神様に雇われて、異世界転生者を殺すことになったラッパー少女の物語*リメイクするため凍結 作:しじる
作戦を2週間後に控え、私は自室のベットで横になっていた。
ベットと言っても、かなりボロい。
正しく即席と言ったものだ。
そりゃそうだ、そんないいベットなど使う余裕は反乱軍にはない。
自室自体もボロい、そもそも地下の牢獄だった場所に、鉄格子を取り外して、薄い木版を打ち付けただけの状態。
床だって石畳だ。
一応掃除はしたが、それでもその汚さは取れない。
たがこれでもマシな部類だ。
仕方ない、わがままは言えない。
まあ、何気にこの汚さは良かったりする。
こんな汚いところ、普通なら暮らさないからね。
「……お風呂入りたい」
唐突に思った。
汚いとかどうとか考えていたせいかな。
そういえばここ最近お風呂に入れてない。
竜人の身体のおかげで、そんな臭いとかしないし、汗もかいてないけど、やっぱり日本人女子お風呂には入りたい。
どうにかできないだろうか、ラップでもお風呂を作るのは無理だ。
出てくるのは真水、冷たくて死にそうになる。
魔法で作る水は、なぜか私のは全て冷え冷えの真水なんだよ。
氷水より冷たい感じ。
まあ本来は攻撃用だし、仕方ないのかな?
そんなこんな考えていると、扉を叩く音。
って、そんなに強く叩くと…
「フーカー!!」
あぁ、やっぱり。
フィーネが私の部屋の扉(極薄)をぶち抜いて現れてしまった。
相変わらず、私の前では元気だねぇ。
胸に飛び乗ってきたフィーネを撫でる。
ステカンストじゃなかったら、飛び乗られただけでも死にかけたと思う。
竜人というのもあるかもしれないけど。
そうして撫でてると、尻尾が強く振られ…あれ?
「フィーネ、魔法解除した?」
「うん…フカと二人っきりだから」
「そりゃそうだけど…」
擬態化魔法は任意で解除できるからね。
かけた側も、かけられた側も。
確かに二人っきりだけど、今扉に大穴空いて丸見えなんだけどな。
まあフィーネが嬉しそうだから、邪魔しないようにラップを口ずさむ。
「痛めてごめんね薄板くん
すぐさま体直してあげる
大穴あいた空虚な体
詰めに詰め込み元気な扉」
オプジェクト限定回復魔法。
通称耐久回復……のはずだったけど、元気な扉は余計だったみたいで。
「……あり?」
扉が治るどころか、みるみる厚く、固く、鈍い金属光沢を放つ鋼鉄製の扉に。
更にはHP表のようなものが見えてきた。
HP表のようなものは、私にしか見えていないようで、フィーネも扉の異変に気づくけど、HP表を見ていない。
そして、このHP表の有無を私は知ってる。
スカイウォーオンラインでは、敵のHPは臨場感を出すために非表示されている。
それはパーティでも同じで、HP表が見えるのは1つしかいない。
「眷属化してないこれ?」
そう、眷属のみそのプレイヤー本人限定だがHP表が現れるんだ。
つまりこの鋼鉄製扉……のようなモンスターは、私の眷属になったということだ。
回復魔法だったのに、眷属化する理由がさっぱりわからないが、多分ラップに付けた単語が悪かったかもしれない。
そうして、私たち2人が呆然としてると、扉は端から手足を生やした。
ドラ〇もんみたいな、デフォルメされた白い丸手丸足だ。
それはドア枠から飛び出して、こっちに歩いてきた。
すごい威圧感がするが、ある程度の距離まで来て、扉は……
「ワターシ、【ミスター・ドーア】トモウシマス、眷属トシテイタダキ、アリガトウゴザイマス!」
ものすごいカタコトで、そう言い出した。
……どうやって声出してるんだこれ。
開いた口が塞がらないとはこの事か、しばしのあいだ、フィーネと私は、ただただ、綺麗な直角(比喩ではない)に頭を下げる扉…ミスター・ドーアを眺めていた。