インヘリテッド・ストーリー ~銃と少女と女神と共に~ 作:鼠返し
今いる所は、部屋の内装からも想像できたが木造のコテージのようだ。俺の世界でだが現代の別荘とは違いこちらは妙に生活感が溢れている。イヴが取り押さえた時に誰も確認に来なかったところからも、クロエは一人暮らしなのだろう。広さ的にはごくごく一般的なものなので一人が暮らす分にはあまり不自由しないだろう。
今いるのは二階のようで、一階がほぼ全て見下ろせるようになっている。視界の真下でクロエの茶髪が左右へ動いているのが見えた。中々触る機会のない木の手すりを利用しながら階段を降り近づいてみる。
後ろから肩越しに覗いてみると言葉通りに食事を用意していた。シチューのようだが見た感じ量が少ない。先ほど持ってきたものを食べることができていたならぴったりだったであろう量だ。材料を切って付け足しているところか。
「クロエさん」
声をかけると、ナイフに見える包丁らしきものを置いてゆっくりと俺の方へ振り向いた。まだ会って間もないのに、居るのが当たり前のような感じがした。これも魔法で落ち着いているせいか。
「……どうしましたかリュージさん」
「いや、何だか悪かったなって。申し訳ないです」
「……こちらこそ、取り乱してすみませんでした。少し時間がかかりますので、お部屋へ戻ってゆっくりしていてください」
まるで別人と会話しているようだった。言い終わった後はまた意識は料理の方へ向いてしまい、俺には目もくれず黙々と材料を切っては鍋に入れていく。こう表現しては失礼かもしれないが、おどおどして俺が再び何か言うまでは様子をうかがってくるのが普段のクロエのような気がしてならない。
どうしたものかと解決策が思いつかないにもかかわらず首を捻っていると、二階の扉が開いた。案外音は聞こえてしまうようで、大方さっきの排莢の音も聞こえていたのだろう。少し後ろに下がって上を見るとイヴが俺を見下ろしていた。
「大丈夫ですかマスター」
「……何もないよ。何もなさ過ぎて話がしたいのにできない」
部屋に居ろとは言ったが、クロエにまた手を出されることを避けるのが目的だったために別にいいかと思いなおす。それにしても、大丈夫かと魔法をかけた本人が言うセリフとはあまり思えない。……そうだ、いいことを思いついた。
「――そうだ、クロエにさっきかけた魔法を解けないか? それか逆の魔法をかけるとか」
「……そうですね、できないことはないと思います。やってみましょうか。よ――」
おお、言ってみるものだ。イヴはそう言い終わると、柵を何故か慣れた様子で格好良く乗り越えて一階へと豪快に飛び降りる。その際に服がめくれ上がり、あられもないイヴの下半身が丸見えになり、思わず「うわっ!?」と声が漏れた。これが普通の人ならよかったのだが、イヴはそう、何も履いてなかった。
「――っと。マスター、どうかしました?」
「……イヴ。その、あれだ。イヴには羞恥心というのはないのか?」
「恥ずかしい、という感情ですか? もちろんありますよ。それが何か?」
「…………」
もう仕方ないだろう。単刀直入に言ってやる。これを恥ずかしく思わないということは言ったところで漫画なんかでよくある照れ隠しに殴られるということはないだろう。
「下着をつけてくれ。さっきのはその……丸見えだった」
「……下着って何ですか?」
「え?」
「へ?」