ハイスクールD×S~SPIRITSを受け継ぐ者~ 作:ユウキ003
~~前回まであらすじ~~
日課のパトロールを行っていたセイは、己が胸の内で
鳴り響く警鐘に従ってレブルを走らせた。そして彼は
イッセーの自転車を見つけ、すぐさまそれが置かれていた
家の中に飛び込んだ。そこでは、イッセーがはぐれエクソシスト、
フリード・セルゼンに襲われていた。イッセーを守る為、
そのフリードと戦うセイ。しかし、そこに今度はアーシアが
現れてしまう。イッセー達を庇うアーシアに激高し、
彼女を襲おうとするフリードと対するイッセーとセイ。
そこへリアス達が駆けつけるが、同様にフリード側にも
増援が来てしまう。リアス達は撤退をする事になるが、
眷属ではないアーシアは連れて行く事が出来なかった。
しかし、それを良しとしないセイの活躍でアーシアは
危機を脱し、駒王学園で話し合いが持たれた後、
彼女はセイの知り合いへ預けられることになり、
それまでの間と言う事でセイの家で世話になるのだった。
フリードとの戦闘の翌日。朝。
セイは朝の鍛錬を終え、まだ寝ているアーシアを
確認すると、L〇NEでイッセーに連絡を取った。
セイ≪イッセー。おはよう。起きてるか?≫
イッセー≪あぁ。おはようセイ。どうした?≫
セイ≪昨日今日だから念のためにな。傷の方は
大丈夫そうか?≫
イッセー≪あぁ。アーシアに治癒してもらったから
大丈夫だ。ただ、念のためって事で今日は
休むようにって部長から言われてる。学校には
部長が言っといてくれるらしい≫
セイ≪そうか≫
イッセー≪ところでセイ、アーシアはどうしてる?≫
セイ≪まだぐっすり眠ってるよ。こっちは心配無い≫
イッセー≪そうか。……なぁ、俺達。アーシアを守れた
んだよな?≫
セイ≪あぁ。当たり前だろ?≫
その言葉を聞いて、自分の部屋でベッドに腰かけたまま
スマホを操作していたイッセーの手が、僅かに震える。
イッセー『そっか。そうだよな。俺は、守れたんだ』
アーシアを守る事が出来た。その現実に彼は笑みを
浮かべていた。
そこへ。
兵藤母「イッセー、起きてる~?」
部屋の外からイッセーの母の声が聞こえて来た。
イッセー「あ~!起きてるよ~!」
≪母さんが呼んでるから切るわ。じゃあな≫
セイ≪あぁ≫
聞こえるように返事をしてから、セイとの会話を
区切るイッセー。ちなみに、休む理由は昨日リアスが
直接家にやってきて、色々『説得』していたので問題無かった。
その後、連絡を終えたセイはシャワーで汗を流して制服に
着替えると、エプロンを着てキッチンで朝食の用意を始めた。
セイ『っと、アーシアが家にいるんじゃ、何か作り置き
しといた方が良いか。何かあったかな?』
そう考え、冷蔵庫の中にあった食材を使って昼食用の
作り置きを考えていた時だった。
アーシア「ふぁ~~~。セイさん、おはようございます~」
と、そんな時リビングに敷いた布団で寝ていたアーシアが
起き上がった。
セイ「あぁ。おはようアーシア」
アーシア「はい~」
どうやら、まだ少し寝ぼけているのか≪ぽへ~≫っと
しているアーシア。
セイ「まだ眠いのか?洗面所で顔でも洗って来たらどうだ?」
アーシア「は~い。そうします~」
そう言って立ち上がった彼女は、トテトテと歩いて行って
洗面所へと向かった。
その間に、朝食のトーストやサラダ、目玉焼きを作るセイ。
「ふぅ、すっきりしました」
そこへ顔を洗って目がぱっちりしたアーシアが戻って来た。
セイ「目が覚めたみたいだな。もう少し待っててくれ。
朝飯が出来るからな」
アーシア「はい。あ、じゃあお布団とか片付けておきますね」
セイ「悪い、助かる」
と、頷いたアーシアは布団を畳んでテーブルを元に戻した。
そして数分後。出来た朝食をテーブルに置いて向かい合う二人。
セ・ア「「頂きます(イタダキマス)」」
そして、二人そろって挨拶をしてから食事を始めた。
少しの談笑を交えつつ朝食を取った二人。その後、セイが
食器を洗い終えた後、彼は昨日の夜の事を話そうと思った。
セイ「さて。アーシアの今後の事なんだが……。ここを
離れて別の場所に行ってもらう事になる」
アーシア「別の場所、ですか?」
その単語に、どこか悲しそうな表情を浮かべるアーシア。
セイ「あぁ。そこは俺がお世話になってる知人のおじさん
の家でな。そこには、並の堕天使何かよりも数倍は
強い人が居る。だから大丈夫だ。……本当は、俺や
イッセーが守ってやるべきなのかもしれないが、
すまん」
アーシア「そ、そんな!謝らないでください!
セイさんもイッセーさんも、強くて、優しくて!
私なんかのために色々良くしてくださいました!」
セイ「ありがとう。その言葉だけで嬉しいぜ。……けど、
その優しさだけでお前を守り切れる程、俺達はまだ
強くない。……立ち向かえる事と勝てる事は、
同義じゃねぇんだ。……とにかく、その強い人
の居る場所なら安全だと思う。これが、俺が
アーシアに用意してやれる限界だ。構わないか?」
アーシア「後悔なんて、ありません。むしろ、私は
イッセーさんやセイさんのような方に出会えた
事に、喜びと深い感謝を感じています。これこそ、
きっと主が私に与えてくれた祝福なのかも
しれません」
そう言って、指先を組み合わせて祈りをささげるアーシア。
セイ「そうか。……ともかく、向こうに行くにしても時間が
掛かるから、出発は明後日、土曜日になる。それまでは
ここに滞在してもらう事になる」
アーシア「そうですか。……あの、セイさん。一つだけお願いが
あるんですが……」
セイ「ん?何だ?」
アーシア「イッセーさんと、お会いする事は出来ませんか?」
セイ「イッセーと?」
アーシア「はい。出来れば今日中に。……どうしても、
イッセーさんとお話がしたいんです。
ダメ、ですか?」
セイ「いや、まぁイッセーは今日学校を休んでいるから
不可能じゃないだろうが……。堕天使にはぐれ神父が
街でアーシアを捜索している可能性だってある。
出来ればこの家から出ない方が良いと思うんだが……」
困り顔でそう呟くセイ。しかし……。
アーシア「お願いします。どうしても、この街を離れる前に
イッセーさんにお礼をしておきたいんです」
そう言って懇願するような瞳に、セイは……。
セイ「……わかった。但し、今日だけだぞ。明日は外出禁止。
俺も学校に行って部長たちに色々報告をしたら
護衛のためにアーシアやイッセーに合流する。
それで良いか?」
アーシア「っ!はいっ!ありがとうございます!」
そう言って笑みを浮かべながら頷くアーシア。
セイ『ごく短い時間なら、何とかなるか。万が一の時は、
俺とイッセーでアーシアを守る。それだけだ』
そう考え、秘かに拳を握りしめるセイ。
だがこの選択を、彼は後に後悔する事になるとは、思っても
居なかった。
イッセー「え?アーシアが?」
セイ『あぁ。町を離れる前にお前と会っておきたいそうだ』
自分の部屋で休んでいたイッセーの元に、セイから電話が
届いた。そして、その内容と言うのが、アーシアがイッセーに
会いたいという件だった。
イッセー「そうか。けど、大丈夫なのか?」
セイ『確かに不確定要素があって危険かもしんねぇが、
アーシアのたっての願いだ。無下にするのも気が
引ける。どうする?お前の方は』
イッセー「俺は……」
『アーシアと、別れる事になるのか。……なら、
最後くらいは……』
「わかった。俺行くよセイ」
セイ『そうか。なら、場所を伝えるぞ。午前10時、駅前に
集合だ。アーシアには地図を渡してあるから迷う事は
無いと思うが……。念のため、気を付けておけよ。
まだ連中が諦めて無い可能性だってあるんだからな』
イッセー「判ってるって!けどお前も合流してくれるんだろ!
俺とお前なら、アーシアを守れるさ!」
セイ『ったく、調子が良いなぁお前は』
呆れつつも、笑みを含んだ言葉が電話越しに聞こえてくる。
『っと、俺はそろそろ出る時間だ。じゃあな』
イッセー「あぁ」
頷き、電話を切るイッセー。
『そうだ。俺達なら、俺と、セイなら……。きっと』
そう思い、イッセーは密にスマホを握りしめるのだった。
その後、セイは一人学校へと向かい、更に部室へと向かった。
そこではリアスと朱乃が待って居た。執務机に座るリアスと
その横に控える朱乃に、昨日の夜のおやっさんとの話の内容を
伝えるセイ。
リアス「そう。向こう側は了承してくれたのね?」
セイ「はい。向こうまでは時間がかかるので、土曜の朝には
町を出て向こうへ向かいます。公共機関は見張られている
可能性があるので、レブルで」
リアス「わかったわ。……けど、大丈夫なの?血縁ではない
とはいえ、確かあなたの育ての親も同然の方たちなの
でしょう?そんな人たちを巻き込む結果になるんじゃ
無いのかしら?」
セイ「確かに、部長の仰ることも最もです。ですが、あそこには
俺なんかとは比べ物にならない位強い人が、
『仮面ライダー』が居るんです」
リアス「仮面、ライダー?」
と、セイの言う単語に首を傾げるリアス。
セイ「はい。……俺にとっての兄や父同然であり、俺の目標です。
あの人たちなら、絶対に大丈夫です」
リアス「……。あなたがそう言い切る根拠は?」
セイ「あの人たちの背中を見ながら育った、俺個人の判断です」
試すようなリアスの視線と言葉に、信頼が籠った目と言葉で
答えるセイ。やがて、数秒場が沈黙する。
「……それでは、俺はイッセーとアーシアの所へ行きます。
失礼します」
そう言うと、セイは頭を下げて部室を後にした。
それを見来ると、背もたれに体を預けるリアス。
朱乃「紅茶か何か、淹れましょうか?」
リアス「えぇ。お願い」
頷くリアス。しばらくすると、朱乃が彼女の前に紅茶の
入ったカップをソーサーごと置いた。カップを取り、紅茶を
一口飲むリアス。
「ふぅ。……仮面ライダー、ね」
朱乃「気になるのですか?」
彼女の呟きに問いかける朱乃。
リアス「少しね。あのセイが堕天使や自分よりも強いと言い切る
人間たち。あの子が信頼している以上悪い人ではないと
思うのだけど、少しね」
朱乃「そうですか」
『そう言えば、あの日、『私たち』を助けてくれた人も、
確かそんな名前を名乗っていたような……』
記憶の残滓を探る朱乃。しかし、その答えが出るのは、今、では
無かった。
その後、装備していたDEと電磁ナイフを再確認してから、
セイは学生服姿のままイッセーと連絡を取り、二人と合流した。
途中の自販機でドリンクを買い、待ち合わせをしていた
公園へと向かうセイ。
歩く事数分、公園で見知った、シスター服のアーシアと
イッセーのツンツンヘアを見つけ歩み寄るセイ。
セイ「お~い。イッセー、アーシア」
と、声をかけるセイ。だったのだが……。
アーシア「ッ」
彼に気づいて振り返ったアーシアの目には、涙が
浮かび……。
イッセー「せ、セイ」
隣に居るイッセーは戸惑うような視線を彼に向けた。
それを見て彼は……。
セイ「……とりあえず、落ち着け」
そう言って、二人にドリンクを、イッセーにはコーラを。
アーシアには紅茶を差し出した。
「辛い事があるなら、泣いて良い」
そして、彼はベンチに座るアーシアの前に屈み込み、
彼女の俯いた瞳を見ながらそう優しくつぶやいた。
「泣く事は悪い事じゃねぇ。泣きたいのなら、
思いっきり泣け。それでいい」
アーシア「セイ、さん。私、う、うぅ」
そして、彼の言葉を聞いたアーシアは嗚咽を漏らしながら
涙を流し、イッセーは優しく彼女の背中を撫でてやるの
だった。
アーシアが落ち着いた数分後。彼女の口からこの街、
駒王町へとやってきた経緯が話された。
ふとしたきっかけで、治癒の神器であるトワイライト・
ヒーリングが覚醒した事。それに目を付けた教会関係者に
よって聖女として、祭り上げられてしまった事。
しかしあるとき、傷ついた悪魔を治癒してしまったが
為に、周囲は手のひらを返すように彼女を魔女として罵り、
教会を追放した事。そして、行き場を失った彼女を
拾ったのが、極東のはぐれエクソシストの組織で
ある事を。
それを聞き、憤怒で表情をゆがめ、缶を握り潰さんばかりに
手に力を込めるイッセー。
更に、アーシアはそれを自分の祈りが足りないからだと、
自虐的に笑みを浮かべ、そして夢を語った。
友達を作ると言う夢を。
それを聞き、セイとイッセーは。
セイ「何言ってんだよアーシア」
アーシア「え?」
イッセー「そうだぜアーシア!もう俺たち3人、友達じゃ
ねぇか!」
アーシア「え?」
彼の言葉に、もう一度疑問符を浮かべるアーシア。
「友、達。私が、イッセーさんや、セイさんと?」
セイ「あぁ。当たり前だろ?一緒に街歩いて飯食って、
こうしていろいろ話をして。だったらもう友達で
良いんじゃねえか?なぁ?」
イッセー「あぁ!セイの言うとおりだよ!俺たちはもう、
友達だ!」
アーシア「ッ!」
二人の言葉に、もう一度瞳に涙をためるアーシア。
「わ、私は、二人の、友達で、良い、んですか?」
嗚咽混じりの問いかけに、二人は……。
セイ「良いも悪いもあるかっての。アーシアが友達なんて、
良いと思うが?お前はどうだ?」
イッセー「そりゃ当然!アーシアみたいな優しくて美少女なら
俺は大歓迎だぜ!」
セイ「って、お前は煩悩丸出しかっ!」
ペシッと頭を軽くたたいてコントを繰り広げ笑みを浮かべる
セイとイッセー。
イッセー「ハハ、まぁそういうわけだ。俺たちは今日から、
正真正銘の友達だ」
そう言って、彼はアーシアの前に立ち上がり彼女の右手を
差し出す。それを見た彼女は……。
アーシア「ありがとう、ございます」
笑みと、涙を浮かべながら頬を赤く染め、イッセーとセイを
見上げるのだった。
だが……。
ドーナシーク「ふん。下らん茶番だな」
不意に、背後から声が聞こえてきた。そして、セイは
その声を聞いた瞬間、鞄の中からDEを取り出し、
セイフティを解除して、手動で初弾を薬室に送り込み、
振り返り構える。
そして、彼の視線の先にはトレンチコートの堕天使、
ドーナシークが立っていた。
そのドーナシークを睨み付けるセイ。
セイ「イッセー!アーシア連れて逃げろ!」
イッセー「え!?でも……」
セイ「忘れるなっ!奴らの狙いはアーシアだ!
お前がアーシアを守れっ!」
イッセー「ッ!わかったっ!」
彼の言葉に驚きながらも頷き、イッセーはアーシアの
手を引いてかけ出した。
アーシア「セイさん!」
セイ「安心しろ!死ぬ気はねぇ!」
『ドンドンッ!』
DEを連射するセイ。しかしドーナシークはそれを
事も無げに跳躍して避ける。
その隙に、更に鞄から電磁ナイフを取り出して左手で
逆手に持つ。
ドーナシーク「死ぬ気は無い、だと?愚かな人間よ。貴様ら人は
あまりにも脆い。その脆弱な体で何を守る?」
セイ「何って、決まってんだろ?
『命』と『自由』だよ!!」
それは、彼の戦う理由。彼の憧れる英雄達と同じその目標。
相手は明らかに自分より格上。だが、それでもセイは獰猛な笑みを
浮かべながらそう断言する。だが、その時。
ドーナシーク「ふん。やはり愚かだな、人間。そんな貴様の
相手は、同じ人間が相応しい」
セイ「何?」
彼が疑問符を浮かべた刹那。
『ゾクッ』
彼は殺気を感じ、咄嗟にその場を飛び退いた。次の瞬間。
『シュンシュンッ!』
彼の居た場所を光の光跡が横切る。
着地し、光が来た方に銃口を向ける。だが……。
???「はぁぁぁぁぁぁッ!!!」
その時、ローブらしき物を纏った人物がセイに向かって
光剣を二本、両手に保持しながら向かってきた。
「はぁッ!」
セイ「ぐっ!」
一閃、右手の剣を、バックステップで回避する。
「せやぁッ!」
『ガキィンッ!』
『バチバチッ!』
更に追撃で繰り出される左手の剣を、電磁ナイフで
受け止める。光剣とナイフの間でスパークが瞬く。
と、その時。
ルオン「まさか、貴様が悪魔の手先だったとはな!」
セイ「ッ!?その声!」
その時、風が吹いてローブがめくれる。その下から
現れたのは、セイがアーシアを教会荷送り届けた時に
出会った相手、シスター・ルオンだった。
「あんたは確か、シスター・ルオン!?」
セイが叫ぶと、ルオンはギリッと奥歯をかみしめた。
ルオン「私の名を、軽々しく呼ぶなぁぁぁっ!」
『ドゴォッ!』
セイ「ぐあぁっ!」
彼女の怒りと憎悪の気迫に押され、一瞬の隙を突いて
蹴飛ばされるセイ。
ゴロゴロと地面を転がりながらも、何とか体勢を
立て直した時、再び彼の五感が殺気を感じ取り、
彼は横に飛んで転がった。
刹那、彼の居た場所に、祓魔弾が突き刺さる。
「くっ!?この攻撃は……!」
そう考えたとき。
リオン「まさか、あなたが悪魔の手先だったなんて」
声が聞こえ、近くの森林の中からフードをとった
ルオンの妹、リオンが現れる。その手には2丁の
祓魔銃が握られていた。そして、その目は汚物を
見るかのようにセイを見下していた。
「あなたをいい人だと思った過去の自分が
バカみたいです」
そう言って、冷徹な口調と共にセイに銃を向ける
リオン。
セイ「くっ!?」
『3対1か。こりゃ流石にキツいな』
そう考えながらも、DEとナイフを握りしめるセイ。
しかし。
ドーナシーク「貴様の相手はその二人だ。私はあの物を
迎えに行くとしよう」
セイ「っ!?待て!」
翼を広げるドーナシーク目がけて突進するセイ。だが……。
リオン「どこを見ている!」
『シュンシュンッ!』
セイ「くっ!?」
逃すまいとリオンの祓魔銃から弾が放たれ、それを避けようと
セイがバランスを崩して失速してしまう。
その隙に飛び立つドーナシーク。
「待てっ!」
それに向けて発砲しようとするが……。
ルオン「貴様の相手は、私たちだ!」
そこに光剣を構えたルオンが向かってくる。
咄嗟にバックステップで距離をとるセイだが……。
「はぁっ!」
『ビリッ!』
剣の切っ先がセイの二の腕辺りを掠り、袖が
破けてわずかに血が飛ぶ。
セイ「くっ!?こんのぉぉぉ!!」
『ドンドンッ!』
反撃のDEを放つセイ。しかしルオンはそれを
側転で回避。追撃しようとするセイを……。
リオン「……!」
無言で狙い撃つリオン。
セイ「ッ!?」
それに驚きつつ、バックステップで回避するセイ。
そしてDEと電磁ナイフを構える。彼の眼前に
ルオンとリオンが並び、それぞれが光剣と祓魔銃を
構えている。
互いに睨み合う両者。
と、その時。
『ドォォォォンッ……!』
少し離れた所から爆裂音が聞こえてきた。
「ッ!?イッセーッ!アーシアッ!」
それに気をとられ、音の方へと視線を巡らせ
叫ぶセイ。それが、隙を生んでしまった。
ルオン「もらったっ!!」
一瞬の隙を突いて、光の双剣を手に猛然と
突進してくるルオン。
セイ「ッ!?」
それに反応が遅れるセイ。
ルオン『取ったッ!』
そう思い、セイ目がけて双剣を振り下ろそうとしたその時。
『シャッ!!』
不意に何かが空を切る音と共に向かってきた。咄嗟に
後ろに飛び退るルオン。次の瞬間。
『ドゴォッ!!』
ルオンとセイの間に何かが落ちて爆発。盛大に砂埃が
舞った。
セイ『何だ今の!?分からねぇが、今のうちに!』
状況を利用しようと考えたセイは、今はこの場を離れる事を
選択し、砂煙に紛れてその場を離れた。
そして数秒後、煙が離れた所で周囲を見回す
ルオンとリオン。
リオン「姉さん!怪我は無い?」
双子の姉であるルオンの元へ駆け寄るリオン。
ルオン「えぇ。大丈夫よリオン。でも、あの男には
逃げられてしまったみたいね」
周囲を見回しながらも、ギュッと拳を握りしめるルオン。
それに気づいたリオンが彼女の手を、自分の手で
包み込んだ。
リオン「大丈夫よ姉さん。生きていれば、次があるわ。
それに、シスター・アーシアを悪魔どもから
奪還するという当初の目的は達成されたはず。
今はそれを喜びましょう」
ルオン「えぇ、そうねリオン」
妹の言葉に、優しい笑みを浮かべるルオン。
そして、二人は周囲を警戒しながら撤退しようと
していたのだが……。
『そう言えば、先ほどの攻撃。どこから?』
彼女はそのことを頭の隅で考え続けていた。
セイもルオン達も撤退した公園。
その一角にある森の中から、3人のローブを纏った
人影が現れた。
???3「どうやら、どっちも撤退したみたいっすね」
3人の中で、一番背の小さい人物がつぶやく。
???2「そうだな。しかし、よろしかったのですか?
先ほどの攻撃は、我々の存在を『相手側』に
悟られる可能性も……」
???1「そうね。その可能性はあったわ」
長身の人物の言葉に、先頭を歩いていた人物が応える。
声色からして、3人とも女性である事が分かる。
「でもね」
そして、そう言いながらローブのフードを後ろにずらす
リーダー格の女性。現れたのは、艶やかな黒髪だった。
他の二人も、それにならい素顔を晒す。
「あのままだったらあの子を見殺しにしていたわ。
でも彼ならきっと助けたはず。
そう、『アマゾン』なら」
毅然とした態度でそう告げる彼女こそ……。
???3「確かにその通りっすね。『レイナーレ』様」
先ほどまでそこに居たドーナシークの同族、すなわち
堕天使であるレイナーレと、彼女の部下である
『ミッテルト』、『カラワーナ』だった。
レイナーレ「さぁ、行きましょう。私たちの『仕事』はまだ
終わっていないのだから」
カラワーナ「はい」
そう言うと、彼女たちは再びフードをかぶり直し、
林の中へと消えていった。
セイ「ハァ、ハァ、ハァ!」
息を荒らげながらも爆発音のした方へと走るセイ。
そして、彼は道ばたで四つん這いの状態で地に膝を付ける
イッセーを見つけた。
「ッ!イッセー!」
慌てて彼に駆け寄るセイ。
「イッセー!大丈夫かっ!?あの堕天使と
アーシアは!?」
問いかけるセイ。すると、イッセーの顔がセイの方に
向く。その時、イッセーは……。
イッセー「セイ、俺、俺は、アーシアを、守れ、無かった」
嗚咽混じりの言葉と共に、再び俯き大粒の涙を流すイッセー。
「俺が、俺が弱いばっかりに……。
畜生。畜生ッ……!」
ダンッ、と拳を地面に叩き付けるイッセー。
そんな彼を見たセイは……。
セイ「イッセー。お前は、誰かのために命を賭ける覚悟は
あるか?」
イッセー「え?」
不意に、イッセーの視線が上がる。
セイ「……仮に、俺とお前だけで教会に突入したところで
アーシアを救出出来る確率は限りなく低い。
それでも、俺たちにはアーシアを助けるだけの
理由がある。違うか?」
イッセー「……ッ!……ある。あるさ!
あるに決まってんだろ!」
涙を袖で拭い立ち上がり叫ぶイッセー。それを見た
セイは右拳をイッセーに向かって突き出す。
セイ「生きて帰れる保証は無い。俺たちが死んで、
アーシアを悲しませるだけに終わる可能性だって
ある。それでも行くか?」
突き出された拳を見て、イッセーは自らの右手の平を
見つめる。
イッセー「……ッ!!」
そして、無言で拳を握りしめるイッセーは。
「行くさっ!俺は、アーシアを助ける!」
『ガッ!』
イッセーはセイの右拳に、自らの右拳を突きつける。
そして、二人の瞳に覚悟の炎が灯る。
セイはそれを確認すると……。
セイ「俺は一度家に戻って装備を調えてからオカ研の
部室に向かう。そこで落ち合うぞ」
イッセー「あぁ」
そう言うと、二人は一旦別れて別々の方向に歩き出した。
そして、その時の二人の表情は、鬼や悪魔さえも恐れさせる
程の気迫に満ちていた。
その後、帰宅して装備、DEのマガジンやナックルダスター、
ショットガン、をバッグに突っ込んでレブルの後部に縛り付けた
セイは、プロテクタースーツに着替えレブルで駒王学園に向かった。
学園の敷地にレブルごと入るセイ。幸いすでに完全下校時間を
過ぎていたのか、生徒の姿は無い。
旧校舎の前にレブルを止めたセイは、ボストンバッグを
肩に担ぐと部室に向かった。
そして、入った瞬間。
『パンッ!』
乾いた音が聞こえてきた。それは、リアスがイッセーの
頬を平手打ちした音だった。
セイ「………」
しかし、それを前にしてもセイは無言だった。
朱乃や祐斗、小猫は気づいてが、肝心のリアスとイッセーは
言い合いに発展していた。
とうとうイッセーがはぐれになると言い出した時だった。
セイ「問答は無駄だイッセー。行くぞ」
イッセー「………」
彼の言葉に、セイは無言で頷くと部屋を出て行こうとした。
リアス「待ちなさいっ!」
その二人を止めると為に声を張り上げるリアス。
「あなたたち、自分が何をしようとしているか
分かっているの!?彼女は敵側の人間。まして
やあなたたち二人だけでは死にに行くような
物よ!」
その言葉に、二人は足を止める。
「悪い事は言わないわ。彼女の事は忘れなさい」
セイ「……すいませんがねリアス部長。
俺には、そんな事は出来ねぇ」
『ガポッ』
そう言いながら、彼はドクロが描かれたマスクを被り、
リアスの方に振り返る。
「自重しろって言う部長の言い分は分かる。
あいつが、アーシアが敵側の人間である事。
この行動がどんな結果を招くのかも分からねぇ」
リアス「だったら!」
セイ「だけどっ!」
声を上げようとしたリアスを、更にセイが遮る。
「何時だってわかりきった未来なんか
ありゃしねぇ!物事は起こってからじゃ
何も始まらねぇ!それに……」
彼は、ギュッと拳を握りしめる。
「男には、命の賭け時ってのがあるんだ。
そして今だろ。その賭け時って奴は」
リアス「……死ぬとしても?」
セイ「死ぬ気はねぇ。生きて、アーシアとイッセーを
連れて帰る気はある。だがなぁ。大切な友達を
助けるために、命一つ賭けられねぇやつが、
一体何を守れるって言うんだっ!!!」
その言葉と共に放たれた気迫が、祐斗や小猫、朱乃
まで気圧される。
それだけの気迫が、今のセイにはあったのだ。
そして、静かに彼は扉の方へと体を向け、
リアス達に背を向ける。
「部長達に貰った恩を仇で返す気は無い。だが、
それでも……。助けを求めている命があるのなら、
俺はそれを助けるためにこの命を賭ける……!」
そう言い残すと、セイとイッセーは部室を出た。
二人は外に止めていたレブルに跨がり教会を目指した。
そして、道中でイッセーからドーナシークに
襲われたときの経緯を聞いていた。
自分が致命傷を負い、イッセーを見逃す代わりに
アーシアが捕まってしまった事。その際に
ドーナシークが語った『儀式』という単語の事。
セイ「そうか。つまり、俺たちにはますます行く
だけの理由があるって訳だ」
イッセー「あぁ……!」
互いに決意を固める二人。そして……。
セイ「見えたぞ。教会だ」
路地を曲がった彼らの視界に教会が見えてきた。
イッセー「あそこにアーシアが」
ギュッと、拳に力を込めるイッセー。
『待ってろアーシア!俺が、俺たちが!
必ずアーシアを助け出すから!』
そして、彼は静かに教会を睨み付けるのだった。
彼らは動き出す。自分の友達を、助け出すために。
その先に待っている結末とは、一体?
第5話 END
いろいろ熱血漢な台詞(だと作者は思う台詞)ぶっ込んでますが、
ちゃんと熱血路線行けてるか少し心配です。
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