Need For Radical・Good・Speed!!!!   作:水生蟲

1 / 1
息抜きで書きました。続かない可能性高いです。


一話

 

 【HOLY】────

 学戦都市アスタリスクにおいて、対《星脈世代》として設立された治安維持部隊【HOLD】。HOLYはその中でも唯一犯罪者に対して《星辰力》を扱う事が法的に許された特殊部隊でもある。構成員は全員アスタリスクの生徒であり、いずれも実力者ばかりが揃う。

 彼らの仕事は主に、《星辰力》を使った犯罪を起こす人間を取り締まり更生させること。本部はアスタリスクの中央区にあり、各エリアにその支部が置いてある。有事の際はすぐにでも現場へ駆けつける為だ。しかし、いくら都市と言ってもその広さは通常の都市とは比べ物にならない。だから犯罪が発覚し、HOLDが駆けつける頃には大体の事件が既に終わっていてその現場で何が起きたかを解析し後の事件解決に役立てる、というのが定石であった────

 

「随分舐めた真似をしてくれたな、さらにこの俺より早く逃げようとしている………どっちかというと!後者の方が気に入らないッ!!GO!!」

 

 

 

 

 この男、ストレイト・クーガーが現れるまでは。

 

 

「追っ手だと……馬鹿な、余りにも早すぎる……HOLDの無能め、一体()を送ってきやがった?」

 

 そうボヤくのは逃走用の車で街を逃げる犯罪グループの長。今までに何度もHOLDに捕まらずに尻尾を掴ませない事から仲間には『イール』と呼ばれている。見た目はバレないように頭から目出し帽を深々と被っており、その容貌は伺いしれない。細身の体を改造されて武器を仕込んだ赤いコートで覆い、バックミラーに映る追跡者の車を忌々しげに睨む。

 

「ん…?あのエンブレムは……リーダー、あれHOLYっすよ!最近出来たって噂の!けど誰だあいつは……まさか、例の“都市伝説”か…?」

 

 後方座席にいる手下の一人は、情報屋から買い取った情報のお陰で追跡者に心当たりがあった。設立されたHOLYに所属した中でも脅威のスピードで犯罪者を追い詰め、異例の大抜擢を受けた一人の男がいると。

 

「なんでもいい、とにかく撃て!」

 

「了解だぜリーダー、都市伝説だか何だか知らねぇがコツでも喰らいなぁ!」

 

 徐々に近づいてくる後方の車目掛けて、先程とは別の手下がグレネードランチャーを放つ。多少ブレながらもほぼ真っ直ぐに放たれた弾は吸い込まれるように追跡者へとヒットする。

 

「けひひっ、なんだよ。大した事ねぇな!あばよっ、ウスノロ!!」

 

 殺った、燃え盛る光景を目にして確信した男が、親指を突き出し地へと向ける。やはり俺らが捕まるなんて事は有り得ない、追っ手が馬鹿で助かったと思い、車内へと身を戻す。

 

「リーダー、やりましたぜ!!」

 

「そう………………いや、待て。よく見てみろ」

 

「えっ、どうしたんだよリーダー?」

 

 完璧に仕事をこなし、褒められると思っていたスキンヘッドの男だったがどうもリーダーの様子がおかしい事に気づく。彼の目は未だバックミラーに映る、炎へと向けられていた。

 

「っ!!ちょ、あいつ爆発の中から出てきたっすよ!?一体どうやって!?」

 

「しぶとい野郎だ。それにしてもあの車の変形……奴は魔術師(ダンテ)か?」

 

 豪炎から飛んで出てきた追跡者は、先程の普通の車とは違い異様な変形が行われていた。ド派手なピンクの装甲が空気の壁を突き抜けるかのように尖った車体に覆われ、エンジンは自身の存在を、その力強さを主張するかのように轟叫ぶ。

 

「俺がウスノロ?俺がスロゥリィ?冗ォォォォォォ談ッじゃねぇ!!」

 

 そして中にいるストレイト・クーガーは、自身の誇りを貶された事に激しく憤っていた。三度の飯より速さを重視するこの男にとってスピードこそが己の魂そのものだ。

 

「チッ、どうやってあの爆発を耐えたか知らねぇがもう一発当ててやるよ!」

 

 

 再び武器を取り出してクーガーの車を撃ち抜こうとするもそれよりも早くクーガーは動いた。アクセルを強く踏み、ギアを一つ上げる。すると先程よりも強く唸りをあげるタイヤがさらに逃走車へと距離を縮める。

 

 

「甘い!銃を構えて照準を合わせて引き金を引くこれまでの動作に三回もの行動を要するその点殴る蹴る等の肉体的言語はただ相手に当てるこれのみ三回と一回どちらが速いかなど数が少ない方が効率的で速い!!」

 

「しまっ──────」

 

 背後に追いつくと、自身の車を乗り捨てて逃走車へと飛び乗ったクーガーはそのまま右脚を高く振り上げる。するとどういう訳かその脚が虹色に輝く。それと同時に乗っている車の天井に穴が空いた。

 

 次の瞬間、まるで天井が再構成されたかのようにクーガーの右脚に装着された。そして、指先を紅が彩り、全体的に鈍く銀色に輝くその脚で放つ必殺の技の名は────

 

「衝撃のぉぉぉ……ファーストブリットォォ!!」

 

 

 天から振り下ろされた断罪の裁きは、丁度空いた穴の真下にいたウスノロとのたまった無礼者へと突き刺さる。しかし、被害はそれだけにとどまらなかった。速さを極めた男の蹴りは、そのまま車の内部をも余波で破壊し尽くした。そしてそのまま衝撃の反動を利用し、逃走車から高く飛び上がる。

 

 

 

 

 

「あぁー……31分29秒……また2秒……世界を縮めたァ……!」

 

 

 爆発した逃走車を背景にして、クーガーは両手を斜めに広げ、世界を縮めた偉業を成し遂げた事を高らかに誇った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────都市伝説?」

 

 俺こと、天霧綾斗はその言葉に思わず食事の手を止める。今のご時世、都市伝説はおろか幽霊でさえも信じられていないというのに。

 

「そうだ、と言っても別に幽霊とかお化けみたいな妖の類じゃない。ここアスタリスクで数々の伝説を生み出すいわゆる超人達のことだ。お前さんはまだ転入したてで分からんだろうけど、この学園にも一人いるんだぜ?色んな意味でスッゲーのがな……」

 

「そうなんだ、是非一度会ってみたいね」

 

「お、お前それだけは絶対に止めとけ止めとけ!」

 

 大声で手を振りながらダメだと言うと、クラスメイトでありルームメイトの矢吹 英士郎は辺りを伺うように見渡すと小声で耳打ちをしてきた。この時間帯、今いる食堂は人が多くなく、多少の話し声であれば結構響く。

 

「お前だから言うが、一度あの人に目ぇ付けられたら酷い目に合うぞ!あのお転婆姫さんだってなぁ───」

 

「ほう、何やら面白そうな話をしているな夜吹。私がなんだと言うのだ?」

 

「………夜吹の話は、いつだってつまらない」

 

「……ありゃりゃ、こりゃお二人さんお揃いで……」

 

 

 矢吹の背後から、二つの声が掛かる。一人は華焔の魔女(グリューエンローゼ)として名高いユリス=アレクシア・フォン・リースフェルト、もう一人は俺の幼馴染である沙々宮沙夜だった。

 

「やぁ、ユリスに、沙夜。君達もご飯?」

 

「うむ、そんなところだ。それで夜吹よ、私がなんだって?答え次第では貴様……」

 

「いやいやいや!炎だけは勘弁してくれ!“都市伝説”の話をしてただけだ!」

 

 矢吹がユリスに凄まれて慌てて弁解すると、ユリスはたちまち苦虫を無理やり口に入れられてかみ潰されたような、とても嫌な事を思い出したような顔をした。

 

「都市伝説……ということはストレイト・クーガーか…………」

 

「そーそー、流石にこの星導舘に居る以上避けて通れない道だからな」

 

 腕を後ろに組み、軽い調子で言う矢吹に俺は質問せざるを得なかった。

 

「そんなに凄い人なの?そのクーガーって人は?」

 

 すると、ユリスの方から回答があった。

 

「凄いどころの話では無い……奴は、ストレイト・クーガーは、私を……ものの数秒で倒した男だ。決闘自体は非公式ではあるがな」

 

「何だって、ユリスが数秒……っ!?」

 

 ユリスの実力は決して低くない。炎を操る《魔女(ストレガ)》としての才能は高く、さらに並外れた空間把握能力で試合を進める学園でも屈指の実力者だ。

 

「それだけではない。奴はこのアスタリスクにおいて特別な地位を持っている」

 

「そこからは俺が話そう。HOLYって言葉に聞き覚えはあるか?」

 

「名前だけは……最近出来た治安維持部隊の一つ、だっけ?」

 

「まぁその認識で大丈夫だ、正確には武装警察機関対・星振力部隊。構成員は全員同じ星脈世代で作られている。目には目を歯には歯を、って奴だな。だが先ず持ってHOLDに入る為には余程の功績を認められるか、特殊能力持ちさ。クーガーはその中でも異例中の異例……過去に優勝した《星武祭(フェスタ)》での願いを、HOLDに入る為だけに使った曲者さ。裏では企業と繋がってるなんて噂もあるくらいだ」

 

「星武祭優勝者……!!ますます凄いね。けどそんな凄い人なのに《冒頭の十二人(ページ・ワン)》に名前が載ってないなんて……」

 

 綾人は、学園において戦闘能力が高い順に付けられる序列に名前があったかどうかを思い出そうとするも、ストレイト・クーガーという名は無かった気がした。ましてや、何故そんなに強い人がこの学園にいるなんて話も聞いたことがなかった。

 

「そりゃ当然だ。そもそもHOLYに所属してるって時点でそいつは一人で《冒頭の十二人》を全滅出来るだけの実力を持ってるって判断されたんだからな。そんな化け物じみた戦闘能力の奴を一々載せるまでもない」

 

 夜吹がそこで話を終わらせようとした。そもそもそういう存在がいるということだけを教えたかったのだ。もしも衝突すれば、天霧であっても苦戦を強いられるだろうからという友人としての配慮だった。

 

「ともかく、綾人。お前も無闇に近づこうとは思わない事だ。奴が何を考えているのか知らないが、都市伝説の連中は大概ろくでもない奴ばかりだ」

 

 ユリスも同じ様に、かつて苦渋を舐めさせられた事からクーガーに対して良い見方はしていなかったが故に綾斗へ忠告する。まぁ苦手としている理由はそれだけでは無いのだが────

 

「こぉんにちはぁ!アリスさん、いやぁこんな所で会うなんて偶然だなぁこれから一緒にドライブでもどうです?

 

「ユリスだ!──ってクーガー!!いつの間に現れたのだお前は!?」

 

「…………相変わらず神出鬼没」

 

「っ……!!この人が、ストレイト……クーガー…」

 

 こんなに近付かれるまで気付けないなんて───綾斗は、目の前の人物が只者ではないことを改めて確認した。この場において知らないのは綾斗だけで、他の三人は今しがた話をしてた事で緊張が張り詰めている。

 

 細身ながらも男性特有の筋肉質の体。彫りが深い顔に、後ろに纏めて靡かせた茶髪。顔には派手なショッキングピンクのサングラスを掛け、裾の長い青と白の制服を着ている。星導館の制服でないという事はHOLYの制服だろうか?

 

「まさか、本人が出てくるなんてな……」

 

 こりゃ驚いたな……、と呟く夜吹の顔はやや暗くなっていた。

 

「あぁこれは失礼自己紹介がまだだったな私の名はストレイト・クーガー以後お見知りおきを新入生君」

 

 一息で自己紹介を簡潔に済ませるクーガー。右手を差し出してきたので、こちらも手を差し出して握手をする。

 

「あ、あぁはい。丁寧にどうも……俺は、天霧綾斗です」

 

 そして次にクーガーはユリスに振り返った。

 

「それで、アリスさん『だから私の名前はユリスだ!!』あぁこれは失礼、私人の名前を覚えるのがどうも苦手で……折角ですから一緒に御食事でも如何です?食事は素晴らしい食べ物を噛んで胃に流し込み明日への活力にするここに速さは関係ありません」

 

「結構だ、私は既に一緒に食べる相手を決めている。済まないが他を当たってくれ」

 

 素っ気なく返すユリスに、なおも食い下がろうとするクーガーだったが取り付く島もないと分かると見るからに気分を落ち込ませた。

 

「相変わらず手厳しい……では、私はこれで失礼しましょう。遥さんから教えて貰った書店で本を買う予定があるので」

 

 そのクーガーが放った何気ない一言で綾斗の意識は一瞬グラついた。遥……さん?その名前は、まさか、

 

「ん……どうした、綾斗?」

 

「ストレイト・クーガー……さん!!今、あなた何て言ったんですか!?」

 

 思わず椅子から立ち上がり、クーガーの元へと詰め寄る。あまりの勢いに、ユリスは面食らったような表情をして綾斗へと呼びかけたが、当の綾斗はそれどころではなかった。

 

 

「ん~?悪いなぁ、何を言ったか覚えてないな~」

 

 飄々とした態度で、綾斗の事を離そうとするクーガーだったが綾斗はそれを許さなかった。クーガーの腕を強く掴み、その場に引き留めようとした。

 

「今あなたは確かに遥、と!もしかして俺の姉を、天霧遥を知っているんですか!?」

「さぁなぁ?知ってるかもしらないし、知らないかも知れない」

 

「このっいい加減に……!!……グハッ!!」

 

 そのあまりにも小馬鹿にしたような微笑みに腹がたった綾斗だったが、次の瞬間には強い衝撃と共に地面へと叩きつけられていた。

 

「拙いな随分無駄なやり取りをした無駄なやり取りとは無駄な時間を過ごすと言うこと時間とはすなわち速さであり無駄な時間を過ごすとはつまりそれは俺が遅いということに他ならないなんという事だ!それではアリスさんまたお会いしましょう!」

 

 そう言ってクーガーは、唐突に現れた時と同じようにその場を瞬時に去っていった。

 

「あっ、おい待てクーガー!!って綾斗、おい綾斗大丈夫か!?」

 

 薄れゆく意識の中、綾斗は確かに去っていくクーガーの横顔が笑っているのを見た。まるで、この後起きる事が分かっているかのように。

 

(ストレイト・クーガー……!!あなたには必ず姉の事を……!!)

 

 

 

 

 




一言、クーガー兄貴の口調……難しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。