ハイスクールD×S~SPIRITSを受け継ぐ者~   作:ユウキ003

7 / 8
今回で小説第1巻が終了します。


第7話 「新たな日々」

~~前回までのあらすじ~~

堕天使ドーナシークに攫われたアーシアを

救うため、教会へと乗り込むイッセーとセイ。

彼らは遅れてきた祐斗や小猫と共に教会へと

突入する。一方でアーシアを慕うルオンとリオンの

姉妹が彼らの前に立ち塞がるが、二人をセイが

相手にし、残りの3人はアーシアの居る地下へと

向かった。しかし僅かに遅かったがために、

アーシアの神器を抜き取ると言う儀式が

行われ、アーシアは一度、命を散らしてしまう。

激情に駆られたイッセーとセイは、奪った神器を

吸収し力を得たドーナシークを撃破。加えて

アーシアはリアスの持つ悪魔の駒の力で

転生悪魔として復活するのだった。

 

 

教会での戦いから数時間後。セイのマンション宅にて。

セイ「ほら、食えよ。腹減ってるんだろ?」

そう言って、キッチンに立っていたセイはできあがった

料理、焼きそばを二人の人物の前に置いた。

 

その人物、と言うのが、ルオンとリオンの姉妹だった。

 

ルオン「……。何のつもりだ?」

凄みのある目で睨むルオン。しかしセイは

自分の分の皿を持ってくると、臆す様子も

無く二人の前に腰を下ろした。

セイ「何って、食事だよ。腹減ってんだろ?」

ルオン「ふざけるなっ!貴様の施しなど、

    受ける気は……!」

と、叫ぼうとした時。

   『『クゥゥゥッ』』

二人の腹の虫が可愛い悲鳴を漏らした。

そのまま無言でプルプルと羞恥心から

体を震わせる二人。

しかし、この音をセイに聞かれるのは

最初では無い。時間は、少しばかり巻戻って

教会での戦闘終了直後。

 

ルオン「これで、また流浪の民ね、リオン」

リオン「そうね。姉さん」

 

短く言葉を交わすと、教会を後にしようとする

二人。

アーシア「ルオンさん!リオンさん!待って下さい!」

しかし、そんな二人をアーシアが止める。

    「お二人とも、どこへ行かれるの

     ですか?」

ルオン「……行く当ては、ありません。元より、

    故郷は悪魔に滅ぼされた身」

彼女の言葉に、イッセーが驚き、リアス達も

真剣な表情を浮かべる。

リオン「教会を出た後の私達は、故郷を

    持たない浮浪者。ここにはもう

    居られません。次の居場所を

    探し出す。それだけです」

彼女がそう言うと、二人はアーシアの方へと

向き直った。

 

ルオン「シスター・アーシア。私達は悪魔を

    憎む者。次、会うことがあるとすれば

    戦場。私達は、敵同士です。

    それでは」

そう言うと、歩き去ろうとする二人。

アーシアが何か声を掛けようとするが……。

セイ「待てよ」

それよりも先にセイが二人を呼び止めた。

  「アンタ等、行くとこ無ぇんだろ?」

ルオン「……それがどうした?」

セイ「俺等は元々アーシアを俺の恩人に

   預けようとしてた。けど、アーシアは

   悪魔になったし、多分今後は部長の

   下僕として部長の方で色々用意

   してくれるだろうから、預ける

   必要も無くなった」

リオン「だったら、それが私達とどう関係

    すると言うのだ?」

セイ「……アンタ等の事は今正に聞いたよ。

   だから多分、俺等のことは憎いかも

   しんねぇ。立場も違う、敵同士だ」

後頭部を掻きながら語り出すセイ。

 

  「けどよ。アンタ等二人が悪い奴じゃ

   ねぇのは分かってるつもりだ。

   アンタ等にはアンタ等の正義がある。

   正義も無しに戦ってるとしたら、

   そいつは金で雇われた傭兵か、あの

   フリードみたいなバトルジャンキーさ。

   けど、アンタ等は違う」

ルオン「貴様。……何が言いたい」

セイ「アンタ等は俺等の敵であっても、悪人

じゃ無いって事だよ。それに、

アンタ等はアーシアを敵だっつってる

が、当の本人はそう思っちゃいねぇよ。

そうだろ?アーシア」

アーシア「はい。お二人は、きっと悪魔となった

     私を許してくれないかもしれません。

     でも、出来る事なら、私は、お二人

     とまた、たくさんお話がしたいです!」

ル・リ「「……ッ」」

 

アーシアの言葉に、二人は僅かに息をのむ。

 

セイ「って事だ。ど~せなら、どっかに腰を

   落ち着けてみたって良いんじゃねぇの?

   アーシアもその方が喜びそうだし」

ルオン「ふざけるな!だから貴様の元に下れと!?」

セイ「そうじゃねぇよ。……その人は悪魔の事は

   知ってる。もちろん、堕天使や天使の事もな。

   けど俺みたいに悪魔と協力してるとか

   じゃねぇから、安心しろ」

リオン「だからといって、貴様の施しなど!」

 

と、言いかけた時。

   『『『クゥゥゥゥッ』』』

 

緊張した空気をぶち壊すような、腹の虫が

可愛い悲鳴を上げた。

 

しばし、皆が呆然となっていると……。

アーシア「す、すみません。その、あの………」

音の主の一人のアーシアが、顔を赤くしている。

リアス「あ、でも、今のって彼女一人のじゃ……」

そう呟きながら、リアスはイッセーの方へと

視線を向ける。

 

イッセー「いやいや部長!なぜにこっちを

     見るんですか!?俺じゃ無いっすよ!

     大体、男の腹はあんな感じに鳴りませんて!」

リアス「じゃあ……」

と、顎に手を当てながら朱乃や小猫、祐斗の方を

向くリアス。しかしみな、一様に首を横に振る。

セイ「………」

 

そして、セイが見つめる先では……。

ル・リ「「………」」

   『『プルプルッ』』

硬い表情の顔を、真っ赤にしながら震える

ルオンとリオンが……。

それを見たセイは……。

 

セイ「とりあえず、帰って飯にするか」

 

と、彼は笑みを浮かべながら呟いた。

 

そして、時間は冒頭へと戻る。

 

セイ「ほら、食えって。腹減ってんだろ?」

そう言いながら、セイは焼きそばを

食べ始めた。

ル・リ「「……」」

そんな彼を見ながらも、怪訝そうな表情を

浮かべる二人。

 

セイ「安心しろって。毒なんて盛っちゃ

   いねぇよ」

ルオン「……」

セイの言葉に、未だに訝しんでいたルオンだったが、

彼女自身、腹は既に限界だった。

そして彼女は箸を取ると、静かに焼きそばを

口に運んだ。

咀嚼し、飲み込むルオン。

 

リオン「ね、姉さん?大丈夫?」

ルオン「……。え、えぇ。大丈夫、みたい」

数秒の間を置きながらも答えたルオンに、

ルオンも安堵したのかホッと息をついてから

自分の分も食べ始めた。

 

それを、小さく笑みを浮かべながら見ていたセイ。

 

そして食後、ルオンとリオンが風呂に入っている

間に、セイはおやっさんの所へ電話を掛けた。

藤兵衛『それで?預かる人数が一人から二人に

    なったって?』

セイ「はい。身勝手なお願いなのは分かってる

   んすけど、お願いします」

藤兵衛『……。ハァ、しょうがねぇ。預かってやるよ。

    茂にはもう一度ワシから言っとく』

セイ「すんませんおやっさん。助かります」

それからセイは、そっちに行くおおよそ時間帯を

告げると通話を終えた。

 

その後、セイはリビングに布団を二つ並べ、

自分の部屋の場所を伝えると自分の部屋に

戻り、眠りにつくのだった。

 

そして翌朝。3人は公共機関を乗り継いで

神奈川・三浦市へと向かった。

ルオン「……。どこまで行く気?」

セイ「もうすぐだって。っと、あそこだ」

目的地が見え、セイはその店を指さした。

 

それは海沿いにある小さな店だった。

リオン「立花、レーシングクラブ?」

セイ「俺の育ての親同然の人がやってるのさ」

看板を読み上げるリオンにそう言いながら、

セイは店の中に入る。

 

入ると、中で一人の男性がバイクの修理を

していた。

  「おやっさん!」

???「ん?」

セイが声を掛けると、男性、『立花藤兵衛』が

立ち上がり振り返った。

   「おぉ、セイ。来たな」

藤兵衛は口に咥えていたパイプを取り、

笑みを浮かべる。

   「で、その後ろのシスター達が?」

セイ「はい。昨日話した二人です。しばらく、

   ここで預かって欲しいんです」

藤兵衛「分かった」

と、頷くと彼は二人の前に立った。

   「よろしくな。ワシは立花藤兵衛。

    こいつの育ての親みたいなもんだ」

ルオン「……シスタールオンです。

    はじめまして」

リオン「同じく、シスターリオンです。 

    よろしくお願いします」

と、頭を下げる二人だが、やはり悪魔の

関係者であるセイの、更に関係者とあってか

かなり訝しんでいる様子だった。

 

すると……。

セイ「心配しなくても、おやっさんは悪人

   じゃねぇよ。と言うか、俺や俺が尊敬

   する人達からもおやっさんっつって

   慕われてるくらいだからな。なんてったって、

   俺の育て親だしな」

そう言って笑うセイだった。

 

その後、時間も時間なので、昼食は藤兵衛が

作り、セイも手伝った。

藤兵衛「そういやセイ。お前学校はどうなんだ?」

セイ「ん?大丈夫だよおやっさん。これでも

   学年主席、体育だろうが勉強だろうが、

   どっちもトップっすから」

藤兵衛「マジかよ。……全く、誰に似たんだか」

セイ「いや~。周りが天才ばっかりでしたし。

   本郷さんとか結城さんに勉強見て貰った

結果すかね?」

藤兵衛「確かに。あいつらは天才だからなぁ」

と、話をしていた二人。一方で、ルオン達は

無言のまま食事を続けていた。

 

そして、昼食後。セイは駒王町に戻るため

店を後にしようとした。

セイ「それじゃあおやっさん。二人のことを

   頼みます」

藤兵衛「おう。任せな」

しかし……。

 

ルオン「……滝誠一郎。話がある」

セイ「え?俺にか?」

ルオン「そうだ」

 

その後、3人は近くの砂浜へとやってきた。

セイ「それで、話って?」

ルオン「……どうして、お前は私達を気に掛ける?

    お前はシスター・アーシアの為だと

    言っていたが?本当にそれだけか?」

セイ「……そうか、って聞かれるとNOだ。

   俺も、お前等にシンパシーを感じたのさ」

リオン「シンパシー、だと?」

彼女の問いかけを聞きながら、セイは海の方に

目をやった。

 

セイ「10年ほど前の事さ。俺も、ある組織に

   両親を殺された」

ル・リ「「ッ!」」

彼の言葉に、二人は息をのむ。

セイ「強化ガラス一枚隔てた俺の目の前で、

   両親は毒ガスに苦しみながら死んでいった。

   そして、両親の遺体は泡となって消えた。

   ……だからよ、分かるんだよ。

   お前等のその憎しみが。けど、憎んだ

   所で両親が帰ってくる訳でもなし。

   ……だからこそ、平和な日々ってのも

   悪く無いって思ったのさ」

ルオン「それで、私達に?」

セイ「余計なお節介だってのは重々承知してるぜ。

   けどよ、たまには良いんじゃねぇか?

   平和ってのもよ。……あそこが居心地

   悪けりゃ出て行っても良い。それ以降

   俺はお前等を探さないし、どうしようが

   お前達の勝手だ。……で?どうする?」

 

ルオン「……。お前が悪魔の関係者である以上、

    はっきり言ってお前に心を許す気は無い。

    しかし……。お前と、あの男性が悪人

    ではないと、私も思う。……それに、

    貴様とあの人には一宿一飯の恩がある。

    だから、少しばかり、お前の言う事を

    聞いて、その、あの人の、立花さんの

    世話になる」

と、恥ずかしいのか、後半はそっぽを

向きながら話すルオン。

 

セイ「構わねぇよ。あっ、そういや昼間は

   居なかったが、あそこにはもう一人、

   城茂って人が居る。俺の兄貴みてぇな

   もんだ。もし会ったら、俺がよろしく

   言ってたって伝えてくれ」

リオン「……分かりました」

 

その後、セイは藤兵衛に帰る旨を伝えると

一人帰って行った。

それを見送る藤兵衛とルオン、リオン。

藤兵衛「全く。セイも今日くらい泊まって

    行きゃ良いものを。

    ほれ、二人とも中へ入れ。

    夕飯の準備するぞ」

ルオン「あ。は、はいっ」

戸惑いながらも、ルオンとリオンは、藤兵衛

との生活を始めるのだった。

 

 

数日後、平日、早朝のオカ研部室。

そこにリアス、イッセー、セイの姿があった。

並んで座るリアスとイッセー。二人と向かい合うセイ。

イッセー「じゃあ、あの二人はお前の育ての親の

     人のところに居るのか?」

セイ「あぁ。まぁ、あの二人にはそこが気に入らなかった

   出て行って良い。その後の事はもう関与しない

   って言ってあるが、実際はどうなるのやら、だな」

イッセー「そっか。まぁ良かったって言えば良かった

     んだろうな。アーシアも知り合いが会える

     距離に居るんだし」

と、話をしていたイッセーだったが、やがて

イッセーは自分以外にもリアスの兵士が出来る

事について質問した。

 

しかしリアスの話では、イッセーにはポーンの

悪魔の駒全てを使ったと、格言を交えて話すリアス。

セイ「女王、クイーンがポーン9個分。大して

   イッセーは八個。つまりポーンの駒全部が

   使われてるって訳だな。今のイッセーを

   格言に照らし合わせれば、今のお前は

   女王クラスの価値があるって事だ」

イッセー「け、けど、俺なんかにそんなに?」

リアス「恐らく、あなたの左腕に宿った

    セイクリッド・ギア、ロンギヌスの

    力が大きかったからだと思うの」

セイ「それだけ、お前の潜在能力が高いって

   事だよ」

イッセー「……俺の中に、そんな力が」

と、呟きながら左の掌を見つめるイッセー。

セイ「期待してるぜ。ニューフェイス」

 

リアス「そうね。あなたのその力、期待

    しているわよ、イッセー」

   『チュッ』

そう言うと、リアスはイッセーの額に

キスをした。

内心、驚いているイッセー。その時。

 

セイ「はっはっは~。青春だね~」

イッセー「うっ!な、何見てんだよセイ!」

セイ「いや?別に~。お前の反応が

   初々しいね~と思ってただけさ」

イッセー「ッ~~!っるせぇ!」

ニヤニヤと笑みを浮かべるセイと顔を

赤くして叫ぶイッセー。

 

そしてその時、セイはイッセー達の後ろに

立つ『彼女』に気づいた。

セイ「おっと。もう一人のニューフェイスの

   登場だな。部長、やり過ぎてると

   嫉妬されますよ?」

リアス「そうね」

と頷くと……。

   「そんな所に居ないで、入ってらっしゃい?」

と背後の扉の方を向くこと無く呼びかけるリアス。

 

アーシア「し、失礼します」

イッセー「え?」

突然聞こえたアーシアの声に振り返るイッセー。

そこには、駒王学園の女子制服を着たアーシアが

立っていた。

    「あ、アーシア!?どうしてここに!?

     ってかその格好って……」

セイ「部長とアーシアの意思で、俺も進言した。

   元々、アーシアは俺等とタメだからな。

   折角だから駒王に入学させては?って

   事を言ったんだ。今のアーシアは

   悪魔の言語補助で日本語も完璧

   だからな。問題は無いだろう」

アーシア「は、はいっ!私、アーシア・

     アルジェントはこの学校でお世話に

     なる事になりました!」

リアス「ちなみに、クラスはイッセーとセイの

    同じクラスよ?仲良くしてあげなさい、

    イッセー、セイ」

イッセー「は、はいっ!もちろんっすよ!」

セイ「あぁ。何てたって、俺とイッセーは

   アーシアの友達だからな。

   そうだろ?イッセー」

イッセー「おうっ!あったりまえよ!」

と言うと、アーシアは改めて笑みをこぼした。

 

アーシア『悪魔になろうとも、イッセーさんと

     セイさんのような素晴らしい友人を

     与えて下さった事に、感謝します。

     主よ』

 

そう、彼女は思うのだった。

 

その後、木場や小猫、朱乃もやってきて、

オカ研の部室ではささやかなパーティが

開かれた。

 

悪魔となったイッセーとアーシア。

しかしそれは、今後世界を揺るがす大きな戦いの、

たった一部にしか過ぎない事を、この場に居る

誰も分かっては居なかった。

 

そして、次の戦いは、そう遠くない事も。

 




次回からフェニックス戦です。お楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。