頭の中の書きたいことを文字に上手く出来ないもどかさ……
「ねぇルイズ、その武器屋ってのはどこにあるの?」
「確かピエモンの秘薬屋の近くよ」
王都トリステインの狭い路地裏。ゴミや汚物が道端に転がっていて悪臭がつくその場所に件の武器屋はあった。
店に入ると奥にいた武器屋の店主が胡散臭げに見つめてきた。何せ入ってきたのは四人の美少女、しかもその誰もが貴族ときた。(オルタちゃんは貴族ではないが今着ている服が平民ではお目にかかれないものだからそう思われた)
「これは貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまさあ。お上に目をつけられるようなことなど、これっぽっちもありませんや」
ドスの利いた声で店主がそうルイズたちに告げると、ルイズは腕を組んで言った。
「違うわ。私たちは客よ」
「ちなみに私たちはただの付き添いよ」
キュルケがタバサの肩に手を置きながらいい加えた。
「なんと!?こりゃおったまげた。貴族が剣を!」
「どうして?」
「いえ、若奥様。坊主は聖具をふる、兵隊は剣をふる、貴族は杖をふる、そして陛下はバルコニーからお手をおふりになる、と相場は決まっておりますので」
「使うのは私じゃないわ。使い魔よ」
「忘れておりました。昨今は貴族の使い魔も剣をふるようで」
そう言った店主はルイズの隣に立つオルタちゃんを見る。
「もしや剣をお使いになられるのは、こちらのお嬢さんで?」
「ええ、何か文句でもあるのかしら?」
「いえいえ、とんでもございません」
「なら、私は剣のことなんてわからないから適当に……」
「とりあえず一通り見せてもらいますね」
「手伝う」
ルイズが店主に剣を選んでもらおうとしたが、その前にオルタちゃんはタバサと共に置いてある剣を確認し始めた。
「え!?ちょっとアヴェンジャー、それにタバサ。あんたたち剣のことわかるの?」
「一応オリジナルの聖女様が軍人だったから良いか悪いか程度ならね」
「少しなら」
オルタちゃんの呟いたような一部分だけは周りのみんなには聞こえなかったが、二人が剣についてわかるとの事。なお、店主は『せっかく鴨が葱を背負ってきたと思ったのに……』とか思ったそうな。
「これは……?」
「何を見つけたのよ。アヴェンジャー」
オルタちゃんが何かを見つけ声を出した。その視線の先にあったのは、刀身が細く薄手の長剣。しかし、表面は錆が浮いていて見るからにボロボロだ。
「ただのボロ剣じゃない。これがどうかしたの?」
「アヴェンジャー、そんなものよりこっちはどうかしら?」
ルイズがボロ剣に何かあるのか聞こうとしたら、そこにキュルケが一本のレイピアを持ってきた。
「店主に聞いたんだけど、最近こういうのが人気らしいわ。なんでも『土くれ』のフーケって盗賊が貴族のお宝を散々盗みまくってるって噂らしいわよ。怖いわよねぇ」
「へー、そうなのね」
しかし、オルタちゃんはそっちを見向きもせず、例のボロ剣を見つめ軽く叩いたりしている。
「……ねぇ、アヴェンジャー。何をしているの?」
「魔力がこの剣から感じられたわ。それが少し気になったのよ」
「こんなボロ剣から?」
と、ルイズがボロ剣ボロ剣連打するからか、
「やいやい!さっきから聞いてりゃなんて言い草だい、そこの娘っ子!」
謎の声が聞こえた。店主はそれを聞いて頭を抱え出した。
「誰がボロ剣だ、こんちくしょう。馬鹿にするだけならさっさと帰りやがれ!」
よく聞くとその声はオルタちゃんが持っている剣から聞こえてきている。
「やい!デル公!お客様に失礼なことを言うんじゃねぇ!それとテメェがボロ剣なのは一目瞭然だろうが!」
「その娘っ子がお客様?ハッ!冗談はその体だけにしやがれってんだ!」
「な、なななな………なんてこというのよ、あんた!」
「俺様はほんとのことを口にしただけだ」
「うるっさいわよ!このボロ剣!」
「あ゛?」
「なに?やるの?」
ルイズとデル公が口喧嘩している間にキュルケは店主へと質問していた。
「ねぇ、あれってインテリジェンスソード?」
「そうでさ。意思を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさ。いったいどこの魔術師が始めたんでしょうかねぇ、剣を喋らせるなんて……。とにかく、こいつはやたらと口は悪いわ、客に喧嘩を売るわで閉口してまして……」
「まあ、確かにあんなに口悪いんじゃ売れないわよね……」
「その通りでさ」
「とっとと帰りやがれ!このチビ!まな板!」
5分ほど続いた罵り合いのすえ、ついにルイズがキレた。
「………」
ルイズは無言になり、力一杯デル公と呼ばれた剣の柄を握りしめた。
「ハッ!娘っ子ごときの力じゃ痛くも痒くも………」
「なに?いきなり黙って。本当は痛いんでしょう?」
「おでれーた。いや、そっちは全く痛くねぇんだが……おでれーた。見損なってた」
「あら?私を見直したかしら?」
少しだけ機嫌の直ったルイズが問う。
「ああ。てめ、『担い手』か」
「へ?『担い手』?」
聞いたことのない言葉にルイズは呆ける。
「てことは、使い魔で今俺様を持ってる嬢ちゃんが『使い手』ってことになるはずなんだが……お前さんら『コントラクト』……なんちゃらはやったのか?」
「『コントラクト・サーヴァント』ね。……そういややってないわね。でもアヴェンジャーと契約は出来ているみたいよ?」
チラリとルイズは自分の手のひらの令呪を見ながら言う。
「……確かに繋がりはあるみてぇだが、そっちもやったほうがいい」
「なんでよ」
「忘れた」
ルイズはこけた、それも盛大に。
「しかたねぇだろ!こちとら6000年も生きてんだ!忘れることもある。
とりあえず悪いことにはならねぇはずだからやってみろ!」
「……どうする?アヴェンジャー」
「やるだけやってみるわよ。もし、異常が出たらこのデル公とかいう剣を燃やし尽くせばいいだけなのだから」
「そうね。じゃあアヴェンジャー、少しだけ頭を下げてくれる?」
そしてオルタちゃんが少し頭を下げ……
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
小声で詠唱して、オルタちゃんに近づきキスをする。
なお、契約の方法を知らなかったオルタちゃんは目を全開にして驚いている。
最後にオルタちゃんの手にルーンが刻まれ『コントラクト・サーヴァント』は終了した。
「……なんか出たわね」
「これが使い魔のルーンよ」
「おお!やっぱり嬢ちゃんは『使い手』だったな」
「ねぇ、さっきから気になってるんだけどその『使い手』とか『担い手』って何よ、デル公」
「俺様の名前はデルフリンガーだ!覚えておきやがれ!
あと、それについては忘れた。思い出したら言うぜ。
……しっかし嬢ちゃん何者だ?まるで聖霊のような感じがするんだが」
「……まあ、気が向いたら教えてあげるわ。マスター、色々と気になることも言ってることだしこいつを買っていきましょう」
「そうね。店主!これはいくら?」
「へぇ、そいつでしたら金貨100で結構でさ」
「じゃあこれで」
ルイズは財布から金貨を100枚出して机に置く。店主が数えて、ぴったしであることを確認できた。
「毎度あり。こいつは煩い時は鞘に入れてやれば静かになりまさあ」
「わかったわ。
いくわよ、アヴェンジャー、キュルケ、タバサ」
「ええ」
「はーい」
「(コクリ)」
買ったデルフリンガーを持ってルイズたちは武器屋を出ていった。店主は厄介払いが出来て良かったと密かに思ったそうな。
たぶん次の更新は年明けてからになるかと……