このすばアフター!カズマ&めぐみんのターン   作:ぽいんと

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第3話 お嬢様はいつだってブレない

 

 

 翌朝。

 昨夜はあんなことがあったせいか、悶々としてしまい結局朝まで寝付けなかった。そして外が明るくなってきたので、朝食を取るために居間に降りることにした。

 

「お、おはようございますカズマ・・・・・・。今朝は早いのですね・・・・・・」

 

 俺と同じく寝不足そうな顔をしためぐみんが挨拶してくる。椅子に腰掛けウトウトする様子から見るに、おそらく一睡も出来ていないのだろう。・・・・・まぁ俺もなのだが。

 

「早いんじゃない、お前のせいであれから眠れなかったんだよ。仕方ないのは分かってるけど、あれだけ思春期の男の子の事を挑発しておいてお預けとか普通あり得ないからな。昨日の夜からずっと苦しかったんだからな」

「そ、それはカズマのせいでもあるでしょう・・・・・? それにお預けで苦しかったのは・・・・・その・・・・・・・私もなのですが・・・・・・・」

 

 恥ずかしそうに俯くめぐみん。でもなぁ、あれだけ興奮させられた理由は・・・・・・・。

 

「いや、二回もキスしたお前のせいだろ。チュッチュチュッチュと俺の唇を貪りやがって。正直あの時点で無理やり手を出しても良かったんだからな?」

「む、貪るとか言わないでください!ほんっとデリカシーの無い男ですね!・・・・・・昨日のことは・・・・・・私も・・・恥ずかしかったん・・・・・ですからね」

 

 めぐみんは自分の言葉に照れたのか顔を赤くする。・・・・・・お前こんなやつだったっけ?

 

「なんなんだよ乙女みたいな反応しやがって! こっちまで恥ずかしくなるから止めろよ!」

「乙女ですよ! 年齢的にも見た目的にも誰がどう見ても、乙女以外の何者でもありませんよ! 私のことをどういう目で見ているのですか!」

 

 怒りに任せて両手でバンバンとテーブルを叩きつけるめぐみん。そのまま俺達が睨み合っていると、台所の方からバナナを咥えたアクアが出てきて。

 

「あしゃっぱりゃからにゃにをこぉーふんしれるの?」

「飲み込め!飲み込んでから喋れ!」

「飲み込んでから喋ってください。はしたないですよ!」

 

 食べカスを口につけたこいつを見て誰が本当の女神だと思うのだろうか。というかたまに本人ですら忘れている時があるんだよな・・・・・・。するとアクアはバナナを飲み込んで。

 

「んっ。それで二人は朝っぱらから何を興奮してるの? それと、なんで二人とも早起きなの? カズマさんも最近早起きだけど、ここまでじゃなかったわよね?」

 

 実際、最近の俺は魔術練習で早起きだし、めぐみんは元々早起きなので早めに朝食を取ること自体は珍しくないのだが、今日はさすがに早すぎたらしい。

 いつもは鈍感すぎて俺たちを困らせているくせに、こんな時だけ目聡いアクア。さすがに素直にめぐみんに告白されたとは言えない。どう言ったものか・・・・・。

 

「き、昨日は帰ってからずっと寝てたからな・・・・・・それで早起きなんだよ。なっめぐみん?」

「こ、ここで私に振るのですか!?え、ええそうですね。き、昨日は何もありませんでしたね!」

 

 俺の会話のパスを受け取り損ねためぐみんは、焦って微妙におかしい返答をしている。それに怪訝そうな表情を浮かべたアクアが。

 

「それにめぐみんもなんだかいつもより早起きなのよね・・・・・・・」 

  

 そんなアクアの言葉を受け、めぐみんがビクリと震え目を泳がせる。

 

「な、なにを言っているんですか私はまぁ大体こんなもんですよ、いつも二人は起きてくるのが遅いからそう思うだけで、それに今日は早く私のアジトに向かわなければならないですからね、それにそれに今日はなんだか最高の爆裂魔法が撃てる気がすると私の第六感が言っているので、それはもう早起きだってしたくなりますとも、ええ!」

 

 早口でまくしたてるめぐみんにアクアは首を傾げ、何かを考え込んでいる。

 今の俺とめぐみんの関係は、相も変わらず友達以上、恋人未満の関係である。ちゃんとした恋人に昇格するまではダクネスとアクアとも内緒の方向だと二人で決めているのだ。

 そんな微妙な状況もあり、俺とめぐみんがお互いをチラチラと見合っていると。

 

「ふんふんふん、なるほど分かったわ。そういう事なのね二人とも」

 

 いつもは全くもって見当違いの行動しかしないくせに、余計な時に余計な勘を働かせたのか、アクアが何かを察した様にニヤニヤしてきた。

 

「な、なんですかアクア、私は嘘は言ってませんよ!」

「お前、そのニヤケずらはやめろよ。でないと泣き喚いて俺たちに謝ることになるぞ!」

 

 俺とめぐみんがそう言うも、アクアはにやける口に手を当てたまま・・・・・・。

 

「ははーん、冷蔵庫に雪国シャーベットが余ってたから、それを目当てに早起きしたのね! でも残念でした。あれなら今さっき私が全部食べちゃったのでした!」

 

 やはりアクアはいつも通りだった。

 ・・・・・・・いや、ちょっと待てよ。

 

「お前ふざけんなよ、あれは俺がわざわざ雪の街から取り寄せた銘菓だったんだぞ! 最近頑張ってる俺へのご褒美として用意してたのになんで俺の分まで食べちゃうんだよ。お前らの分だってちゃんと用意してただろうが!お前は割り算もできないのか!」

「何よ!食べちゃったもんはしょうがないじゃない。怒んないで!そんなに怒んないでよ! スイーツなら私が買ってきてあげるから」

 

 流石に俺の分と決まってたものを食べてしまって申し訳なさを感じたのか、アクアは代わりのものを買ってくれることを約束してくれた。

 

 

 その後は俺も怒りを収めて、アクア、めぐみん、そして朝食の準備が終わったころに降りてきたダクネスとともに朝食を取りながら雑談する。話題は昨日の俺の戦いだ。

 

「それにしても、昨日の話ですが、カズマはよくそれだけの数の敵からウィズを守り切れましたね」

「それもそうねー、コボルトに殺されるカズマさんが生き残ったって信じられないんですけど」

「んっ、確かに、カズマの防御力はこの場の誰よりも低かったはずだが」

 

 三人は俺の方を不思議なものを見るような目線を向けてくる。

 今の俺は超成長期だ、疑問に思うのも無理はない。

 

「そりゃレベルドレインを繰り返して、いろんなスキルを覚えたからな。だから今の俺は大半の敵に対応できるんだよ。まぁ、まだ欲しいスキルはいっぱいあるけど」

「なるほどな、それで他に覚えたいスキルとはなんなのだ?」

 

 ダクネスは首を傾げて聞いてくる。俺が今一番欲しいスキルは・・・・・

 

「そうだなー、例えば死の宣告とか」

「お、おお前はそんな物騒なスキルを覚えて一体何になるつもりなのだ!?」

 

 俺の言葉を聞いて妙に興奮するダクネス。俺は質問に答える。

 

「ん?それはもちろん俺の悪い噂を流したやつに死の宣告を掛けて、『その呪いを解除してほしければ、俺に誠意を見せることだな』って言ってやるつもりだが」

「な、なんという鬼畜だ!それはうらやまし・・・・・、いやけしからん!そんなことをしたらお前をとっちめてやるからな!」

 

 口ではなんか言ってるが、ハァハァと熱い息を吐きながら俺を見てくる変態に説得力なんて無い。そういえばこいつ、べルディアに死の宣告を掛けられた時も悦んでたな。

 

「さすがにそれは冗談だよ。それにダクネスは俺の事を悪く言いふらしたりしないだろ?だから関係ないはずだよ」

「あ、あああ勿論だとも。わ、私はカズマの悪い噂なんて流したりしていないぞ・・・・・・?」

 

 ・・・・・なんでこいつは微妙にかみ合わない返事をしてくるんだろうか? もしかしてアクセルの街に俺の悪い噂を流しているのはコイツなのか? だったら許せないのだが・・・・・・。

 そんなことを考えながら怪訝な表情を浮かべていると。さっきまで会話を聞いていたアクアが耐えかねて俺に飛びかかってくる。

 

「ちょっと!アンタなんでウィズのスキルならまだしも、汚らわしいデュラハンのスキルまで覚えようとするのよ! そんな汚らわしい人間がこの神聖な私の傍にいるなんて認められないんですけど!?今度こそアンタの余ったスキルポイントを宴会芸スキルに振り分けてくれるわ!」

「あのなぁアクア、俺は別にアンデッドのスキルが好きなわけじゃない。便利で強いスキルが好きなだけだ。だから、お前が上位の神聖魔法を教えてくれるならっておいやめろ!俺のカードに触るな! 文句があるならさっさとお前のスキルを教えろ!」

 

 無理矢理カードを奪おうとするアクアをいなしながら俺は考える。昨日の戦いだってアクアの使う上位の回復魔法スキルがあればもっと楽に戦うことが出来た。だから正直さっさと教えてほしいのだが・・・・・・。

 

「い、いやよ! カズマがヒールを覚えちゃったから私の存在価値が減っちゃったのよ! これ以上私の居場所を侵食させてたまるもんですか!」

 

 そんなことを言って青い顔をしながら首を振り、提案を拒絶してくる。

 そして言葉を続ける。

 

「大体、魔力が貧弱なカズマが私のスキルを覚えたって半分も効果を発揮できないはずだわ。だからカズマには、この私の回復魔法が必要なのよ!だからもっと感謝して!そして甘やかして!」

 

 ドヤ顔を浮かべるアクア。どうしてこいつはこんなに得意げなんだろう? ムカつくからその頬を引っぱたいてやりたいんだが?

 

「半分も効果を発揮できれば十分だろ。大体いつも俺を危険な目に合わせてるお前にどうして感謝しなきゃいけないんだよ」

 

 そんな当たり前な主張をしていると、アクアはワナワナと震えて。

 

「カ、カズマさんったら、昨日はあんなに素直で可愛かったのに・・・・・・。返して!昨日の純粋で可愛かったカズマさんを返してよ!このツンデレニート!」

 

 昨日・・・・・昨日って何の話だ・・・・・・・・? 俺が帰ってきてから何かあったんだろうか? 

 ・・・・・・・まぁ何があったにしろ俺がアクアに感謝することなんてないはずだけどな。

 そんなことを考えていると、さっきから何かを気にしていたダクネスが。

 

「そういえばカズマ、どうしてお前は昨日のような高い威力の魔法を使えるのだ? 正直本職のアークウィザードと遜色ない気持ちよ・・・・威力だったと思うのだが?」

 

 そういうダクネスは珍しく頬を赤らめず、真剣な表情をしている。以前の俺の事をよく知っているだけに不思議に思うのだろう。

 だから俺はニヤリと笑って答えてやった。

 

「ふっ、この俺の事を誰だと思っている。数多の魔王軍幹部を打ち破り、ついに魔王まで倒した超高レベル冒険者の勇者カズマさんだぞ。それくらい当然だろ?」

 

 俺の答えを聞いた二人は俺に尊敬の目―――――

 ではなく、軽蔑するような表情を浮かべて

 

「「・・・・・・・フッ」」

 

 こいつら鼻で笑いやがった!!!

 

「おい!お前ら俺のこと信じてないだろ!」

「プークスクス、カズマさんが何か言ってるんですけどーー。うちのパーティーで一番レベルの低いカズマさんが何か言ってるんですけど!」

「何を言っているのだ、カズマは今までほとんどの戦いをサボっていたではないか。そんなカズマが高レベルなわけないだろう?」

「あ、あの・・・・・二人とも、カズマはですね?」

 

 さっきまでとは打って変わって、二人は俺の方を可哀想なものを見る目で見てくる、そしてそれをめぐみんが制しようとするが・・・・。

 

「おい、待てめぐみん。言う必要はない。よしそこの二人、そう思うんだったら賭けをしようぜ。せーので冒険者カードを見せ合ってレベルが高かった方が勝ちな? 俺が勝ったら俺の言うことを聞けよ?」

 

 俺はこの状況を利用するためにめぐみんの言葉を遮る。

 

「いいわ、その賭け受けてやろうじゃないの! 私が勝ったら最高級の酒と食事で私をもてなして甘やかしなさいよ?」

「いいぞ、よしそうだな、私が勝った時はカズマは土下座をして、今までのことを謝ってもらおう」

 

 自分が負けると露程にも思っていない二人は既に買った後の事を想像している。哀れな奴らめ。俺が勝利を確信してニヤニヤしているとめぐみんが俺に近づいてきて・・・・・。

 

(あ、あの・・・・・・、さすがにこれはちょっと可哀想だと思うのですが)

 

 呆れた様な表情を浮かべためぐみんが耳打ちしてくる。だが俺は俺を馬鹿にしてきた相手に対して引く気はない、それにあまり酷いお願いをするつもりもない。

 

(いいから黙っててくれ、別にそんなに酷いお願いをするつもりじゃない)

 

 めぐみんはその言葉を聞いて、ホッと息を吐いた。

 

「さて、それじゃあアクア、ダクネス準備はいいか?」

「いいわよ」

「いいぞ」

 

 そう言って俺たち3人は、テーブルに冒険者カードを裏返して伏せる。

 そして――――

 

「「「せーの!」」」

 

 3人の冒険者カードが表返る。

 そして勝ち誇ったような顔を浮かべた二人は俺のカードを見て―――

 

 そのまま動かなくなった。

 

「はい、俺の勝ち」

 

 

 大見得切って恥を掻いた二人のレベルは30代だった、ほとんど敵を倒さない割にはかなりの高レベルである。そういえばこの世界ではレベル30もあれば一端の実力者ということになるらしい。

 ちなみにウィズ先生との特訓で俺はレベル80になった。最早比べるのもおこがましいレベルである。

 

「二人ともショックなのか固まってしまいましたね・・・・・・。これどうします?」

 

 固まった二人の目の前で手を上下させたり、肩をたたいたりしているめぐみん。こういう時にちょうどいい呪文がある。

 

「待つのもめんどくさいから無理やり起こすか、えっと・・・・・確か弱めで『ライトニング』」

「いてっ、って何すんのよ!」

「んっ・・・・・・。どうやら気を失っていたようだ」

 

 雷魔法を気付けの魔法として使って無理やり起こした。ちなみにこれは俺がウィズ先生との訓練中にやられた方法である。ドレインタッチで無理矢理体力と魔力を補給され、気を失うまで魔法を使い、そして気付けの魔法で起こされる。そんな訓練する日もあった。・・・・・・・今思えば地獄だな、やってるときは気にしてなかったが。

 雷魔法でハッとしたダクネスはあんぐりと口を開けて。

 

「それにしても驚いたな。まさか80レベルもあるとは、養殖だけでそこまで上がるものなのか・・・・・・?」

「まぁいろいろあって、高レベルの敵を敵を根こそぎ倒す機会があったんだよ・・・・・、まぁそれはいいんだ」

 

 驚くダクネスとアクアを片目に、俺は大げさに振り返り二人を指さす。

 

「さて、それじゃあお前ら二人には約束通り俺の言うことを聞いてもらおうか」

「ちょ、ちょっと、ね、ねぇカズマさん? あんまり酷いことはお願いしないでね? ホントにホントにお願いね・・・・・?」

「な、なぁカズマ、一体どんなしゅごいことをお願いしてくれるのだ? はぁっ・・・・はあっ・・・・」

 

アクアは怯えた様に青い顔で、ダクネスは既に何故か興奮している。そんな二人に向かって俺は願いを告げる―――

 

 

「よし、お前らのすべてのスキルを俺に教えろ!」

 

 

俺の言葉を聞いた二人は、朝食を食べ残したまま全力で逃げ出した。

 

 

 

「待てやおらああああああああああああああ」

 

 

 

 必死に追いかけるが、アクアの補助魔法が掛かっているのかどんどん引き離されていく。っていうかアクアはともかく、なんでダクネスまで逃げ出してるんだ。

 

 しばらく追いかけてから諦めて屋敷に戻ると、食事の残されたテーブルを見ながら悲しそうな表情を浮かべためぐみんが待っていた。俺は息を切らしながら話しかける。

 

「はあっ・・・・めぐみん、はあっ・・・・・はあっはあっ・・・・・めぐみん・・・!」

「ちょ、ちょっとハァハァ言いながら私の名前を呼ぶのは辞めてください!控えめに言って犯罪的ですよ?」

 

 俺の様子を見て、一歩引いためぐみんがそんなこと言ってくる。たしかに一理あるけど・・・・・これは約束を守らず逃げたあいつらのせいだろ。

 

「元々嫌がってたアクアはともかく、はぁ、なんでダクネスまで逃げ出すんだよ」

「知りませんよ。でも二人とも私の作った朝ご飯を食べ残していったのは許せませんね、次はあの二人はパンの耳だけにしてやりましょうか」

 

 地味にえげつないことを言いながら、不機嫌そうに食器を重ねて持っていく。ちなみに俺は既に朝食は食べきっていたので、怒りの矛先にはならないのだ。

 

「それにしても二人とも速かったな、敵から追われてる時もあの速さで逃げてくれれば楽だったのに」

「それだけ嫌だったということなのでしょう、スキルくらい教えればいいと思うんですがね」

 

 そうだよなぁ、俺が二人のスキルを覚えればこれからもっと楽できると思うんだが・・・・・・。片付けを手伝いながらそんなことを考える。そしてめぐみんの方を見て。

 

「そういうばめぐみん、お前は俺が二人からスキルを教わるのに賛成なのか?」

「もちろん賛成ですよ? あっでも、嫌がるアクアに無理矢理教えさせるのはちょっと微妙だと思いますけどね」

 

 そう言って、食器を洗いながらクスクス笑う。あれっ? 仲間思いのめぐみんなら俺を詰ってくると思ってたんだけどな。

 

「あれ? 俺はてっきり文句言われると思ってたんだけど・・・・・」

「そんなことしませんよ」

 

 はっきり言い切る。そして洗い物を中断して、上目遣いで尊敬の眼差しを浮かべて。

 

「だって・・・・・だって・・・・・・! 最強の最弱職って格好いいじゃないですか! 紅魔族の琴線にビンビンくるのですよ!! しかもそれがカズマなのですよ!? それはもう応援しますとも!」

 

 両手をパタパタと振り興奮しているめぐみん。そういえばこいつは格好よさを第一に置く紅魔族だったな・・・・・・。だが俺も悪い気はしない、自分が二つ名を貰うならそれがいいと思っていたくらいだ。

 そういえばめぐみんにもスキルを教えてもらう約束をしてたな。

 

「フッ、お前はあの二人と違って俺の真価を理解してるな。それはそうと、お前も俺にスキルを教えてくれよ。今日は暇だからな」

 

 昨日は激しい戦いをしたため、今日はゆっくり休んでいいとウィズ師匠に言われている。そのため今日一日は暇なのだ。そんな俺の言葉を聞いて。

 

「ええ!もちろん喜んでお教えしますとも! あっでも、午前中は私のアジトに行く予定があるので、午後からなら構いませんよ?」

 

 満面の笑みを浮かべ、そう言ってくれるめぐみん。控えめに言って可愛い・・・・・・。い、いやそれどころじゃない、これはデートのお誘いなのだ。

 昨日、あんなことを言われた手前、意識せずにはいられない。正直なところ、デートして俺の気持ちを確かめたかったところもある。

 

「それじゃあ昼過ぎに屋敷の前で集合な、俺は今から逃げた二人に会いに行く」

「私は昼頃までアジトで過ごす予定です。それではまた会いましょう」

 

 そう言って、俺たちは自分の部屋に戻っていった。

 

 

 

★★★★★★★★★★★★

 

 

 昼までの時間、俺は逃げたダクネスとアクアを探しに来ていた。

 屋敷に帰ってくるまで待っていてもいいのだが、そうなるといつになるか分からない。だから俺は多少強引でも無理矢理スキルを教えてもらうつもりだ。

 

 さて、いざ探すという話だが。ダクネスとアクアは見た目だけならかなりの美人で、しかも有名人なのでかなり目立つ。逃げたといっても大抵の場所なら街の人に聞けば分かるのだ。

 それはあの二人も分かっているだろう、ということは聞いてもわからない場所に隠れているはずだ・・・・・。そう考えながら俺はダスティネス家の屋敷の前に来ていた。

 

 どうせ正面からは入れてもらえないだろう、ならば・・・・・・・・。

 

「『ライト・オブ・リフレクション』、そして『潜伏』」

 

 まずは姿を消す、そして屋敷の横側に迂回する。そして柵越しに・・・・・。

 

「『狙撃』、そして『パワード』」

 

 縄付きの矢を、消音のため屋根の付近に打ち込み、筋力強化の呪文で縄をよじ登るための力を強化する。元々の力が弱い俺は筋力強化の呪文が無ければ縄をよじ登るのは辛い。

 普段は役に立たない冒険者の様々なスキルを使える恩恵をここぞとばかりに活用して、屋敷に潜入する・・・・・・。

 そして―――――。

 

 

 ダスティネス家の修練場にて荒い息を吐きながら筋トレに励むお嬢様を見つけた。・・・・・こいつ腹筋割れてるの気にしてるくせに何してんだよ。

 だがこれは好機だ、修練場には人がいない。俺は姿を消したまま近づき、スキルを発動した。

 

「『バインド』!」

「なっ! この縛り心地はカズマか!? どこから入ってきた!?」

 

 俺の手から縄が飛び出し、ダクネスの肢体に巻き付いていく。ちなみに今使った縄は最高級品のミスリル製である。

 床に転がる変態を見下して。

 

「よぉーララティーナお嬢様、さっきはよくも逃げてくれたなララティーナお嬢様?」

「ラ、ララティーナお嬢様と呼ぶな! せめてお嬢様にしろ!」

「まぁそれはともかくララティーナ、さっきも言ったがお前のスキルを教えてくれよ。約束だろ? それとも神に仕えるクルセイダー様が約束を守らないつもりか? さすが汚い、どうせ貴族連中なんてこんなもんだよ」

「ちちち、違う、こ、これはだな! そ、そうだ! さっきスキルを教える約束をしたが、日付を指定していなかったではないか。 ・・・・・そうだな、100年後に教えてやろうではないか」

 

 やけくそ気味に言い訳しながら得意げな顔をする。こいつ! 以前はこんな屁理屈言わない真面目な性格だったのに、誰のせいでこんなになってしまったんだ。

 ・・・・・・そういえば、どうしてこいつは俺にスキルを教えたがらないんだろう? 

 

「お前がそんな卑怯な女だなんて思ってなかったよ。・・・・・・それより、どうして教えてくれないんだよ? 今回はお前の嫌がらせ目的じゃなくて真面目な話なんだが」

「だって私が引き受ける敵が減ってしまう・・・・・・・、コホン・・・・、クルセイダーとして私以外の仲間を危険に晒すわけにはいかないのだ」

 

 そう言って、形だけ真面目な顔をするダクネス。

 ・・・・・・今ので大体わかった。俺が前衛が出来るようになれば自分の気持ちよさが減ると思ってるのだろう。別に俺はスキルを覚えても危険な前衛をするつもりはないのだが・・・・・・。

 

「はぁ・・・・・・。お前は俺がクルセイダーのスキルを覚えたところで前に立つと思っているのか?」

「・・・・・ん、いや立たないだろうな。どうせお前の事だ、私かアクアの後ろにでも隠れて震えていることだろう」

 

 衝動的にダクネスに蹴りを入れそうになるが・・・・・・ここは我慢だ。話が進まねぇ。

 

「腹立つがまぁそういうことだ、俺はもう防御力不足で死にたくないんだよ。・・・・・ということでさっさと教えろシックスパックお嬢様!!」

「だ、だだ誰がシックスパックお嬢様だ! しかもそれが人にモノを教わる態度か! 今日という今日はぶっ殺してやる!」

 

 そう言って俺に硬い体を煽られ激昂するダクネス。

 ―――縄に縛られたままで。

 

「いやもう何でもいいからさっさと教えろよ! それに俺はお前を20億で買ったよな? ということはお前は俺のモノだ!」

「こ、この私をモノ扱いとは・・・・・・んっ・・・・・・はあっ・・・・はあっ、もっと、もっとだ、もっと強めに私を罵ってくれ!」

 

 そうだった、このお嬢様はいつだってブレない。きっと俺が何を言ってもご褒美にしかならないだろう。いや、メイド服を着させて、親父さんにご奉仕させるか・・・・・? 割と真剣にそんなことを考えながらポケットに手を入れると何かに手が当たった。

 ・・・・・これはキューブか?確かこのキューブはウィズの店の品で効果は・・・・・・。

 これはいけるかもしれない!

 

「『ブレイクスペル』、これでバインドは解けただろ?」

「・・・・?なぁカズマ、せっかくのバインドプレイはもう終わりか・・・・?」

 

 そう言って心の底から残念そうにしゅんとするダクネス。男であれば庇護欲が湧かずにはいられない様子なのだが、その理由が残念過ぎる。

 俺はニヤリと笑いキューブを取り出す。そしてダクネスの前に突きつける。

 

「おいダクネス、このキューブを見ろ。これは、食べれば防御力が極限まで上がる代わりに体に耐え難い激痛が走るというものだ。これが欲しければっておいヤメろ!掴みかかってくるなこの欲しがりが」

 

 変態はキューブの説明を聞いた途端に目の色がヤバくなり掴みかかってきた。そして頬を赤らめ息を荒くし。

 

「教える! 教えるからとっととそのキューブを私に渡せ! そんな素晴らしいモノを私の目の前でお預けにするつもりか!?」

「わかった、わかったから放せ、よしこれで交渉成立だな」

 

 やっと話がまとまったな・・・・・・。

 ホッとして息を吐く。

 ふとダクネスの方を見やると、キューブの包装を剥がして今にも食らいつこうと・・・・・・。

 

 

「おい待て! 食べる前にスキルを教えろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 

 

 その後、暴れるダクネスを必死で押しとどめ、『デコイ』をはじめ、防御力上昇などのスキルを教えてもらった。

 キューブを一口かじったダクネスは、魅惑の自分の世界に閉じこもったらしい。

 全身を床に打ち付けながら痙攣していたので、幸福の絶頂にいるのだろう。

というか喘ぎ声がうるせぇ! メイド連中に見つかるんじゃないだろうか?

 

 

 目に毒なのでアクアを探しに修練場を後にした。

 つ、疲れた・・・・・・・・・。

 

 

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