魔法とは何か。
魔法とは、世界を支える『魔力』によって成り立つ現象のことである。
人という種の源である
しかし悲観することは無い。技術を他の種族に与えることができるのは、人の特権であるからだ。
魔法を使うことができるもので、我々に最も近い隣人であるところの騎獣。
騎獣は一生のうち一つから多くて三つほどの魔法を取得することができると言われている。
後述する魔造キマイラなどの特殊な事例を除き、それ以上の魔法を取得することは大変珍しく難しいとされている。
魔法は単純な構造で出来ており、これらは純人の多種族に対する配慮であるという説が有力ではあるが、未だ結論に至ってはいない。
その構造上、性質のよく似た構造である魔力受動結晶に魔法を込めることができ、これらを用いて人が疑似的に魔法を使うことも可能である。
魔法を込めた魔力受動結晶を用いて作る道具を魔道具と呼び、我々が騎獣と共に空を、陸を、水上や水中を、場合によっては地中深くを移動する際に使用するのが一般的だ。
その他に大型の船底に張り付けることで海中の魔物から船を守る、馬車に付けて揺れを減らすなどの工夫がなされている。
魔法の種類はこの世界に存在する鳥獣の数を数えるほどに難しく、王国調査研究室が把握しているだけでもゆうに千を超える(現行のものに限る)。
我々が良く騎獣から借りることに定評のある“飛”や騎獣が我々の言葉を扱う際に使う“話”といったものから、我々では何の役に立つのかわからない“響”、“大”、“似”といったものまで千差万別である。
忌まわしき魔導兵器について。
多くの人と騎獣、そして世界の貴重な資源や自然を(あえて残酷な言葉を使えば)殺したことで有名な魔道具がある。
それが忌まわしき魔導兵器だ。この魔道具は大いなる人為的な厄災とも、行き過ぎた思想が生み出した苛烈な縄張り争いとも、鳥獣を冒涜した人類の咎とも呼ばれる、過去最大にして最悪の戦争において使用された。
黎明の騎手が考案したといわれる、魔力受動結晶の人工的再現物を使用した兵器であり、多くの犠牲の上に成り立つ道具、
そもそも普通の魔力受動結晶ではどんな形であれ厚みであれ大きさであれ、魔法は一つしか付与できない。
しかし人工再現した結晶の方は加工の仕方によって多くの魔法が込められた。
そこに目を付けた人を人とも思わない、鳥獣を鳥獣とも思わない非道な研究者が現れたことにより忌まわしき魔導兵器が誕生してしまった。
魔導兵器はその多くが封印、研究凍結ないし研究中止になっている。
その理由としてあげられるのは忌まわしき魔導兵器の存在に他ならない。
忌まわしき魔導兵器とされる、人工再現結晶を利用した兵器は主に二つ。
圧縮魔法射出砲、そして魔造キマイラだ。
圧縮魔法射出砲とは人工再現結晶に一種類の魔法だけを限界まで付与、それを装備した人を、結晶と同じ魔法だけを取得させた鳥獣を燃料として魔道具に繋ぎ、箱状の設備に押し込んで、命を射出する兵器である。
命というのは少しだけ語弊がある。
あらゆる生き物は絶命するとき、体内に溜め込んだ魔力をゆっくりと外界に放出する。
もしそれらを、一つの道具として扱うことができたら?
もしそれらを、一つの兵器として扱うことができたら?
人工魔力受動結晶という人の技術が引き起こした悲劇ではあるが、ある種の命題に答えを見出せたとするものもいる。
ともかくとして、この魔力は本来であれば身体全体を通して外界にゆっくりと染み出す形で放出される。
それらの指向性を一つの場所に集中し、圧縮し、一気に射出することで純度の高い魔力を物質のように叩き付けることができる。
勿論のことながら、中にいる人や鳥獣は死ぬだろう。
だが、捕獲するのに危険な魔物を使うよりずっと安上がりで、ずっと簡単なのだ。
魔造キマイラとは、危険であるが絶大な力を持つ魔物を素体にし人工魔力受動結晶を使った機械をまるで歯車のように噛ませ、さらに複数の騎獣を犠牲にして作り出されるおぞましい生物だ。
そもそもキマイラとは魔物の中で最も普通の鳥獣に近いものであるが、決定的に違うのは魔法を使わないことにある。魔力を持ち、魔法を使えはするが複数の鳥獣の特徴を持つがゆえ魔法を使う必要がない生物なのだ。
過去にはキマイラを騎獣にした例もあるが、前述のとおり大変危険な魔物であることに変わりはなく、加えて知能も低いためオススメできるものではない。
この魔物を人工的に作り出し“従”の魔法で制御下に置くことで、三つ以上、それどころか複数の魔法を使う生物を生み出した。
人の言うことを聞くレベルで知能が高く、単純な命令で動くほど知能が低いということは、そんなにうまい話が転がっているはずもなく。
戦争中、この魔造キマイラは人の制御化を簡単に離れ暴走した。
複数の魔法を使うということは、人どころか鳥獣ですら届くことのない領域に達してしまったということであり、王直の幻籠13騎獣をして無傷で居られるか怪しいものだった。
第8騎:不動の僧正の自死という犠牲を持って終結した戦争においては結果としてすべての魔造キマイラを駆逐することに成功したが、多くの犠牲を払うこととなった。
我々は絶滅した純人と、我らが隣人である鳥獣、そして我々人類の犠牲をもってして知る魔法をこれからも間違った方向に進めていかぬよう努力せねばならない。
―――ある学者の報告書
「間違うのは魔法ではない。選んだ我々だ。
我が“毒”もまた選んだ我が責務なのだ」
―――???