生存本能ヴァルキュリア   作:ろっぴー

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第7話

――戦況は

 

 美波はカオスの放つ旋弾(ノーツ)を交わしながら周囲を見渡す。

 

――初手から極めて劣勢ね

 

 カオスの封印を解いた奏が背中に旋弾を受けて吹き飛ばされ、フレデリカはまだ意識の戻らない美嘉と莉嘉を降り注ぐ旋弾から庇いながら奏の元に走るタイミングを探る。

 

 奏たちが安全な場所に避難するまでカオスの注意を一人で惹きつけながら、この劣勢をどうにかしなくてはならない。

 

 模範解答のない設問を前にした時の理不尽さに似た感覚が汗となって美波の首筋を流れていく。

 

 そもそも封印から解放されたカオスを再び封印することが可能なのか、前例のない事態に美波はどう行動に移すべきか判断しかねていると

 

「なにかすごい音したけど」

「んー? なんだかすんごいことになっているねー」

 

 周子と志希が倒れている奏の方向に流れた旋弾をはじき返しながらそう美波に声を掛けてきた。

 

「やっほー。お二人さんお揃いで。なになに? デートのお誘いかなー?」

 

 周子と志希を見てフレデリカはそう軽口を利く。

 

「そうだねー。ささっと片付けてみんなでお茶しにでもいこかー」

「はいはーい、それなら志希ちゃんねーおもしろそーなお店見つけたんだー」

 

 フレデリカの顔を見た二人が不敵に笑って応えたその刹那、カオスがさらに旋弾を周囲に放つ。

 

「おっと」

 

 周子は礫のように襲いかかる旋弾を手に持つ扇子で軽やかに弾き返す。

 そのほとんど全ての旋弾は床や壁に当たって消滅したのだが

 

「志希ちゃん! 旋弾が!」

 

 奏を抱きかかえていた志希が美波の声に振り返ると周子に弾かれた旋弾が大きく弧を描いて志希の背中へと向かっていた。

 

「くっ……」

 

 カオスから豪雨のような旋弾が放たれ、志希の下に向かおうとする美波と周子を足止めする。

 志希が奏を庇い、自らの背を楯にして直撃に備えたその時

 

「おるぅうああああ!!!」

 

 何者かが直撃しようとしていた旋弾を素手で掴み止めた。

 志希が振り返るとそこには

 

「た、拓海ちゃん?」

 

 美波が驚きの声を上げると、向井拓海は、おうよ、と応える。

 

「仏恥義理の戦乙女・炎陣が特攻隊長、向井拓海様の登場だ!」

 

 そう名乗りを上げた拓海は掴んでいた旋弾を握りつぶし、カオスに指を向ける。

 

「難しいことは抜きだ! アタシがテメェをぜってぇぶっ潰してやる!」

「たくみんったら、まーたそーやって熱くなるんだからー」

 

 拓海の啖呵をそう笑っていなしながら藤本里奈が美波に視線を送る。

 

「美波ちゃーん! みんなを連れてきたぽよー!」

 

 里奈はそう言うと拓海の腕を掴む

 

「さぁ、アタシたちは夏樹ちゃんたちと合流して街中で倒れていた人たちの救助しにいくよー」

「なっ!? 里奈! ここまで来てタイマン張らないまま引き下がれねぇよ!」

「たくみん、それは美波ちゃんたちに任せよ? アタシらはまず人命救助が先ってことで出撃が許されたんだし」

 

 抵抗する拓海をその華奢な身体からは想像出来ないほどの力強さでぐいぐいと里奈が引っ張っていく。

 

 拓海たちが去ると

 

「志希ちゃん……」

 

 夕美、文香、藍子、そしてありすがそこに残った。

 夕美に声を掛けられた志希は、夕美ちゃん、と小さく呟くとすぐにその表情を繕い

 

「もう元気になっちゃったんだーすごいねー」

 

 と笑った。

 その真意を察した夕美も、私結構強いんだから、と笑って応じる。

 

「……それでは、手筈通りに」

 

 静かに文香はそう言うと指で空に徴を描き、青い光の結界を張る。

 

「美波さん! フレデリカさん! 文香さんの元に!」

 

 藍子がそう声を上げるのを聞いた美波とフレデリカは旋弾を避けながら美嘉と莉嘉をそれぞれに抱えて文香の結界へと向かった。

 

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