名前:鈴鹿 鈴
フリガナ:スズカ スズ
生年月日:xxxx年8月5日(満17歳)
現住所:真選組屯所
電話番号:ケータイもってないです
メールアドレス:買ってください
「…書けました!土方さん!」
「随分とまぁ言いにくいフルネームだなお前」
「ほっといてください」
「つーかなにお前、住み込むつもり?」
「はい!」
「あとケータイねだんな」
土方さんに案内された部屋。
縁側沿いにある、家具一つない八畳間だった。
「ここをテメーの部屋としてやる。いいか、平隊士は数人で1つの部屋を使っているにも関わらずお前は1人部屋なんだ感謝しろよ」
「めっちゃ感謝しますありがとうございます」
「仕事については佐藤さんという女中が後でここに来て説明してくれる。それまでにその風呂敷の荷物片付けとけ」
「はい!」
私が右手で敬礼をしてみせれば、土方さんは「それじゃあな」と背を向けて廊下を歩いて行った。
部屋へ入り、戸を閉める。
そして風呂敷を畳の上に下ろして広げると、中から雪崩れるように荷物が出てきた。
そうだな、とりあえず。
「着替えるか」
そう呟き、山吹色の甚平を手に取った。
「まずは洗濯物を干してもらうよ」
私が荷物を片付け終えるのと同時に、例の佐藤さんが私の部屋へと来て庭に連れ出される。
物干し竿の前にカゴが10個以上はあり、すべて洗濯物の山だ。思わず「うげっ」と声を漏らしてしまう。
「これ全部隊士さんのですか」
「当然じゃないのさ、ほら早く干すよ」
そう言うなり佐藤さんはテキパキと洗濯物を干していく。
私も慌ててカゴから一枚のシャツを手に取り、パンッと開く。
…と同時に、
ビリッ!と破けてしまった。
「あらあら、何してんだい!」
「すすすみません!!」
やっちまった、どうしよう、と冷や汗をかく。
佐藤さんは破けたシャツを手にとると、タグを見てこう言った。
「ああ、山崎さんのシャツだから大丈夫だね」
その言葉に、私もホッと安堵する。
「なんだザキさんのですか」
「コレは雑巾にでも使えるから、そこ置いといてくれるかい」
「分かりました」
破れたシャツを受け取り、縁側へ置こうと振り向いたその時だった。
縁側に立ちつくしこちらを凝視するザキさんと目が合ったのは。
「いやァァァ!!」
「いやあって、こっちがビックリするわ!自分のシャツ破られた挙句大丈夫の一言で済まされた俺の方が!」
うわ、やっぱり聞こえてたか。メンドくさい。
「明らかメンドくさそうな顔しないでくれる!?」
「はいはい分かりましたよ弁償すればいいんでしょ」
「いや別に弁償までとは言わないけどさ…」
「それもそうですよね、初仕事で緊張してしまっただけですし!」
「やっぱ弁償で」
マジで?
男に二言はなしですよザキさん。
濯物を無事すべて干し終わり、夕飯の支度までの間休憩を貰えた。
ちょうどザキさんが暇そうだったので(本人否定)、少しお話をすることになり縁側に腰かける。その傍らにはザキさんの破れたシャツが佇み、どこか儚げな雰囲気を醸し出していた。
「そういえば、ザキさん。ひとつ質問いいですか?」
「ん?」
「
これがずっと聞きたかった。彼の居場所を今すぐにでも知りたい。
そのために私は江戸に来て、真選組へと入ったのだ。
しかし、返ってきた答えは軽く想定内のものだった。
「カザミナギ?…ごめん、知らないな。なんせ隊士は100人以上いるから全員の名前は把握出来てないんだ」
「…そっか…そうですよね」
小さく溜め息をついたと同時に、一人の男が通りかかる。
「山崎、鈴」
「げ」
「副長」
「鈴てめー今"げ"って言わなかったか"げ"って」
やだな土方さん、被害妄想もほどほどにしていただきたい。
返事はせずにただ目を逸らす。
「お前ら仕事はどうした」
「私は夕方まで休憩貰いました、佐藤さんより直々に。ザキさんは知らないですけど」
「なんかやめてよその言い方。副長、俺もちゃんと仕事片付けましたよ!」
そう言う私たちに、土方さんは「そうか」と小さく頷いた。
「じゃあどっちか使い頼まれてくれねーか」
「あっ私ポチの散歩しなくちゃ。よしポチいくよ」
「おいコラ逃げんな!ポチなんて飼ってねーだろ!」
即その場を離れようと立ち上がった私の後ろ衿を土方さんが掴む。
「女中はパシリじゃないですよ」
「パシリじゃねェお使いだ。鈴でも山崎でもどっちでもいい。マヨネーズ買ってこい」
「だからそれをパシリというんだよ」
「副長命令だ」
「職権乱用はんたーい!」
てかなんでマヨネーズなの!?マヨラーなんですか!?
せめてもの反抗で土方さんの足を踏む。すると頬をつねられた。くっそコイツ容赦ねェマジで!痛い!
地味に踏む力を強くしていくと、頬の痛みも増す。
いってェェェェェェ
「まあまあまあ、やめましょうよ二人とも!こうなったらジャンケンしよう鈴ちゃん」
「ジャンケン?」
ザキさんは「うん」と頷くと、私にだけ聞こえるように耳打ちする。
「だってしょうがないでしょもう。どっちかがパシられるしかないよ」
「確かにそうですけど…」
納得のいかない私だが、ザキさんが「じゃーんけん、」とジャンケンを始める素振りを見せたので、仕方ないと溜め息をつく。
「ポン!」
その結果。
私がグーで、ザキさんがパー。
コレはつまり……?
ザキさんは申し訳なさそうな、けれど明らかに嬉しそうな表情を浮かべた。
「ゴメンね鈴ちゃん、行ってらっしゃい」
「後で覚えてろですよ」
「じゃあ鈴、マヨネーズな。あ、2分の1とかダメだから」
はやくしろ、と土方さんに背を押され渋々廊下を歩き出した、その時。
「あれ?3人揃って何してるんですかィこんなとこで」
「あ、沖田さん聞いてくださいよ!土方さんがパシってくるんです!」
「パシリじゃねーお使いだつってんだろ」
「パシリ?まったくコレだから土方コノヤロー死ねばいいのに」
「オイ今なんつった総悟」
いーえ何にも、と沖田さんは土方さんと目を合わさないままポーカーフェイスで言葉を続ける。
「鈴がパシリでいなくなるってんならしょうがねェ、ザキでいいや」
「…俺?どういうことですか?」
「テレビで変てこペットグランプリってのをやるらしくて、優勝者には豪華賞品があるらしいんでィ。ペットになりなせェ」
………。
沖田さんのその発言に、その場の空気が一瞬にして凍りつく。
ザキさんの顔を見やると、何とも言葉で表現しづらい表情をしていた。ふと目が合う。全力で助けを求める目だ。
「…鈴ちゃん、やっぱり俺がお使いに」
「いってきまーす!!」
「鈴ちゃァァァん!!」
フォーエバーザキ。