半深海艦子供提督   作:包帯ぐるぐる

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 声が聞こえる...とても、慕っていた声...懐かしい声...大好きなあの人の声...死んだはずの人の声...僕は幻覚を見ているのか?それにしても優しい幻覚だ....。このまま、お姉ちゃんの事を思いながら死んでいきたいな〜

 息は少なく、あと数秒耐えれるか耐えれないかしか残っていない
 枝霧提督は死の覚悟を決めた

 すると、頭を誰かが撫でた...
 とても冷たく、でも温もりを感じた

「貴方ガ死ンダラ、提督ガ悲ナシム」

 声なんて聞こえるはずがないのに声がハッキリと聞こえた
 とても優しい声だった
 
 あぁ...意識が...

 ボヤけた意識は冷たい手で撫でられながら薄らと消えた

「オハヨウ私」

 目を覚ました所は1面中黒一色で染まった部屋だった
 そしてそこには、自分そっくりの人物...ただ、左目を隠すように仮面のようなものを付けて、肌は白く、瞳は赤く、炎のような物が漏れでていた

「貴方は..誰?」
「私ハ貴方、貴方ハ私」

 枝霧提督が聞くと、白い枝霧提督は無表情で頷いた

「デモ、貴方ハ早ク、ココカラ出テイカナイトイケナイ...ソウシナイト精神ガ融合シテ、私ガ本体ニナッテシマウカラ...」
「え?それってどう言う...」

 言葉の意味を聞こうとすると、目と口を手で塞がれた。
 そして、「マタ会エル」と言う言葉を耳にした途端、別の誰かの声が耳に響き始めた

「提督...提督!!」



第2話

 暗転した視界は片目だけすぐに取り戻した

 勢いよく起き上がるとそこは、艦内の医務室だった

 隣には、冴霧提督、伊喜利提督、そして、しがみついて泣くゴーヤと艦娘達が居た

 

 事情を聞くと、どうやら1度沈んだが、浮いてきたらしいとの事だ。なぜ浮いてきたのかは分からないが助かった事には変わりない...その事を聞いて枝霧提督はそっと胸を撫で下ろした

 

「でも、なんで浮いてきたんでち?それに...その黒い布は...」

「黒い布?」

 

 自分の右手を見ると、手は黒い布で覆われ、それは顔も半分包むほど広範囲に巻かれていた

 そして、手首には分厚いリングのようなものが付けられていた

 黒い布に触ってみるが、感覚はただの布...

 でも、傷口を塞いでいるのかもしれない

 

 枝霧提督はそう考えると、黒い布から手を引いた

 提督達を乗せた船は枝霧提督の鎮守府こと、枝霧鎮守府に向かった

 背後から迫る黒い影に気づくことなく

 

 しばらくして僕の鎮守府...枝霧鎮守府に帰ってきた

 歩いても走っても、痛くはない...どうやら傷は塞がったようだ

 船から降りると電と雷、そして暁が帰還を出迎えてくれた

 

「おかえりなのです!...てどうしたのです?その布?」

「まさか怪我!?提督は早くこっちに来て!まずは治療をしなくちゃ!」

「早く治療しないと、レディに見せられない傷ができるわよ!」

「あ、ちょっと!大丈夫だから〜!...」

 

 枝霧提督は心配する電と雷、暁に引っ張られ、遠征部隊の艦娘達から押され、強引に鎮守府の中に入れられた

 

「じゃあ僕らも帰るとするかな」

「そうね!」

 伊喜利、冴霧提督たちは、非武装の船にまた乗り始める

 そして、出航しようとした時だった

 

「きゃーーーーーーーなのです!!」

「提督!どうしたの!その傷!」

 

 鎮守府から慌てる声が聞こえ、ゴーヤが飛び出してきた

 

「大変でち!提督が提督が...!」

「枝霧くんがなんだって!」

「枝霧ちゃん!」

 

 伊喜利提督と冴霧提督は急いで鎮守府に入った

 内部に入ると、ゴーヤに案内されるまま、枝霧提督が居る医務室まで急いだ

 

 中からは、ざわざわと焦る声がする

 伊喜利提督たちは部屋のドアを開けた

 

「枝霧くん!どうしたんだ!その体は!」

 

 枝霧提督の右胸部に黒い欠片のようなものが傷口を塞ぐように侵食している

 剥がそうにも剥がれない、皮膚と一体化しているようだった

 

「痛くないかい?枝霧くん」

「うん大丈夫」

 

 枝霧提督は立ち上がった

 

「僕はちょっとお風呂に行ってくるので、何故か目を回して運ばれてきた島風が居るから起こさないようにお願いしますね」

「一体何をしていたんだ?君の駆逐艦は...」

 

 枝霧提督は黒い布を羽織り、服を着ると急いで部屋を出て行った

 艦娘たちは心配するように枝霧提督を見送る

 

「うーん...」

「どうしたの?伊喜利くん」

「いや、どうも枝霧くんが急いでいる感じがするんだ」

「どうしてそう分かるの?」

 

 冴霧提督が首を傾げる

 

「普段より息が荒かったんだ...多分0.05MPaくらい違うと思う」

「...えぇ...」

 

 伊喜利提督の推測に、冴霧提督は嫌そうな顔で1歩引いて口を開く

 

「あんた...枝霧ちゃんをどこまで知ってるの...?」

「体の事なら全て」

「キモッ...」

 

 ドン引きする冴霧提督に伊喜利提督は対抗するように口を開く

「ならば!君が枝霧くん下着グッズを集めているのをバラしてもいいのかね?」

「な、何故それを!?」

 

 顔を赤く染める冴霧提督に追撃のように恥ずかしい事口にする

 

 そのよく分からない言い争いは、5分で方が着いた

 周りのことを気にしなかった結果、周りに艦娘が居ることも忘れていたのである

 伊喜利提督と冴霧提督は後に、枝霧鎮守府の秘書艦から事情聴取をされる事は言うまでもない事だった

 

 ゴーヤ、イク、響たちは、気づかれないように枝霧提督のあとを追っていた

 

 鎮守府の近くにあるムラマサ港町。決して都内などのように大きな店舗はなく、あるとしても少量のみ存在する

 居酒屋や温泉旅館などで有名、この島の鎮守府に住む艦娘たちや噂を聞きつけた提督たちには、人気スポットでもある

 

 走って提督を追いかけるゴーヤたちは、公園のベンチに座る枝霧提督を発見した

 何やら荷物を持っているようだ

 提督は、ベンチから立つと公園のトイレに向かった

 

「提督がトイレに入ったでち!」

「トイレから出てくるのを待つのです!」

 

 トイレでは、流石にお店に入れないと思い着替えを行っていた

 

「この格好...恥ずかしいんだけどな〜」

 

 提督はそう言いながらも着替え続けた

 しばらくして、枝霧提督がトイレから出てくる

 

「響ちゃんが出てきたのです!」

「私はここに居るよ」

「多分あれは、私が誕生日にあげた響ちゃんコスプレセットを着た提督なんでち」

「なに上げちゃってるの」

 

 響の格好をして出てきた枝霧提督は、元から格好と目の色、性別以外瓜二つだったせいなのか、遠くから見ると響にしか見えない

 

 提督はその響の格好で響がよく行く酒場、夜市に入っていった

 

「提督が私の酒場、夜市に入った!ypaaaaaaa!いざ!飲み合い突撃!」

「ダメなのですー!響ちゃんを止めるのです!」

「離して〜!私のヘブンが彼処にあるの〜!」

 

 力ずくでも酒場に行こうとする響に一同総出で取り押さえる

 

 その頃、酒場では笑顔で店主が迎えてくれた

 内装は、木造建築のように木柱が目立つ古い内装に、本物の炭ストーブなどが置いてある

 

「すみませ〜ん」

「はいよ。響ちゃん今日は何かな?」

「この黒竜と金獅子って言うお酒ください」

「はいよ毎度ありがとう。今日は飲んで行かないのかい?」

「はい、今日はこれから用事があるので」

 

 どうやらバレていないようだ

 枝霧提督は店主に笑顔で見送られ、店を後にする

 

「あ、出てきたでち!」

「さぁ!追うのです!」

「私のヘブン...」

 

 ゴーヤと電が先行しているなか、響は酒場に入れなかったことでガッカリしていた

 

「後で飲み合いしようか」

「じゃあ提督も入れようよ!」

「それはちょっと...」

 

 飲み合いの約束を電と暁が立てると響はすっかり元気になり、電たちを追った

 

「あ、提督が温泉に入っていったでち!」

「さすが提督!人気のない所を選ぶとは...」

「恥ずかしがり屋提督..」

 

 ようやく提督は、目的である温泉に入った

 枝霧提督は、その中でも子供でも容易く入れる温泉、浦ノヤに入った

 お客はほとんど女性しか居らず、男湯は、必ずと言っていいほど貸切状態のように、誰もいない

 

「切符1枚お願いします」

「あいよ...女湯はあっちだからね」

「いや...僕は男なので...」

「そうなのかい?可愛いお子さんですこと...親の顔を1目見てみたいわ〜」

「親の顔...」

 

 切符を買い終えると枝霧提督は悩みながら男湯の方に向かった

 

「提督が男湯に向かったでち!」

「追うわよ!」

「で..でも温泉に居る男はみんな、〇獸って言う噂だし、レディにはきついわ」

「ここの男湯は誰もいないらしいから大丈夫だよ」

「そ、そうなのです?」

 

 ゴーヤたちは切符を一人ずつ買うと、男湯の方に向かった

 

 提督の鼻歌が浴場から聞こえる。どうやら入浴中のようだ

 ゴーヤたちは提督の荷物を確認すると、さっき買ったお酒、コスプレセット、後は財布などの出需品だけ入っていた

 

「これからどうするのです?」

 

 電が尋ねる

 

「帰ろう、私たちの勘違いだったかもしれないし」

「そうだね。帰って飲み合いしようよ」

「響ったら本当にお酒が好きなのね」

「ふっふん」

 

 そう言いながら響たちは鎮守府に帰っていった

 提督の秘密に気づかずに...

 

「(えぇ...何この状況...)」

 

 一同は困惑する顔をした

 なぜなら、さっきまで言い争いをしていた提督2人が泣きながら正座をさせられ、加賀に事情聴取をされていたのだ

 

「さて、寝ている間に身体中を触りまくる変態兄と、「弟の成長日記」と言い張り下着を集める変態姉の始末をどうするか...」

「ひぃ!」

「お許しください〜」

 

 さすが枝霧鎮守府の秘書艦であり、鎮守府随一のショタコン

 相手が提督でも、弟の成長を妨げる者なら容赦ない

 

 電たちは、慈悲を乞う伊喜利提督たちを哀れ見るようにその場を立ち去った

 

 基本的に飲み会は司令室で行われる。それが前提督の決まりだ

 決まりを変えるつもりはない現提督は、未成年だが司令室である自分の部屋で飲み会を行うようにしている

 

「よし!飲み合いの準備だ〜!」

「お〜なのです!」

 

 司令室には、お酒と提督の勉強道具、本やテレビなど置いてあり、お酒は秘書艦の加賀か提督の許可を貰えると飲むことができる

 

 あらかじめさっき事情聴取を行っていた時に許可を取っていた響たちは、棚からお酒を持ち出し、ハイテンションで準備を進める

 

チャリン

 

 小さな金属の物体が落ちる音がした

 

「鍵?かしら」

「どこのです?」

 

 それは小さな鍵だった

 

「確かここには、長年開けられなかった3番目の引き出しがあるとか」

「ハラショー!多分その鍵なのです!」

 

 響たちは、お酒もあってかワクワクしながら鍵を持って提督の机を見る

 提督の机には鍵穴らしき物はなかった

 

「やっぱり噂だったのかな〜」

「う〜〜この机じゃなかったら何処なのです...」

「あれじゃない?」

 

 響が指を指したのは、窓際にある埃をかぶった机だった

 それは一年前に消息を絶った姉の物だ

 

 響たちは恐る恐る机に近づき、3番目の引き出しを確認する

 そこには鍵穴があった

 

 響たちは「やった〜」と言いハイタッチをして、引き出しに鍵をさして開ける

 

「なんだろう...この紙の束」

「使い古した日記も出てきたのです...前提督のものなのです?」

 

 そこには、お金でも宝石でもなく紙の束と古した日記帳が出てきた

 紙の束の表紙には「幽霊艦育成計画」と書かれていた

 

 響たちは、その紙の束を首を傾げながら開く

 内容はこうだ

 

(艦名 : エルドリッジ型幽霊艦ルイ級 イレギュラーな個体ではあるが、枝霧鎮守府のもと、育成を開始せよ。これは国家機密である)

 

「これは!一体なんなのです!」

「一体誰が...幽霊艦?」

「続きを見てみましょう」

 

 読み進めていると、外の天気が不安定になり、雨が降り始める

 次のページには、身長、体重、年齢、など当時の記録が書かれていた

 そして、次のページを見た途端、響たちは驚愕した

 

「これって...」

「そんな事は...」

「いや、この姿は...」

「提督なのです...」

 

 その写真には、幼い提督...「枝霧 塁」が写し出されていた...

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