神様に雇われて、異世界転生者を殺すことになったラッパー少女の物語*リメイクするため凍結 作:しじる
ミスター・ドーアを眷属にしてしまってから数分後。
私は新しく扉を作り直し、このドーアをどうしたものかと考えていた。
眷属化したからと言って、消えることが出来るかといえば否。
そして目立つ巨体と黒光りする肉体?鉱体?
どっちにしても困ることには変わらない。
反乱軍に見つかったらどう説明しようか…
眷属化したと言うのは間違いなくまずい。
眷属化はプレイヤーは普通に出来ているけど、この世界の住民が出来るかどうかわからない。
逆をいえば、何らかの存在と疑われざるを得ない。
単純、でたらめに強い人という認識から、洗脳術的なものが使えるデタラメに強い人になるのは、危険度が増す。
反乱途中に消しにかかってくるかもしれなくなる。
そうなるときつい、ただでさえチームプレイなんてできないのに、不穏な雰囲気など出したくない。
「どうしようか…」
ウンウン唸ってると、ドーアが提案する。
「ソレナラ、ワターシニ良イ考エアリマース!」
そう言って、その内容を話し出すドーア。
それを聞いて、大丈夫かどうか不安になる。
「フカ〜」
尻尾を振って笑うフィーネ。
一応微笑み手を振るけど、正直笑えないんだよね。
…しょーがない、一か八か試してみようか。
私はドーアの提案を呑み、ドーアと共にオヤジさんの部屋へと向かった。
当然道中、奇っ怪な目で見られたり、何やってんだクサリの姐さんと声をかけられたりしたけど、まあ仕方ないと割り切った。
やがて辿り着き、その戸を叩く。
心地よく木製特有の音が響く。
「はいれ」
「失礼します」
言葉に合わせて部屋に入る。
オヤジさんだけだった。
今日は護衛さんいないのかと思いつつ、ドーアと共に入った。
「なんだクサリか、お前ならノックなしでも…なんだそりゃ?」
まあ知ってたが、オヤジさんも唖然とした表情でドーアを見つめる。
そりゃそうだね、こんな鋼鉄製扉が歩いて入ってきたらそうなるね。
私はドーアが提案した作戦を口に出した。
「実は、この基地の地下でうろついていた魔物でね。放置するのも危ないし、取りあずとっ捕まえて餌付けしておいたよ。今は私に懐いてるから大丈夫」
……うん、どこが大丈夫なのかさっぱりだし、そもそもこの世界に魔物入るのだろうか?
そう言えば魔法は見たけど、魔物の有無は知らないや。
いやいや、亜人がいるんだからいると信じよう。
しばらくオヤジさんは考えていたようだけど、最後には口を開いて答えた。
「そうか、仲間にしろと頼みたいんだな?」
……何がどうしてこうなったのかわからない。
計画通りなら、オヤジさんがそれでと聞いたあとにそれを聞こうと思ったのに、なんでその工程を読まれているんだろう。
「顔に出てるぞ、仲間にしてくれたら嬉しいなって」
それを言われて顔を隠す。
やっぱり私は完全な無表情という訳でもないようだ。
なんせ表情から、心中を読まれるくらいだし。
「クサリの頼みなら断らねぇ、よくわからん奴だけど、まあいいぜ。2週間後の襲撃に使えるかもしれないしな」
「感激感謝デース!アリガトウコザイマース!!」
ちょ、喋っちゃダメでしょうに。
ドーアが喋ったためか、オヤジさん無言で固まってる。
目玉が飛び出るほどの驚きってこういうことなんだろうね。
「っは、クサリ…そいつ喋るのか?」
「うん……伝えるの忘れてた」
忘れてた訳では無いが、言ったらややこしいことになりそうだったから言わなかったのだ。
というか、計画だとドーアは喋らないはずだったのに。
私はドーアを軽く睨む。
ものすごく申し訳なさそうに頭垂れていた。
「ま、まあいい。珍妙な格好だが…女に二言はねぇ!こいよ反乱軍!」
「アリガトウコザイマース!!大好キデース、オヤジサーン!!」
「す、好き!?」
好きと言われて真っ赤になるオヤジさん。
はへ?
ドアだよ、好きくらい言われても赤くはならなくない?
「い、異性に言われるのは初めてなんだよ!」
はぁ…
ドーアを異性と思っていいのかどうかはさておき、オヤジさんの意外な乙女心が分かってしまった。
初なんだねー。
言ったら殺されそうだから言わないけど、いや多分蚊に刺された程度だろうけど。
そんな気配を感じた。
ドーアを何とか反乱軍に取り込んでからさてしばし。
私はまた自室に戻っていた。
あのボロいベットに寝っ転がって、お腹にフィーネを乗せていた。
ベットに耐久回復を使ったら、多分いいベットになりそうだけど、またドーアのように眷属化したら嫌だし、それは我慢した。
「フカ〜、フカ〜…んふふふ」
お腹の上で嬉しそうにゴロゴロするフィーネ。
そんなに楽しいかな?
私には何が楽しいのかわからない。
まあどちらにしても、フィーネが楽しいならそれでいいか。
しかし暇だ、2週間後に大きな作戦があるとはいえ、それまで暇なのは変わらない。
なにかいい加減暇つぶしを考えないと。
跳ね始めたフィーネをさておき、私は唸りだす。
……冷静に考えたら、お腹の上でジャンプされたら普通吐くよね。
この体、驚かされることばかりだなぁ…
「フカのお腹、ぽよぽよで気持ちいい」
……何だろうか、凄く傷つくことを言われた気がする。
フィーネにそのつもりは無いだろうけど。
なんか、辛くなった。
そのまま私は暇つぶしのことなんか忘れて、お腹の上で跳ねるフィーネをよそに、枕を涙で濡らした。