神様に雇われて、異世界転生者を殺すことになったラッパー少女の物語*リメイクするため凍結   作:しじる

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19.韻 黒歴史演奏

 フィーネと共にコールドWARに入ってから数日。

 神様からの依頼は以前来ない。

 どうやら殺してほしい転生者はまだ見つからないようだ。

 だったら返してくれと思うけど、まあ返すわけには行かない事情があるんだろう。

 悲観してもどうにもならない、コールドWARの船長室。

 つまり私のマイルームで、私はベットに寝転がっていた。

 コールドWAR船長室、私のマイルームはかなり凝って作った。

 改めて見直して思う。

 部屋の最奥に大型のパイプオルガンが立ち、その神々しくも威圧感を醸し出している。

 その手前には黒塗りのテーブルと安楽椅子があり、テーブルの上にはオーディオレコーダーと羽根ペン&インクが置いてある。

 右の壁には、大きな絵画が飾られており、その絵画は…絵画というよりスクリーンショットは、私のある思い出を撮ったもの。

 私と【とある竜人】が、互いに肩を組み合い、微笑んでいる、それが写っていた。

 それを少し懐かしいと思いつつ、左の壁にはインヴェンションが額縁に飾られ、その下には黒塗りのタンス。

 金の金具を取り付け、その上、左にアシッドスピアがトロフィーのように飾られている。

 右にはモダンなランタンが置かれ、暖かな光を演出する。

 最後に床は木製のタイルで作られ、その上に青いカーペットが引かれていた。

 

 「うん……久々に弾くかな」

 

 真っ先に目に付いたパイプオルガンを見てそう思う。

 こう見えて私は昔…大体3年くらい前に、趣味で小型ではあったけどパイプオルガンを引いていた。

 叔父さんがパイプオルガンの奏者だった、練習用のを引かせてもらってた。

 まあ、あまり上手くはなかったけど、ゲームの中では楽曲を読み込ませるだけで、本当にそう引いてるように思わせてくれた。

 ここはゲームではないから、同じように楽曲読み込ませて弾けるかは疑問だが…

 

 「…取り敢えずやってみよう」

 

 そう思い、私はオルガンに手を置いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私、フィーネがこの船に来てもう数日。

 私は今、船の甲板中央広場にいる。

 お星様が綺麗に光ってて、ずっとそれを眺めてるの。

 いくら見てても飽きはしないよ。

 フカは、私と同じ転生者。

 何となく予想はしてたけど…実際知った時は驚いたし、もし私が助けろと言われた転生者と違ったら…嫌だった。

 だけど、運命はイタズラで、私とフカが離れることは無かった。

 勝手に連れてこられたけれど、その点には神様にありがとうを伝えたい。

 フカに命を助けられて、こんな可愛い服を与えられて、撫でてくれて、なんというか…ずっと私はフカに与えられてばかりだと、気がついちゃった…。

 それにしても、最近フカは暇そう。

 私もそうだけど。

 神様からの依頼がやってこない、それは誰も殺さなくていい。

 それはそれでいいのだけれど、フカは何故か不満そうだった。

 フカは…人を殺したいのかな…

 いや、そんなことは無い。

 だってフカは優しいもの、本当に人が殺したくて不満になってるなら、私はあの時見捨てられてるもの。

 ……ううん、分かってる。

 フカにはなにか事情があるって。

 誰かを殺してでも果たしたいことがあるって。

 

 「……でもそれって…なんなんだろう」

 

 ふとこぼれた。

 そう言えば私は、フカのことほとんど知らない。

 私の命の恩人で、転生者で、鎌と腐食使いで、いっつも気だるげな顔。

 そしてラップが大好き、それくらいだ。

 ……そう言えばフカで思い出したけど、誰か忘れてる気がしてる。

 忘れるってことはどうでもいいことって偉い人が言ってた気がするけど…ほんとなのかな?

 でも、モヤモヤするよぉ…

 

 「んー…ん、何?」

 

 そんな考えてる時、私の獣耳に聞こえるものがある。

 それは音色、空気が震え、鉄が奏でる。

 管楽器のような…でも管楽器とはまた違う。

 弾くように奏でられる、爽やかに、星空に合う、素敵で、とっても…

 

 「綺麗な音色…」

 

 私はその正体を確かめたくて、歩み始めた。

 この姿になってから、耳はかなり良くなった。

 おかげでどこから聞こえてくるかすぐに分かっちゃった。

 私は音に繋がれ、引かれる様にその場所に。

 そこは船長室、フカの私室だった。

 そう言えばフカの私室には入ったことがなかった。

 この船はとっても大きい、よく迷う。

 それもあってかフカと一緒でないと、自分の居場所を見失うことが多かった。

 現に私はここから甲板中央広場まで帰れるかと言われたら無理。

 帰り道わからないよぉ…

 でも、今それは置いておく。

 この綺麗な音色はフカの部屋から響いている。

 ならもしかして、私はそのもしかしてを見たくて、扉をゆっくりと開けた。

 青いカーペットが私を出迎え、壁にある武器と絵画(スクリーンショット)

 中央に座す黒塗りのテーブルと安楽椅子、でももっと目を引くのは最奥のパイプオルガン、あれが音の正体。

 そしてそれを演奏するのは…フカだった。

 集中した…とは言いきれない、いつも通りの寝ぼけ眼で指を弾いて鍵盤を奏でてる。

 それはまるで巧みに美しく舞踏する踊り子のように、フカの指は舞い踊る。

 指に合わせて体も揺れる。

 体から伝達するように翼と尾も揺れて、まるで蜃気楼のように…だけれどもフカはそこにいて幻じゃない。

 着ているいつもの服も、中世の貴族っぽいのもあってか、まるでその時代にやってきたみたい。

 目をぱちくりさせて、見れば見るほど、フカの動きと、それによって奏でられる音に魅せられていく。

 音が踊り、鉄管が震え、空気が伝える。

 指が走り、鍵盤が押され、音を複数生み出す。

 あぁ、私は今、凄いものを聞いている気がする。

 私は、フカの演奏が終わるその時まで、全く動けないで、その音に聞き惚れていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふぅ…何とか行けた。

 うろ覚えで、昔叔父さんに教えられた曲を弾いた。

 ゲームと同じように、楽曲を読み込ませてみたけどやっぱりダメで、結局自分で弾いたけど…

 

 「下手だな…」

 

 叔父さんに言わせばそうだろう。

 いやプロと比べる時点でおかしいか?

 それでもいくつか音を外したし、うろ覚えだから飛ばした部分もあるし。

 かなり酷いなぁ…

 ラップ風にいうなら、【ライムを踏めても、フロウが無い】

 音を出すだけなら誰でも出来る、奏でられてない。

 自分でそれはよく分かっていた。

 あぁ…やっぱり向いてないなぁ。

 こんな転生することが分かっていたら、ゲーム内でも楽せずに、パイプオルガンの練習もっとしたのに。

 そう考えてると、拍手の音が響く。

 パチパチパチと、音のする場所は真後ろ。

 私は振り返り、そこを見てみると…フィーネだ。

 フィーネが手を打ち、満面の笑顔を見せていた。

 

 「聞いてたの?」

 

 そうだとしたら恥ずかしい。

 いやまって、フィーネは犬のワービースト。

 鼻はいいことは知ってた、耳もいいのは忘れてた。

 どこにいたのかはおおよそ予想がつく、とすれば、この音楽がどこまで響いたかわかるわけで…

 

 「甲板中央広場まで響いたの……」

 

 頭を抱える。

 は、恥ずかしい…こんな酷い音をそんな所まで…

 そうだった、コールドWARに他人を招待したことなんてなかったから、どこまで音が響くかなんて調べてなかったねそう言えば。

 

 「もっと聞きたい!」

 

 恥ずかしがってる私を他所に、フィーネは私にせがむ。

 あんな音を聞きたいって言ってくれて、少し嬉しさと恥ずかしさが襲ってくる。

 うぅ、なんか未体験な気持ちだ…

 でも、せっかく聞いてくれると言ってくれたし…

 聞かれてしまったと考えたら、少し吹っ切れた気がする。

 よし、それじゃあ弾こうか。

 気持ちを切り替えて、鍵盤に向き合っ……

 

 「マスター!」

 

 「ぬあああああああいい?!?」

 

 振り向いた先に現れた鉄の扉。

 それは若干の怒気を混ぜて、大きく声を上げた。

 お、驚いた…へ、変な悲鳴出ちゃった…

 あれ、この喋る鉄扉見覚えが…あっ。

 

 「ドーア!!」

 

 「イエース、I am!!」

 

 そう、鍵盤と私の間から少し離れ、()を張って答えた。

 

 「マスター、忘レテイクナンテ酷イデース!!」

 

 ごめん、本当に忘れていた。

 アクアマリンに置いてしまってた。

 でもね、仮に忘れてなくてもあの小さなフックショットでドーアを支えられるかどうか…いや行けるか。

 だってアズラエルが持ってきたし…いやいや、やっぱり無理か?

 私の肩が無理そう。

 

 「マア、ワザトジャナイナライイデース。ソレヨリワターシモマスターノ【演奏】聞キタイデース!!」

 

 ドーア、あなたも?

 まさかドーアも聞きていたのかな、こんなことを言い出してくるなんて…

 というかドーアどうやって帰ってきたの?

 疑問を口にしようと思ったけど、2人とも目をキラキラにして私の演奏を待っている。

 ……仕方ない、また後でそれを聞こうか。

 私はまたパイプオルガンの前に座り、指を走らせた…

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