鋼殻のレギオス another tale   作:SHOYA

2 / 3
第一話 「学園都市ツェルニ」

 第一話「学園都市ツェルニ」

 

 

 キルファは物々しい悲鳴によって目が覚めた。先程まで懐かしい夢を見ていたような気がするが思い出す事は叶わなかった。

 

 放浪バスが激しく揺れたのだ。と、同時にバスの至る所から悲鳴があがる。

 

 「ただいま当バスは危機回避のため非常に揺れる道を走行しています。お手数ですが席から立ち上がらないようにお願いします」

 

 悲鳴を落ち着けるためかバスの運転手から放送が掛かる。危機回避の危機とは何なのか、そんな声がバス中で囁かれる。

 

 (危機かぁ・・・どうせ汚染獣がそこらにいるんだろうけど・・・)

 

 キルファは興味無さそうに欠伸をする。実際グレンダン出身の彼に取って汚染獣との遭遇は日常茶飯事であり、取るに足らない物なのだ。

 

 (学園都市ツェルニまで後どれくらいだろうか)

 

 キルファはそんな事を考えながら、再び寝る態勢に入った。

 

 しかし、数分後、彼は再び目を覚ますハメになるのだった。

 

 

 ***数分後***

 

 

 半覚醒状態のままキルファの耳に届いたのはパニックに陥った運転手の声。

 

 「皆様、今し方私達は学園都市ツェルニへ到着しましたが、ツェルニは現在進行形で汚染獣に襲われいる様子ですのでバスから降りないようお願いしますっ!!」

 

 放送が途切れた瞬間乗客全員が騒ぎ始める。あちこちで死にたくないという声が聞こえてくる。

 

 (ツェルニがやられたら困るな・・・まぁあいつがいるから大丈夫か?)

 

 キルファは一人バスの中で冷静に考え事をする。

 

 (いや。どうせならツェルニで一暴れするかっ)

 

 キルファは短めに揃えた黒髪を揺らして立ち上がった。端整な顔とは裏腹に目には強い光が灯っている。

 

 そのままバスの運転手に下りる旨を告げ、制止に耳を貸さず即座に外に降り立った。

 バス自体はもうツェルニの中なので汚染物質にやられることもなく、彼はツェルニの大地へと足を踏み入れる。

 

 

 シェルターを抜けるとそこには酷い光景が広がっていた。生徒の大半は為す術もなくやられ、かろうじて善戦している生徒も後、数分持つかどうかと言った所だ。

 

 (レイフォンは何してやがる?ここまで酷くなってるのに)

 

 キルファはそんな事を思いながら錬金鋼を抜いて復元する。

 

 (幼生体ばっかりか?まあこの数なら大した事ない・・・か)

 

 キルファは周りの生徒がいない事を確認して、幼生体の注意を引き付ける。

 

 咆剄殺。

 

 大音量の声がツェルニ中に響く。剄の余波とその声でキルファ周辺の汚染獣が一斉に彼の方へ突撃を開始する。

 

 「こいや!!虫共」 

 

 銃剣を構え、剄を迸らせる。

 

 「外力系衝剄 雷光槍」

 

 銃剣の先が剄によって槍の形に変わる。そしてキルファはそれを横に一閃。

 

 瞬間、大量の雷が空気中を迸り周りにいた幼生たちへと襲い掛かる。いくら幼生体の硬い殻だろうと雷に撃たれては一溜りもない。その様はまさに雷の雨。

 

 ものの一分。

 

 キルファが近場の幼生たちを狩るのに要した時間だ。いやもしかすると一分掛っていないかもしれない。それくらいすばやくキルファは片を着けた。

 

 「幼生体じゃ手応えないな~・・・まぁここグレンダンじゃないしな」

 

 武器を基礎状態に戻しながらキルファはそう呟いた。その声には幾分かの物足りなさが含まれている。

 

 「もう一箇所くらい掃除してくるか?」 

 

 キルファが歩き出そうとした時、彼の耳へと放送が入る。

 

「これより、汚染獣駆逐の最終作戦に入ります。全武芸科の生徒諸君。私の合図とともに防衛柵の後方に退避」 

 

 どうやらツェルニの偉い人の声らしい。

 

 「ふむ・・・」

 

 キルファは放送を聞きながら、どこか懐かしい剄がする方向へと目を向けた。その顔には苦笑いが浮かんでいる。

 

 (ようやくお目覚めかよ・・・ヴォルフシュテイン)

 

 「カウントを始めます。」

 

 再び放送が入る。

 

 伍。

 

 肆。

 

 参。

 

 弐。

 

 壱。

 

 (ここに居ると危ないッ!?)

 

 キルファはカウントが零になる前に上方へと跳び上がる。と、同時にカウントが零となる。

 

 零。

 

 瞬間。 

 

 鋼糸が幼生たちを襲う。

 

 次々と次々と・・・幼生体がその数を減らされていく。

 

(リンテンスさんの鋼糸か、こればかりは真似出来無いよな・・・)

 

 キルファはその光景を横目に見ながらグレンダンの鋼糸使いを思い出した。彼の鋼糸はすべてを切り裂く。キルファも一度だけ手合いをしたことがあるが、ものの数秒でKOされた程彼は強い。その手解きを受けたレイフォンもまた・・・

 

 キルファの耳に学園中の歓声が届く。

 

 「終わったか」

 

 考え事をしている間に粗方幼生体は片付いたらしい。

 

 しかし、これで終わった訳では無い。

 

 (母体がどっかにいるんだよな・・・ま、どうせレイフォンが始末すんだろ)

 

 キルファはのんびりとそんな事を考えながら、先程から周りをうろついている念威端子に声を掛ける。

 

 「で?君はいつまで俺を見張ってんの?」

 

 淡い光を放ちながら端子から声が聞こえる。

 

 「あなたは何者なのですか?」

 

 「俺はここの転校生さ。グレンダンからのね。それじゃまた会おう、優秀な念威奏者さん♪」

 

 「まっ・・・」

 

 優秀な念威奏者・・・フェリ・ロスが声を掛ける間も無くキルファはツェルニの闇の中へと消えた。

 

 

 ***

 

 所変わってここは生徒会室。

 

 レイフォンが母体を倒し、だいたいの作業が終わった頃。

 

 ツェルニの今代の生徒会長、カリアン・ロスは一つの書類を眺めていた。その書類には「転校手続」と書かれている。

 

 

 「転校者:キルファ・アンゼルム。出身地:槍殻都市 グレンダン・・・か」

 

 カリアンの口から物憂げな溜息が漏れる。その溜息にどんな意味が含まれているのかは謎だ。

 

 彼はその書類を机の上に置き、窓の外を眺めた。窓に映るカリアンの顔には期待と不安。そしてこれから始まるであろう波乱な日々への複雑な感情が浮かんでいる。

 

 「やれやれ。これから忙しくなりそうだ」 

 

 カリアンがそう呟くのと同時にツェルニに新しい朝が訪れた。 

 

 




 第一話でございます。

 なるべく原作に沿いつつ書きたいなとは思っていますが、所々ぶち壊すかもしれませんw

 では今回も最後までお付き合い下さりありがとうございました。

 ご意見ご感想まどあればよろしくお願いします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。