神様に雇われて、異世界転生者を殺すことになったラッパー少女の物語*リメイクするため凍結 作:しじる
腐華が御堂と戦闘をする少し前、列車の外は反乱軍達と政府軍との銃撃戦が起こっていた。
激しい鉄火が巻き起こり、鮮血と木片が海一面に散らばる。
その中突っ切るもの一つ。
それは鉄の扉、それはどんな攻撃にもビクともしないもの。
「あれを何とかしろぉ!」
「ちくしょう、魔装連射砲でも効いてねぇ。あの扉なんだよ!!」
政府軍が魔法やガトリング砲を放ちまくるが、それを塞ぐ扉。
白く、そしてデフォルメされた手足を持った扉…ミスタードーアは反乱軍の壁として、政府軍を圧倒していた。
「キキマセーン!ワターシ、トッテモ硬イノデ!」
「いいぞドーア、そのまま行くぞ!!」
オヤジことマリアの一声で、反乱軍が士気を上げる。
しかし政府軍も負けてはいない、射撃と魔法は強く、ドーアがいなければ壊滅していたと言っても過言ではなかった。
水柱が外れた魔法と弾丸で幾つも巻上がり、列車は列車でボロボロと破壊されていく。
「くそ、いくらドーアがいても…全員庇えねぇ」
「ハイ、やっぱり鎖殿に任せるしかないですねハイ」
ドーアの後に隠れられないものは、鉄火に晒され、身体中に穴を開けられて海に沈められていく。
体に当たらなくとも、水上バイクのようなものこと【水牛】が炸裂させられて、これもまた狙い撃ちされる。
鮮血で海が染まっていく。
今の反乱軍の仕事は、腐華が王子を捕らえるまでの時間稼ぎ。
攻撃しつつ生き残る術を選んでも、死人は出続けている。
しかし、それを見て黙っていられないものが一人いた。
その少女は、最初は怯えていた。
ただただ自分を救ってくれた素敵なあの人の役に立ちたくて。
でも反乱軍の皆も自身に良くしてくれた大切な人達。
その人達が傷つき死んでいくのも見たくはなくて。
眠りし獣は目を覚ます。
「……
ポツリと、そんな声がマリアには聞こえた。
その直後、自身の背後に乗せていたフィーネが海へと飛び降りた。
縛り付けておいたのにも関わらず、その縛っておいた紐は引きちぎられていた。
「フィーネ、何やって…!?」
マリアが気づき、振り向いても既にフィーネは海面に。
しかし驚くべきことに、フィーネは海面に立っていたのだ。
それだけでマリアを含む反乱軍、そして政府軍の驚愕は終わらなかった。
フィーネは懐から、とても小さなナイフを取り出した。
柄尻に髑髏のレリーフが作られ、全体的に真っ黒。
しかもおかしなのは、刃渡りが手のひらほどなのに対して、柄が大型の剣並に長いことだ。
それをフィーネは戸惑うことなく、【自身の胸に突き立てた】。
鮮血が彼女の胸から溢れ出す。
吹き出る血潮は、しかし海へとこぼれ落ちることは無い。
全てがナイフへと吸い込まれていく。
全員が呆然とする中、フィーネは突き立てたナイフを引き抜いた。
するとゾルゾルと気色の悪い音を立てて、真っ赤な、そしてグロテスクな何かが現れる。
それはまるで戦鎚、小さく可愛らしいフィーネの体から出てきたとは思えないほど大きな、そしてどす黒く内臓が絡み合って出来たかのような物体。
凶悪な、そして鋭い峰をいくつも生やし、触れることは非常に危険と誰もがわかるその見た目。
自身の体の倍近く長いそれを、フィーネは担ぎ走り出す。
「【
そう呟き、戦鎚を両手で持ち、一気に振り回す。
ブンブンと風を切り、フィーネは高速でべイコマのように回る。
そして、その勢いのまま列車へと突っ込んで行った。
それを見て呆然としていた政府軍たちは慌ててフィーネを狙う。
回るたびに、鮮血のような何かを撒き散らして迫る少女に、政府軍は恐怖を抱いたからだ。
「撃て、撃てぇ!!」
誰が言ったか射撃要請。
それに合わせて鉄火がまたばら撒かれるが、今度は1人にのみ。
フィーネだけを狙って弾丸、そして法魔が放たれる。
その殆どがフィーネに命中するが、彼女は止まらない。
ギャルルンと海面を走り、ついには列車と目の鼻の先に。
それに合わせたかのようなタイミングで列車から爆音。
車両の何台かの上部が切れ飛んでいた。
それに反乱軍、そして政府軍が驚くまもなく、フィーネの戦鎚が列車に到達。
「潰れろっ!!」
フィーネの小さな呟きに合わせて、戦鎚が回転の勢いを乗せて、列車に叩きつけられる。
辺り一帯に衝撃による地震と誤解するほどの振動が発生する。
車両の1つが丸々潰れ、中に乗ってた兵士がどうなったかなど考える必要も無いだろう。
叩きつけによって、フィーネの戦鎚から鮮血が撒き散らされ、それは弾丸のように触れた兵士を八つ裂きにする。
「の、乗ってきたぞ!!」
兵士の混乱をよそに、フィーネはもう一度戦鎚を担ぎ直し、兵士達を睨む。
「皆を殺す……アナタ達嫌い!」
そう叫び、腐華が向かった方角とは反対。
銃撃を続けている貨物車両へと突っ切って行った。
「フィーネって………あの見た目で、あんなに強かったのかよ」
反乱軍の誰かが呟いた。
それには誰もが頷くことになった。
それからはフィーネの活躍もあってか、反乱軍は包囲網を設立し始める。
それは上手く行き、徐々に流れが反乱軍に傾き始めた時だった。
前方車両から再度爆音、空高く何かが飛び出していた。
それは腐華であったと反乱軍が気づくのはそう遅くはなかった。
「フカ!?」
「フカの姐さん!」
全員の驚愕、しかしそれ以上に腐華から生えているものに驚く。
翼に角、そして尾。
明らか人間には無いそれ。
それは腐華が人間ではないことを表していた。
だが、その驚きを表す前に、腐華は何かをドーアのドアノブに目掛けて投げた。
それはフック、見事にそれはドーアに引っかかる。
「ムム!?ナンデショーカ、カラダニナニカ引ッカカリマシター!」
ドーアの言葉を置いて、腐華は列車へと、コンパスの針のように回転しながら、やがて戻って行った…
「なあオヤジ……俺らとんでもないのが仲間になってたんだな」
反乱軍の1人がいう。
それにマリアは何も言うことは出来なかった。