本編と繋がりがあるけど本文に入れるほどではないけど、原作と微妙に人間関係が違うので、書いておきたく後書きに書くことになりました。
読まないと本編がわからなくなるというものでは無いですので、スルーして頂いても構いません。
今回でマリー以外の大人達との関係性が書けました。次回からは原作のイベントが入り始めます。
あとデスシティではなく、デスシティーだったので修正。
救援組はハヤテ達に一言言葉をかけたあと、部下達の元に指示を出しに行った。二人は先程ハヤテが発動しようとしたものが見られていなかったのかなどを話し合っていると、再びこちらに三人が戻ってきた。
助っ人にきたシド、ミーラ、梓とは数年ぶりの再開である。もしここがデスシティーなら再開の記念として店にでもとなるだろうが、ここはサハラ砂漠の真ん中。
シドが持ってきた水で乾杯しながら、互いに近況を伝え合う。どんな時でもメイド服とスーツのスタイルでいる二人の事は知っているので、三人からそのことに対して何かを言われることは無い。
「まさかシドがゾンビになるとはな」
「生前の俺もこんなこと予想してなかった。事故みたいなものだ。だがゾンビもゾンビで悪くないぞ?」
「ゾンビになってから露骨に生徒との距離が空いたことを嘆いてなければ完璧だったな」
「そ、そこをつくのはやめてくれ」
砂避けの外套を纏ったゾンビは
シドは子供が好きだ。もちろんロリコンやショタコンとかそういう性的趣向のことではない。未来ある子供たちに様々な可能性を教え、将来職人や武器以外の道でもやって行けるように学ばせる。
死武専生が初めて悪人の魂を狩れば本人達以上に喜び、生徒が傷つき運ばれてきた時は己の教育不足を悔いる。
そして星族殲滅の時、本来なら殲滅するが故に残る遺恨を無くすため、星族の過激派たちは確実に全て滅ぼすと決まっていた。ホワイトスターとその一味は残らずである。
だがシドはそこにいた、まだ星族の思想に染っていない赤子はこの殲滅戦とは関係ないと死神様に直談判して認めさせた。その子供がブラック☆スターだったりする。
そんな堅物であるが、シュタインほど冷徹ではなく、スピリットほどはっちゃけていない男がシド・バレッドだったのだが、ゾンビになってから少しだけユーモアとエロも手に入れたと死神様はのちに語る。
そんなシドとハヤテのやり取りを鋭い眼差しで睨みつけている梓に、シドとの話が一段落したハヤテが声をかける。
「さっきからどうした?」
「……」
その言葉に梓は一度目を閉じてから、カッと見開いたあとハヤテの顔の目の前まで歩いてきた。その距離はあと数センチで触れてしまうほどだ。もしこれが敵や
存分に怒ってくださいと。
「このままじゃキスしちゃうことになるんだけど」
「土下座してください」
「梓?」
「疾風
「俺は女性に命令されて跪くようなマゾ的な趣味は、」
ハヤテは真面目に取り合わずに離れようとしたので、梓は強制的に従わせる魔法の言葉を詠唱する。
「マリーのオセアニア担当を肩代わりしますよ?」
「土下座させて頂きます」
ノアとの戦いよりも素早い身のこなしで、とても綺麗な土下座をハヤテは実行した。ここは砂漠で地面が熱せられた砂地である。熱気で汗が吹き出すが、そんなもの今のハヤテには関係ない。それくらい魔法の言葉は強かった。
土下座はさせたが頭を下げることは梓が止める。そしてその梓はハヤテを見下ろすように立ち、基本感情的に怒らない委員長が本気で怒る。
「疾風先輩は強いです。ですが、その強さも戦場でふざけたら意味が無いじゃないですか! 何故あのような無様な姿を晒していたのですか!」
死武専で一番強い職人といえばシュタインになるが、ハヤテもその次に名前を連ねる事が出来るくらいには強い。そんなハヤテが訳の分からない魔導師に圧倒されていたのだ。そして何より魂の共鳴を高めて放つ技を使っていなかった。
「先輩とアリスさんの強みは異常なまでの共鳴率の高さです。技を負荷なく使いこなし、常時共鳴技を発動し続けることだってできます。それなのに何故発動しなかったんですか!」
「……ああ、なるほどね」
「立っていいとは、」
ハヤテは何故土下座させられたのかわかり、梓の許可なく立ち上がる。それを咎めようとした梓の頭にハヤテの手が乗る。ハヤテの手が梓の頭をポンポンと数回撫でると、梓はなんとも言えないような顔をして静かになった。
そしてアリスは今回も駄目だったよと言いたげだ。彼女がハヤテに怒って欲しかったのはナザールの事だったのだが、まだ梓はハヤテの元妻が魔女だったり、殺そうとしてきた事情は知らない。
「心配してくれたのは嬉しいよ、ありがとう」
「……」
ハヤテは嬢にやった、愛撫のようなエロい手つきではなく、本当に感謝の念だけを込めて梓に触れる。そこには一切の下心は存在しないように見える。
「まず今の俺とアリスは共鳴率を高められないんだよ」
「それは本当か?」
シドがジョークの類じゃないかを確認してくるが、ハヤテはその言葉に頷いて返す。
「流石にこんな大事なことでジョークや嘘を言うことは無いよ。今の俺とアリスは……そうだな、マカちゃんは魔女狩りを使えるようになった?」
「使えはする。だが実践で活用するのはまだ無理だ。すっぽ抜けてしまうからな」
「なるほどね。ならそのマカちゃんの状態よりも共鳴率を高められないんだよ、今の俺たちは」
「……」
黙り込んでいた梓はチラリといつの間にか出来ていたハヤテの首の傷を見る。
「そう、この傷のせいでまともにアリスと共鳴出来ないんだよ。魔女に呪いを掛けられ、」
「……武器と共鳴できないのではなく、アリスさんとだけ共鳴を高められないのですか」
「そうだよ」
梓はハヤテが説明している途中、ハヤテと共鳴し、千里眼を発動した。
梓は特殊な武器の一人だ。職人と距離が離れていても共鳴ができ、自分もしくは共鳴した相手の半径50メートルを見通す。遠隔地に居ながらも共鳴ができ、武器としての能力は弩。これほど狙撃にうってつけな能力はないだろう。
「……待ってくれ。ハヤテのその傷は逃げられた奥さんに付けられた傷じゃなかったか?」
ミーラは昔に聞き及んだ情報が正しければ、とハヤテに確認を取る。その言葉にシドも思い出したのか、未だに穴の空いている帽子で隠した眉間の穴を抑える。死武専の職員なのに魔女と結婚したのかと。
「俺の逃げられちゃった妻は魔女だし、未だに好きだよ」
「……星の時の俺よりも馬鹿だなお前」
「馬鹿じゃなきゃ秩序の神の定めた敵と結婚したりしないさ」
「それもそうか」
シドはハヤテとスピリットとシュタインが何かをやらかすのに慣れているので、これも同じようにいつものアホ騒ぎだということで処理をした。死神様に許可は得ているはずなので、シドがどうこう言うことではない。
ミーラはとりあえずマリーに告げ口をする事を決意する。そして、
「……すみません。回収作業を手伝いに行きますので」
溢れてしまった涙を隠すように、梓はその場をあとにした。
「……ミーラ、今の俺が行っても梓を傷つけるだけだろうし、頼む」
「ああ、任されてやろう。痴話喧嘩ではないからこそ、私は手伝ってやるが、ヤったヤられたで私を巻き込むなよ」
「了解」
ミーラはハヤテと梓がそういう関係では無いことを理解していて、それ以上に面倒くさい関係なのを知っているからこそ、すぐに梓を追いかけていった。
「女性に優しくするのが心情と仰っていますのに、既に今週は二人の女性を泣かせましたね」
「その節はすまない」
「貸しをどのように使おうか迷いますね……私も梓の元に向かいます。詳しく説明をした方が良いと思いますので」
「頼んだ」
男だけで話したいこともあるだろうと、アリスはその場をあとにした。アリスにとっても梓は一番親しい後輩であり、何だかんだ心配なのだろう。その足取りはいつもよりも急いでいる。
「……生前の俺は遠慮して聞かなかったが、死んだからこそ遠慮を捨てる。弓梓はハヤテにとってなんなんだ? ただの後輩という訳では無いだろ?」
シドがハヤテとよく話すようになったのは、任務で背中を合わせるようになってからだ。なのでハヤテの学生時代のいざこざはあまり知らない。
「スピリット先輩が目を掛けてくれたのと同じように……それを真似して先輩風を吹かせた相手が梓ってだけだよ。ちなみに手は絶対に出さない」
「なんでお前は手を出した相手よりも、出さない相手との方がトラブルになりやすいんだ? 普通逆だろ」
「さあ?」
ハヤテの惚けを予想していたのか軽く流した後、シドは先生としての相談や愚痴を話し始めた。
至って普通の大人の会話。仕事の辛さや楽しさ、ゾンビになってしまったせいで起きた行き違い。そんな事を二人は話し合っていると、回収作業が終わったようでアリスがそのことを告げに来た。もうここから撤収するようだ。
「……あー、あと最後に一つほどいいか?」
シドは歯切れ悪そうに口を開き、言うべきかどうかを自問してから、聞いておくべきだと判断したのか疑問を口にした。
「アリスの刃は白や白銀だったよな?」
「そうだけど?」
「ノアとかいうのを狙撃した時、お前が持っていた剣が真っ赤に染まっていたように見えたんだ」
「光の反射と敵の血のせいでしょ」
「やはりそうか」
シドは納得いったという顔でハヤテの横を通りすぎ、ハヤテが勘づかれないように一息ついたタイミングでシドはボソリと呟いた。
「お前、発狂していないよな?」
「……発狂しちゃった人達を俺たちは何度も見たよな? 俺がそいつらと同じように見える? 発狂した仲間を殺したことのある俺達ならそのくらいの判断はできるだろ?」
ハヤテは笑いながら腕を広げて、シドに問題ないことをアピールする。
シドだって分かっている。発狂した人間がどうなるかなんて。今のハヤテのように気さくな態度を取る事が出来なくなるということを。
だが、敵を狙撃しようとしてハヤテが視界に入った時、言い知れぬ不安が心を掠めたのだ。
死武専を裏切り、闇に堕ちた同胞を殺した時と同じような……否、それ以上の不安をシドは感じ取っていた。
そのあとハヤテは梓と顔を合わせることなく、一足先にデスシティー行きの飛行機に乗り込んだ。
***
「梓ともう少し距離を置いてはどうでしょう」
飛行機のリクライニングシートに身を預け、離陸してから少ししてからアリスがそう言った。今回は従者としてではなく、パートナーとしての忠告だからか様付けはしていない。
「……やっぱり気にかけ過ぎ?」
「ハヤテが構えば構うほど離れられなくなります。分かっていますよね?」
「梓の好意はちゃんと分かっているさ。でも俺は絶対に手を出さない。俺は反面教師の良い先輩で居たいからね。梓もそれを分かっているはずだろ」
「相手が離れないからというのは酷い言い分ですね。理屈を理解していても、感情は制御出来ないのが乙女だと分かっているでしょうに」
「……」
ハヤテはスピリットに憧れた。
その名残でスーツを常用していたり、女たらしになったり、コーヒーを口にするようになったりと、あらゆる面でスピリットをリスペクトしていた。
ハヤテがスピリットと出会い、だいたい一年程経った時、ちょうど次の学年の死武専生が入学してきた。
ハヤテはスピリットにボコボコにされ、そのおかげで今があることをその時思い出していた。そして思った。
自分もスピリットのように後輩を導いてみたいと。
そして目についたのが死武専前の階段を登りきり、ぐったりしていた日本の学校の制服をピッシリ着たメガネの同郷の女の子。弓梓だった。
この時はまだ真面目な子程度であり、キング・オブ・委員長ではなかった。
ハヤテはスピリットやシュタインに戦い方から処世術、勉強からオシャレまで色んな事を教わった。故にハヤテもそれを真似し、梓を死武専にいても埋もれず強く賢い子に導いた。
失敗しそうなこともあった。だが絶対に導くことに関して失敗したくなく、スピリットやシュタインに相談を持ちかけ、慎重に梓育成計画を進めた。その結果かどうかはさておき、良きパートナーにも恵まれ、怒涛の速さで梓はデスサイズとなった。
「梓があまり融通の利かないキング・オブ・委員長になってしまったのはハヤテのせいですよ?」
「……それは仕方ないと思うんだ。今言ったところでさ」
「ですが自覚してください」
梓はデスサイズに成れたらハヤテにあることを告げようとしていた。そしてその目標に切磋琢磨していたため、ハヤテの悪い方のあだ名を全く知らなかった。
デスサイズになってやっと心に余裕を持て、そしてハヤテの裏の顔、女たらし、百人斬り、男の敵。何故か女の敵と呼ばれていなかったが、梓は
「ハヤテが梓に手を出さないのは、私に手を出さないのと同じものによるということは理解しています」
「ああ。だから俺は絶対に出さない、
「ならもう梓を特別な後輩という扱いをやめてあげてください。私たちの事情に巻き込むのはやはり可哀想です」
「昔はそんなこと言わなかったよな?」
「梓はそれだけ可愛いですからね。ナザールは殺しますが、ナザールは殺しますが」
そう口にしたアリスの目には光がなく、瞳は真っ赤に染まっていた。口も三日月を描き、死武専の人達の前では絶対に出してはいけない雰囲気。数秒ほどでそれは戻ったが、本気のアリスにハヤテは何も言えない。何も言わない。
「……それは梓の決めることだろ。俺だって梓は可愛いと思ってるさ。その可愛い梓を手放したいと思う奴がいるか?」
「一般的な感覚ではマリーも十分、」
「いやわかってるから。でもマリーの話題はやめて」
「ふふ、マリーが可哀想ですね。彼女泣いていましたよ? それに……」
また先程の真っ赤な目の時と同じような雰囲気をアリスは醸し出しながら、ハヤテの嫌がる顔を引き出しながら楽しそうに、とても嬉しそうに笑い続けた。まるでタガが外れてしまったかのように、メイドとしての本分を忘れて愉悦に笑う。
梓は不甲斐なさで泣き腫らした目も落ち着いた頃、東アジア支部の拠点に戻ってきた。
悲しみに暮れたあとに来るのは喜びの感情だ。
ハヤテの下心のない思いやり純度100%の頭の撫で方は梓にしかしない。それは未だに変わっていないとアリスに教えてもらい、今なお口角があがる。鉄の女と言われた梓の顔は赤らむ。
そんな顔のまま梓は自分に割り振られている支部長室に入った。
「そんなに嬉しそうな顔をしてどこに行っていたの?」
「マ、マリー先輩……久しぶりですね」
梓は顔を引き攣らせながら、オセアニア担当でここには居ないはずのマリーに挨拶をした。
マリーにはハヤテが日本にいた事、先程まで砂漠にいた事、そしてデスシティーに戻っている事を告げられていない。とても面倒なことになるからだ。
「それでハヤテと何処に行っていたの?」
「私だって先輩の居場所を知りたいですよ」
梓はハヤテの隠蔽に一役買っていた。彼女はハヤテの特別な後輩として、何がなんでもマリーに居場所を教えてはならないと意気込んでいた……が、
「さっきの笑顔はハヤテに撫でてもらったとかそういう事でしょ? なぜ嘘をつくの?」
ミョルニルの光を映さぬ瞳に雷撃が迸る。
まじかというほどの距離じゃないのに、梓の体が痺れを感じる。目が死んでるマリーを見て梓は思う。
(マリー先輩……発狂してない?)