誰かに触れていないと声が聞こえる。
『…セ』『ロセ』『コロセ』『コロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセ』
もう、限界だ。
強すぎる星の思念、矮小な人の意思を飲み込み人を皆殺しにするだけの機能に変えようとする。
近くにいたマナカを抱き寄せ、その匂いと柔らかい身体を全身で感じれば徐々に星の声は静かに聞こえなくなっていった。
「大丈夫だよ葵さん、貴方は葵私の愛しい人で私は貴方の物」
マナカは彼の身体が小刻みに震え、恐怖から逃れる様にしがみ付くさまに対して慈愛の笑みを浮かべながら、その頭を胸に抱く。
強い締め付けだ、12歳とは思えない。
当然だ星の触覚として常に十全な状態で戦える様に、地上にいる全ての人間を殺し尽くせる様に星からバックアップされているのだ。
しかし、それは彼が鍛え望んだ力ではない。
ミシリ
彼を介して神樹と契約している、この身体から鳴る骨が軋む音、少しでも力を入れ間違えれば人を抱きしめる事も出来ないおぞましい力。
その音を感じたのか彼がその手を緩め、逃げようとするが逃がさない。私はあの日彼に救われたのだ、その後も何度も彼と身体を重ね心を重ねた。
こんな所で手は離さない、より強くお互いの境界線が曖昧に成る程に彼を押し倒し足を絡めてその唇を貪る様に奪う。
「ぷはッ」
息苦しさから唇を離せばお互いを繋ぐ銀の糸。
頬を上気させ息苦しさからか息を荒げるその姿に、こんな状況でありながら彼を求める獣欲が高まり、その欲望のままに彼の服を破ってその胸の頂を触れない様に身体を舐める自分の物だと訴える様に自分の唾液でマーキングして。
服の上からも分かる彼の高まりに手を這わせれば、その熱さに火傷しそうになりながら、衣服を引き下ろして口に含んだ。
ーーーーー
ナルトは心地よい虚脱感を覚えながら必死に自分を求めたマナカの髪を梳く。白いものが僅かに付いた唇にキスすれば僅かに自分の味がしたが特に気にはならなかった。
服を整えマナカをお姫様抱っこで持ち上げ部屋を出ればそこにはイルが気まずそうに待機していた。
「どうしたイル?」
「あのマスターカカシ上忍がお待ちです…」
「そうか…軽く汗流してから会いに行くから夜飯用意しといてくれ」
「かしこまりました」
風呂に行く途中目を覚ましたマナカとお互い軽く洗ってから、客間の一つに行けば美味しそうな匂いの食事が既に用意されていた。
「カカシ先生、話は飯を食べながらにしましょう」
「ん、そだね」
カカシは目の前のナルトを見る、今までで一番落ち着いているその姿に少しは話を聞いてくれるかとホッと、周りに気がつかれないよう息を吐いた。
食事はデミグラスソースハンバーグ。濃厚なデミグラスソースとハンバーグのジューシーさが口一杯に広がり大変美味、野菜に関しても今まで食べた事がないほど味が濃くて美味かった。
「ナルト、俺がお前の担当上忍に選ばれたのはお前の中の九尾の監視の為だ、お前が忍びでなく平穏に暮らしたくともそれは許されない。
もしお前が忍びにならなければ檻に閉じ込められ一生幽閉されるはずだ」
「成る程」
目の前のナルトは理解を示すが。
カカシがここの結界を直に経験した今なら、ナルトの実力が普通でない事は理解している。
その上で考えれば良くて幽閉、悪ければ言うことを聞く相手を探して九尾の再封印…それはナルトの死を意味する。
例えそうだとしてもカカシの任務、九尾の監視は変わらないだろう。
「どうする?」
「……忍びにはなろう」(ただしいずれ木の葉からは出る)
後半は口に出すことなく答えたナルトに。
カカシは「そうか、なら明日同じ時間に演習をする」そう伝えれば食事を書き込んでその場から姿を消した。
ーーーーー
カカシはナルトの家に張っていた結界やゴキブリの事を火影に伝え、自らの家に戻った。
普通とかけ離れたナルト、恐らく今現在でも奥の手を使わざるおえないだろうと、今後面倒な展開になる事を感じいつも隠している左の写輪眼を瞼の上から触った。
「ヘックシ‼︎」
その頃カカシにもナルトにも忘れられたサスケは一人演習場で寒さに震えながらクシャミをしていた。
ーーーーー
翌日カカシが演習場に着くと、腕を組んで不機嫌さを隠しもしないサスケと相変わらずイチャイチャしているナルト。
「いや〜、済まないチョット遅れちゃったね」
「貴様等の中では日を跨ぐのをチョットと言うのか?」
「本当ごめん…ほらナルトとマナカも」
「悪かった」「ごめんなさい」
「それじゃあ演習を始めよう。ここに鈴が有るこの鈴を取ったものが下忍に成れる。
当然二つしかないから一人はアカデミーに戻ってもらう」
昨日と違い手を繋いではいるがナルトとマナカはこちらを見て話を聞いてくれている。
ホッとしながら開始を宣言すれば、ナルトとマナカ・サスケは姿を隠した。
「ん〜見事な隠形だな」
ナルトは以 依頼で監視しなければならないから、サスケとマナカの実力を調べるか。
その頃ナルトとマナカはカカシから遠く離れた演習場ギリギリの場所でこの演習の意義を話し合っていた。
「どう思うマナカ?」
「アカデミーの先生は三人一組って言ってたからこの三人チームを崩す様なことはしないと思うんだよ」
「確かに、それにアカデミー卒業生が上忍に一対一を選択して鈴を取れるとも限らないか」
「それならやっぱり目的はチームワークかな」
「そうだな、その上で俺はカカシに監視される必要が有るから落とされることは無いはず。その事も含めて俺を除いたマナカ、サスケで鈴を取るべきだろう」
二人は頷くとサスケの気配がする場所に向かう。
カカシはサスケの戦闘能力を見るために隠れていたサスケの正面から堂々と戦いを挑んだ。
繰り出される拳や蹴りはどう見ても下忍レベルを超えている。
右の拳を顔に当てに行けば素早くしゃがんで回避し足元から飛び上がり身体の中心に蹴りを放つ。
それを右手を戻す事で弾き、体制が崩れたところに左の拳を打ち込む、サスケは咄嗟に顔を捻り捻った反動で手を鈴に伸ばした。
一瞬早く気が付いたカカシが腰を引き膝を腹に打ち込んで距離を取る。
体術はアカデミーでもトップクラスだなこれは。
「サスケ体術だけでは勝てないぞ!」
少しの挑発を込めて言ってみれば
「はっなら次は術を見せてやる」
この年齢にしては素早く印を組み。
【火遁・業火球の術!】
サスケの口から噴き出した業火の球はカカシが居た場所ごと地面を抉って周囲に熱波を及ぼしたか。
「やり過ぎたか?」
サスケが心配するのも仕方がないだろう、術が当たった場所には小さなクレーターが出来て、その場所からはカカシの姿が見えない。もし焼け死んでいたらと考えたが、アイツが弱いせいだと思い気を抜く。
もっと戦闘経験が有れば気が付いただろう、火が燃えていても人間の焼けた匂いがしない事に。
炎に隠れてわかりづらいが地面のクレーターに違和感がある事に。
気が付いた時にはサスケは足首をカカシに掴まれ地面に引きずり込まれそうになった。
【土遁・心中斬首の術】
しまった、と思った次の瞬間ズボンを引かれ後ろに投げ飛ばされた。短い掛け声に上を見れば回転して落ちてくるマナカの姿、勢い良く踵を地面に落とせば地面は割れて周りの草木は薙ぎ倒され、その地割れの中からカカシが血を流しながら飛び出した。
二人はこの機会に畳み掛けるでもなく阿吽の呼吸で離脱する。
「ここまでくれば大丈夫だろ」
「ナルト君大丈夫?」
ナルトとマナカは手を繋ぎ、サスケが息を整えるのを待つ。
「テメェ等何のつもりだ」
「この任務の意味はチームワークだ、俺たちに色々思う事はあると思うが受かりたければ俺たちの作戦に加われ」
反抗的な態度を取ろうとするサスケに作戦を伝えてマナカとナルトはカカシの元へ向かう。
直ぐ様カカシの姿を捉えたナルトは木の枝を折って地を蹴ってカカシに向かいチャクラで強化した木の棒を振るう。
かつての世界で避けタンクとして近接長刀でカグヤを前線に縛り付けていた斬撃の結界。
向こうが突っ込めばいなして間合いを詰め、逃げる素振りを見せれば先手を打ってその先を潰す。
異常に戦い慣れている、それがカカシの抱いた感想だった。先手を打とうと動けどもその先の動きは尽く読まれ、かといって倒しに行っても反射レベルの動きながら的確に此方の動きを封じてくる。
その上余裕があるのだ、彼の目をみればわかるナルトは一切目をそらす事なく自分の目を見てその反応で先読みしていると。
しかしそのおかしさ、異常さがよくわかる。
彼の剣は長年の戦闘経験から来るものだ、まだ実戦経験のない卒業生がこのレベルの戦闘能力と先読み反射で対応できるわけがない。
声が聞こえる…星の声が目の前の魂を喰らって星に命を還元せよと。
『殺せ殺せ殺せ殺せ』
戦いが長引けば間違いなく星の意思に飲まれてカカシを含め木の葉に甚大な被害を出してしまうだろう、この身体では星の意思を抑えるなど、どうしようもなく木の枝とクナイで切り結びながら隠れているマナカとサスケに合図を送り、彼らが飛び出した瞬間周りに気を取られたカカシに殺気を叩き込んで虚をつく。
驚き無防備になったその身体に6連撃を打って更に隙を作れば飛び出したマナカとサスケがカカシが腰に吊るした鈴を奪った。