インヘリテッド・ストーリー ~銃と少女と女神と共に~   作:鼠返し

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 雨がひどく憂鬱な気分です。


第16話 読心

 イヴが神だと言われて、それを嘘だとは思わない。しかしそう確信できる何かがないためか、いまいちどうにも信じ切ることができない。

 

「半信半疑って感じの顔ですね。いいですよ、証拠をお見せします」

 

 そう言うと、イヴは立ち上がり両手を胸の前で組んだ。何をするのだろうと思っていると、イヴの体が初めて銃を目にした時のように光り始める。一瞬強くなったかと思うと、イヴの姿がきれいさっぱり消えてしまった。

 

 左右を見渡しても当然いない。今この部屋にいるのは俺とクロエだけだ。じゃあイヴはどこに消えたというのか。

 

『マスター、探しても私はいませんよ』

 

 この感じの声は聞き覚えがある。教会で爆発で飛ばされたあと、聞こえてきた謎の声だ。あの時と全く同じで、聞こえてくる方向はわからない上に頭に直接響いてきているような感じもする。強いて違う点を挙げるなら、イヴの声があの時より殺気立ってないことか。

 

『今マスターが持ってるものですよ』

 

 イヴに言われて、今更自分が未だに銃を握りしめていることを思い出した。そうか。物に宿るということは、本体はさっきの姿ではなくこちらの銃ということか。イヴが銃ではなく銃がイヴという認識で間違いなさそうだ。

 

「あぁ、うん……とりあえず、イヴが人間じゃないことは分かった。で、この声は一体どういうことなんだ?」

『頭の中に直接語りかけてるんですよ。魔力の流れの相性がいいのか、案外簡単でした。あの時は一か八かでやって聞こえてなくてもおかしくなかったんですけど。流石触っただけで私を呼び出しただけはありますね』

「……待った、待ってくれ。一から説明してくれないか?」

 

 案外イヴはおしゃべりなようだ。一気にまくしたてられた挙句言ったことへの理由が全く持ってつかめない。説明を求めると、『ふふっ』と笑われてしまった。何かおかしいことをしたか?

 

『おかしくはないですよ。ただ、困ってるマスターは可愛いなって』

「…………」

 

 今、心を読まれなかったか? 可愛いと二度言われたことはさておき、少し疑問に思った。いや、これぐらいなら大体予想すれば読めないことはない。

 

『私がマスターに声を送っているように、マスターも私に送ってるんですよ。今は恐らく無意識的にでしょうけど』

 

 どうやら、俺の心はイヴに対して駄々洩れだったようだ。……待った、今まで思ったこととか全部筒抜けなんじゃないか? そうだとすればいろいろ気まずいことになってしまう。ああ駄目だ、今思ってることも伝わるんだった。

 

『慌てすぎですよ。今はまだマスターが私を触ってないとできませんから。いつかは触ってなくてもできるようになるかと思いますが。……ところで、気まずいことって何ですか?』

 

 ガチャン、と少々荒々しく机に銃を置く。これ以上読まれてしまってはたまったものではない。とりあえずはこれで心の声が漏れるということはないだろう。

 

 これで安心、と思ったが。思い返せば、銃の弾を装填していた時は持っていたような……気にしないでおこう。これからは自制していけばいいだけのことだ。気まずい気はするが、イヴが意識しない、言葉に出さないことを願っている。

 

 そこまで思ったところで置いた銃が光り、同じようにして今度は逆に俺の目の前にイヴが現れた。最初のようにがたがた鳴らないというのはいいかもしれない。

 

「もう、女の子に何てことをするんですか」

「人間じゃないのに女の子?」

「女の子じゃないですか。見た目は」

 

 それはそうだ。気が付けば俺は無意識に頷いていた。イヴが女の子だというのだからそうなのだろう。できるだけ紳士的に接していこうとは思っている。

 

「話を本題に戻しましょうか。魔力の流れとかその辺りでしたっけ?」

「うん、頼めるかな……あ」

 

 ふとイヴの奥で何かが動いた気がしてみてみると、少し声が漏れてしまった。クロエがうっすらと目を覚ましつつあったからだ。

 

 段々としっかり目が開き、起き上がろうとするもイヴの掛けた魔法のせいか不自然にもがいていた。

 

「何これ……!?」

 

 まるで透明な手錠や足枷をされているような動きを少し続けた後、段々とクロエは涙目になっていく。振り返ったイヴと顔が合い、絶望した表情を浮かべる。禁忌を犯した訳も分からない男女二人組に拘束されたとなってはこうなっても致し方なしか。

 

「可愛い……」

「……えぇ……?」

 

 イヴがクロエの顔を見ながら言った一言に、俺は自然と疑問が口から飛び出ていた。女の子は女の子でも、相当変わっていると思ったほうがいいだろうことを実感した一瞬だった。

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