神様に雇われて、異世界転生者を殺すことになったラッパー少女の物語*リメイクするため凍結   作:しじる

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12.韻 ラッパーモードで負ける気はしないので

 私の指を鳴らす音と共に、スピーカーが唸る。

 流れる音はジャス、しかしそれにギターの音は一切ない。

 ピアノとラッパ、そしてサックスとドラムの音が、列車の排気音と混ざって独特の、疾走感のあるリズムを産み落とす。

 それは正しく最初から混ざり合うのが運命だったかのように、軽やかに、そして滑らかに…私のラップを演出するBGMとなる。

 リズムをとるため、私は自身の足を何度も踏み直す。

 タン、タン、と床を鳴らして、部屋一体に反響する。

【何をするつもりか知らないが無駄だ】だと言った様子で、呆れ、嘲笑う表情を浮かべ立ちつくす御堂皇を置いて、私は(ライム)を刻み出した。

 

 

 

 ____________さあ、行くよ

 

 そう言えば名乗ってなかったな まず自己紹介

 私は鎖腐華だ ここからは私のshow time

 舐めた口聞くお前を 地獄へとご招待

 泣き喚き強がりを言うザマがその正体

 まともに飯を食えなくしてあげるよ 食介(しょっかい)(食事介助)は必要かいbastard(バスタード)

 

 

 御堂がぐらりと揺れた。

 目が飛び出るほど驚き、胸を苦しそうに掴んでいる。

 

 「な…なんだ、体が痛い…苦しい?!お前何をした!!」

 

 やつの言葉を無視して、私はラップを続ける。

 

 

 

 まずは爽快に お前のHPを損壊

 いつになるだろうなお前の命全壊

 ぶっ殺してやる 残るのはお前の残骸

 ここからはガチンコ 分かってるのかいガキンチョ

 ちびっ子にはお似合いの最期になるよちょいとね

 手心加えてやろうと思ってけど いらないでしょう?

 お前にぶち込んでやるよ 全力の最強

 そして私に刻まれる気分は最高!

 

 

 

 体の異常が私のラップだと気づいた彼は、あの大剣を私へと向けて突っ込んでくる。

 力任せにそれを振るうけど、インヴェクションを空いている両手で掴み、防ぐ。

 爆音が響き、衝撃波が列車の窓ガラスを破砕するが、私は気にせずラップを終わらさない。

 

 

 

 

 王様になるなんて 無理な話だザマァ無いな

 お前がなり晒すのは情けない負けザマァだ

 無様だな そして屈するのはこの腐華様にだ

 I'm name 鎖腐華 A・K・A クールな殺し屋

 復活の機会なんて 与えやしないや

 お前はここで終わりなんだよ kiss my black ass(キスマイブラックアス)

 

 

 

 

 「がぁあああ!!?」

 

 御堂の体が腐り始める。

 腐敗属性が発動した。

 ラップによって蓄積された付与値が、定量を超えた証だ。

 しかしすぐさまその体が元に戻る。

 その時、彼の手には輝く何かがあった。

 その何かには見覚えがあった…

【ユニコーンの聖血】、HP全快に状態異常全快のラストエリクサーのような消費アイテム。

 スカイウォーオンラインにあった、対腐敗属性の切り札。

 だけど、それは1人1個しか所有できない。

 そもそも、あれを持ってるということは、彼がスカイウォーオンラインのプレイヤーであった可能性が浮かび上がった。

 ゲームでは1個しか持てないけど、ここは現実。

 しかも相手がチート転生者なら、複数持ってる可能性もある。

 これは長期戦になるかも。

 

 「はぁ、はぁ……それで終わりか?ぶっ殺してやる!!」

 

 口調が変わった。

 大剣を何度も力任せに振るって、私を斬り殺そうと迫る。

 でもね、私だって伊達にこの戦い方を【本気】にしてるわけじゃないんだ。

 この戦い方の弱点なんて把握済みだ。

 ラップを歌ってる時は動けないという弱点がある。

 つまり魔法攻撃なんかの遠距離攻撃には弱いんだ。

 それをカバーする方法もあるけど、接近攻撃ならそれをする必要は無い。

 要は近づいてくる前に、ラップを区切ってしまえばいい。

 普通の歌ならできない途中切り。

 だがラップならできる。

 それを可能とするのがラップ(喋るように歌う)だからだ。

 何度も、何度も切り刻んでくる刃。

 しかしそれを防ぐことに関しては負けない。

 何度も言うように、この戦い方に慣れてるからだ。

 数十合打ち合い、火花が散り合い、余波で車両の壁が吹き飛んでいく。

 その最中、根負けしたのか一際大きな振りで彼の大剣が唸りをあげて迫る。

 そのタイミングでインヴェクションを切り上げ、ガギィンと大剣を押しのける。

 大きく怯み、隙が生まれた御堂。

 それを逃がさない、インヴェクションを彼の首に引っ掛けて、引く。

 ガンッと音を立てて、彼は私の足元に跪く。

 防御力の高さも予想通り、だからこそできるインヴェクション引き寄せ。

 倒れた彼の頭に、私は思いっきり足を乗せる。

 ズガンと音を立てて、彼は顔面から床に叩きつけられる。

 

 「ぶべ!?」

 

 変わった悲鳴をあげる彼を、動けないよう頭を踏み続け、マイクを再度自身の口元へ。

 トドメを刺してやる。

 私は【ユニコーンの聖血】を使わせないように、手足に鎖を打ち込み封じた。

 上がる悲鳴を無視して、私は【殺す決意】を固めた。

 息を吸い、歌詞(リリック)に魂と殺意を乗せた……

 

 

 

 

 

 そろそろ終わりさ mother fucker(マザー ファッカー)

 お前にぶち込むよ マッドなこのライム

 くたばってもらおうか お前のちっぽけなLife

 お前に分からない この真っ黒なLOVE

 送らせてもらおう 愛を哀に変えて

 詰め込んだリリックで お前はShowdown(ショウダウン)

 障害にもならない お前のここで送った生涯

 ここでのshow time ここでの笑談

 全部に幕引いて 見せつける私のJOKER

 さよならだチート野郎 ここでお前はご愁傷様!!

 

 

 

 

 大爆音のラップが終われば彼の体が一気に腐敗臭に塗れる。

 同時に彼から絶叫が響き渡る。

 その顔を見ることは出来ないが、恐らく激痛に歪んでいるだろう。

 彼の体は四肢から急激に腐っていってたからだ。

 言葉にさえならない悲鳴は鳴り止まない。

 ようやく言葉として聞き取れるようになったのは、半身の血肉、そして骨が朽ち果てた頃だった。

 

 「嘘だ…俺がこんな……こんな最後」

 

 最後まで聞く必要はなかった。

 苦しみを続けてやる必要も無い。

 私はインヴェクションを彼の首元に先込み、一気に引き抜いた。

 鮮血が舞い、首が飛ぶ。

 しかしそれもすぐに腐敗して、風に飲まれて消えていく。

 終わったな。

 それを確信して、私はインヴェクション…そしてマイクとスピーカーを虚空へと戻した…

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