インヘリテッド・ストーリー ~銃と少女と女神と共に~ 作:鼠返し
食ったら苦しむ。かといって食わなければ死ぬ。なら当然苦しむ方を選びはするのだが。どうにかこう、その症状が緩く済む方法はないのだろうか。
「……どうすればいいんだろうな。食べないってわけにはいかないし」
「できるだけ魔力を取らないようにするしかないですかね、今のところは。時間をかけて魔力がマスターの体に馴染むのを待つしかないでしょう」
「それか、元々魔力の内在量が少ないものを摂取するしか。リュージさんが苦しまない方法というのは私ではわかりません」
「んー……」
二人から集中攻撃を食らったかのように、俺は掛け布団を身をよじって深く掛けなおす。どのみち、俺を含めた誰にも何もすることはできないのか。大人しくしているのが吉か。
それにしても喉が渇いた。体が熱くなっているせいか汗をかいていたようだ。着ている服も汗を吸って若干着心地が悪い。それは我慢するとしてまずは水分補給だ。
「イヴ、悪いけど水をくれないか」
「クロエさん、ありますか?」
「ありますけど、ただ……」
口ごもりつつも準備してくれるような素振りを見せてくれるので、体を起こして待つことにする。すかさず察したらしいイヴが俺の体を支えて起こしてくれる。まるでお母さんみたいだ。小学生の時に高熱で寝込んだ時以来か。
そんなことを思い出している間に終わったらしく、水を差しだしてくれるので木製のコップを両手で受け取る。礼を言おうと口を開きかけるが、それを閉じ違和感に気づいてコップの中を覗く。入っている量が、それほど大きくない器なのに対して三分の一ぐらいしか入っていない。
疑問に思ってクロエの方を見ると、びくつかせて小さい体をさらに縮こませてしまう。別に怒っているわけではないのだが……なんかこう、罪悪感がしてしまうな。
「あ、ぅ……水は、魔力を沢山含んでいる代表的なものです。今のリュージさんが多く飲むと危ないかと思います。飲むにしても少しずつ飲んだほうが……」
「別にそんな縮こまらなくても……。まあ、ありがとうございます」
とりあえず礼を言って、少し緊張しながらも軽く一口含んでみる。二人が俺の顔をじっと見つめてきて飲みにくいが仕方ないか。
心地いい、程よい冷たさの水だ。薬品を使って消毒した水とはわけが違う。ミネラルウォーターよりも水という感じがする。そんな風に思ったのも束の間、胃に落ちた後は段々と熱さが広がっていくような感覚に包まれる。これぐらいなら暖かい飲み物を飲んだ程度で済むが、普段通りに飲んでいたらどうなっていたことやら。
「マスター、大丈夫ですか?」
「あと少しぐらいなら……」
さすがに一口だけでは足りないので、小さくだが二口目、三口目と続けていく。とはいっても、最初に少ないと感じた量のさらに半分くらいで終わったが。今の俺にはこれが限界だろう。これ以上続けるとまた意識を失いかねない。
「ありがとうございます……」
クロエにコップを返す手が少し震えている気がする。水ということも影響しているのか、二人の言う魔力が体に行き渡るのが魚より早いようだ。
「はい……あまり無理はなさらないでください」
「マスター、寝ておきましょう。そのほうが楽ですよ」
「ああ、そうする……」
じわじわと熱さが伝播していって、ついには頭まで来た。あの時はこれが急に来たのか。
今度は倒れてしまう心配はない。何もできない子供に戻ったような気分で、しばらくは休むとしよう。