BREW争奪戦を書いていたら、つぐみ達を絡ませたいと思いつき、書き直していたから。
「お前達は一つ星職人・武器の中でも選ばれた者達だ。自信を持って戦って欲しい……だが! ゾンビになるような戦い方はしないように!!」
先日死武専に何者からか、アラクノフォビアがロスト島の中にある、『BREW』をいつ何時に奪還しに行くと知らせる手紙が届いた。
届いた日に死武専は直ぐに準備を始めたが、それでも何とか戦力を整えて出撃させられる程度の猶予しかなく、デスシティーには居ないデスサイズを出撃させることは出来なかった。
今回の戦いは死武専にとって、とても大きな意味を持つ戦いになる。
『BREW』とはエイボンが作った最高傑作と言われている魔道具で、正しい使い道は分かっていないが、判明している使い方には、魂の強さを強制的に一段階上位に格上げするなんて効果もあると言われている。
ならばこそ、そんなモノをアラクノフォビアに渡す訳には行かない死武専だが、連れてきた戦力の中に最高戦力である三つ星職人は
死武専は職人や武器にスポンサーをつける制度があるが、スポンサーを付けてしまうと逆にそちらの意向が優先されてしまい、素早い出撃が出来なくなってしまう。
三つ星の職人や武器は大抵どこかしらかと契約しているので、集めることが出来なかったのだ。
そういう柵を回避する為に、シドやミーラ、シュタインやデスサイズなんかは外部と契約をしていない。シドは死武専中央情報局に所属しているが、内部組織なので問題ない。
ここにいる一つ星はマカとソウル、ブラック☆スターと椿、
この三チームが一つ星で生徒であるのにも関わらず、この戦いに参加するべく船に乗っていた。
オックスのチームは既に共鳴連鎖も出来ていて、キムは空を飛べる。そして何より
ここにいるメンバーは事前にキムが魔女であることを伝えられていて、しかし悪い魔女たちのようなことは一切していないことを死神様より伝えられている。
「キムが魔女だって関係ないです!!」
それを聞いてオックスがその場で上記のようなことを叫んだことで、流れが一気に容認へと流れた。それがなかったとしても、そこにいたメンバーは認めていただろうが、オックスのおかげで少しの拒否感も生まれることはなかった。いい意味で皆が流されたのだ。
せっかくカッコイイ事をしたのに、
ただちょっと良い奴かも? とキムの心に跡を残したとか。ジャクリーンがその場でキムに抱きついて、オックスを威嚇したとか。
そんなこんなでオックス達のチームは共鳴連鎖も出来るし、サポートも出来るから採用された。
そしてイレギュラーであるつぐみチームが呼ばれたのは単純に強く、既につぐみはデスサイズになっていて、ついて回る責任が違うからだ。
つぐみ自身はデスサイズという存在の意味もろくに理解していないが、そこは一般人以外の常識は大抵持ち合わせているアーニャがサポート。日本の総理候補となっている事をつぐみは知らないが、そこは日本でも名が知られているめめがサポート。デスサイズという表からも
そして三人の愛を一心に受け止めて、皆の調子を整えるのがつぐみだ。そう、もう三人の愛をしっかりとつぐみが受け止めているのだ。
鬼神復活攻防戦において、つぐみとめめはハヤテが発狂して狂気に飲み込まれるところを目の当たりにしてしまった。その時に愛欲の狂気に当てられた二人は一線を超え、つぐみチームで買った家でも二人は狂ったように愛し合った。
狂気とは伝播するものである。そんな狂った
そして今ここにいる。
狂気に堕ちた場合の症状はその狂気の種類によって変わる。
恐怖の狂気に犯されれば、最終的にはあらゆるものを恐れるようになり、周りを傷つける。憤怒の狂気なら怒りを抑えられなくなり、怒りのままに力を振るうようになる。規律の狂気に堕ちれば、その狂気を放ったモノの考える規律を守る肉塊になる。
ならば愛欲、愛の狂気に堕ちればどうなるのか? シュタインは愛を自覚していないから堕ちたのに症状が出ていなかった。なら、愛を理解しているめめや勘づいていたつぐみなら当然愛し合う。心とココロを触れ合わせ、自分の愛を相手の愛を受け渡し合い、心が愛で満たされるまで愛し続けることを辞めない。
他の狂気と違うところは愛されて満足感を得れば、狂気的な行為が収まることだ。当然だろう。愛されたいのに狂ったように相手の嫌がることをすれば嫌われてしまう。愛に忠実でそれ故に嫌われるのを恐れる心が愛なのだ。
ハヤテが純正の、自らで旧支配者に至った存在ではなく、造られた存在だからこそ、他の狂気に比べて優しいのかもしれない。あまりにも強すぎれば、操り手になりたかった羊の魔女も手に負えなくなる。
そんなこんなで愛し合うことで心を完全に通わせた四人は満足し、一時的に狂気状態から抜け出した。全員での共鳴は当然最高効率で出来るし、話さなくても想いを伝え合うことなど造作もない。
逆に四人で完成してしまったからこそ、他の職人達とは組めないというデメリットもあったりする。もうこれ以上つぐみハーレムが広がらないように、拒絶している人が三人ほど居たからという説もある。
そして最後のマカ達も共鳴連鎖が出来るようになったのか? と聞かれれば否と答えることになるだろう。
共鳴連鎖は出来ている。だが、本当にただ共鳴を連鎖させているだけで、相手に何も言わなくても心の中で伝えるだけで伝わるレベルの共鳴連鎖までは出来ていない。
それでも狂気を扱えるマカとソウル、自信を失っていてもオックスレベルを殴り飛ばせるブラック☆スターとその武器椿、他人を信頼出来なくなっているけど死神で元々強いキッドとその武器トンプソン姉妹。
今の状態でもオックスチームよりも何倍も強いマカチームが、戦力の足りない死武専の戦力となるべく連れてこられるのは当然だった。
これらの他にも何十人もの戦力はいるが、一ペアだけ異質な存在が混ざっていた。
「キ、キム……あの人たちとどう接すればいいのか分からないよ」
「そこ! クロナは毎回キムに逃げないで自分で考えなさい!!」
「ちょっとやめてよ! 引っ張らないで、助けてぇ! キムゥ!!」
「一人で頑張れっ!」
「だからやめておけって俺は言っといただろ! これでまたマカに飴を取り上げられたらぶん殴るからな!!」
キムの背後で、今まで会ったことの無い死武専の戦闘員の視線から隠れていたクロナは、マカに引っ張られて無理やり前に出された。
クロナは職人としてデスシティーの中でできる仕事をしているが、正式に死武専の職人になった訳では無い。内気な、身内としか話せないその性格を少しでも改善させるために、死神様は職人として動けるように、特別な証を発行している。
クロナ自身も職人として死武専に通う気はあるのに、何故死武専の正式な職人になれないのか?
それは至極単純な理由、親の許可を取れていないからだ。
ブラック☆スターのように本当の親が居なくても、
クロナの親はメデューサとハヤテだと分かっていて、もしメデューサだけしか判明していなければ、クロナの判断だけで死武専に入れただろう。
しかしハヤテも親であることが判明しているので、学校である通称死武専、正式名称『死神武器職人専門学校』は許可を得ないといけない。
死武専は何でもありだが、一応は学校なのでそこら辺の柵は存在している。
本来はBREW争奪戦に参加するはずのなかったクロナだったが、キムやマカが戦いに出ることを聞くと、意を決してマリーにこう言った。
「ぼ、僕がキムと、そのマ、マカを護りたい!」
その言葉をそのまま死神様にも言ったことで、クロナも争奪戦に参加することになった。
「いいかお前たち。本来なら俺やシュタインが中には入るべきだ。だが戦力が足りなく、マカチームに入ってもらうことになった。絶対に無理をするな! BREWは確かにアラクノフォビアに奪われれば面倒なことになる。だがゾンビになった俺だって、生前の俺だってこう言うだろう。BREWなんてお前達の命に比べたら安いものだ! 絶対に無茶だけはしないように!!」
ロスト島に到着するとシドがそう締めくくり、BREW奪還作戦が開始した。
***
今回の死武専側の作戦は死神であるキッドのいるマカチームが、ロスト島の中心で渦巻いている磁場の竜巻の中に侵入し、BREWを確保、もしくは破壊が目的となっている。本来なら突入はシュタインのような最強クラスに行かせるべきなのだが、今回の作戦の参加は死神様が禁じている。あまりにも不安定過ぎる戦力は、そのまま敵に落ちてしまうかもしれないからだ。
シドがアラクノフォビアとの戦闘を一手に引き受け、漏れた敵を戦闘員やオックスチームが叩き潰す。つぐみ達は4人であるが、戦力としては大きいので遊撃に回ることになった。
シドが中に入らないのは指揮する人間が居なくなるのと、ロスト島から出るための船を破壊されたら袋の鼠になってしまうので、そちらを優先することになっている。
シドは内心それでも自分が磁場の影響の強い竜巻の中に入りたかったが、死神様にキッドという死神がいるから安心するように何度も諭された。
諭されている時にシドは死神様に内部でアラクノフォビアの幹部と出会ってしまったら、いくらマカたちでも危険であることを指摘すると死神様はこうも言っていた。
「あの時代を乗り切った人が
その言葉でシドは黙る他なかった。
そして今現在、シドはアラクノフォビアの戦闘員を鎧袖一触で滅し続けている。
担いでいる弩の梓が気合を入れて周囲を『千里眼』で見通したおかげで、潜んでいたアラクノフォビアへ逆に奇襲を仕掛けることが出来た。
「常に二人で掛かれ! 数はあちらが多いが、こちらとは練度や連携に大きな差がある!!」
「後方六人。雪の中です」
「了解!」
近くにいる敵にはミーラのナイフで、遠くにいる敵には梓の弩から放たれる矢が敵を撃ち抜く。
「子供たちに負けたくないだろ? 大人の意地を見せろ!!」
「「「「おおおお!!」」」」
死武専にいる戦闘員でシドの下につく者は皆が皆、シドのように責任感の強い人達が多い。故にいくら強くても作戦のメインを子供にやらせてしまっていることに強い怒りを感じている。
自分がもっと強ければ……そういう優しい強さをシドは煽り、更に気合を入れさせる。
このまま行けばシド達がいる場所は完全に死武専が制圧できるだろう。金髪の剣士も姿を現すことも無く、順調に作戦は進んでいく。
マカたちが磁場の竜巻に入っていった場所でキムチームとクロナも敵と戦っていた。
彼女たちの目標は帰ってきたマカ達を守って船まで誘導すること。合流ポイントを守り、円滑に帰還を行わせること。そしてキムは一定時間経ったら、空を飛んで撤退合図を出す。これらの役割を言いつけられていた。
どう見てもマカたちがメインでキムたちがそのサブな扱いだが、ここにいる人でそれに不貞腐れる人は居ない……いや、
「マカ達大丈夫か、な!」
「ブラック☆スターが少々不調のようですが」
「喋らないで真面目に戦え」
ハーバーが戦いながら話している二人に声を掛けるが、戦いに集中しながら話せる程度の余力がなければ他人との連携などできない。油断せず戦いながらも、情報交換をやめない。
「キッドも調子微妙そうだったよな」
「キッドは今あることで悩んでるから」
「……あの死神、キムに手を」
「キッドがキムにアプローチを!?」
「全く関係ないことはあとにしろ!!」
魔道具の保管庫に共に行き、キッドの悩みを知っているキムは、悩みを知っているニュアンスの言葉を口にすると、ジャクリーンとオックスが戦いから意識を逸らしてキムに向き直る。
いくら口を開きながらある程度戦えたとしても、自らが好意を抱いている相手が別の人を深く理解しているような発言をすれば、集中力など霧散してしまう。彼ら彼女たちは精神的にも既に大人のようなものだが、それでもまだ所々子供だった。
「やらせねえよ。ファイアーサンダー、魂の共鳴。
「邪魔だあぁぁぁぁ!?」
そんな二人に襲いかかってくる敵に、キリクが大技を放つことで再び勢いを敵から奪い取る。彼の両手にハマっている二人の兄妹の武器、グローブと化している魔法の壺は炎と電撃を迸らせて、辺り一面の敵を吹き飛ばした。
それに続いてクロナが自分に優しくしてくれるキムを狙う敵を容赦なく切り刻んでいく。技を使わないのは、こんな雪だらけの場所で悲鳴共鳴なんてしたら、下手したら雪崩が起きてしまうことを察したラグナロクが止めていた。
「キッドがなんか悩んでるのは分かったけどよ、あのブラック☆スターの落ち込みようは何なのさ」
「今の彼は僕でも倒せそうですからね」
「いや、ぶっ飛ばされてたじゃん」
「カッコつけたのですから一々突っ込まないで欲しい!」
「ぷっ! だっせえなビリビリハゲ!! そんなんだからモテねえんだよ」
「禿げている訳ではないと何度言えばいいんですか!! 剃っているんです!!」
「……」
死武専でブラック☆スターがある大人以外との決闘では無敗を誇っていることは有名だ。その大人がハヤテであり、子供の頃からボコッていたことは、ハヤテの義理の娘になったキムは聞いた。
ハヤテの思いや考えを知っている今だからこそ、何故ちゃんと口にしなかったの? とその程度の思いしかないが、義理の娘になって告げられたブラック☆スターに黒星を押し付け続けている事実を知った時、キムは義理の子をボコるのが趣味なドSなやべえやつとか思っていた。
そんな風にある程度ブラック☆スターの事情を知っていて、この前刀傷でボロボロになっていたブラック☆スターを治したこともあって、ブラック☆スターが誰かに更に負け込み、自信を喪失してしまっていることを何となく察していた。
「どうかしました?」
「大丈夫キム?」
野外では獣なオックスと、親しい人にはとことん執着するクロナがキムの変化を感じとって声をかけた。
「なんでもない」
(まさかブラック☆スターが?! ないわね)
キッドの時と同じ轍を踏まないキムだったが、魂の共鳴で深く繋がっているジャクリーンは、ブラック☆スターについてもキムが知っていることが分かった。
しかしブラック☆スターが恋愛をするとは全く思えなかったので、即座にその考えは切り捨てる。
キムがブラック☆スターに惚れることもあるかもしれないじゃないか? 天地がひっくり返ってもありえない事だとジャクリーンは一蹴した。
シド達の上陸地点の制圧は順調に進んでいて、マカ達の帰還ポイントの防衛も順調に進んでいる中、つぐみ達はハズレくじ、それも死に繋がる大凶を引いていた。
「おいおい、もっとボインの姉ちゃんを連れてこいよ。デスサイズの雷の奴とか胸デカかったし、あれが良かったわ。でもあの日本人っぽい奴以外は素材がいいな。よっしゃ、てめえらは周りの奴らを殺して回れ!! シワシワの金玉が若芽を求めてイキリだした俺は行くぞ! 邪魔したらぶっ殺すからな!!」
現在作戦が上手く進行しているとメデューサは愉悦に笑っています。