インヘリテッド・ストーリー ~銃と少女と女神と共に~ 作:鼠返し
えっと、俺は何を話していたんだっけか……そう、クロエにもう一度魔法をかけてもらうんだった。とりあえずは服を着てもらうことにしよう。裸の相手とはまともに話せそうにない。
「クロエさん、服はもう着てもらっても大丈夫ですよ」
「……そうですか」
特段俺から体を隠すようなことはせず、するするともう一度服を着ていく。やはりこの状況は早めにどうにかしないとまずい。気持ちを落ち着かせるだけならこんなことは普通に受け入れたりはしないはずだ。他にも何かがあってもおかしくない。
少し考えている間にクロエは着替え終わったようだ。これでようやく本題に入れる。
「で、ようやく元の話に戻れるわけだけど。逆の魔法をかけてくれないか?」
「了解ですマスター。まあ、今回はかけた魔法を解くほうが早いのでそっちでいきます」
そう言うや否や、イヴはクロエの頭に手をぽんと置いた。どうするのか見ていると、数秒ほどしてそのまま手を離した。魔法陣が出てきたわけでもないが、もう終わったのだろうか。
「クロエさん」
「は、はい……?」
あ、戻った。かけた魔法を解くのはかけるのとは逆に早く終わるようだ。初めのおどおどしか感じが戻ってきて安心する。やはり魔法や何かで無理やりというのは良くない。
「覚えてます? 今までのこと」
「……っ。覚えて、ます……」
顔を赤くしながら、俺から体を隠すように体の向きを変えた。よかった、この辺りはちゃんと俺の世界と同じで。
「それでは、私たちはクロエさんのご飯を待ちましょうか」
「そうだな。部屋に戻ろうか。クロエさんも俺たちが近くにいたら料理どころじゃないだろうし」
「……何でです?」
「自分のしたことを思い返してくれ……とにかく戻るぞ」
何だか、イヴとは持ちつ持たれつの関係になりそうに思えてきた。クロエは……巻き込んでしまった可愛そうな子だが。非常に無責任なことだと思うが申し訳なく思っている。こうなった以上はできるだけクロエに負担はかけないようにしていきたい。
イヴの手を取り階段へと向かおうとしたところ、クロエから肩を叩かれた。振り向くと、あの必死に何かを言おうとする表情で口を開いているところだった。
「あ、あの。よければ軽食をお持ちください。その、出来上がるまで少し時間がかかりますので」
「……ありがとうございます」
差し出されたのは魚の開きらしきものだった。皿に乗せられたそれを礼を言いつつ受け取り、イヴと共に階段を上って部屋に戻った。