⇒メインヒロインだからね。
マカの出番が少ない。
⇒病んでないからね。
マリーはまだ?
⇒……
「……なるほどね。何もかも真っ暗な部屋で目を覚まして、スーツの小鬼がいる。小鬼はあなたを狂気に導いていると」
「ああそうだ」
「それであなたが言葉に乗り気じゃないと、その部屋から無理やり追い出して、マカの体から出てくる夢を見ると」
「……ああ」
ソウルは
ソウルは混入した黒血によって、自らの狂気と相対しているのだとメデューサにはわかる。マカの体から出てくるという部分からも分かるように、ラグナロクの影響をもろに受けているようだ。ソウルに気が付かれないよう静かにほくそ笑む。
ソウルは
「さっきから上の空だけどどうしたの? まだ何か不安が?」
「……先生はマカと一緒に来いって言ったよな」
「ええ。そういえばマカちゃんはどうしたのかしら」
「体調が凄くいいから行かなくていいって。でもなんか心配なんだよ」
ソウルは今のマカがまるで壊れてしまったように見えていた。
斬られて治療を受けて起きた日からマカは変わった。
ガリ勉なのは変わらないが明るく笑顔を振りまき、今なんて
何故か毎食手が込んでいて、レシピと睨み合って頑張っている。いつもなら量は満足出来るが、味は微妙なマカだが、それを改善しようと躍起になっている。
そして夜に聞こえるマカの部屋から漏れでる色艶のある声。ソウルは女性だってそういう感情がある事を知っているが、毎晩声が聞こえるのは勘弁して欲しい。
そんな風に色々と変わったが本当にマカは体調がいいようで、訓練では動きがとても良かった。ソウルはそれが逆に不安になっていた。
調子が良すぎて不安になる。普段よりも要領よくこなせてしまっていることに不安になる。ソウルの知るマカは不器用に実直に、そんな子だったはずだ。
「……って感じなんだけど、先生?」
「いえ、何でもないわ」
ソウルは一瞬、見間違いだと思うが、メデューサの目に殺意が宿っていたように見えた。マカの話を聞いてそんな目をするわけが無いので、疲れているのかもしれないとソウルは目頭を揉みほぐす。
「マカちゃんはきっと恋をしたのよ。女は恋をすると変わるもの」
「あのマカが? あはははは、そりゃ傑作だな……本当にそれだけならいいんだけど」
「マカちゃんには保健室に来るように言っておいてね。このあとは確か」
「ブラック☆スターの野郎がやっと魂を一つ集めたから、そのパーティーだな。先生も来るか?」
「いえ、遠慮しておくわ……そうね」
ソウルは自分の中に小鬼が出てきたのと同じ理由でマカが変わったのではないか? と感じ取っていた。しかしマカは体調が悪そうにも見えないし、自分のように悩んでいる様子もなく、本当に謎である。
これ以上ここで推察されるのは困るので、メデューサは話を逸らしながら、部屋の奥に行き、ボトルの飲み物を持ってきた。
「パーティーなのでしょう? これでも飲んで楽しみなさい」
「なんだこれ?」
「ただの葡萄ジュースよ」
「……って、これ結構値が張るやつじゃねえか!」
「あら知っているのね」
「まあな。ありがとう、メデューサ先生」
「楽しんでらっしゃい」
ソウルは頭を下げ、服を着てから保健室をあとにした。
「……ハヤテの好きな飲み物なんて買っても、一緒に飲めないのに何をやっているのだか。それよりもマカよ」
メデューサは先程までの優しい保険医の目付きから、魔女メデューサの目付きに変わる。ソウルとの会話で自分の采配にミスがあったことを自覚する。
「鬼神の狂気に近いものに侵食されるはずなのに、何故全く別の狂気に
メデューサは三船についてやハヤテの希少性についてを頭に思い浮かべる。ついでに少しだけトリップしてしまったが、頭を無理やり切り替える。
「あの人が昔に会った
メデューサは儘ならぬ現状にため息をつきたくなるが、これらを完遂させなければ、真にハヤテと幸せに暮らすことは決して出来ない。故にメデューサは諦めることを考えない。
「あとあの
手段を選ばずに裏で策を巡らせるだけならば、メデューサには容易なことである。だが、ハヤテに嫌われるであろう手段を使わずに、ハヤテの
「その為に魔眼の男……今はフリーだったわね、彼を魔女牢獄から脱獄させたのだけど。ハヤテが私の夫だってことも言っておかないと」
メデューサは次の作戦に動いてくれる狼男のことを思い浮かべる。彼ならば死武専の若き職人達を
メデューサはこの前ハヤテに貰った元気を思い出し、自分を奮い立たせながら、定期的にハヤテに保健室で昏睡してもらう手段を考え始めた。
***
「まさか君と同じ依頼を受けることになるとは」
「……やっぱり俺たちは互いにいいパートナーを持ったよな」
「うむ!」
場所はロンドンのタワーブリッジ。雪が降りしきる中、いつもの寒そうな格好のブラック☆スターとキッチリカッチリとコートを着たキッドが握手をしていた。
以前にある
「それにしても素晴らしいと思わないか!?」
「何がだよ」
「このタワーブリッジはシンメトリーなんだぞ? 橋が上がっても、その左右対称が崩れず、ああなんと素晴らしい橋なんだ!」
「どうでもいいわ」
「貴様! 将来デスシティーに架ける橋をどうでもいいと言うのか!?」
キッドはシンメトリーについてブラック☆スターに語りながらも、魂感知でここらに出没するらしい悪人の魂を探している。
橋の周りには一般人が複数いる以外、特に怪しい魂は感知できない。
「ねえ、あれ寒くないの?」
「ブラック☆スターなら多分この位の寒さだと『脱ぐことはあっても着ることはない!』って言うかな」
「ぎゃはははは、絶対に馬鹿だ!」
コートに身を包んだ三人の美少女たちが、自分の職人がバカ騒ぎしているのを遠目に見ている。
椿は妖刀となった兄との戦いで、自分を最後までしっかり信じて待ってくれたブラック☆スターの役に立ちたいとやる気が漲っている。傍から見ても分からないが、ブラック☆スターならばそれも気がつけるだろう。
リズはパティに綺麗で高いコートを着せられ、ほくほく顔になっている。パティはブラック☆スターがキッドのシンメトリー攻撃を受けて、変顔しているのを見て笑っている。
「あの
「んなこと言われなくたって分かってるわ! まあ、既に俺の椿はあの
「なんだと!?」
キッドは
キッドはあれの話をしていたせいで魂感知が少しだけ疎かになってしまったようだ。この橋に一般人が一人で入り込んでしまっている。
「ここには悪人が出没するという情報がある。今すぐこの場を離れて欲しい!」
「……あの聖剣をぶっ叩けるのか。なら俺が試してやるよ! 来い、小僧!!」
「なっ!? 人間、いや魔女? それ以外の魂の気配も混じっている。貴様は何者だ!」
キッドの勧告を無視して、その大男はソウルプロテクトを解除した。
その男は囚人服を着ていて、左目には魔法陣が浮かんでいる。片足には鉄球付きの鎖が付けられている。キッドは人と魔女以外の要素もあることを見抜いたが、それが何なのかまではわからない。
その男は凶暴な表情を浮かべ、犬歯を剥き出しにしながらブラック☆スターを煽った。
「……てめえみたいな、上から目線の大人は虫酸が走るって言っておいたよな!? 椿!『妖刀』モードだ!!」
「え? あれはまだちゃんと扱えないよ」
「3……
「はい」
ブラック☆スターは脳裏に自分を昔からボコってきた男と、目の前の男が少しだけ被った。その態度だけではなく、相手が強敵であることを感じ取ったブラック☆スターは早期決戦で終わらせるべく、最初から必殺を披露する。
そしてブラック☆スターは怒りの中でも冷静に、自分の今の力を測り、妖刀モードの使用制限時間を短くする。
「「魂の共鳴!!」」
「おお!」
「……ほう」
椿は妖刀となった兄を倒すことで手に入れた力、『妖刀』モードに変化した。
黒い刀となった椿を持ったブラック☆スターを侵食するように、持ち手が黒く染まる。その
ブラック☆スターの魂が一気に膨れあがったことにキッドは歓声を上げる中、敵も彼を認めるように声を漏らす。
「俺より目立ってんじゃねえ!!」
「ウールッフウルブスウルフウルブス『氷錐体』!」
今までとは比べ物にならない加速を得たブラック☆スターは、愚かにも真っ直ぐ敵に突っ込む。
そんな彼を見逃すほど、ここにいる大男は愚かではない。敵はブラック☆スターの突撃に合わせて、氷の錐体をいきなり出現させ、加速の勢いを利用して貫こうとする。
「椿」
「はい!」
「なに!?」
ブラック☆スターの腕を侵食していた影が蛇の形に変化し、出現した氷に巻きついてブラック☆スターの寸前で止めた。
敵は驚きながらも楽しげに笑う。万策尽きたように見えるのに、それでも何故か楽しげだ。
「喰らえ、俺様奥義、【影☆星】!!」
「……あははははははは!」
ブラック☆スターは影となった椿を刀に集結させ、そのまま一閃を放った。敵はガードしても殺されることが分かり、笑い声を上げながら下半身と上半身は永久の別れを迎える。
本来のこの時期のブラック☆スターはまだ影☆星を扱えない筈なのだが、ぶっ殺したい大人が居て、その人に
「……」
「へ、へへ。俺様よりも目立つから悪いんだ」
「君はいつもそんな美しくない戦い方をしているのか? もっとバランスというものをだな」
キッドはブラック☆スターを貶しながらも、影☆星という技がもし完成すればどうなるのかと、内心驚いていた。敵の横で無様にも倒れているブラック☆スターは本当に神を超えることも出来るのではないか? と考えてしまう。
戦いの場において、戦い以外のことを考えてしまったからこそ、気がつけなかったのかもしれない。本来完全に人は殺されたら肉体が消滅し、魂がその場に残るはずだ。体が真っ二つにされたのなら、普通なら肉体は消滅するはずなのに、未だに大男の体はそこにある。
「っ危ない!!」
「うぐっ……椿!?」
「貴様!! そうか、その魂……我ら死神に存在から仇なす者達、不死族の者か!」
大男はいつの間にか
ブラック☆スターは先程の影☆星で力を使い果たしていて動けない。そんなブラック☆スターに鉄球が迫ってきていたが、彼と鉄球の間に人の姿に戻った椿が割り込み、ブラック☆スターを庇った。
当然人が庇った程度では大きな鉄球のダメージを完全に殺せないが、ブラック☆スターは多少橋の柱に叩きつけられただけで済んだ。
しかしその代償は大きかった。
「椿! おい、目を開けろ!! 俺様の声が聞こえねえのか!?」
「……やべぇ、殺しちまったかもしれない。おい星族の小僧。お前はなんだ? 確かにお前は強い。だが、お前自身がその強力な武器に追いついていないから足を引っ張っている。もっと基礎を固めなくてどうする。それでは武器が可哀想だ」
椿は頭から血を流し、ブラック☆スターがいくら声をかけても目を覚まさない。ブラック☆スター自身もまともに動けない体で無理やり這い、椿に声をかけ続ける。
彼が椿に声を掛けている時、大男はボソリと何かを呟いていたが、この場にいる誰も聞こえなかった。
そのあとまるで教え込むように、大男はブラック☆スターに駄目出しをする。その言葉をブラック☆スターが聞いているのかは、大男にも分からない。
「死神の前で、勝手に死を弄ぶか! 俺は死神、デス・ザ・キッドだ。俺の前で殺しをした事を後悔させてやろう。死神体術『罪』の構え」
「死神の作る基準は目障りだと思ってたんだ……ああ、言ってなかったな、俺はフリーという。お前は俺の本当の姿で殺して……ぶっ倒してやる。グオオオオオオオオ!!」
キッドは
フリーは狼の遠吠えのような叫び声をあげると、どんどん毛深くなり、狼耳が生えてくる。魔女の女王の目玉を奪い、不死の狼男といえば、死武専生なら皆が知っている伝説上の存在だ。
「……ねえねえ、多分椿は打ちどころ悪くて気絶してるだけだよね? あたし達がやんちゃしてた時あんなのよく居たけど死んでないよね?」
「しー、キッドが本気を出そうとしてるんだから黙りなさい」
二人はゆっくりと距離を詰めていく中、トンプソン姉妹は何かを言っているが、集中している二人には聞こえない。
「闘狼拳! あううううん!!」
「死刑を執行する!」
フリーは親指と人差し指と中指を立て、それを鋭い鉤爪のように構えながら遠吠えで威嚇しつつ、一気にキッドに詰寄る。
無防備にその腕の攻撃を受ければ、死神の丈夫な体でもタダでは済まないだろう。だが、キッドは敵の攻撃を倒れるように避け、そのまま蹴りでフリーの足を狩りながら、二丁拳銃をぶっぱなす。
「『氷錐体』!」
「なっ! っと……不死身だからこそ出来る捨て身の攻撃か」
「ああ、そうさ。俺は不死だからな。自分の体を餌にして、攻撃を当てようとだってするさ」
蹴りを喰らい、銃弾を受けたフリーに追い打ちを掛けようとしたキッドだったが、フリーは自分の背後に錐体の氷を出現させ、自分ごとキッドを貫こうとしたが、間一髪キッドはバックステップで回避が間に合った。
キッドのフリーの間に少し距離ができる。
「……リズ、パティ、やるぞ」
「ぶっぱなしてやろうぜ」
「ひゃっはー!」
「「「魂の共鳴」」」
「死刑執行モード取得」
「共鳴率安定……ノイズ0.3%」
「黒針に『魂の波長』のチャージ完了」
キッドは自分の体術や二人の銃撃では火力が足りないと理解した。このフリーと名乗る狼男を殺すには、一撃で殺しきれるだけの火力が必要だ。故に、三人の最も火力の出せる必殺を使う事にした。
ただの二丁拳銃だったリズとパティは死神の権能によって、その姿を死神砲へと姿を変える。背後に伸びるいくつもある黒い針の間に、エネルギーが充填されていく。
「いいね。俺を殺すには大火力で吹き飛ばすしかねえもんな! なら、俺も行くぜ。『魔眼砲』!!」
フリーはキッド達が強烈な一撃を放つことが分かり、ならばとフリーの中でも最大威力の魔法の発動準備を始める。
魔女の女王から奪った左目の周りには魔法陣が展開され、フリーが大きく広げた口から生える歯を起点とし、口の先に膨大な魔力が込められ始めた目が現れた。
「死神の名の元に死ね。【デス・キャノン】」
「ぶっ殺す!【魔眼砲】……あっ」
砲になった姉妹から死神にのみ許された死を振りまくビームをフリーに向けて放った。
フリーは魔眼と自らの魔力をほとんど注ぎ込み、口の前に出現した目玉から同じようなビームがキッドに向かって放たれた。
互いの攻撃は中央でぶつかり合い、死の放流はせめぎ合う。どうやらフリーが有利なようで、少しずつキッドの放ったデス・キャノンが押されていく。
テンションがあがって死神を殺そうと気張っていたフリーだったが、自分をここに連れてきた恩人の言葉を思い出す。
『死なない程度に扱いてあげなさい。今殺すのは駄目よ?』
フリーは殺す気で気張っていたのに殺してはいけない事を思い出した。当然殺す気で放っていた魔眼砲は威力が一気に減衰し、そのままフリーの体をデス・キャノンが貫く。死の放流はフリーの体を後方へと吹き飛ばしていく。
(……まあ、いっか。このまま吹き飛ばされちまえばいいや)
フリーは役目を果たしたので、そのままデス・キャノンの勢いに任せて、橋から吹き飛ばさ、下の川に落ちていった。
「……あいつ土壇場で逃げたのか?」
「あーあ、これじゃああいつが死んだかわかんねえって、あいつ不死身だからまた蘇っちゃうじゃねえか」
「……もう良くね? 帰ろうよ」
キッドはパートナー達が騒いでいるのを無視して魂感知をした。どうやら本当に敵は逃げる気のようで、ソウルプロテクトをかけて既に街に潜伏してしまったようだ。
「……よし、帰るか」
とりあえず撃退はしたので、また現れたらこの地に来ればいいとキッドは考え、トンプソン姉妹を解放して、人に戻ってもらう。
「……俺は弱ぇ。もっと力を手に入れねえと」
未だに目を覚まさない椿を抱きしめているブラック☆スターは、自分が実質負けた敵をあしらったキッドを見ながらそう呟いていた。その瞳には星の紋様が一瞬浮ぶ。
既に喧嘩をする修行に入っているマカ達の修行描写は無くなりました。
そして原作と違って、マカも斬られていて、様子がおかしいのでロンドンには別の人が行くことに。