死魂   作:ニゲル兎

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1話 まあ、転生って良くあるよね

外に出た。

久し振りの外だ。大体一年振りか?

最近はネットで好きな物を買える事が出来るから、滅多に外に出る機会が無い。それに、一生暮らせる金があるのだから、働く必要も無い。

だから、引きこもった。引きこもり期間はそろそろ三年になるだろうか。正確な年日は数えていないけど、大体それくらいだ。

そんな俺が外に出た理由は――正直良く分からない。

……俺は何で外に出たんだ? 用事なんて何も無いのに……散歩か? しかし、そんな趣味は持っていない。

なら、

「気分という奴かね……」

外は黒に染まっている中、月から降り注ぐ優しい光と、電灯は強く発光していて虫が集っている。

少し肌寒いが、外の風は涼しく、歩いていて気持ち良い。

柄にも無く、明日も散歩でもしようかと思った。

 

――だからだろう……柄にも無い行動をしたのは。

ブラブラと歩いていると、コンビニの看板が見えた。

「あ、そう言えばポテトチップス切れていたな」

ポテトチップスを補充しようと、コンビニに向かう。

コンビニの駐車場には、一組の男女が楽しそうに談話している。……何故か足が止まる。羨ましいのだろうか……?

しかし、一瞬止まったせいで、ある物が目に入った。

――男女に迫る猛スピードのトラックが……。

勝手に足が動いた。

……理由は分からない。ただ、何かしなければと思う義務感だけが心の中にあった。

足は一応動いたが、長年のサボタージュで足が上手く動かない。時間が止まっているかのように遅いが、代わりに自分の動きもカタツムリのように遅い。

男女の前に出る。即座に二人の襟首を掴み、走った時の勢いで二人をトラックの範囲外に投げ込む。

「なっ! 」

「キャッ! 」

二人の無事を確認して、自分も逃げようと画作する。

一先ず、トラックが何処まで迫ったかを確認する為にチラリと後ろを振り向くと……手を伸ばせば触れられそうな程の近くまで迫るトラックの姿があった。

 

――それが、俺が見た最後の景色だった。

 

「すいませんでしたぁあああああ‼ 」

目の前には、見事な土下座を決める女の子。

……は?

「……え、えーと、取りあえず頭を上げてくれない? ……なんか気まずい」

「は、はぃいいい! 分かりましたぁあああ! 」

なんで、そんな怖がる……。

俺ってそんな怖い容姿していたのか?

そんな事を考えて――息を呑む。

――そこにいたのは女神だった。

神聖で清浄な雰囲気がある銀髪の女性。その顔はこの世の物とは思えないほどに整っていて、どこか美しい彫像を思わせる。

そして、その目からは一筋の涙が溢れている……て言うか涙目だ。

端的に言って――物凄い美人。

「あ、あの……どうしたのですか? 」

「……あ」

その声でようやく現実に引き戻された。

え? 何これ? ここまでの美人? 数多くの美人を拐かしてきた(主にギャルゲ的な意味で)、俺でも見た事が無い。

「い、いや何でも無い。それよりこの状況は何だ? 」

そんな俺の疑問に、銀髪の女性はゴクリと音を立てる。

そして、真剣な雰囲気で言った。

「落ち着いて聞いてください――あなたは死にました」

「…………そう、か」

あれは夢じゃ無かったのか。

最後に見た景色は、目の前までに迫るトラック。

理由は分からないが、ストンと音を立てるように納得した。

「じゃあ、何で俺は話せるんだ? 死んでいるんじゃなかったのか? そもそもアンタは誰なんだ? ここはどこだ? 」

俺のマシンガンのような疑問の数々に、銀髪の女性は冷静に応答する。

「私は女神です。あなたに話があって、この空間に呼びました」

「……話? 」

話というのは、今の状況か? ホント意味が分からないよな。

「私はあなたに謝らなければなりません。償いの方法は考えいますが、それでも簡単に償える物では無い……」

「その、償いって何だ? もう少し詳しく教えてはくれないか? 」

「……私は――あなたを殺したのです」

――呼吸が止まった。

世界が止まったかのような錯覚を受けた。

「……こ、殺した……? 」

「はい。コンビニのカップルを覚えていますか? あのカップルの男は世界的に有名な発見をし、この世界に多大な貢献をする事になっているのです。

――しかし、私達のミスでカップルはトラックに跳ねられて死にそうだった。ここで彼が死んでしまえば、今後五十年間、革命的な発見は出てこない。それは私達からしても困る――だから、私達は行動しました」

「…………何を? 」

「死んでも誰も泣かないであろう人を誘導して、カップルを助けさせました。

――あなたは今日、おかしい行動は取りませんでしたか? 」

……確かに覚えがある。

理由も無く散歩だなんて、そんな事を俺がする訳がない。ましてや、見ず知らずの人を命を懸けて助けるほど、俺は善人じゃ無い。

なら――

「――俺は、アンタの都合で殺されたのか? 」

「……はい。申し訳ありません。謝っても意味は無いし、あなたに取って不愉快かもしれません――ですが、謝らせてください」

涙をポロポロと溢しながら、何度も何度も謝罪している――ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。

その姿を見て――少しイラつく。

……なんで、そんなに泣いているんだ。ここで怒ったら俺が悪者みたいじゃないか……。

「もう謝らなくて良い。そんな何度も謝られても気分が悪い。それより、償いがあるんだろ? 謝罪が償いなんて言わないだろうな? 」

「は、はい! 償いの方法として――転生というのは如何ですか? 」

 

「転生‼ え、マジで⁉ 」

 

……え、マジで? 良いの? 転生ってそんな事して良いの? 現金なほどにテンションが上がった。

「はい。あなたはもう死んでしまったのですから、それくらいしか償える方法は思いつきません」

「じ、じゃあ、それでお願いします」

「分かりました――では! 」

パチンと指で音を鳴らす。

すると――滅茶苦茶デカイガチャが出現する。

「……は? 」

「引いてください」

「いや、え……ちょ、はぁああああ⁉ 」

意味が解らない……全然意味が解らない。

「レア確定ガチャです。どんな特典でも楽しく生きれると思いますよ」

「あの、なんでガチャ? 」

「天界のルールです」

一片の躊躇い無く女神様は言った。

「……は、はあ。じゃあ、回せば良いのか? 」

「えぇ。その取っ手を下に下ろして頂ければ、と」

なんか、もうどうでも良くなってきた……。

俺はガチャの前に出て、取っ手を下に勢い良く下ろす。

「あ、出た」

コロンと銀色のカプセルが出た。

えっと、なんか……

「……地味だな」

「……すいません」

「いや、別に良いんだけどね」

そんな事を言って、パカッと銀色のカプセルを開ける。

その中に入っていたのは、折り畳められた小さな紙。

これに結果が書いているのだと思い開いてみる。

「えっと『両儀式』って書いているんだけど」

「あ、当たりですね。これであなたは、両儀式の容姿と能力を手に入れられます」

「……当たりなのか? 」

そもそも両儀式は女なんだけど。

……俺、男なんだけど。

「これで決定ですね」

「は? いや、ちょっと待って! 」

光が溢れる。

光は俺を飲み込み、視界一面が白く染まった。

「では、楽しい来世を」

「ま、待てっ! せめて魔眼の制御だけでもぉおおおおお‼ 」

 

――そして、俺は転生した。……女の姿で。

 

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