このすばアフター!カズマ&めぐみんのターン   作:ぽいんと

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中々話が進みません 


第6話 悪女めぐみんとカズマのお仕置き

 アクアからスキルを教えてもらった後、俺はめぐみんと合流するために一旦屋敷に戻ってきていた。

 

 それにしてもデートだ。めぐみんとのデートである。1対1のデートとは初めてかもしれない。二人で行動すること自体は珍しくないが、デートと思えば特別なのだ。

 俺は内心わくわくしながら屋敷の前で待っていた。

 ――そして待ち合わせの時刻がやってきたのだが。

 

『・・・・・なんでこないんだ? あいつって時間には正確な奴だったと思うんだが』

 

 めぐみんが待ち合わせに遅れるのは珍しい。だが、正確な時計が少ないこの世界では日本のようにはいかない。そう考えて俺は特に気にすることなく待っていた。

 しかし20分経ってもめぐみんはやってこなかった。

 

『もしかして何かあったのか・・・・・?』

 

 流石にここまで何もないと心配になってきた。めぐみんの身に何かあったなら今すぐ向かうべきなのだろうが、確証がない。行き違いになる可能性も考えて、俺は苦い顔を浮かべながら待っていた。

 そして、30分後。

 待ち合わせに遅れたにも拘わらず、涼しい顔をしためぐみんが歩いてやってきた。・・・・なんで少しも焦ってないんだ。

 

「おいめぐみん、30分も遅刻だぞ? 何か理由があったのかもしれんが、せめて急いでやってこいよ」

 

 俺はイライラしながらめぐみんを睨みつけた。しかしめぐみんは―――

 

「そうですか。それはごめんなさい。では行きましょう」

 

 少しもその涼しげな表情を崩さず、形だけの謝罪を口にする。文句の一つでも言ってやりたかったが今日は一応デートだ。初っ端から喧嘩をしていては意味がないだろう。そう思った俺は取り敢えず怒りを鎮めることにした。

 

 

★★★

 

 

「――それでなんとかダクネスからスキルを教わったんだけどさ、あいつモノ教えるの意外と上手なんだなって思ったよ」

「へぇ、そうですか」

 

 昼食を取りに俺のオススメの店へと向かう道すがら、俺とめぐみんは気まずい会話をしていた。

 ――というか、気まずいのは完全にめぐみんのせいだ。こいつはさっきから俺が何の話をしてもまともな反応を返さない。一番マシだったのが、最近発注したサラマンドの特上ロースステーキの話題を出した時だった。まぁそれも一言「それは美味しそうですね」だけだったが。

 さっきの会話だって、いつもなら『ダクネスはああ見えて、子供好きですからね。性癖さえ隠せばいい先生になれると思いますよ』ぐらい言いそうなものなのだが・・・・・・。

 

 いい加減イライラしてきた俺は聞くことにした。

 

「なぁめぐみん、なんでお前はそんなに不機嫌なんだよ。俺が何かしたっていうならハッキリ言ってほしいんだが。というかいつもならハッキリ言ってるだろ」

「私は別に不機嫌ではありませんよ。思い込みすぎではありませんか?」

 

 ・・・・・・なんなんだよこいつは。しかもこの反応はマンガで稀に見る、理不尽な女ヒロインの反応だ。理由を教えてくれないくせに、理由を当てて改善するまではずっと不機嫌とかいう迷惑極まりないやつ。そして理由の分からない主人公は慌てふためいて、女ヒロインに謝り続けるのだろう。

 だが俺はそんなテンプレには当てはまらない。ここは何としても反応を引き出す。

 

「あ!そっか!女の子の日か!なるほどな」

「カズマは相変わらず最低ですね」

 

 めぐみんはその涼しげな表情のまま、そう言い放つ。

 残ったのは心に突き刺さる最低の二文字だけだった。昨日と今朝はあれだけ仲良くしていたのに・・・・・・。なんだろう・・・・・こいつは俺の事を嫌いになってしまったのだろうか・・・・・。

 

 俺は最期の頼みの綱に掛けることにした。

 

「な、なぁ? めぐみんって俺の事好きなんだよな?」

 

 どんな態度でも、俺の事を好きと言ってくれるならとりあえず許せる。

 そんな俺の小さな希望は―――

 

 

「普通ですね」

 

 

 ――呆気なく打ち砕かれた。

 

 え・・・・・・・?

 昨日の言葉はなんだったんだ・・・・・・?

 そして今までの仲はなんだったんだ・・・・・・?

 意味が分からない。

 ヤバイ。泣きそうだ。

 というか上を向かないと今にも涙が零れてしまう。

 

「お、おい、昨日のあれはなんだったんだよ」

「昨日はよく分からないことを言ってしまいましたね。もう気にしなくていいですよ」

 

 あまりにも俺が不甲斐ないから愛想を尽かされたのだろうか?

 そうだ、きっとそうだ。俺は冴えない男だけど、めぐみんはなんだかんだ言って美少女だ。黙っていればいくらでも男は寄ってくる。

 今までだって散々酷いことをしてきた。今まで愛想を尽かされてなかったのが可笑しかったのだ。

 

「い、今まであれだけ仲良くしてきただろ? なぁ?う、嘘だろ?嘘なんだろ? な?」

「嘘ではありませんよ、カズマの事なんてどうでもいいです」

 

 俺は・・・・・・このままめぐみんと仲違いしてしまうのだろうか。

 そう思った瞬間、思い出が走馬灯の様に駆け巡る。

 出会った日の事、冬将軍に殺された日の事、下腹部に屈辱的な落書きをされたこと―――――

 ―――爆裂魔法で魔王城に攻め入ったこと、そして・・・・めぐみんに告白されたこと。

 色々あったけど楽しかった、本当に楽しかったのだ。

 今までの思い出は、全部嘘だったのだろうか?

 もう、終わりなのだろうか?

 

 いやだ

 嫌だ嫌だ嫌だこのまま終わりなんて嫌だ。

 俺を・・・・見捨てないでくれ。

 

「・・・・もしかして泣いているのですか?」

「・・・泣いてねぇよ・・・・・。さっさと店の中に入るぞ」

 

 ボロボロと落ちる涙を隠すように、俺は顔を背けて目を瞑った。

 ――だからだろうか。

 めぐみんの申し訳なさそうな表情に気が付くことはなかった。

 

 

★★★

 

 

「あっこの料理好きです。私はこれを注文するのでカズマはさっさと決めてください。」

「・・・・・・・・・ミートスパゲッティで」

 

 涙が流れるのを何とか止めた後、俺たちは俺が目を付けていたオススメの料理店に入った。

 ちなみに、何故かめぐみんの態度は少しだけ軟化した。相変わらず涼しい顔をしているが、向こうから話しかけてくれるようになったのだ。

 ・・・・・・代わりに俺が殆ど喋らなくなったが。

 

「さっきまでの事は謝りますから、さっさと機嫌なおしてくださいよ」

「・・・・・さっきまでってどれだよ、俺の事嫌いになったって話か?」

「だからカズマの事は普通だと言っているではありませんか」

 

 普通ってことは、どうでもいいってことだろうが。ある意味じゃ嫌いより下だろ。・・・・・・・なんでコイツはまだ俺に構っているんだろう。義務感でデートに付き合うぐらいなら帰ってほしい。俺の事なんてどうでもよくなったんだから、どうせなら突き放してくれればいいのに。そうすれば少しは俺も楽になれる。

 

「それよりどうしてこの店を選んだのですか? お店なら通り道にもいっぱいあったと思うのですが」

「・・・・・・・お前の好きな料理の一番人気の店だからだよ・・・・・。無駄だったみたいだけど」

 

 デートする時のために、めぐみんの好物を元に調べて見つけたのがこの店だった。・・・・・・・恐らくもう二度とこの店に来ることはないだろうが。

 

「そ、それはありがとうございます・・・・・・ま、まぁどうでもいいですが」

 

 気にしてない振りをしながら、俺の言葉に頬をかすかに赤らめるめぐみん。可愛い、確かに可愛いのだが、こいつは誰に対してもこんな思わせぶりな反応をしているのだろう。そう考えると一転して腹が立つ。

 それにしても、今めぐみんは何を考えているのだろう? 女心に疎い元ニートの俺には全く分からない。

 ・・・・・だが、常識的な事ならわかる。めぐみんは俺の事を男候補の一人とでも思っていたのだろう。それでいい男が現れたから俺の事を切り捨てようってわけだ。

 だったら俺は・・・・・・。

 

「・・・・・・なぁめぐみん、せめてなんで気が変わったのか教えてくれないか? 他の男に一目惚れしたのか?」

「そんなことカズマには関係ありませんよね」

「そうかよ・・・・・・」

 

 俺の質問に、間髪おかず無機質に答えるめぐみん。

 どうやら教える気はないらしい。俺たちは一応は生死を共にした大事な仲間じゃなかったのかよ・・・・・・。せめてその男がめぐみんに相応しい男かどうかぐらい確認させてくれたっていいじゃないか・・・・・・。

 ポッと出の男にめぐみんを奪われたという事実に虫唾が走る。これが寝取られというやつなのだろうか。吐き気がする・・・・・。

 ―――いや違う。

 そもそもめぐみんは俺のものでもなんでもない。

 恋人関係になっていれば・・・・・・だがもう遅い。

 

 そんなことを考えていると、相変わらず涼しげな表情のめぐみんが冷たい目で。

 

「ではカズマは私のことはどう思っているのですか?」

「・・・・・・嫌い」

 

 これは嘘だ。確かに今めぐみんにどうしようもなく苛ついている。

 本当に意味が分からないから。

 だからこそ反射的に出てしまった言葉。

 だけど・・・・・それでも・・・・・・愛おしい気持ちが消えない。

 離したくない、嫌われたくない。・・・・・一緒にいたい。

 

 でもきっと俺のことなんてコイツにとってはもうどうでもいいんだろう。

 そんな俺の思いに反して――

 

 

「・・・・えっ?」

 

 

 そこには絶望的な表情を浮かべ、泣きそうな声を漏らすめぐみんがいた。

 

 ・・・・・全く意味が分からない。なんでそんな顔してるんだよ。どうでもよくなった相手にこんな反応する意味が分からない。

 そして縋る様に言葉を続ける。

 

「う、嘘ですよね・・・・? ね、ねぇ嘘ですよね・・・・・?」

「なんなんだよ・・・・・・・」

 

 心の中がグチャグチャになる。

 俺を気にしてくれる嬉しさ、見捨てられる悲しさ、気持ちを理解できない不甲斐なさ。

 ――そして、今までの思い出をを裏切られた怒り。今にも思いがこぼれてしまいそうだ。

 

 今日初めて感情を見せためぐみんは、泣きそうな顔でテーブルに身を乗りだす。

 

「カズマは私の事好きなんじゃなかったんですか!?」

 

 そんなめぐみんに対して俺は――

 

 

「なんなんだよお前は!!!!!」

 

 

 思わず、めぐみんに怒鳴り返していた。

 いきなりの俺の罵声にたじろぐめぐみんは、怯えた目に涙を溜めている

 

「なんなんだよ、昨日は好きって言ってたくせに、今日はそんな冷たい態度で、俺には意味が分かんねぇよ!! 俺がお前を好きかどうかなんてもうどうでもいいだろ!!」

 

 それを聞いためぐみんは、申し訳なさそうに俯く。

 

「っっ・・・・・・・!! こ、これには訳が――」

「訳か? 今までお前は俺の事をからかって遊んでただけなんだよな? 楽しかったか?楽しかったよな!? お前は嘘ばっかりだ!! 俺たちの思い出なんて嘘嘘、全部嘘だらけだ!!」

「ち、ち、違うのですカズマ。私は、私はそんなつもりでは・・・・・・」

 

 必死に弁明しようとするめぐみん。

 もうコイツの顔なんて見たくない。これだけの仕打ちを受けたというのに、見てしまえば、諦められなくなりそうだから。

 だったら・・・・・・。

 

「何が違うんだよ!? お前は俺の事なんてどうでもいいんだろ!? もう放っといてくれよ!! 俺はこの街を出ていく。暫く帰るつもりはない。じゃあな」

 

 俺は別れを告げることにした。しばらくすれば気持ちも落ち着くだろう。そうすればまた仲間として仲良く出来るはずだから。

 そう考えて、店を出ていこうとする。

 

 しかし、それは叶わなかった。

 めぐみんは泣きながら俺の服の袖を引っ張る。

 

「何のつもりだ?」

「ま、まってください。話を聞いてください!!」

「放せ、もう話すことはないぞ」

「さ、最後に一つだけ、一つだけでいいからお願いします」

 

 それならいいか・・・・・・。

 

「分かった。話してくれ」

「はい、あ、でもその前にですね・・・・・・」

 

 そこまで聞いて、めぐみんの目線が俺の方に向いていないことに気が付いた。

 視線の先には、食事を運んできたウェイトレスがいて・・・・。

 

「あ、あのお客様・・・・・・、他のお客様のご迷惑になりますので、痴話喧嘩は店外でお願いします・・・・・。」

「「す、すみませんでした」」

 

 気が付けば、店内は静まり返り、俺たちは至る所から好奇の視線を集めていた。

 ・・・・・・・とりあえず目の前の食事を食べてから、すぐに店を出よう。目を輝かせて俺たちを見つめるおばさんを見て、そう思うのであった。

 

 

★★★

 

 

 一言も話さず、さっさと食事を終えた俺たちは、勘定を叩きつけ店を後にした。

 今、俺たちは人目を避けるために屋敷のリビングに戻ってきている。

 

 そして、一言だけと言って俺を引き留めためぐみんを待っているのだが・・・・・・

 

「一つだけ・・・・・・一つだけですよね・・・・・どうすれば・・・・・どうすれば・・・・・」

 

 さっきからめぐみんは青い顔でブツブツ言いながら、10分間も部屋をうろついている。

 何を言っても一緒なのだから早くしてほしいのだが・・・・・・。

 待ちかねた俺はイライラしながら。

 

「おいめぐみん、早くしろよ。お前は俺の事好きじゃないんだろ?適当でいいんだぞ?」

 

 投げやりな気持ちでそう言い放つと、めぐみんは俺の言葉を聞いて動きを止めた。

 そして何かを決心したように。

 

「カズマ・・・・さっきまでの言葉を訂正させてください」

 

 やっと言う言葉を決めたか。昼だというのに薄暗い部屋の中、力ない表情を浮かべる俺はめぐみんに向き直る。

 

 ――そしてめぐみんは、深く、深呼吸をした後、

 その奇麗な瞳を真っ赤に染め上げ、覚悟を決めたように口を開く。

 

 

「私は・・・・・本当はカズマのことが大好きです。だから・・・・・・嘘を言ってすみませんでした」

 

 

 その真剣な表情からは嘘の気配は全く感じられない。こいつが嘘をつくのが上手いだけなのか?それとも本当に俺の事が好きなのか? 傷ついた俺には判別できない。

 ・・・・・・でも嬉しい。自然と鼓動が早くなる。心の傷も少しだけ癒えたかもしれない。

 でも、それでも、俺のプライドは・・・・・

 

「そうか、で? それを信じられるとでも?」

「ッ・・・・・・・・!! そ、そうですよね・・・・・・」

 

 もう何も分からない。めぐみんが俺の事を本当に好きなのか、それともただ街を出ていこうとする俺を止めるための方便なのか分からない。分からない分からない分からない!!

 本当は信じたい、信じてめぐみんを抱きしめて離したくない。でもそれを、その気持ちを、思い出を裏切られた怒りが塗りつぶす。

 

「お前の言葉はもう信用できない。じゃあな」

 

 複雑で荒れ狂う心を鎮めるために、俺は屋敷を出ていこうとする。

 しかし、めぐみんは立ちふさがる様に俺に詰め寄り。

 ――そして俺に抱き着いた。

 

「待ってください!! 言葉でだめなら――」

「なんだ?」

「私の体を好きにして構いません。私の本気が伝わるなら・・・・・大好きなカズマになら・・・・・何をされても大丈夫です」

 

 涙声で体を好きにしていいというめぐみん。・・・・・・ビッチなのか?それとも俺の事が本当に好きなのか? 本来なら怒るべき場面なのだろう。でも・・・・・俺はこの身に感じるめぐみんの温かさを離したくなかった。

 だから、今は何も考えず、甘えることにした。

 

「本当にいいんだな? お前は今何をされても大丈夫って言ったんだぞ?」

「はい、それで私の気持ちが伝わるなら!!」

 

 涙を流しながら、上目遣いで微笑むめぐみん。そんな顔を見ると、信じていいと思ってしまうから不思議だ。

 めぐみんは抱き着くのをやめて、軽く両手を広げ、眼を瞑った。本当に何をしてもいいらしい。

 

 俺が今一番欲しいのは・・・・・・・めぐみんの温もりだ。そう考えた俺はめぐみんの背中に両手を回し、その小さな体を抱きしめる。するとめぐみんも手を添えるように抱きしめ返し、安心でもするかの様に、胸元にほうっと深く息を吐きかけてきた。

 

「・・・・カズマのことです、もっと強烈なセクハラをしてくると思ってましたが」

「・・・・・・・黙ってろ」

 

 嬉しそうに驚くめぐみんの声を、俺は一言で黙らせる。

 ・・・・・それにしてもなんて心地良いんだろう。性欲ではない安心感が、傷ついた心を満たしていく。ひんやりと、そしてしっとりとした黒髪からは鼻孔をくすぐる甘い香りが漂い、肩紐がずれて、白くて美しい肌がちらつく。

抱きしめるのに丁度いい体の大きさで、そのほんのりとした温かさが心地よい。

 きっと、きっと他の誰でもこんな気持ちにはならないだろう。この世界にたった一人しかいない、俺の好みとは全くの逆だった女の子、めぐみんだからこそなのだ。

 

 ――ああ、やっとわかったよ。ここまで追い込まれて、こんな状況になって初めて気が付いた。

 そうだ、確かにめぐみんの気持ちなんて全く関係なかった。あいつがどうだろうと、俺はめぐみんの事が世界で一番好きなんだ。

 例えどんな障害があろうと、俺はめぐみんを誰にも渡さない。それでいいじゃないか。・・・・・・まぁ楽なら楽に越したことはないから障害はない方がいいんだが。

 

 そう考えて、俺は驚くほど心が澄み渡っていくのを感じた。前まではきっと、好かれたから、好意を向けられたから反射的に好きになっていただけだった。そしてやっと、やっと自分の気持ちに気が付けた。・・・・なんでめぐみんが冷たい態度を取ったのかは分からない。でも、もしかしたらそのことを教えるためだったのかも知れないな。

 

 互いに抱擁を交わしてから、どれだけの時間が経っただろうか? 俺はふとめぐみんの顔を覗き見る。

 

「ん・・・・・・・・・・」

 

 めぐみんは心底幸せそうな顔で目を瞑っていた。・・・・・・こんな顔を嫌いな奴に向ける奴なんていない。めぐみんが俺の事が大好きだっていうのは本当なんだろう。

 

 

 ――というか冷静になれば、めぐみんが俺の事を嫌いなはずなかった。めぐみんはいざって時の度胸はないし、人を騙す演技だって下手な奴だ、これまでの思い出を全部演技でこなすなんて器用な事、出来るはずがない。それに俺はあいつを拾ってやったんだし、爆裂魔法の道を選ばせてやったし、20億近いプレゼントだってしてやったんだ。これで嫌われてたら流石にキレる自信がある。

 そんな考えにも頭が回らないくらい、俺も色ボケてたんだな。そう考えて少しおかしくなった。

 

 

 さて、さてさてさて、俺は自分の気持ちに気が付いた。しかしその代償かは分からないが俺は今回酷い目に遭わされたわけだ。そして俺はやられたら絶対にやり返す男。やられた分は復讐させてもらおう。

 そう考えて、めぐみんの顎に左手を添え、唇を近づける。

 

「めぐみん・・・・・」

「・・・・・っ!!!!」

 

 目を瞑ったまま、俺の意図を理解しためぐみんは一瞬体を強張らせる。しかしすぐに力を抜き、体を預けてくる。

 可愛い奴だ、そう思ったおれは右手をめぐみんのおでこに添えて、そのまま―――

 

 

 

 思いっきりデコピンしてやった。

 

「痛ったあああああああい、おでこがああああああああああああああ」

「へっ」

 

 両手でおでこを抑え、涙目で俯くめぐみん。いい気味だ。

 めぐみんはキッと俺を睨みつけて。

 

「乙女に何してくれるんですか!? き。キスするんじゃなかったんですか?」

「今のはお前がキスする気があるか確かめただけだよ」

 

 ちなみに本当は俺もキスしかけたが、必死に理性で堪えただけだ。今は性欲より罰ゲームだ。おかげで面白い反応が見られた。

 

「なんて酷いことしてくれるんですか? というかもう私の気持ちを証明できたのではないのですか!?」

「いいやだめだ、そもそもキスなら昨日したからな、気持ちの証明にはならない、それ以上文句を言うなら出ていくぞ?」

「そ、それだけは勘弁してください」

 

 なんとか怒るめぐみんを宥め、俺は次の手段に出る。

 左手をめぐみんの背中に回し、口を首筋に近づけ、優し目に噛みつく。

 

「ちょっ、カ、カ、カズマ!?」

 

 素っ頓狂な声を上げるめぐみん、だが抵抗はしない。まぁ抵抗しない約束があるからだろうが。

 そのまま俺は噛む力を強める。きっと嫌がるはずだ。

 

「痛い、痛いです。あっ・・・・・・でもああっ、意外と・・・い、いいかもしれません」

「・・・・・・・・」

 

 思った反応と違う。面白くなくなった俺はすぐに止めた。何故か顔を嬉しそうにニマニマさせているめぐみん。

 

「・・・・・・お前実はドMだったのか?」

「違いますよ!! カズマに付けられた傷だから許せるってだけです!! というかさっきからカズマは私で遊んでいませんか!?」

「・・・・・遊んでないよ?」

「顔を背けて誤魔化そうとないでください!!」

「まぁまぁ、次でラストだから」

 

 めぐみんのキレイな肌に傷が残るといけないから、回復魔法を掛けてやった。

 訝しげな目を向けてくるがスルーだ。それじゃあ次の悪戯に取り掛かろう。

 

 俺はめぐみんの背後に回り、そして抱き着くように手を回す、そしてちょうど胸のところで手を止め、揉みしだく。・・・・・もちろん服の上からだが。

 

「何するんですか!? ひゃあっ!!・・・・や、やめてください」

「まぁまぁ、これに耐えたら俺の事が好きなんだって認めてやるよ」

「うぅ・・・・・・・。納得いきません・・・・・・・」

 

 そう言いながらも無抵抗なめぐみん。しかし貧乳というのもいいものだな。めぐみんも無いというわけではなく、ほんのりとした柔らかな膨らみがある。服の上からだが結構触り心地がいい。

 

「うぅ・・・・・はぁっ・・・・・まだだめですかぁ?」

「まだダメだな」

 

 だんだんと声が蕩けたものとなり、息が荒くなっていく。・・・・・なんというか、苛めるのが楽しくなってきた。ここはもっと攻めることにしよう。

 俺は直接的な性経験はない。しかし、サキュバス達の夢でめぐみんを出したことは一度や二度ではない。めぐみんの裸については知っているも同然だ。

 服の上から胸を揉みしだきながら、中指をフリーにして、狙いを付ける。そして一気に上を撫でてやると。

 

「ひゃあっ!!!!!・・・・・っはぁっ・・・・んっ、な、なんですか今の…?」

 

 堪え切れずに甘い声を漏らすめぐみん。サキュバス先生マジありがとうございます。しかしこれは面白い。勝気なめぐみんをここまで弱らせられるとは。

 得意になった俺は強弱をつけたり、ゆっくり撫でたりしてやる。

 

「ああっ・・・・・・んっちょ・・・・ホントに・・・ホントにやめてください!!ああっ、いい加減怒りますよ・・・・んあっ」

「んーーー、いやもうちょっと、もうちょっとだけ。それで満足だから」

 

 抗議しながらも、時々体をよじり、甘い声を漏らす。

 楽しいなこれ、こんなシチュエーション二度とないと思うから、ちょっと無茶するか。

 そう思った俺は指を高速で動かし、服の上から擦る。

 

「んっ・・んっ・・あぁっはぁっ・・・や、やめ、はうっ・・・やめろ・・・ヤメロって言ってんでしょうが!!!!」

「グホォ!!」

 

 ついにキレためぐみんの肘打ちを腹に受けた俺は、よろめき床に倒れる。

 起き上がり前を見ると、めぐみんは顔と耳を真っ赤にして、息を荒くし、服の上からだが両胸を手で隠していた。

 

「カズマ!!! もういいでしょう!? 私の思いは十分伝わりましたよね!? というか途中から遊んでましたよね!?」

「・・・いや・・・・・もうちょっと・・・あと少しだけ遊んじゃダメか?」

 

 俺の言葉を聞いためぐみんは深紅の瞳を光らせ、立てかけてあった杖を手に取りぶんぶんと振る。

 

「おい、それ以上セクハラを続けるならこちらにも考えがあるぞ」

「ごめん、ごめんってめぐみん、痛い、痛い、お前本気で叩きすぎだろ!?」

 

 俺の必死の謝罪を聞いてめぐみんは杖を振るのをやめて。

 

「はぁ・・・・、まぁ体を好きにしていいと言ったのは私ですからね。気持ちを証明できたのなら良しとしますか」

「ああ、俺に体をまさぐられてあれだけ感じてるんだから俺の事好きってことは分かった」

「感じてるとか言わないください!! 最低です!! あなたは最低ですよ!!」

 

 恥ずかしそうに顔を真っ赤にして俺を怒鳴りつけるめぐみん。いつも通りに最低と呼ばれてなんとなく安心した。これですっかり元通りの関係になれたのかもしれない。

 

「・・・・・なんでカズマは罵られて嬉しそうなんですか?ダクネスなんですか?」

「いや、元通りの関係に戻れたなって安心してただけだよ、それよりドMの意味でダクネスと呼ぶのは可哀そうだからやめてやれ」

 

 ・・・・・・そういえば、なんでめぐみんはあんなに素っ気ない態度を取っていたのだろう? 今更ながらに気になった。俺は聞いてみることにした。

 

「なぁめぐみん、なんでさっきまであんなに冷たい態度だったんだ?」

 

 俺のさりげない疑問を聞いためぐみんは申し訳なさそうな顔をして、目を背ける。

 

「えっと、怒らないで聞いてくださいね? あれは私なりのデートの作戦だったのです。実は―――」

 

 

 

 

 

 

 ―――詰まる所、今回のめぐみんの素っ気ない態度は、全て『押してダメなら引いてみろ』を元にした作戦だったらしい。

 それにしても・・・・・・・。

 

「いやお前、引いてみろの部分明らかにやりすぎだろ!? 俺正直お前の事嫌いになりかけてたぞ!?」

「か、加減がよく分からなかったので、ちょっと酷いことをしてしまったかもしれません」

 

 

 今回の事の顛末は以下の通りだ。

 30分遅れたのは勿論わざと。素っ気ない態度は俺にめぐみんを意識させてアタックさせるためだったらしい。

 ・・・・・・確かに意識はしたけど、あそこまで冷たいとアタックもクソも無いだろ。

 そして俺の涙を見て急遽作戦変更。めぐみんは俺に告白させるつもりで、『ではカズマは私のことはどう思っているのですか?』 と言ったらしい。

 そんなことを知らない俺は発狂、めぐみんがなりふり構わず引き留めようとして現在に至る。

 

 

「私にはこんな駆け引きなんて向いてないのかもしれませんね。これからはいつも通り、ずっと全力で行きます」

「そうだぞーお前は知能指数の高いバカだからな、そういうのは無理だ」

「この紅魔族随一の天才をバカ呼ばわりとはいい度胸じゃないか!! ってあれ?カズマは私の話を聞いても怒らないのですか?」

 

 そう言って首を傾げるめぐみん。自分で『怒りませんか?』と前置きしておいて、何を言っているのだろう。まぁ確かに・・・・・普通なら怒るよな、普通なら。

 

「今回は怒らないよ、・・・・・もし次やったら、一生消えない心の傷をつけてやるつもりだが」

「そうですか、次はないので安心ですね。それでは今回許してくれた理由はなんでしょうか?」

 

 理由か・・・・・まぁあれだよなもちろん。

 

「まぁ合法的にセクハラさせてもらったからだな」

「ちょっ!! あなたの脳はエロ成分しかないんですか!?」

「思春期の男なんてそんなもんだよ、まぁそれだけじゃないとすれば――」

 

 俺は今回のような事でもなければ、自分の気持ち――『誰にもめぐみんを渡す気はない』という気持ちに気が付けなかっただろう。

 

「――得たモノがあったからだな」

「得たモノ?」

 

 それが何か分からないめぐみんは首を傾げている。俺は少し遠い目をしながら。

 

「それはめぐみんにも関係あることだよ、まぁ時期が来れば分かる」

「ん? よく分からないですね」

 

 

 もう少ししたら、王都で魔王討伐を祝う大きな祭りがあるらしい。劇団や行商人、高級レストランの料理人やドワーフの鍛冶職人など、ありとあらゆる人々が集い、盛大に魔王討伐を祝う大イベントだ。

 そんな特別な時なら、俺もめぐみんに告白出来るはず。もし叶うなら、最高の記念日にしてやろう。

 

 まぁ・・・・・・それは少し先の話だ。今は目先の事を考えよう。

 そう考えて、俺はめぐみんとの話を切り上げる。そして。

 

「さて、それじゃあ改めて、俺たちのデートに行こうか」

「はい!! 今日は私たちらしく楽しみましょうね!!」

 

 そう言って、俺たちは晴れやかな表情で屋敷を後にするのであった。

 

 

 

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