらどうしよう? などの不安もある。

 ああ…せめて俺達以外の誰かが会話に入ってくれたら話を繋げやすいのに。だけど今そんな事を望んだとしても、都合良くそんな人物が現れる筈もない。そう思うと余計にへこむ…

 

 ああ! どうか打開策を!! せめて話を繋げられる何かを俺にぃっ!!

 

 

「あれ…? お、ノワールじゃないか!」

 

 

 声が、聞こえる…? それもノワールを名指しで呼ぶ声、と言う事はノワールの知り合いと言う事か?と、言う事は…

 

 こ れ で 話 を 繋 げ ら れ る !!

 

 上手くいけばこの気まずい空気からの脱出、更には押し黙る必要がなくなる事も! これはまたとないチャンス、天は俺を見捨ててはいなかった!! 今俺はこの声の主に心の底から感謝している、本当にありがとう!! そんな気持ちで俺は振り向く。そこにいた人物は女性、いや声色からしてそれはわかっていたんだけど。

 青髪に頭にはゴーグル、手には長年の作業で油汚れが蓄積しているであろう手袋を付け、いかにも工場で働いていますと言わんばかりの格好だった。

 ノワールもその姿を見る、そして見るや否や声の主の下へ駆け寄り話し出した。

 

 

「シアンじゃない! どうしたの?こんなところで」

 

「今は休憩中だよ、外の空気を吸いにさ。ずっと籠ってたら息が詰まるよ」

 

「また籠ってたの? 熱心なのはいいけど無理はしないでよね?」

 

「わかってるって! ん? そう言えば隣にいるこの人は?」

 

 

 すると俺の存在に気づいたのか、女性は俺に視線を向けて声をかけてきた。

ホッ…このまま忘れられたらどうしようかと思った、おっと、俺もちゃんと返事を返さないと失礼だよな。

 俺は咳払いを一つ、呼吸を整え目の前にいる女性に挨拶した。

 

 

「どうも、加賀美真司です。今ノワールのところでお世話になってます」

 

「私の名前はシアンって言うんだ。ノワールとは昔からの長い付き合いなんだよ、よろしくな。もしかしてお前…ノワールの彼氏とか?」

 

「「ぶっ!?」」

 

 

 シアンさんの言葉に盛大に吹く俺とノワール、思わず咳き込んでしまい、顔からは変な汗がぶわっと噴き出て来た。

 ノワールなんか地面に突っ伏して咳き込んでいるし…その様子を見たシアンさんは目をキョトンとさせながら、俺達に声をかけて来た。

 

 

「違うのか?」

 

「げほっ! ごほっ…ち、違うわよ!! 真司とはそう言う関係じゃないわ!!」

 

「そ、そうだって! それに俺じゃノワールには不釣り合いだし…」

 

「そうか? 案外お似合いだと思うけどな」

 

 

 お、お似合いって…確かにノワールはものすっごい美少女だ、そんな人とお似合いと言われたらすごく嬉しいぜ? だけど俺は特に特徴らしいところもない、何処にでもいそうなただの一般人だぞ? 絶対に不釣り合いだ。それをこの人は何の躊躇もなく満面の笑みで、うわぁ…狙って言ったとしか思えないよこれ。しかも現在進行形で歯を見せながら笑ってるし…この人笑う悪魔だ!?

 

 

「べ、別に真司の事そこまで悪くは…ごにょ…」

 

「の、ノワール? 何か言った?」

 

「別に何も!?」

 

 

 シアンさんのどう考えてもからかっている様にしか見えない笑顔に涙目になっていた俺。だが隣にいたノワールは頬を赤く染め、両人差し指をちょんちょんと突きながらごにょごにょと何かをぼやいていた。気になり尋ねてみたが、突然慌ただしく両手をブンブンと振り、何もないとの一点張り。

 まぁそうなる筈だ。いきなりシアンさんに俺達がお似合いだとからかわれたんだ、ノワールだってからかわれて恥ずかしいと思ったに違いない。まったく、シアンさんは人が悪いなぁもう…

 

 

「はは! それより立ち話もなんだから家の食堂に来ないか? お茶くらい出すぜ?」

 

「そ、そうね! 久しぶりにシアンともお話ししたいし、真司もいいかしら?」

 

「え?ああ、俺もそれでいいよ。今日一日付き合うって約束だし」

 

 

 俺が心の中で苦笑いを浮かべている間シアンさんは豪快に笑う、その時に俺達は彼女に自分の家に来ないかと提案された。

 その話にノワールは賛同、俺も特に断る理由もない、それに今日一日付き合う約束もしていたからその話に了承した。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

「それでこの前さ~」

 

「へえ、そうなの」

 

 

 現在シアンの実家の食堂の中なう。ノワールと二人の会話を聞きながら出された緑茶を啜りホッと一息…ふぅ、落ち着くなぁ…

 あ、何でいきなりシアンを呼び捨てにしているかと言うと、彼女をさん付けで呼んでいたら『固っ苦しいから呼び捨てでいいぜ?』とのことだ。

 それにしても二人の姿見てたら本当に仲がいいんだなと思う。先ほどから会話が弾み、表情も生き生きしてる。見てるこっちも何だか嬉しい、そう思いながらもう一度緑茶を啜る、ズズッ…うん、おいしい。

 

 

「あはは! あ、そう言えばさ、真司は何でノワールと一緒にいたんだ? 言っちゃ悪いかもしれないけど真司は一般人だよな?」

 

 

 シアンから不意に言葉を投げかけられた。

 確かにシアンの言う通り俺は確かに一般人だ、そしてノワールは女神、この世界の人から見たらシアンの言う事はもっともだと思う。

 それはとりあえず置いておいて。俺は手に持つ湯呑を一旦おいてコホンと咳払い、まずはシアンに俺の事情を説明するところから始めないと。

 

 

「俺さ、実はこのゲイムギョウ界の人間じゃないんだ。別の世界から来た異世界人って言った方が早いと思う、今はネプ…パープルハート様のところで保護されて身の安全は保障されてるけど」

 

「異世界人!? それ本当なのか?」

 

「本当よシアン。それは私も保障するわ」

 

「今は元の世界に帰る方法を見つけるのと同時にこの世界の事を学ばせてもらっているんだ、その一環として体験入国をさせてもらってる。一つの国を五日間、合計十五日間かけてね。だから俺はノワールと一緒にいたんだ、彼女の仕事を見学させてもらってたんだよ」

 

「なるほど、そうだったのか。それで? 帰れる方法ってのは見つかったのか?」

 

 

 説明を一通り終えた後、シアンは納得してくれた様にうんうんと頷いた、理解をしてくれて何よりだ。

 だけどその次の質問、帰れる方法が見つかったのかと言う質問、その言葉に俺はうっと言葉が詰まる。その様子を見たからなのか、シアンは口元に手を当てて『やってしまった!』と言わんばかりの表情になった。

 不味い、せっかく今まで明るい雰囲気だったのにこのままではまた暗くなる。これはいけない、暗い雰囲気にするために話をした訳じゃないのに。

 そう思った俺はもう一度咳払い、この場の空気を換えようと明るく振る舞い、笑いながら話す。

 

 

「あはは、それが面白いくらいサーッパリ!」

 

「あ…悪い…」

 

「え、えっと…」

 

「あ、あれー…?」

 

 

 するとシアンと一緒にノワールの表情も暗くなってしまった。

 しまった! 明るく振る舞った事が仇になったのか!? 目の前の二人、いかにも俺に対して声をかけにくい雰囲気になってる、俺ってば余計な事しちゃったな…頬を人差し指で掻きながら固っ苦しい表情を二人に向けて苦笑い、その時でも二人の表情は暗いままだった。

 二人してこうなる必要はないのに、だけど…

 

 それくらい、俺の事を心配してくれているって事なんだよな――

 

 俺はそう思いながら苦笑いを解き、もう一度笑顔を作る。

 よし、たぶん今は笑顔は固くはなっていないと思う。そして俺は再び二人に話しかけた。

 

 

「そんなに暗くなるなよ二人とも。時間だってまだたっぷりある、これからゆっくり帰れる方法を見つければいいんだからさ」

 

「そう、だけどさ…」

 

「それにさ」

 

「え…?」

 

「この世界に来れて俺はよかったと思ってる、もし来れなかったら俺は俺の世界で平凡な毎日を送っていた…ノワール達にも会うこともなかった。俺は今この瞬間もこうして一緒にいられることが嬉しいんだよ」

 

 

 今言った言葉は俺の本音だ。 

 確かにこの世界に来たことはほんの些細な事故、偶然だったかもしれない。だけどそのおかげで俺はネプテューヌに会えた。それだけじゃなくノワール、ブラン、ベールさん、たくさんの素敵な人達と出会う事が出来たんだ。

 もしあの事故がなければ俺は今日と言う日までずっと自分の家にいて、バイトをして家に帰ってコンビニ弁当を食べて寝る、そんなありきたりな生活のままだったに違いない。

 この世界に来て俺は変わった、退屈だった筈の日常が毎日刺激的になり、本当に充実している。

 クエストを手伝える様に身体を鍛え、アイエフにも特訓をしてもらった。この世界の文字がわからない時でも、イストワールさんに教えてもらいながら必死に勉強した。今まで忘れていた、『努力する』と言う事をこの世界は思い出させてくれた。俺はこの世界に来て『変われた』、この世界は俺を変えるきっかけを作ってくれたんだ。

 その努力によって俺はある者達を思い出した、俺が今まで憧れ続けてきた存在、特撮ヒーロー達だ。

 あの人達も様々な努力の末に人々を守って来た、俺は小さい頃から彼らに憧れ、自分もああなりたい、誰かの力になりたいと思い続けてきた。

 だけどその想いは年齢が重なるにつれ次第に薄れていき、いつからか忘れてしまっていた…

 でもこの世界に来て、自分が努力を積み重ねる度に感じた。『ああ、俺が憧れた人達もこれ以上に努力してきたんだな』って。

 あの日の想いが蘇り、あの人達の様になりたい、近づきたいとさえ思う様になった。

 だからこそ改めて思う、俺を変えるきっかけを、俺に今まで憧れていた人達を思い出させてくれたこの世界に本当に感謝したいと。

 あ、補足はするけど特撮は今までちゃんと見ていたからな? ヒーロー好きは相変わらずだよ。

 

 

「まぁ最悪元の世界に帰れなくてもこの世界で暮らしていければいいなと思ってる」

 

 

 俺は自分が思った事の一通りをシアン達に話し終えた。 

 とりあえずホッと一息つき、改めて二人に目を向けた。

 ……何かマジマジと俺を見ているんだけど? 目をパチパチとさせてぽかんと口を開き、ただジーッと俺を見つめていた。

 な、何か変な事言ったかな?

 

 

「…真司ってさ、何気に大物だよな」

 

「…へ?」

 

 

 いきなり言葉をかけられて変な声を上げてしまった。

 その様子が可笑しかったからなのか、シアンは歯を見せながら、そしてノワールも口元に手を当てながら笑いだした。

 

 

「普通だったら不安で怖くて仕方ない筈なのに、こうやってしっかりと前を向いて過ごしている。それに何か自分を貫いてるって感じで、もし私が真司と同じ立場だったらこんな風にはいかないと思うよ」

 

「本当にね。真司って意外に前向きなのね、真司のいいところをまた一つ見つけたわ」

 

 

 二人は優しい笑顔になりながら、俺に賞賛の言葉を送ってくれた。

 けど何故だ? 二人は褒めてくれただけだと言うのに恥ずかしさがものすごく込み上げてくる、それを俺は頭をガシガシと掻き毟りながら誤魔化した。

 その時シアンがポンッと手の平を拳で叩き、何かを閃いた様な表情で俺に話かけた。

 

 

「真司にだったらノワールの事任せられるかもな!」

 

「へ?」

 

 

 シアンの言葉を聞いた俺は目が点になってしまった、そしてシアンの隣にいたノワールはぶっと息を吹き出しながら、自分の顔面を机の上に思いっきりぶつけていた。

 うわぁ…痛そう。

 

 

「いった~…ちょっとシアン!? 何言ってるのよ!?」

 

「別に変な事言ってる訳じゃないだろ? ノワールだって満更じゃなさそうだし。それともノワールは真司だと不服か?」

 

「え? い、いや…そんな事…うにゅ…」

 

 

 満更じゃない? 不服? 言葉の内容がいまいち理解出来ていない俺の頭の中は、いくつもの?マークが飛び交っていた。

 そして目の前にいるノワールは何故か顔を赤くして、両人差し指を突きながらごにょごにょと小声で何かを呟いている。

 な、何か小動物みたいで可愛いな……

 

 

「ま、その反応を見たら少なからずそう思ってるのはわかるよ。はぁ~、あの堅物のノワールがここまでとはねぇ。でもま、これで漸く私の肩の荷が降ろせると思うと…」

 

「ちょ、ちょっと! 別に私は…その…」

 

「別に? 何なんだよ? ん~?」

 

「~~~っ!!! うぁああん!! シアンの馬鹿! 鬼! 悪魔!! 冥界住人っっ!?」

 

 

 その速さ、まさに脱兎の如く。ノワールは先ほどまで赤くしていた顔を更に赤くして店を飛び出して行った。

 そしてシアンに対して何やら意味のわからない言葉を…ネプテューヌがアイエフにそんなこと言いそうな想像をしてしまった。

 そして今ここにいるのは俺とシアンの二人のみ、そのシアンはと言うと、ぷるぷると震えだした途端豪快にわっはっは!と笑い出した。

 

 

「あはは! やっぱりノワールはからかいがいがあるよな~♪」

 

「はぁ…シアン、あんまりノワールの事からかわないでやってくれよな?」

 

 

 豪快に笑うシアンを見ながら、ため息交じりで声をかけた。

 ノワールってからかわれるのが苦手なのは身をもって知ってるから、あの洞窟での一件の事を思いだしたよ、今思い出しても…うぉ!? 怖気が…

 

 

「わかってるって、でも真司にノワールを任せたいのは本当だぞ?」

 

 

 するとシアンの表情が途端に真剣になる。真っ直ぐに俺を見つめ、両手を握る行為をしながら、彼女は静かに語りだした。

 

 

「真司も知ってるかもしれないけど、アイツはよく一人で背負い込むことがあるんだ。相談するにも妹には姉の威厳を見せないといけない、せいぜい私に愚痴を零すことくらいしか出来ないんだ…」

 

「シアン…」

 

「だからさ、アイツにとっての心の拠り所になってやってほしい…ノワールが弱さを見せられてそれを受け止められる人になってほしいんだよ」

 

 

 ノワールの友達だからこそ、彼女の事をずっと見ていたからこそ言える言葉なんだろうな……ノワールは本当に完璧だ、この国に来てからも今回一緒に視察しに行った時にもそれがすごくよくわかった。それも彼女の努力の賜物、生半可な努力じゃここまでに至る事はまず出来ない。ノワールは本当にすごい、そう思った。

 だけど逆にその完璧さ故に誰かに弱みを見せられずにいた、見せられたとしてもシアンの様な信頼できるほんの僅かな人達のみ、それほど辛く苦しい事はないと思う。

 そしてそれはネプテューヌ達女神全員にも言えた事だ。

 女神は国のお手本、国の象徴、そのため周りからのプレッシャーは計り知れない、弱さを見せたくても泣き叫びたい時でもそれを堪えてずっと頑張ってきたと思う。

 ならここで俺は誓おう、その僅かな信頼できる人達の中に俺が含まれる様に、そして少しでも女神のみんなの心の拠り所でいられる様に努力しよう。

 

 

「まかせて! とは言えない、だけどそうなれるように努力する。俺だってノワールの友達なんだって胸を張れる様に」

 

「サンキュ、その言葉だけで十分だ」

 

 

 俺の言葉を笑顔で返してくれたシアン、彼女の期待を裏切らない様に頑張らないとな。俺は湯呑みに手を掛け、残っていた緑茶を一気に飲み干した。 

 うん、ちょっとだけ渋かった。

 

 

「さて、ノワールを探さないとな。シアン、お茶ごちそう様」

 

「ああ、いつでも来てくれよ。歓迎するぜ」

 

 

 俺はシアンにありがとうと声をかけた後、ノワールを探しに表へ出た。       あの時全力で駈け出して行ったからなぁ…あんまり遠くへ行ってなかったらいいけど。

 ……うん、シアンがからかってなかったらこんなことにはならなかったと思うんだ、こればっかりは恨むぜシアン……

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 食堂を出てから数分が経った。

 小走りになりながら辺りを見渡し、とにかくノワールの姿を探そうと目を配らせた。きょろきょろと首を動かし、見知った姿がないかを確認した。

 そして噴水のある広場へと辿り着く。すると、その近くにあったベンチに俯きながら座っているノワールの姿が目に映った。

 

 よかった、漸く見つかったぜ……

 

 

「お~い! ノワール!」

 

「え? …真司」

 

 

 走って来たため、両ひざに手を当てて息を切らす。

 はぁ……よし、呼吸も段々落ち着いてきた。

 

 

「ふぅ…よかった、見つかって」

 

「ごめんなさい、いきなり飛び出しちゃって…」

 

「別にいいって。隣、いいか?」

 

「え? あ、うん…」

 

 

 いやぁ……さっきまで走り通しだったから結構疲れた。

 丁度今いい風が吹いて来てるし、気持ちがいいもんだなぁ…

 

 

「シアンってば…いきなりあんな事言うなんて」

 

「でも友達思いの良い人じゃん、ノワールはぼっちじゃないって証明されたな?」

 

「ぼっちって言うな!!」

 

「うわっ!? ごめんごめん…」

 

 

 俺は笑いながらシアンを弁解。だが一言余計な事を言ってしまったせいで、ノワールはいきなり立ち上がってぷりぷりと怒ってしまった。

 あちゃ、やっちゃった、手を合わせて謝るけど頬を膨らませたノワールはそっぽを向いてしまった、あははー…こればっかりは俺が悪かったか、反省!

 ……だけどこうして見たらノワールは普通の女の子と大差ない、こんな子が今でずっと頑張って来たんだよな。

 ノワールだけじゃなくネプテューヌ達も、本当にすごいとしか言いようがない。だからこそ…

 

 

「そうやってさ…」

 

「え?」

 

「たまには本音をぶつけてくれてもいいんだぜ? 吐き出したい思いもたくさんあるだろ? こんな俺でも肩を貸す事くらいは出来る。と言うかそれくらいしか出来ないけどさ」

 

 

 女神と言う立場上、どうしても言いたい事が言えない時だってある。

 苦しい想いを言えない時も、悲しくて弱音を吐きたい時も、それが出来ない時だってある。 

 だったらせめて、親しい友といる時だけでも本音をぶつけても構わないだろう?

 その受け口に俺はなる。みんなの心が少しでも晴れるのなら、俺は喜んで話を聞こう、この世界に来て、俺を受け入れてくれた時の様に。

 今度は俺も、みんなの力になりたい。

 

 

「…それだけで十分過ぎるわよ」

 

「え? の、ノワール?」

 

 

 ノワールはもう一度ベンチに腰を掛けると、いきなり俺の肩に頭を置いて身体を預けて来た、そこからほのかに香る女性特有の甘い香りが鼻腔を擽る。

 思わず叫びそうになったが、そこはグッと堪えた。

 

 するとノワールが、静かな声で一言。

 

 

「少しだけでいいの、今はこうさせてくれない?」

 

「……了解」

 

 

 ノワールからのお願い、もちろん断る訳にはいかない。俺は二つ返事で了承し、そのまま静かに動かないでいた。

 

 ただ静かに過ぎる時間。今のノワールにとって心休まる時間。それが少しでも長く続きますように、そう心で願っていた。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

「う、ん…あら?」

 

 

 どうやらいつの間にか眠っていたみたい、私は静かに目を開ける、周りは少し薄暗くなっていて夕日も出ていた。

 目を擦り、欠伸を一つ。背伸びをうーんっとしながら息を吐き、肩を落とす。何だかすごくリラックスした、そんな心地良さが私の身体を包んでいた。

 

 これはたぶん真司のおかげ…あ! 私真司に身体を預けてそのまま寝ちゃったって事じゃない!?真司に悪い事しちゃった…

 

 

「真司! ごめんなさい!? 私ったら…真司?」

 

「う、ん…」

 

 

 真司に謝ろうと顔を上げる、だけどその真司は目を閉じて静かに寝息を立てていた。 心地良さそうにこっくりこっくりと首を動かし、時々口をむにゃむにゃと動かす姿は何故か可愛く見える、私は思わず口元に手を当てながら笑っていた。

 

 

「真司ったら、もう。でも、私も寝ちゃってたのよね。真司がいてくれてたからかしら?すごく、安心したわ…」

 

 

 身体を預けた時から、私はすごく安心感を覚えていた。

 温かくて、心がポカポカする感じ、それがとても心地良くて…だけどそれと同じくらい私はドキドキしていた。

 このドキドキはシアンにからかわれた時にも感じた。真司の事が満更じゃないだの、真司に私の事を任せられるだの…

 ダメだ、今思い出しただけでもドキドキしちゃう、もう! 何でシアンはいきなりあんな事を!? このままじゃ真司の顔をまともに見られないじゃない!!

 ……当の本人は絶賛良眠中なんだけど。

 

 

「もう、こっちはドキドキしてるって言うのに肝心な貴方は眠ってるなんて…どうしてくれるのよ? うりうり~」

 

 

 真司に対して若干逆恨みな感じで真ほっぺを突く私。

 意外に柔らかいのね、それに肌もすべすべして…何やってるのよ私は!?

 うん、まずは落ち着こうか私。これはしょうがないのよ、真司のほっぺの触り心地が良すぎたのが原因なのようん。

 ……完全に言い訳じゃない、自分で言ってて恥ずかしくなるわ。

 

 何か空しい…

 

 

「はぁ………真司…」

 

 

 溜息をついた私は再び真司に目をやる、するとシアンの実家での話がふと脳裏を過った。

 彼がこの世界に来てすでに三ヶ月ほどは経ってると思う、帰れる手立てはまだない。 普通なら不安でたまらない筈、だけど真司は笑っていた。そしてこの世界に…ゲイムギョウ界に来れてよかったと言ってくれた、そんな彼の表情はとても眩しく…輝いて見えた。

 

 本当に真司は強い、強いと言っても力ではない、彼の持つ心がだ。

 

 最初に見た真司は自分の置かれた状況に不安を隠せないでいた、そこだけを見たらとても弱弱しくちょっと頼りない、少なくともあの時の私はそう思ったわ。

 だけどその後、ラステイションで再会した彼は変わってた。

 あの時見た弱弱しさは見られなかったし、何かこう生き生きとしていたと言うの? 少なくとも不安そうな感じは伝わってこなかったわ。

 そしてまさかのネプテューヌに対しての拳骨、あれはまぁ…ネプテューヌの自業自得よね、その後に行ったクエストではスライヌ相手とはいえかなり健闘していたし、彼も彼なりに努力を重ねたのねと思っていたわ。

 

 そしてあの一件、私がエンシェントドラゴンに襲われそうになった時、真司は身を挺して私を助けてくれた。あの時の私は真司にかなり酷い事言っちゃったけど…それでも真司は心配してくれた。それだけじゃない、私の事を本気で怒ってくれた。

 

 ―――もう一人で頑張るな。一人で抱え込むな…

 

 あの時の言葉、本当に嬉しかった。

 今までずっと頑張って来て、だけどそれがいつの間にか当たり前になっていて…心の何処かではそんな風に声をかけてほしいと願っていた。その願いを真司は叶えてくれた、それが例え女神であっても関係ないみたいに。

 私はあの時、真司の言葉で救われた…

 相手をちゃんと考えないとこんな言葉は出てこない、相手を思いやる気持ちがなければ手を差し伸べる事は出来ない。真司はそれを当然の様に遣って退けた、だからこそ思うのだ、真司の心は強いと…

 

 そしてそんな彼に心から感謝を、私に手を差し伸べてくれた真司を…

 

 

「ありがとう、真司…ん、ちゅ…」

 

 

 私は真司の頬に自分の顔を近づけ、そっとキスをする…え? わ、私ってばいきなり何をしてるの!? 何で真司にき、ききききキスなんて!?

 そ、そう! こ、これはあれよ! 私を気遣ってくれたお礼って言うか…別に変な意味じゃないんだからね!?

 

 

「私ってば何やってるのよ~!? 恥ずかしい…だけど…」

 

 

 キスをした事に何故か後悔はしなかった。寧ろ真司にならって思ってしまう。

 この気持ち、一体何? 私はどうかしちゃったのかしら…?

 でもこの気持ちは嫌な気持ちじゃない、寧ろ温かい、とってもいい気分になる。そう思いながら私は、真司の肩に再び顔を肩に置き、身体を彼に預けるのだった。

 




いかがだったでしょうか?次回ノワールと言えばこれ!と言うものが出てきます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。