インヘリテッド・ストーリー ~銃と少女と女神と共に~ 作:鼠返し
俺の小さな疑問はすっ飛ばされ、イヴは細長い白い布で包まれた棒を持ってきた。それを俺の太ももの上に置いた。恐らく中に銃があるのだろうと手を伸ばすと、いきなり布が弱くだが光り、粒子となって霧散して銃がその姿を見せた。
「おぉ……」
「これも魔法ですよ」
アニメ等でよく見るものを間近で見て思わず声が漏れてしまった。イヴが自慢げな表情を見せる。そのどや顔も美しいと思う俺は末期だろう。
「まあまずは、マスターがどれほど銃を知っているのかをお聞きします。マスターの世界に銃はありますか?」
「……あるよ。もっとも、これよりもっと新しいものだけど」
そういうと、イヴは驚いたような表情を見せた。何か意外なことでも言ったのだろうか。
「へぇ、なるほど……では、どういう武器なのかはご存知ですか?」
イヴの言葉の中身が気になるが、話を先に進められてしまった。まあ、イヴが聞いてこないのだから少なくとも今は大丈夫なのだろう。
「火薬を爆発させて、鉄の弾を飛ばす武器……のはず」
「そうです。撃ち方はあの時にしたことと同じです。覚えてますか?」
「まあ、うん」
「ならよかった。それで、弾を撃った後、弾を詰めていた金属の殻が中に残るんですよ。それの出し方を覚えていただきたくて。……もしかしてわかります?」
「えーっと……」
父と一緒に見た映画を思い出しつつ、照準器の横へ手を伸ばす。確かこのあたりに棒があって、それを引いて弾を出していたはずだ。だが、右にも左にもそんな棒はなく俺の手は彷徨うことになった。そもそも自動で弾が出てこないし、この銃欠陥品じゃないのか?
「こうですよ」
ベッドに乗りつつ、俺の背後について両手を取ってくる。俺の心臓が跳ねるのも気にしない様子で、構えるときのように左手は銃身、右手は引き金へと添える。どうするのだろうと思っていると右手を少し強く握られ、リング状の金具を銃身の根本を中心に円を描くように下へと降ろした。レバー、という表現が一番合っているだろう。
ガチャ、という音と共に薬莢が空いた場所から飛び出て、床へ心地よい金属音を立てて転がった。俺が思っていたより古い型式の銃のようだ。1800年代の銃とはここまで古臭い構造をしていたのか。
「で、これを元に戻すと、次の弾が撃てるようになります」
レバーを逆の動きで最初の位置へ戻すと、銃の中心でガチャンと音がした。次弾の装填がこの動作ということだろう。
「ただ弾の数に限りがあるので、無くなった時はまたお教えします。ひとまずはこれで大丈夫です」
「なるほど……」
生まれて初めて銃に興味を持ったかもしれない。何となくだが、この世界にいる限りずっと使い続けていく気がする。
――ギィ、と部屋の外で音がした気がした。クロエが出て行った扉を見ると、少し開いて誰かが覗いていた。偶然目が合うと、その誰かは後ろへあとずさり、何かを床に落とした音と液体がこぼれる音が聞こえ、走り去っていった。
何があったのだろうと思うのと同時に、イヴが血相を変えて部屋から飛び出していった。俺には理解不能な状況に困惑しつつも、とりあえずベッドから降りて後をついていってみる。
扉を開けてイヴが走っていった方向を見てみると、イヴがクロエを抑え込んでいた。