毎週更新と言いながらなかなか書く時間が取れず隔週更新がやっとの状況です。しかも、今週からテストが始まってしまうので、さらに更新が…
どうか長い目で見守ってくださると幸いです。
アリーナの地面へと着地すると、ほぼ満員の観客席とこれから沈むのを待つばかりの太陽が浮かぶ空、そして、その空よりも濃い青色の機体が中空に浮かんでいた。
「あら、貴方だけでして? てっきり2人まとめてかと思っていましたわ」
僕が一切の反応を示さないでいると、余裕の表情だったオルコットさんの顔が次第に苛立ちを示していく。
「……ああ、わたくしと戦うことが怖くて話すこともできませんのね。まあ、いいですわ。そんな貴方にチャンスを差し上げます」
僕が無言である理由を勝手に解釈し言葉を続けていく。チャンス、と言った瞬間に彼女の視線が物理的な高さ以上に僕を見下したものになっていた。
「わたくしが勝つことは誰から見ても明らか。この大勢の前で恥をかきたくないのでしたら、ここで数々の無礼なふるまいを謝罪すれば許してあげてもよくてよ?」
それに、と彼女は続ける。
「日本にはこういう時にふさわしい謝罪の仕方があるのでしょう?」
つまり、土下座をして許しを請えということだった。しかも、手に持っていた2メートルほどの長さの銃―ハイパーセンサには《スターライトmkⅢ》と表示が出ている―のセーフティを解除しているのが、これまたハイパーセンサから報告される。何と単純な脅しだろう。内心ため息を吐いた。
右手に視線を落として、ヴェント、と小声で呟く。すると僕の右手に光の粒子が集まり、アサルトライフル『ヴェント』が現れる。この展開の仕方はIS乗りたてのビギナがまだ武装の展開イメージができない時に使う方法らしい。1週間でイメージのみの展開を練習しても実戦で使う水準には達しないだろうと考え、展開練習はほとんど行わず声に出して武器を展開する方法に決めていたのだ。
そして、僕は右手に持ったライフルのセーフティを解除し、オルコットさんへと向けた。
「……それが貴方のお答えですか」
スッと彼女も銃口を僕に向ける。沈黙。それが5秒ほどたったところで、僕はゆっくりと口を開いた。
「初手は譲るよ。レディファーストだ」
言い切るかどうかという瞬間にトリガーが引かれた。レーザが走る音と光を認識するとほぼ同時に僕もヴェントの引き金を引き、右足を軸にして体を90度回転させて相手の初弾を回避した。
「くっ! やりましたわね」
しかし、相手は完全に油断していたらしく直撃だった。僕は地表を滑るように移動しながら2発連続で撃つ。
「甘いですわ」
直撃したことを引きずることなく、最小限の動きで回避される。
スターライトの発射口が3回瞬く。
避けようとした場所を的確につぶされる。
ブースタを吹かし回避するが、1発が右足に直撃。
ダメージ38 残量282 と表示された。
短く舌打ち。
切り替えろ、と自分に言い聞かせる。
左手にマシンガンを呼び出し、弾幕を張る。
相手はさらに距離を取ってきた。
詰めるか?
いや、まだ早い。
お返しといわんばかりにレーザの雨が降り注ぐ。
こちらも落ち着いて距離を置いた。
実弾とレーザとが間断なく行き交う。
どちらもほとんどが当たらない。
「思いのほか足掻きますわね。では、わたくしも本気を出すと致しましょう」
突如、打つのを止めて語りかけてきた。相手にとってはまだウォーミング・アップのつもりだったようだ。本気を出す、とは間違いなくアレを使うということだろう。
「行きなさい、ブルー・ティアーズ! さあ、貴方はわたくしとこのブルー・ティアーズが奏でる円舞曲に相応しいお相手かしら?」
相手の機体の肩部ユニットから4機のユニットが分離する。
BIT兵器。
あれこそがブルー・ティアーズ最大の特徴である。
マインド・インターフェースにより独立稼働を可能にしているらしい。
地上での平面的な動きでは直ぐに囲まれると判断し、空中へと飛び出す。
ビットも僕を追いかけてくる。
どうやらオルコットさんはこいつらを僕の死角を狙って移動させている。
幾らハイパーセンサにより全方位を把握できても、普段見えない部分はなかなか注意を回しづらく、どうしてもタイムラグが出てしまう。
そして、4機のビットから一斉にレーザが発射される。
どうにか全てを回避するが回避先にビットが回り込む。
不味い。
そう思って上へ回避しようとした瞬間、背部から衝撃が走った。
油断した、と考える暇もなく別のビットからも撃ち込まれる。
そこからはひたすらに防戦一方だった。
どうにか機動のパターンを変えつつ回避を続ける。
だが、どう動いても徐々に回避先が狭められ、レーザが直撃してしまう。
どうにか撃ち返してはいるが、精彩を欠いた攻撃は全く当たらない。
焦りが募るばかりの悪循環だった。
「はあ、はあ……」
「18分、ですか。よく初見でここまで耐えたものです。褒めて差し上げますわ」
言いながらも油断なくビットで僕を包囲している。
「さて、もう降参することをお勧めいたしますわ。これ以上続けて醜態を晒すよりはましではなくって?」
「僕はまだ、負けていない」
僕はemptyと表示が出たヴェントを投げ捨て、近接ブレードを展開する。
「減らず口を!」
ビットが動き出すのと同時に、ブースタをフルスロットルに入れる。
空気抵抗で機体が軋む音が聴こえる。
ビットから何発か貰ったが、その分一気にオルコットさんとの距離が縮まる。
「なんてムチャな!!」
特攻に驚いているようでビットの動きも一瞬だが停止した。
逃すものか。
すれ違いざまに1基をブレードで切り裂く。
もう、彼女までの道を塞ぐものは何もない。
オルコットさんは動かない。
もらった。
そう確信した時だった。
「狙い通りですわ」
にやり、とオルコットさんが笑う。それと同時に腰部のアーマーが分離した。
「あいにく、ブルー・ティアーズはそれだけではなくってよ!」
言うと同時に、分離したブルー・ティアーズから何かが発射された。
ミサイルだ。
そう気づいた時には既にそれが目の前にまで迫っていた。
この距離では避けられない。
直撃。
負ける?
約束したのに?
嫌だ。
それだけは絶対に。
そんな僕の拒絶なんか知らん顔でミサイルが迫る。
そして、僕は爆炎に包まれた。
********************
「呆気ない、所詮男はこの程度ということですか」
―相手が呟く―
「あー、惜しかったわね」
「でもでも、代表候補生相手に善戦したんじゃない?」
―名前もまだ覚えていないクラスメイトの声がする―
「あら、あっさり負けたようね」
「いいえ、それはどうかしら?」
―誰か知らない人の言葉に、きっといつもみたいに
不敵な笑みを浮かべているだろう先輩が答える―
ここにいる全ての人の声が聞こえてくる。
しかも、それら1つ1つがはっきりと分かる。
不思議な感覚だった。
でも、何故か悪い気はしない。
「……三海、君」
―祈るように僕の名を呼ぶルームメイト―
そうだった。
約束、したんだ。
負けない。
絶対に。
そして、次第に煙が晴れていく。
「そんな、ありえませんわ!!」
相手の叫びに呼応して、会場が騒然となる。誰から見ても僕はあそこでやられたはずだったのだから。
右手を見る。装甲は所々が黒く焦げ、近接ブレードは半ばから砕けている。ハイパーセンサで損傷を確認する。
エネルギィ、残量13
武装、ヴェント1丁、ブレード1本
ダメージ判定、中破以上
ところどころ装甲がえぐられているが、十分続行できる。
「まだ、戦える」
そう、まだ飛べる。
だから、綺麗に飛ぼう。
ただそれだけのために。
僕は命を懸けよう。
「往生際の悪い!」
飛び立とうとする僕に全ての銃口から一斉にレーザが発射される。
軽く体をひねって全弾を回避。
上昇。
再び僕の周囲にビットが張り巡らされていく。
遅い。
包囲が完了する前に一気に下降する。
それに負けまいとビットも光弾を放ちながら接近する。
その内の1つに右手の壊れたブレードを投げつけて相殺させる。
「なんですって!?」
相手の驚愕の声がする中、相殺した1基に接近。
その場で後ろに宙返り。
サマーソルトキックの要領で相手へ蹴り飛ばす。
間を置かず左手にヴェントを展開、飛ばしたビットを打ち抜く。
爆煙が上がる。
自分もその中へと飛び込む。
ハイパーセンサで互いの位置を確認。
右腕を伸ばす。
金属の接触する感触。
相手の肩部分を掴み、そのまま自分ごと煙の外へ押しやる。
視線がぶつかる。
「Shall we dance?(1曲いかが?)」
「遠慮しますわ!」
僕から逃れようとビットが狙いを定める。
でも、今更2基のビットでは無理だ。
掴む手を離さずに頭上からの攻撃を躱す。
「なっ!?」
「Lady, dancing has only just begun? (御嬢さん、ダンスは始まったばかりでしょう?)」
歌うように囁く。
それと同時に手を放して方向転換。
相手を蹴りつけ、その勢いを利用する。
頭上の2基を落とそう。
どうやら相手も僕の思惑に気付いて、攻撃を仕掛けようとしている。
でも、すでに僕は目標の目前にいた。
右手を振り下ろす。
ビットの直前でブレードが展開され、縦に切り裂いた。
その隙を突いて最後の1基が逃げ出す。
そして、僕を中心としてその逆には本体が移動する。
どちらを狙おう。
迷うまでもないか。
ビットに背を向けて加速。
前後からの挟撃が迫る。
スピードを緩めずに回避。
BGMはもう用済みだ。
ハイパーセンサを頼りに左手だけを後ろに。
2度引き金を引いた。
爆音。
バレルロールに入れながら全ての銃撃をくぐり抜ける。
ブレードの間合いまであと少し。
機動を曲線から直線へ。
最短距離を狙う。
「なんと愚かな。貴方の負けですわ!!」
再びミサイルが発射される。
焼き増ししたかのような展開。
思わず口が緩む。
僕は笑った。
声を上げていたかもしれない。
着弾まで1秒あるかどうか。
十分だ。
フルスピードから強制的に急停止。
その時の勢いを利用し、ふわりと浮かぶ。
下方を掠めるギリギリでミサイルが通過。
すかさず左手の銃で撃ち抜く。
弾丸の軌跡を見ずに振り向く。
きっとこれがラスト・チャンス。
逃すものか。
ライフルを投げ捨て、両手でブレードを構える。
間合いに入った。
一閃。
まだ浅いか。
ハイパーセンサが警告音を鳴らす。
こちらも限界のようだ。
相手の長大なライフルを踏みつけて、上昇。
2秒数えて、スピードを0に。
ストール・ターンのように真下を向く。
その勢いを利用してスピードを上げていく。
ブレードを叩きつける。
接触面から火花が散る。
このまま地上へ落とせば。
そして、
突然、視界が目まぐるしく回転した。
なんだ?
背部で爆発音。
オルコットさんの機体から引き剥がされる。
錐揉み状態になっている。
僕は今どこを向いている?
重力が容赦なく僕に降りかかる。
手足を動かすが、落ちる勢いは変わらない。
背中に強い衝撃。
一瞬、呼吸が止まった。
墜ちた、と気づくのに数秒かかった。
まだだ。
あと少しなんだ。
黄と灰色が入り混じった煙が視界を塞ぐ。
視界が狭まり、ノイズがかったようになる。
負けられない。
勝つんだ。
煙が一瞬途切れ、赤みがかった空が見える。
綺麗だ。
手を伸ばす。
でも、届かない。
僕の手は、何も掴めない。
そして、僕はゆっくりと目を閉じた。
********************
「つまり、…が…で」
「ええ、…を――」
何か話し声が聞こえて目を覚ました。ここは何処だろうか?
「ん、気がついたのか?」
千冬さんの声だった。声のする方をむこうと思い、体を起こそうとすると、体に鈍く痛みが走った。
「無理に起きようとするな」
少し慌てた様子で、肩を掴んで再びベッドに戻そうとしてくれる。
「勝負はどうなりましたか?」
肩を掴む手が止まる。そして、ため息を吐きながら、優しく僕をベッドへと寝かせた。
「……全く。勝負はお前の負けだ」
「そう、ですか。そう言えば、ここは何処ですか?」
千冬さんは一瞬呆気に取られたようだったが、直ぐに表情を緩ませた。
「やれやれ、普通は順番が逆だぞ」
「ISに乗れる時点で普通だとは思っていませんよ」
「そういう話じゃない。とにかく、ここは保健室だ。お前は全身の軽い打撲で、2・3日は痛みが続くだろう」
そうか、と僕は呟いた。最後の最後で僕は墜落して気を失い、ここに運ばれてきたというところだろう。
「じゃあ、僕はミサイルを撃ち損ねていて、それにやられたということですか?」
「違う」
僕の問いに即答し、千冬さんは一息おいてから口を開いた。
「あの時、お前の使っていたラファールはかなりのダメージを負っていた。そこへ急激な加速が加わり、推進部分が破損、結果爆発を起こした」
「つまり、自滅」
「簡単に言ってしまえばな」
ところで、と話しを続ける。
「お前はあの機体に何をした」
「エネルギィの配分を調整して、ブースタ類の出力を30%増加させました」
「やっぱりか」
頭に衝撃が走る。頭を押さえながら千冬さんを見ると、何時の間にか出席簿を持っていた。
「僕は一応怪我人ではないのですか?」
「手加減はしたつもりだ。全く、初めて見たよ。あんなISの壊れかたは」
「そんなに酷いのですか?」
「推進器の類は全て内部からの爆発により破損。加えてその衝撃で機体のシステムにも影響が出ていた」
思わず千冬さんから顔を背けたくなった。僕が我儘を言ったせいでこんなことになってしまった。ISを傷付けてしまったのだ。それに、もしも使い物にならなくなってしまったら。
「もう終わったことだ」
「え?」
「誰もお前が必死にやったことを責めるつもりはない。それに、もう整備課の生徒が修理を始めている。腕が鳴る、と言って張り切っていたから心配するな」
「……そう、ですか」
「そうだ。だから今は身体のことだけ考えておけ」
会議があるから、と言って千冬さんは保健室から出て行った。心配するな、とは言われたがやはり機体のことが気になった。本当に大丈夫だろうか? また飛べるだろうか?
そのことばかりを考えていると、ドアがノックされて誰かが入ってくる。僕は痛みにどうにか耐えつつ体を起こして、誰が来たのか確認した。
「……三海君」
「簪さん」
沈黙。簪さんは俯いていて、どことなく表情が暗く感じられた。
「寝ていなくて、大丈夫なの?」
「そこまで酷いわけじゃないから、問題ないよ」
詳しくどの程度の怪我かは知らなかったが、余計に心配を掛けさせたくはなかった。
「結局、僕は負けたみたいだ。だから昨日言った通り――」
「ごめん、なさい」
「……何が? 僕は何かされた覚えはないけど」
「私の……私のせいで三海君は傷付いた」
「違う。それは違うよ。」 すぐさま否定する。
「違わない。……私があの時に出力の変更をしたから」
「それは僕がお願いをしたからで――」
「私があの時止めていれば、こんな風にはならなかった!!」
顔を上げて叫ぶように声を出す簪さん。眼鏡の奥では涙が溢れんばかりに溜まっていた。
「……私が、私が調子に乗って、こんなことをしたから」
「違う! そんなこと、ッ!」
身を乗り出そうとした時に、一際体が痛み思わず呻いてしまう。それを見ていた簪さんは目を大きく開かせ、涙が零れ落ちる。
「ごめん、なさい。……本当に、ごめんなさい」
涙を拭こうともせずにそのまま走り去ってしまう。
「簪さん!!」
どうにか、呼び止めようとするが体の痛みに遮られてしまう。途中誰かとぶつかりそうになっているようだったが、結局足音は聞こえなくなってしまった。
「三海君!? まだ寝ていないとダメですよ!」
入れ替わるように山田先生が現れる。隣には見知らぬ女性が立っていた。
「……はい、すいません」
僕はベッドによりかかって、改めて2人の方を向いた。
「ところで、さっき更識さんとすれ違ったんですけど、彼女と何かあったんですか?」
「まったく、真耶は不躾だなあ。先生は生徒の青春に口出ししない」
唐突にその女性が先生の頬を掴んで、円を描くように動かした。
「ひょっほ、あいふぁ。止めてよもう。生徒の前な、ん」
先生と目が合った、と思いきやポストみたいに顔を真っ赤にした。
「ところで、こちらの方はどなたですか?」
今のことは忘れてと言わんばかりの目に耐え切れず、僕から話を切り出した。
「この人はですね――」
「よくぞ聞いてくれたね少年!」
先生の言葉を遮り、その女性はショートカットの髪を揺らして僕を指さす。
「私の名前は
一度間を置いて僕を見据える。好戦的とも言えるような瞳。
まるで僕の全てを見透かされてしまいそうな錯覚に陥った。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「あなたを十朱財団にスカウトに来たの」
ふと感じたのですが、私は6000~8000文字を目安で1話を書いているのですが、それって多すぎるのでしょうか?
他の作者様の作品を拝見させていただくと、1話が3000字程度かそれ以下なものが多く見受けられたので、少し疑問に思っています。
ぜひ、そのような点に関するご意見も募集しております。
もちろん、その他の質問・感想・要望・批評等もお待ちしております。