インヘリテッド・ストーリー ~銃と少女と女神と共に~ 作:鼠返し
「…………えっと、お食事をお持ちしますね……」
ぼーっとイヴの顔を見つめていると、クロエがそう言ってそそくさと部屋から出て行ってしまった。……いきなり来た男女二人組がこんなことをしていたら居づらいのも当然か。実際はまだ会って体感では1時間経つかどうかなのだが。
ガチャンという音と共にクロエが部屋から消える。何故かわからないが詰まっていた息が胸から抜け出した。そんなに緊張した覚えはないのに。
「マスター、異世界から来たんですね」
「多分、ですけど。……一つ聞いていいですか?」
そう聞くと、イヴは少し不満そうな顔をした。何か聞くのはまずかったのか? いや、マスターと慕ってくれているのに質問するのが駄目なんてことはないと思いたい。
言葉をつづけづらく詰まっていると、イヴの方から話しかけてきてくれた。
「マスター、何で敬語何ですか?」
「え?」
「私はマスターの僕、言ってしまえば奴隷です。こうして人と触れ合う体を手に入れられたのもマスターのおかげ。私がマスターを敬えど、マスターが私を敬う必要はないんです」
そう言ってしまえば簡単だ。だが、俺にはそんなことをした覚えが一切ない。だから普通の女性と相対した時と同じように接するしかないのだが、イヴからすればそれはおかしいらしい。
奴隷、というのも引っかかるところではある。さらっと聞き逃しそうになったが、奴隷なんて言葉は普段では聞かないため、改めて言葉の意味を理解して少し戸惑ってしまう。
「……そ、そうです……そう、か。よろしく、イヴさん」
「呼び捨てで結構です」
女性を呼び捨てにするなんて初めてのことだ。むしろそんなことをしてもいいのだろうかととても不安に思うが、イヴが望んでいるのなら仕方がない。腹をくくって従うことにする。
「……よろしく、イヴ」
「はい、マスター」
俺の中に潜在的な恐怖があるのか、呼び捨てにした瞬間少し寒気がした。それでも、イヴの笑顔に俺の心は安らいだ。イヴに弱すぎやしないか俺は。
しかし、他人とこのような主従関係にあるというのは経験がない。むしろある人がいるのだろうか。つい一か月前までほぼ男子校にいたのだ、許してほしい。……誰に許しを乞うているのだろう。
ともあれ、イヴの話は済んだ。今度は俺が聞く番だ。
「と、私のお願いも聞いていただいたところで。私の使い方を覚えていただこうと思います」
――と思っていたのだが、そんな暇は与えられないらしく、イヴに言葉を続けられてしまった。あれ、俺の話は?