来年の春アニメまでには終わらせる気です。無理だと思いますが。
シュタインとスピリット、ブラック☆スターペアにキッドペア、それにマカペアと
シュタインとシドの元に集まった人々がこの場にいる。つぐみペアのアーニャと蒼がいないのは、片方は王女としての役割を、もう片方は星族の同胞と話していた時に事態が起きたためいない。
メデューサがシュタインを襲ったあとから説明しよう。
シュタインとシドの周りに各々が集まったあと、すぐにパーティーホールを対象として魔法が発動された。
空間魔法
この魔法は魔女の中でも最強と言われている魔婆や魔女婆と呼ばれる魔女が使う代名詞的な魔法だ。効果は一定空間をキューブの中に閉じ込め、魔法が発動しているうちは内部から外部へ、外部から内部への干渉を
それで死武専の前夜祭が行われているホール周りを閉じ込められたのだが、それが発動する寸前に、シドとミーラのペアが共鳴技を発動した。
「強制土葬!」
出来るだけ多くの職人を送り出すために、シドは自分を技の対象にはせず、シュタイン達を対象にしてそれは行使された。
この技は対象を地面へ強制的に落とす……簡単に言うと落とし穴だ。動き回っている敵には有効な技ではないが、こと暗殺をする時には絶大な効力を発揮する。
いきなり床から落とされた人達の中で、一番初めに起き上がったのはマカだった。
「シュタイン先生教えてください! さっきのは本当ですか!?」
「ど、どうしたんだマカ?」
マカは立ち上がろうとしていたシュタインの胸ぐらをつかみ、グラグラと揺らして問いかける。いきなりそんな行動を取り始めた娘の奇行に、スピリットは間に入ろうとするがそれをシュタインが止めた。
「何がですか? ヘラヘラ」
「シュタイン先生が……その、ハヤテさんの初めてを奪ったって!」
「……ぶふっー!? お前まじか!?」
「……ふふっ。親子揃って。本当に面白いですねぇ。答えは嘘ですよ」
シュタインはマカとスピリットが同じような顔で問い詰めてきたのがおかしかったのか笑みがこぼれる。そして当然のように嘘だと言い放つ。
「正確に言えば僕がハヤテの麻酔をしない人体解剖の初めてを奪っただけ。僕とハヤテが肉体関係になっているなんて想像するなんて……ヘラヘラヘラヘラ」
「お、俺はそんな想像してねえぞ!」
「……ふん!」
シュタインは勘違いさせるために言ったことだが、あまりにも想像通りの反応を周りがするので、おかしくて腹を抱える。
スピリットは動揺しながら否定して、マカは怒ったのかソウルの元に戻った。
二人が去ってもシュタインは笑いを堪えるのに必死だ。ゴーゴン姉妹といえば魔女の中でも最大の異端であり、そしてとてつもなく面倒な存在だ。
既にアラクネは死んでいて、シャウラはつぐみ達に倒された。だが、アラクネは後世に武器という人種を作り、シャウラはデスシティーでの大事件を発生させた。
ならば残り一人はどうなのか? 一人の男を愛し、その男に配慮して危険なことをしない魔女になっていた。だからこそ、シュタインはおかしくておかしくて腹が捩れそうだった。
逆にだからこそシュタインは疑問に思っている。魂感知を行うと死武専地下の鬼神に続く地下道に魔女メデューサの魂の気配がある。
鬼神復活など、その愛しのハヤテが死ぬかもしれないのに、何故黒血による強化された鬼神を復活させようとしているのか。シュタインは狂気で茹だった頭で考えを深める。
「……本来ならシュタインが指揮を執るのが普通なんだが、考え事をしているみたいだから俺が指示を出す。死武専地下には恐怖の狂気に飲み込まれた「初代鬼神」が封印されている。そして保険医として忍び込んでいた……魔女のメデューサが鬼神を目覚めさせようとしている。これは絶対に止めないといけない。子供である皆を危険に、戦争に巻き込みたくない。だが君たちの力ならきっと止められると思う。俺とシュタインも戦うから、君たちも戦いに参加してほしい」
スピリットはそれだけいうとすぐに武器になった。本当なら愛しの娘を鬼神復活なんて戦いには巻き込みたくない。しかし今は戦力が全く足りない。
シュタインがスピリットを掴むと、言い忘れていたかのように言葉を続ける。本来は動かしたくない人だが、魂を共鳴させたシュタインの脆さを理解し、彼を動かすことを決意する。
「それとつぐみちゃんとめめちゃん。君たちは少し寄り道をして欲しい」
「……足でまといだから?」
めめは単独でつぐみを使っても、周りの職人ほど強くないことをちゃんと理解している。つぐみの職人が二人や三人での戦いばかりを鍛えてきたから、単独で戦ってもそこまで戦力にはならないだろう。雑多な職人よりは強いが、EATでも上位にいる職人には適わない。
そんなめめの言葉を否定してスピリットは彼を連れてくるように頼む。
「君たちも十分強い。でもハヤテよりは弱い。ハヤテはここから……という場所にいるからあいつに鬼神の封印の場所へ行くようにお願いしてほしい。あいつは自主的には働く気がないだろうから」
「動く気がないのにお願いしても意味あるんですか?」
「今のあいつは教師だから絶対に動く。生徒の助けの声を無視することは、あいつの規律が許さないんだよ。ハヤテに関することは本人に聞いてくれ」
「わ、分かりました! 行こう、めめちゃん」
「うん!」
つぐみたちはイマイチ分かっていないが、とりあえずハヤテを連れてくればいいのかとその場を後にした。
「……ハヤテってメデューサ先生、魔女メデューサの元夫なんだろ? ハヤテは戦えるのか?」
「ソウルの疑問は最もだが、これはハヤテが戦わなければいけない戦いなんだ。もし俺とシュタインでメデューサを殺してしまったら、きっとあいつは壊れる。ハヤテの話はいい。皆……行くぞ!」
よくよく考えると、スピリット達が勝手にメデューサを滅してしまったら、絶対にハヤテは自分たちを許さないだろう。スピリットは自分の妻と置き換えて考え、ハヤテを呼ぶことが正解だと言い聞かせる。不安定なシュタインやハヤテを使わないといけないほど、今の死武専には戦力がないのだからしょうがない。
スピリットはこの戦いが終わったら、戦力の再編をするように死神様に相談しようと胸に刻む。
***
シュタインは思考の海から出てきたのか、鬼神へと至る道を駆けている時、職人達にアドバイスをした。
敵は乱戦を避けてくる。何故なら血液を抜かれて封印されている鬼神に『黒血』を注げば相手は勝利なのだ。その為に武闘派魔女のメデューサや鬼神の卵である魔剣が足止めをするはずだ。
「僕がメデューサを抑えるから、三人は奥に向かってほしい。キッドは最速で鬼神に向かう敵に追いつくこと。ブラック☆スターは黒血を打倒するのが一番いいかね? 魂威があるし。マカは臨機応変にやってよ」
シュタインのわりかし適当な指示にキッドとマカは返事をして、ブラック☆スターは軽く頷いた。軽く頷いた顔は全く納得いっていないようだが。
「僕はある程度足止めしたら動けるようになるから、僕も後を追う」
「ハヤテ先生が来るからか」
「そう。ハヤテなら魔女メデューサを僕に任せることなんかしないだろうからね」
シュタインがその言葉を口にしてから少し走ると、前方に強大な魔女の魂が見えてくる。
黒いパーカーを羽織り、左手薬指には宝石のついた指輪がハメられている。保険医メデューサの時には付けてなかったその指輪をなぜ付けたのか分からないが、マカは少しだけイラッとした。子供の出る幕などないと言われているように思えたのだ。
「……キッド、ブラック☆スター、マカは通してあげるわ。通りたいのでしょう? いいわよ」
「ヘラヘラヘラ、あなたは足止めをしないといけないんじゃないの? なーんで通すのかな?」
「私はハヤテからあなたの強さを聞いているわ。あの人は守秘義務だからって明確には話してくれなかったけど、ブラック☆スターやキッドと同時に相手したら倒されちゃうかもしれないでしょ?」
メデューサはニヤリと笑いながら、魔女を倒せる可能性を示唆する。シュタインはこの魔女を解剖できる可能性を知ってしまい、口車に乗ろうとしたがパートナーがそれを防いだ。
「いやー残念ですよ。メデューサ先生は美人だったのにまさか魔女だったなんて……いや、そんなことよりもちょっかい掛けなくて良かった。もし掛けてたらハヤテに殺されてたわ、あはははは」
スピリットが空気をあえて読まない事を口にして、マカに白い目で見られながらも、作戦とは違う魔女を殺すために戦力を集中させるという考えを無理やり流す。
「スピリット先生ってもっと馬鹿だと思ってたわ」
「そりゃ俺だってデスサイズですからね。キッド、ブラック☆スター、マカは警戒しながら先に進め! 不意打ちが来るかもしれないからそれだけは注意するように」
「分かりました」
「……おう」
「パパ、あとでお話ね?」
「…………え? ちょっと待ってくれ! マカ? さっきのはジョークだからね? 待って、ハヤテだけには言わないで! 俺本当に殺されちゃうから。ねえ、マカアアアアアア!!」
メデューサは大きな廊下の端に移動し、生徒達合計7人を素通りさせた。足止め出来るに越したことはないが、今回は戦力的に
「本当に通したよ、ヘラヘラヘラヘラ」
「シュタイン先生はだいぶ狂気で頭が飛んでますね」
「そりゃあなたが仕込んだでしょ。愛という狂気で相手をおかしくするハヤテを僕にさ」
狂気は伝播する。未だに鬼神という狂気の塊は世に復活していないのに、シュタインが既に狂気でおかしくなっているのはハヤテのせいだ。
鬼神じゃなく普通の人でも狂気に堕ち、正常な人を狂気に
ハヤテは元々シュタイン同様おかしかったが、
行き過ぎた感情、思いは狂気と同じだ。強い思いは狂気と表裏一体であり、ハヤテの愛は相手を狂わせる。
ハヤテは今まで色んな女性を愛してきたが、マリーを除いて全ての人と円満に関係を終えている。それはハヤテが関係を切ったのではなく、ハヤテの愛の重さを感覚的に理解し、それに耐えきれないと無意識に思った人達が離れていっていた。だからこそ、ハヤテが悪い訳では無いので円満に終えていた。
それは何も女性への愛情だけではなく、友情なんかでも適応されてしまっている。友への際限のない
「ハヤテの愛は普通の人には重すぎる。私はそれを受け止められたけど……でもおかしいのよね。シュタインは行き過ぎた友情という名の狂気でおかしくなっているのに、何故スピリット先生はおかしくなっていないのかしら?」
シュタインのことはハヤテの体を弄った糞野郎だとメデューサは認識している。だから狂気に堕としておこうと考えたが、メデューサの想像以上にその
そんな彼女の問いに彼は引きながら答えた。
「男からの強い思いとか要らないから。ハヤテが尊敬してくれているのはわかるが、強すぎる思いは女性からしか要らない!!」
後輩に好かれているのは単純に嬉しいが、行き過ぎた思いを受け取るのは拒否していたとスピリットは語った。
シュタインは唯一自分のように狂っている親友を受け入れていたからこそ、狂気をそのまま心に受けてしまった。一方スピリットはあくまで親友であり先輩であり悪友、それ以上でもそれ以下でもなく、ハヤテの愛をわかった上でスルーしていた。
そのスタンスの違いが
「……人付き合いが多いからこそ、そういう選択をできたって事ね。逆にシュタイン先生はボッチだから依存してしまったと」
「そういう事だな」
「ヘラヘラヘラ。いや〜ぼくも愛されちゃって大変だァ」
「もうシュタインの煽りを間に受けたりしないわよ?」
「ふーん……ねえ、お前は元々ハヤテと好きあっていたから結婚したの? それともハヤテをモルモットにしたいから結婚したの?」
シュタインとスピリットは戦いを始めない。
相手は勝負をつける気のない戦いをするだろう。そうすると、如何に最強ペアの二人でもハヤテに不意打ちをキメたメデューサを倒すのには時間がかかる。更に負傷も多少はするはずなので、この魔女を任せる人を待った方が安牌なのだ。
「初めはモルモット扱いするために、結婚して死武専をから離したわ。でもハヤテの愛に触れて、私は初めて自分が女であることを理解した。ハヤテの愛の深さもその時にわかったけど、強く愛してくれるなら拒否することじゃないでしょ?」
「そんなにハヤテが好きなら、何故鬼神の復活なんてするのさ」
「ハヤテのためよ」
「……は?」
シュタインは己が予想していた答えとはだいぶ違う回答が提示され、疑問符ばかりが頭に浮かぶ。答えを言ったメデューサの目は愛おしげな目をしている。その目を見て、スピリットは何かを思いつくが、それを考えとしてまとめられない。
「私はハヤテのために鬼神を復活させるのよ」
「……ハヤテを
「違うわよ。三船の考えに私が賛同するとでも? 私の夫を外交道具や兵器としてしか見ていない三船は死ねばいいと思っているわよ」
シュタインの言葉を即時否定した。
メデューサが日本で暮らしていた時、三船の人間とはハヤテとアリス以外一切会っていない。ハヤテが三船とメデューサを決して会わせなかったからなのだが、それでもメデューサは三船家について詳しく知っている。
「なら、どういう意味でハヤテのためって言っているんだ? ハヤテのためなら口にしても問題ないんじゃないか?」
「……そうね、確かにそうだわ」
メデューサは考えた末、理解はされないだろうが、死武専……特に死神様を揺すれるかもしれないため、それを口にすることにした。
しかし、メデューサの頭がお花畑になったことでその考えは消し飛んだ。シュタインの背後から聞き覚えのあるバイクのエンジン音が聞こえてきたのだ。そのバイクを運転している方の人間が、バイクから降りるとメデューサに声をかけた。
「……まさか死武専の保健室に居たなんて気が付かなかったよ。ナザール……いいや、本名はメデューサだっけ? 久しぶり、体調崩したりしてない?」
「久しぶりねハヤテさん。体調も問題ないわ」
ハヤテは偽名を使われていたことなんて、全く気にしていないようで、笑顔で手を振った。
先程までは警戒した蛇の目だったメデューサだったが、ハヤテが現れると優しげな笑みを浮かべた。返事をしながら髪を手櫛したり、服装を整えたりしているのを、毒気の抜けた顔でスピリットは眺めている。
週二投稿していますが、今週は一本しか投稿できないかもしれません。ご了承ください。
次回はハヤテVSメデューサ戦ではなく、マカVSクロナになります。