生存本能ヴァルキュリア   作:ろっぴー

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第6話

 高度治療室のベッドの上で夕美は弾かれたように目覚めた。

 急いで上半身を起こした際にバイタル機器が外れ、電子音がエラーを告げる。

 

「夕美ちゃん!?」

 

 振り返った清良の瞳に映ったのはベッドを降りて外へと向かう夕美の背中だった。

 

「夕美ちゃん! どうしたの? どこに行くの!?」

 

 清良は慌てて夕美の手を掴むが、夕美はそれを力強く振り払いドアに手を掛けた。

 

「夕美ちゃん! 話を聞いて!」

 

 清良に両肩を力強く捕まれて夕美はようやく立ち止まった。

 

「清良さん……私、行かなくちゃ……止めなくちゃダメなの」

 

 振り返りながらそう言う夕美の顔は強い決意に満ちていた。

 

「清良さん! どうしました!?」

「夕美さん!!!」

 

 高度治療室のドアが外から開かれ、ありすと藍子、そしてその後ろから文香が入ってきた。

 

 

 

 

「夕美さん……お急ぎになる理由があるのだろうとは察しますが……落ち着いて……お話を聞かせてください」

 

 改めてミーティングルームに移動した文香、藍子、ありす、そして夕美の横に、清良と歌鈴が控えている。

 

 夕美は文香の言葉を受けて静かに頷いた。

 

「さっきはごめんなさい」

 

 夕美がそう言葉を切り出して清良に頭を下げると、清良は、大丈夫よ、と優しく微笑んだ。

 

――咄嗟の事態にあっても

 

ありすは清良を見ながら考えを巡らせていた。

 

――冷静に緊急発信を行い、高度治療室外の人間に救援を求めるという判断力は

 

「私の目指すべき理想の大人として、是非見習いたいです」

 

 と、思わずありすは言葉を零した。

 

「えっ?」

 

 全員の視線がありすに集まる。

 

「え? え? あっ!? な、ななな、なんでもないです、お話を続けてください」

 

 ありすは顔を赤くしながら両手で夕美に話を促す仕草をした。

 夕美は、それじゃあ、と話を続けた。

 

「簡潔に言うね。LiPPSによって封印されたカオスが解き放たれるヴィジョンを見たの」

 

 夕美の言葉に藍子は、そんな、と息を飲んだ。

 

「抽象的なヴィジョンじゃなくて――」

 

 夕美はそのヴィジョンを説明する。

 

「美嘉ちゃんと莉嘉ちゃん。二人の心の核と共に封印されているカオスが奏ちゃんの力によって解き放たれていく……とても生々しくて、禍々しくっ……!?」

 

 突如としてすさまじい負の力の増幅を感じ取った全員が息を飲む。

 それはまるで台風が直撃したような暴力的な負のエネルギーの奔流。

 

「うぅぅ……」

 

 歌鈴はカオスの奔流に中てられ、額に冷たい汗を浮かべて椅子から崩れ落ちていく。

 

「歌鈴ちゃん!」

 

 すぐに清良は歌鈴を抱きかかえるが、清良もまた息遣いが浅く、立ち上がることが出来ずにいた。

 

「……そんな」

 

 ありすが二人を見てそう零すと

 

「ありすちゃん」

 

 凛とした声がありすを呼んだ。

 振り返ると椅子から立ち上がった藍子が手を差し伸べていた。

 

「行こう」

 

――あぁ

 

 ありすは、毅然とした、覚悟の表情を浮かべた藍子を見つめる

 

――優しいだけじゃなくて

 

 ありすは頷き

 

――なんて藍子さんは強いのだろう

 

 藍子の手を取った。

 

「……しかし」

 

 文香が清良と歌鈴を自らのブランケットを敷いた床に寝かせながら呟いた。

 

「……カオスが解き放たれた場所は特定出来ますが……間に合う……でしょうか」

「確かに、どうすれば――」

 

 文香の言葉に夕美が考え倦ねているとミーティングルームのドアが力強く開かれた。

 

「そーゆーことならアタシらに任せな!」

 

 

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