インヘリテッド・ストーリー ~銃と少女と女神と共に~ 作:鼠返し
二人の反応はそれぞれ異なった。「異世界、ですか……なるほど……」を彼女は納得したような様子を見せ、クロエは驚愕したような表情を見せた。
「えっと、なんで納得したようなんです?」
「マスターの魔力の量がおかしかったんです。それに、召喚魔法なんてものもありますし」
え、そんなのあるの? そう思いはしたが、魔法を喰らった側でも経験した今ならすぐに納得できた。だとすれば、俺はその魔法とやらでこの世界にやってきたのだろう。それ以外に考えられないが、召喚というと、何かこう召喚した人が目の前にいたりしないのか? ……いや、居るじゃないか。
「……もしかしてあなたが召喚したりしましたか?」
「まさか。逆に私がマスターに召喚されたようなものです」
当てが外れたどころか真逆だったようだ。しかし俺にはそんなことをした覚えがない。更に頭を抱える結果になってしまった。ふと顔を上げるとクロエも同じような様子だった。……ように思えた。
「クロエさん、どうしました?」
クロエは何かに怯えているようだった。心配に思い声をかけると、体をびくつかせ耳がしな垂れる。俯いて胸に手を当て握りしめ、一息吐くと顔を上げて俺のほうを見る。何か勇気を振り絞っているようだ。
「あの……薄々思っていたんです。魔力の量は少なすぎるし、こんなところにあなたみたいな人はいないし、それにえっと……」
しどろもどろになりながらも何とか言葉を出そうとしてくれているのは伝わってくる。それは彼女も同じようで、急かさずにクロエの話を待つ。おろおろしながら次に口を開いたのは約5秒くらい経った頃だろうか。
「変な形で成功したみたいです、その……昨日の召喚、魔法が……」
……へー。としか思えなかった。物事のぶっ飛び具合に頭が慣れ始めてきたのだろうか。召喚魔法と聞くと何だか凄そうだが、こんな小さい女の子が使えるものなのだろうか。ぽんぽん召喚できる世界の可能性だって否定はしきれない。
「……クロエさんが? こんなに小さいのに?」
「小さいはやめてください……」
思った通り、召喚魔法というものは凄いものらしい。ここで一つ、俺の頭に案が浮かんだ。これが実行できれば俺は何も言うことなしなのだが、果たして。
「でしたら、逆に元の世界に戻すというのは可能ですか?」
一縷の望みをかけてクロエに聞いてみるが、顔色は良くない。首を横に振られてしまった。何で、という問いには、すぐにクロエが答えてくれるようだった。
「……召喚は呼び出すだけで、戻せはしないんです。大体、呼ばれたものは自分で帰っていくものがほとんどで。それに……人を召喚したなんて、聞いたことが……異世界からというのも前例が、無くて……」
「んー……?」
首を捻りつつ唸り、数秒後気付いた。
どうやら俺は、史上初の何かに巻き込まれたらしい。