神様に雇われて、異世界転生者を殺すことになったラッパー少女の物語*リメイクするため凍結   作:しじる

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16.韻 帰る方法

 結局お互い抱き合ったまま寝てしまい、その翌朝。

 先に目が覚めたのは私だった。

 フィーネは相変わらず私の胸に抱きついたまま。

 起こしてしまうと悪いから、ゆっくりとその手を離す。

 地下牢だから朝日が入ってくるとかなくて、少しはっきりしない寝起き。

 ゴシゴシと目を拭って、欠伸をひとつ。

 …このまま行ってしまったら、フィーネ起きた時に泣いちゃうかな?

 そう考えたら、ドアノブに伸ばそうとした手を引っ込めた。

 彼女が起きるまで、そばにいよう。

 そう思い、ベットに座る。

 クークー、可愛らしい寝息が静かな部屋に充満する。

 私はそっと、彼女の頭へと手を伸ばす。

 何度触っても気持ちのいい手触り、撫でてるこちらも気持ちがいい。

 静かな場所で、静かに流れる時間。

 第三者視点から見れば、みすぼらしい牢獄に入った女貴族がゴスロリ少女を撫でているという、なかなか混沌としたものだけれど。

 そうして、時間にしてどれくらいか、頭を撫で続け、フィーネがようやく目を覚ました。

 パチクリと大きな瞳を何度もまばたきし、私をじっと見つめる。

 

 「…おはようフィーネ」

 

 そう私が告げると、フィーネは私に抱きついて答えた。

 

 「おはようフカ」

 

 さて、フィーネが可愛らしい笑顔で告げてくれたことだし。

 ここに居続ける必要がなくなった。

 御堂を殺し、ターゲットの転生者がいなくなった以上、この世界に居続ける必要も無い。

 多分迎えが来るだろう、なぜなら私は…

 この世界に来る前に、帰る方法を聞いてないからだ。

 馬鹿なんじゃないかと自分で思うが、殺したらそのまま直行で帰らされるものだと思ってたからだ。

 それが違った訳で、おかげて皆と宴会出来たり、フィーネの秘密を聞くことが出来たりした訳だけど。

 まあ何にしても迎えが来るだろう。

 そう考えながら扉を開く…

 

 「昨晩はお楽しみでしたね」

 

 扉を閉める。

 今目の前にいたからだ。

 金髪碧眼の超イケメン、アズラエルが。

 なに、ドッキリかなにか?

 扉を開けたらイケメンとか、普通誰でも一瞬扉を閉める。

 心臓に悪いという意味もあるし、夢かと思うということもあるし。

 …何を言ってるんだ私は。

 取り敢えずもう1回扉を開ける。

 やっぱりいた、初めてあった時みたいな薄着のローブを着た【the 天使】という容姿じゃなくて、神父の様な服装でシンプル極まりない格好だった。

 あのハリボテの様な翼もなく、イケメンという点を除けば、誰がどう見ても天使とは思いつかないだろう。

 

 「……なぜ閉めたのです?」

 

 「驚いたから 」

 

 簡素に私は伝える。

 それを聞いてアズラエル、ふっと微笑む。

 

 「貴女も驚くことがあるんですね」

 

 失礼な、表情に中々出ないだけで、驚くことは結構あるんだよ。

 心の中で呟き、ジト目にしてみて彼を見る。

 

 「ところで、迎えに来てくれたの?」

 

 私が疑問をぶつける。

 彼が来たということはそういう事じゃないかな。

 勝手な推測ではあったけど、あながち間違いでもないみたい。

 彼はまた微笑み、伝えてきた。

 

 「ええ、貴女が聞くのを忘れてましたからね。帰還の方法を」

 

 悪かったね、聞いてなくて。

 そう思い、伝えようと唇を開きかけたその時、フィーネが私の側から出てくる。

 ずっと扉で立ちっぱなしの私に疑問を抱いたのだろうか。

 

 「フカー?」

 

 「おやこの声は…」

 

 「あ!」

 

 「あっ」

 

 フカが私の前に出て、アズラエルと目が合った瞬間であった。

 互いにあっと言葉を発し、固まる。

 この様子、どう見ても知り合いだよね。

 ふと私の頭にあるフレーズが浮かぶ。

 神様がこの世界に来る前に言った言葉、【段階的に君の仲間を送り込む】。

 こういう事だったのかな?

 段階的にってことは、他にものちのち来るのかな。

 何にしても、その仲間が死にそうに送るのはやめてくれと、直談判してみたいけど…

 戻ったら会えるのかな?

 まあ何にしても、フィーネが私の仲間として送られてきたことが分かって何よりだ。

 なら、私もフィーネに伝えないとね。

 

 「フカ…知り合いなの?」

 

 フィーネが不安そうに私に尋ねる。

 私が転生者である可能性を考えたのだろう。

 そして、もしかしたら私と離れなきゃいけないことも。

 でもその心配はないんだよフィーネ。

 

 「そうだよ…おかげて確信したよ」

 

 そう呟き、私はフィーネに視線の高さを合わせるためにしゃがむ。

 フィーネは未だ不安そうだったが、頭に手を置いた、そして撫でながら私は話す。

 

 「フィーネの助けるべき相手は私だって」

 

 「ふぇ…?」

 

 フィーネの不安な顔が変わった。

 それは呆気に取られたというふうだったけど、私の言葉でそれは笑顔に変わった。

 

 「フィーネが私から離れる必要は無いってことだよ」

 

 フィーネは私に抱きついた。

 何度目だろうか、フィーネを撫でるのも、抱きつかれるのも。

 暖かく、柔らかなその身を受けるのは。

 それを見て、アズラエルは微笑ましく笑い、私に続きを話しだす。

 

 「それで、いつ戻りますか。私は今からでも帰せますよ?」

 

 そう言って、彼は懐から銃のようなものを取り出した。

 銃と言っても、フックショットの様に銃口から飛び出しているのは槍の様に鋭い、モリのようなもの。

 恐らくこれで【コールドWAR】に戻るのかもしれない。

 いつでも戻れるならば…

 

 「せめて、オヤジさんには別れを言っておきたい」

 

 なんだかんだで、1番お世話になったからね。

 そう言うと、アズラエルは手に持ってたそれを渡してきた。

 

 「使い方は、空にめがけて撃てばOKですよ。それでは…また後で」

 

 そう言って、アズラエルはふっと、ほのかに黄金に輝く光の粒子になって消えた。

 さて、どう説明したものか…私はこのあと話すオヤジさんに、どう別れを告げるべきか、悩むこととなった…

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