私たち人間がある騎獣に聞いた話だ。
その騎獣は思慮深く聡明で
私たち人間のすべてを見透かしているかのような騎獣だ。
聞いたことがあるだろう、かの英雄の名を。
かの名をコタンコロカムイ。
人の王女と
騎獣の姫と
その両翼に遣えし13騎獣。
第7騎が億劫の石火、コタンコロカムイに聞いた話だ。
私たち人間が言う。
獣の多くは獣を食う。
人の多くは獣を食う。
騎獣と家畜の違いとは何か。
するとコタンコロカムイはくつくつと笑った。
そうではない、そうではないと笑った。
あまり笑うところを見せない寡黙な騎獣と聞いていた。
しかしながら、かの騎獣は笑って見せたのだ。
驚き顔を見合わせる私たちに対し、語り始めた。
歌うように。
言い聞かせるように。
騎獣の多くは家畜の鳥獣
とりわけ食肉になる鳥獣たちに敬意を払う。
食肉の鳥獣と騎獣の鳥獣に違いはなく
そこにある人も何一つ変わらない。
世界は弱肉強食の掟に縛られている。
弱きものは強きものに食われる
それらが示すものは、すなわち絶望でなく希望の象徴。
ゆえに、騎獣の多くは家畜の鳥獣に敬意を払う。
王族の血となり肉となり
民草の血となり肉となり
騎手の血となり肉となり
我ら騎獣の糧となる。
魔の法を持ちて鳥となるや
魔の法を持ちて獣となるや
我ら鳥獣に違いなどありはせず
我ら鳥獣に違いなどありえない。
人と話す鳥獣や、嗚呼、人と話す鳥獣や
人と飛ぶ鳥獣や、嗚呼、人と飛ぶ鳥獣や
人と戦う鳥獣や、嗚呼、人と戦う鳥獣や
人と結ぶ鳥獣や、嗚呼、人と結ぶ鳥獣や
人と喰う鳥獣や、嗚呼、人と喰う鳥獣や
自ら其の身を差し出す強き鳥獣たちに
騎獣は敬意を払うのだ。
コタンコロカムイは言う。
朗々と、しかし歌い上げるように。
訥々と、しかし言い聞かせるように。
我が騎手にして最愛の人も
我らが姫たちも
我らが王直13騎獣も
誰もかれもが縛られる掟に従い続けるのだ。
故に我らは敬意を払わねばならん。
我らが口にするであろう、多くの鳥獣たちに。
それは糧となる鳥獣も変わらず
それは糧とする鳥獣も変わらず
乳となりては命の為に
肉となりては命の為に
皮となりては命の為に
革となりては命の為に
毛となりては命の為に
羽となりては命の為に
脚となりては命の為に
彼らは決して弱きものたちではない。
彼らは気高く強きものたちである。
故に我らは敬意を払わねばならん。
故に我らは敬意を払わねばならん。
―――王立図書館蔵、ある書物から抜粋
「家畜の子たち多分ここまで深刻に受け止めちゃいないよ(笑」
―――元家畜
「「「毛玉ァ!!」」」
―――騎手2人、騎獣1羽
コタンコロカムイ:その姿をシマフクロウに顕現するアイヌの村護りの神