あの子の涙と僕の嘘   作:日向 ゆい

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俺ガイルの小説を置き去りにして始めてしまいましたこのお話。

あらすじに書いた通り口調が安定していないので、それでもいい方のみお進み下さい


最初の涙

人には必ずと言っていいほど隠したいことはある。例えば、恋人の存在とかテストの点数とか。そんな小さなことでもいい。結局は隠しているという事実が僕が話したいことにとって大事な点なのだから。

 

僕には二つの顔がある。あぁ、別に人格が分かれてるとかじゃないし盗みをするとかそんなキャラじゃない。ならどういうことか?答えはシンプルである。学校生活と普段の生活でキャラを分けているのだ。

 

「ふぅ……こんなもんですかね?」

「うん、そこでいいよ。ありがとね」

 

僕はCiRCLEというライブハウスで働いている。ショートと言うには長く、セミロングというには短い。そんな中途半端な髪の長さをワックスでくしゃくしゃに弄り長さを少し活かした『ちょっと遊んでるチャラ目の青年』を連想させるような格好をしている。

 

ちなみに服装は四季通してジーパンを履いてる。動きやすいという訳では無いがこの方が楽なのだ。上着は様々なものを着ているが、今日はネイビーのパーカーを着て働いている。パーカーはいいぞ。なんかかっこいいじゃん。

 

「しかし……最初に入った時は不真面目そうな子だと思ってたけど、真面目に働いてくれてお姉さん嬉しいよ」

「そんなに遊んでるように見えますか……?これでも真面目な高校生やってるんですよ」

 

……普段の学校生活は地獄だ。ただでさえ元々理解している内容を解りにくく言われても苦痛になるだけだ。しかも僕が通う羽丘学園は全員女子なのがさらに苦痛で、話せる人もいないし心が休まる場所もない。だからと言うかなんというか、普段はこの中途半端な髪の長さを逆に活かして地味なキャラを演じている。誰も話す人がいないのだから仕方が無いだろう。

 

「へー、意外だなー。今の高校生って遊んでるんじゃないの?」

「失礼な……高校生の全員が遊んでるわけじゃないんですよーだ」

 

さっきから僕と話しているのは月島まりなさん。意外と面倒見が良く、話してみると面白い人だと思う。俺が唯一心開いて働けるのはこの人のおかげだと言っても過言ではないと思う。親から見放され、独りで生きることになった俺にとってここは家と言っても差し支えはないほどに好きになれた。

 

「よし、あとは私だけでなんとか出来るから先に上がっていいよ?」

「……いや、どうせ家帰っても暇なんで最後まで手伝いますよ」

「そう……?なら、甘えようかな」

 

まりなさんは申し訳ないと言った感じで苦笑いした。まぁ、家にいてもすることは無いのはホントだし、幸いにも明日はバックれても怒られない授業だ。だから遅くまで残っても問題ない。

 

「__こんにちはー!」

 

世間的には許されざる覚悟を決めて仕事をしようと思った矢先、明るい声が店内に響く。声が聞こえた方へ顔を向けると、ピンク色でセミロングの髪を二箇所結った元気いっぱいの女の子がやってきた。

 

「やぁ、いらっしゃい。ひまりさん」

「あれ、今日は紅葉さんが受付なんですね」

 

この子は上原ひまり。Afterglowという幼馴染五人がメンバーのバンドのリーダーを務めている……らしい。初めて聞いた時はすごくびっくりしたのを覚えている。

 

「まりなさんは君達に貸すための部屋のチェックに行ったよ」

 

僕の答えにひまりさんは納得してくれたようで、少し休みながらメンバーを待っているようだった。

 

彼女たちも僕と同じ羽丘学園の生徒で、僕のことを知っているのでは……と思うだろうが、普段は本性を隠しているのだから、名前が同じなだけで他人の空似という事を貫き通している。どこからどう見ても無理がある気がするが事実気づかれていないからそう言うしかない。

 

「あっ、やっと来たー!」

「遅くなって悪かったな、ひまり」

「ひまりちゃんに押し付けちゃったみたいでごめんね……?」

 

ひまりさんの他に来る人が二人。赤髪でロングの宇田川巴さんと、茶髪でショートの羽沢つぐみさん。確かドラムとキーボードだったはず。ってかなんでこんな知ってるんだ僕は……いつもの癖が出てるのかな。

 

「そう言えば、蘭とモカは?」

「あぁ、アイツらなら少し遅れてくるってさ」

「モカちゃんの監視役……らしいよ?」

 

今名前が挙がった二人はここのバンドの重要メンバーで、黒髪に赤のメッシュを入れた美竹蘭さんと、白髪でショートの青葉モカさん。ちなみに、蘭さんはギターとボーカル。モカさんはギターのみ。

 

モカさんは四六時中眠そうに見える。だからと言うかなんというか、察しがついてしまった。恐らく寝てしまった罰を受けて、蘭さんはモカさんが逃げないように見張っている。そんな感じだろう。

 

「じゃぁ、先に始めちゃおっか」

「そうだな。そのうち来るだろ」

 

二人が来るのを待つよりも先に始めていつでも合わせられるようにする。なるほど実に賢明だ。そうすれば個人のレベルも上がるしな。

 

「ってことで、紅葉さん!後で二人来ると思うので言っておいてください!」

「うん、わかったよ。頑張ってね」

 

その言葉だけ交わせば後は移動して練習を始めるだけ。あとは僕は暇になる。聞こえてくる音を楽しむのも一興なのだろうが、落ち着く雰囲気なのもあって眠たくなってくる。

 

「こんな時は……っと」

 

僕はバックから自分で作ったガトーショコラの入った小箱を取り出す。バイトのある前の日に作ったお菓子を眠くなってくる時間に食べるのが至福の時間なのだ。少しにがめに作ったコレは、甘過ぎずしつこくない味に仕上げたので眠気も覚めて一石二鳥だ。まぁ、だからと言って寝ないとは限らないんだけどね。これに生クリームを合わせると甘さが引き立つので苦いのがダメな人でも食べやすくしてある。そんなこんなで四切れ持ってきたうちの半分を食べ切り、もうひとつに手を伸ばそうとした時だ。

 

「……じー……っ」

 

……リアルでそんな擬音言う人初めて見た。と思いながら音の出処を探すとあっさり見つけた。白髪ショートで常に眠そうな目をした少女。言わずもがな青葉モカさんである。

 

「え……えと、どうしたのかなモカさん?」

「いやー、甘い匂いにつられてきたらコウさんがケーキ食べてるから美味しそうだなーと」

 

……この子の嗅覚は何故こんなにも鋭いのだろうか。食べ物、特にパンに関しては警察犬もびっくりなレベルで鋭い気がしてならない。お菓子も同様だろう。なんでわかんだよ。そうツッコミしたかったが、なんかもう今更なので気にしない。

 

「……食べるかい?ってか、君のために多く持ってきたんだけどね」

「おぉー、さすがコウさんだー」

「やっと……追いついた……」

 

僕がモカさんにケーキを渡していると、肩で息をしながらやってくる少女。この子もさっき説明した美竹蘭さんだ。モカさんを追いかけて走ってきたのだろう。……ほんと、お疲れ様です。

 

「やぁ、蘭さん。今日もお疲れ様」

「……どうも」

 

やっぱりというかなんというか。この子は基本的に冷めてる気がする。いや、そんなつもりは無いんだろうが、僕からはそう見えてしまう。

 

「ひまりさん達は先に始めてるから、急いだ方がいいよ」

「そうですね。わざわざありがとうございます」

「またねー、次も期待してるよー」

 

相変わらずサバサバしている蘭さんともう食べ終わったのか妙に機嫌のいいモカさん。その二人がひまりさん達の元に行き、練習に参加する。後は特に記述することもないので割愛しよう。

 

 

そんなこんなでAfterglowの面々は練習を終えた。俺も帰ろうと荷物を片していると、蘭さんが僕の元にやってきた。

 

「あの……紅葉さん」

「どうしたんだい、蘭さん」

 

いつになく真剣な声にふざけて返すのは無粋だろうと考えて彼女に向き合う。僕の方が身長が高いのもあって見下げる形になってしまう。といっても俺は彼女より十数センチ高いだけだから見下げるというのは違うのかもしれないが……今はいいだろう。

 

「私……どこかでアナタに会っている気がする」

「……さぁ、どうだろう。僕はここでしか君にあったことは無いよ」

 

ふざけて返すのは無粋だ。そう言ったがそれは質問によるな。と心の中で訂正を入れておく。

嘘も方便だ。僕の正体は誰にもバレちゃいけない。平穏無事な僕の生活がかかっているから、仕方が無いんだ。と自分に言い聞かせながら蘭さんの質問を受け流す。

 

「あぁ、そうだ。コレあげるよ」

「いつもありがとうございます」

「いやいや、君達が頑張ってるの知ってるからさ。後でみんなに配っておいて」

 

そう言って小さな紙袋を渡す。俺が食べてたガトーショコラを始めとする一口サイズのケーキを数個入れた紙の容器を入れたものだ。彼女達は頑張っていると思う。他の生徒よりも。だから、つい贔屓してしまう。俺は彼女達に少なからず好意があるのかもな、と一人で笑ってしまう。

 

「夜道、気をつけてね」

「……はい」

 

こっちは知っていても相手は僕のことを詳しく知らない。だからと言うべきなのか、距離感は遠い。まぁ、見ず知らずの人に話しかけられたら俺でも距離をとってしまう。仕方ないことだろう。それよりも今日は蘭さんに疑われた。そっちの事の方が大事な気がする。さて……どう逃げたものかな……

 

「面倒だから明日考えよう……行き当たりばったりでなんとかなるだろ」

 

疲れてる時に考えようとしても何も浮かばない。ならば明日になってみてから考えればいいやと思考を投げながら歩いて家まで帰る。ちなみに場所はやたらでっかいお屋敷みたいな場所の近くにある。……なんかそこだけ世代違うよなぁとかたまに思いながら部屋に入ろうと鍵を扉に刺すと

 

「っ……うぅ……」

 

後から泣く声が聞こえた。一瞬で鳥肌が立つくらいにビックリして思わず後ろを振り向いてしまった。そうすると、蘭さんが泣きながら走っていくのを見てしまった。

 

「……僕の仕事じゃねぇよ。こんなの」

 

誰に聞こえるわけでもない小言を呟き、蘭さんを追いかけるために走っていく。流石に体は訛っていない様で、すんなり追いつくことが出来た。……余計なお世話なのは知ってる。多分、あの子には僕の力なんて必要ないことも。けど、それでも僕は

 

「……なんであんたがここにいるの」

「たまたま、君が泣いて走っていくのが見えたからさ。心配になってきたんだよ」

 

彼女を放って置けなくて、声をかけてしまった。

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