神様に雇われて、異世界転生者を殺すことになったラッパー少女の物語*リメイクするため凍結   作:しじる

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9.韻 交渉、そして例え悪意なくとも傷つく言葉は傷つくものであるby腐華

 ミスター・ドーアを眷属にしてしまってから数分後。

 私は新しく扉を作り直し、このドーアをどうしたものかと考えていた。

 眷属化したからと言って、消えることが出来るかといえば否。

 そして目立つ巨体と黒光りする肉体?鉱体?

 どっちにしても困ることには変わらない。

 反乱軍に見つかったらどう説明しようか…

 眷属化したと言うのは間違いなくまずい。

 眷属化はプレイヤーは普通に出来ているけど、この世界の住民が出来るかどうかわからない。

 逆をいえば、何らかの存在と疑われざるを得ない。

 単純、でたらめに強い人という認識から、洗脳術的なものが使えるデタラメに強い人になるのは、危険度が増す。

 反乱途中に消しにかかってくるかもしれなくなる。

 そうなるときつい、ただでさえチームプレイなんてできないのに、不穏な雰囲気など出したくない。

 

 「どうしようか…」

 

 ウンウン唸ってると、ドーアが提案する。

 

 「ソレナラ、ワターシニ良イ考エアリマース!」

 

 そう言って、その内容を話し出すドーア。

 それを聞いて、大丈夫かどうか不安になる。

 

 「フカ〜」

 

 尻尾を振って笑うフィーネ。

 一応微笑み手を振るけど、正直笑えないんだよね。

 …しょーがない、一か八か試してみようか。

 私はドーアの提案を呑み、ドーアと共にオヤジさんの部屋へと向かった。

 当然道中、奇っ怪な目で見られたり、何やってんだクサリの姐さんと声をかけられたりしたけど、まあ仕方ないと割り切った。

 やがて辿り着き、その戸を叩く。

 心地よく木製特有の音が響く。

 

 「はいれ」

 

 「失礼します」

 

 言葉に合わせて部屋に入る。

 オヤジさんだけだった。

 今日は護衛さんいないのかと思いつつ、ドーアと共に入った。

 

 「なんだクサリか、お前ならノックなしでも…なんだそりゃ?」

 

 まあ知ってたが、オヤジさんも唖然とした表情でドーアを見つめる。

 そりゃそうだね、こんな鋼鉄製扉が歩いて入ってきたらそうなるね。

 私はドーアが提案した作戦を口に出した。

 

 「実は、この基地の地下でうろついていた魔物でね。放置するのも危ないし、取りあずとっ捕まえて餌付けしておいたよ。今は私に懐いてるから大丈夫」

 

 ……うん、どこが大丈夫なのかさっぱりだし、そもそもこの世界に魔物入るのだろうか?

 そう言えば魔法は見たけど、魔物の有無は知らないや。

 いやいや、亜人がいるんだからいると信じよう。

 しばらくオヤジさんは考えていたようだけど、最後には口を開いて答えた。

 

 「そうか、仲間にしろと頼みたいんだな?」

 

 ……何がどうしてこうなったのかわからない。

 計画通りなら、オヤジさんがそれでと聞いたあとにそれを聞こうと思ったのに、なんでその工程を読まれているんだろう。

 

 「顔に出てるぞ、仲間にしてくれたら嬉しいなって」

 

 それを言われて顔を隠す。

 やっぱり私は完全な無表情という訳でもないようだ。

 なんせ表情から、心中を読まれるくらいだし。

 

 「クサリの頼みなら断らねぇ、よくわからん奴だけど、まあいいぜ。2週間後の襲撃に使えるかもしれないしな」

 

 「感激感謝デース!アリガトウコザイマース!!」

 

 ちょ、喋っちゃダメでしょうに。

 ドーアが喋ったためか、オヤジさん無言で固まってる。

 目玉が飛び出るほどの驚きってこういうことなんだろうね。

 

 「っは、クサリ…そいつ喋るのか?」

 

 「うん……伝えるの忘れてた」

 

 忘れてた訳では無いが、言ったらややこしいことになりそうだったから言わなかったのだ。

 というか、計画だとドーアは喋らないはずだったのに。

 私はドーアを軽く睨む。

 ものすごく申し訳なさそうに頭垂れていた。

 

 「ま、まあいい。珍妙な格好だが…女に二言はねぇ!こいよ反乱軍!」

 

 「アリガトウコザイマース!!大好キデース、オヤジサーン!!」

 

 「す、好き!?」

 

 好きと言われて真っ赤になるオヤジさん。

 はへ?

 ドアだよ、好きくらい言われても赤くはならなくない?

 

 「い、異性に言われるのは初めてなんだよ!」

 

 はぁ…

 ドーアを異性と思っていいのかどうかはさておき、オヤジさんの意外な乙女心が分かってしまった。

 初なんだねー。

 言ったら殺されそうだから言わないけど、いや多分蚊に刺された程度だろうけど。

 そんな気配を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドーアを何とか反乱軍に取り込んでからさてしばし。

 私はまた自室に戻っていた。

 あのボロいベットに寝っ転がって、お腹にフィーネを乗せていた。

 ベットに耐久回復を使ったら、多分いいベットになりそうだけど、またドーアのように眷属化したら嫌だし、それは我慢した。

 

 「フカ〜、フカ〜…んふふふ」

 

 お腹の上で嬉しそうにゴロゴロするフィーネ。

 そんなに楽しいかな?

 私には何が楽しいのかわからない。

 まあどちらにしても、フィーネが楽しいならそれでいいか。

 しかし暇だ、2週間後に大きな作戦があるとはいえ、それまで暇なのは変わらない。

 なにかいい加減暇つぶしを考えないと。

 跳ね始めたフィーネをさておき、私は唸りだす。

 ……冷静に考えたら、お腹の上でジャンプされたら普通吐くよね。

 この体、驚かされることばかりだなぁ…

 

 「フカのお腹、ぽよぽよで気持ちいい」

 

 ……何だろうか、凄く傷つくことを言われた気がする。

 フィーネにそのつもりは無いだろうけど。

 なんか、辛くなった。

 そのまま私は暇つぶしのことなんか忘れて、お腹の上で跳ねるフィーネをよそに、枕を涙で濡らした。


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