どうにか実力至上主義の教室へ   作:祭灯キャロット

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039-040 博愛少女

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 千尋(ちひろ)さんは寮に帰ったけれど、僕は一之瀬(いちのせ)さんに用があったので校門前に留まった。

 

 昨日の一件、そしてつい先程の一件。

 白波(しらなみ)千尋という少女に出会ってからというもの、緒祈(おいのり)真釣(まつり)という人間が()()()()()ように思う。牙も毒気も抜かれてしまったような、なんかそんな感じ。

 これが身内認定というやつだろうか。

 

 待ち人はまだ来ないようだし、ここ数年の僕とここ数か月の僕を振り返ってみる。

 

 自分の異質さを初めて自覚したのは、小学4年生の時だ。

 僕のクラスには病気で休みがちな男子がいて、牛乳やパンやデザートなどの一人一個と決められているメニューがよく余っていた。その度に争奪じゃんけん大会が開催されるのだけれど、僕はその日の気分次第で参加したり不参加だったりした。

 今日は喉の渇くメニューだから牛乳が欲しいなと思って参戦したある日、結局僕は勝てなかったんだけど、その日の勝者でありじゃんけん大会皆勤賞のとある男子にこんなことを言われた。

 

「緒祈がいるとあいこが長引く」

 

 その時は適当に笑って「そんなことないよ」と返した。

 しかし一応気になったので家に帰って父相手にひたすら調べてみたところ、一対一のじゃんけんにおいて僕は約三分の二の割合であいこを出した。僕と母でも同様の結果となり、父と母では三分の一程度であった。

 この時点での自己分析は単純に『あいこの神様に愛された人間』だ。

 

 次に何かがおかしいと気付いたのは小学5年生の時だ。

 この年、僕のクラスの担任は一年間で3回変わり、クラスメイトは8人転校した。

 担任の変更も級友の転校も僕にとっては珍しい事ではなかったので、特に気にしていなかった。しかし世間的にはおかしな話だったようで、僕が所属していた5年1組は呪われたクラスだと学校中、地域中で噂されていた。

 ちなみに転校して行った生徒は僕と仲の良かった人や、あるいはクラスで何らかの役割を担っている人だった。役割というのは学級委員とか、合唱コンクールのピアノ担当とか、運動会のリレーのアンカーとか、そういったものだ。

 この頃には『どうも上手くいかないことが多いなあ』と感じていた。

 

 小学6年生の時、今度は僕自身が転校した。

 新しい学校には半年間しか通わなかったけれど、その間にクラスメイトが2人転校した。珍しいことがあるもんだと話題になった。

 そして僕は、これでようやく理解した。僕がいる所為でこういうことが起きるんだと。

 

 中学校に入る頃には自分と他人を客観的に比較して分析できるようになり、おかげで自分が異質な存在だとはっきり自覚することができた。しかし何がどう異質なのかはよく分からなかった。

 よく分からないから、調べようと思った。

 

 手始めに僕の周囲では定番となっていたクラスメイトの転校を、自分の手で再現してみようと思った。今思えば謎の理論だけど、そうすることで自分が何者なのか、その手掛かりが掴めると思ったのだ。

 そして四苦八苦の試行錯誤の末、一年以上かけてようやく村衣(むらぎぬ)(ひょう)を転校させることに成功した。成功はしたものの、それで得たものは『思ったより時間がかかったな』という至極つまらない感想だけだった。

 中学3年生でもまた一人転校させようとしたけれど、受験勉強で忙しかったのもあって不登校という結果に終わってしまった。得られたものは『時間の無駄だった』という虚脱感だけだ。

 

 結局自分の正体はよく分からないままだった。それでもこれまでの経験を踏まえて、僕は『何事もスムーズにいかない人間』だと一先ずの結論を出した。

 

 さて。

 回想はこれくらいにして、最近の僕のことを振り返ってみよう。あ、これも回想か。

 

 まずは入学する前、不合格からの一転繰り上がり合格。そして届いた女子の制服。

 続いて五月、赤点組を潰そうと思ったら、いつの間にか勉強会に協力していた。

 

 そして鬼門、白波千尋との邂逅。

 僕が彼女に惚れた途端に見事な告白卓袱台(ちゃぶだい)返しを披露してくれた。そして今度はもう恋なんてしないと決めたその日に、一之瀬さんと付き合えとか言い出した。

 

 先程ふと浮かんだのは『僕の決意を覆す方向に物事が進む』という説だけど、これは中々正鵠を射ているのではないだろうか。『決意を覆す』と言うと大袈裟だから、『意思を曲げる』くらいにしておくか。

 

 

 世界は僕の意思を曲げようとしてくる。

 

 

 うん。なんだかカッコいいじゃないか。

 もちろんこれでは説明が付かない過去もあるけれど、こじつけようと思えば不可能ではない。

 身も蓋もない言い方をするなら、昔はまだ僕の性質(キャラクター)が定まっていなかったと言い訳することも出来る。

 

 いやしかし『何事もスムーズにいかない』の方がやはり表現としては適当なのかな……?

 一言で表すのはどうにも難しい。

 

 不幸とか不運とか不遇とか、そういう単純な話でもないんだよなあ。

 想定外の展開になったからといって必ずしも残念というわけではない。最終的には当初の期待以上の成果を得られることもある。結果オーライってやつだ。

 

 ……ちょっと待てよ?

 一言で表すのが難しいなら、それはつまり僕には()()()()()()()()()()()()()ということじゃないのか?

 そう考えると辻褄も――

 

「緒祈くん」

 

 もう少し自己分析を続けたかったのだけれど、名前を呼ばれたので中断する。

 いつの間にか地面に落ちていた視線を上げると、そこには困ったような笑みを浮かべた一之瀬さんがいた。多分千尋さんが「真釣くんと付き合って」とか言った所為だろう。

 面倒なのでそこには触れないようにする。

 

「待っててくれたんだね」

「話したいことがあってね」

「そっか……」

 

 体重を預けていた手すりから腰を浮かす。

 

「歩きながら話そうか」

「うん」

 

 一之瀬さんのしょぼくれた歩幅に合わせ、隣を歩く。寮へと続く並木道には、僕たち以外の姿はなかった。

 

「さっきはごめんね。言い過ぎた」

「ううん。おかげで千尋ちゃんにしっかりと向き合えたから」

「そう……じゃあ、次は僕と向き合ってもらおうか。と言っても告白するわけじゃないけどね」

 

 一之瀬さんは一瞬だけ足を止めて、またすぐに歩き出した。

 僕は止まらなかったから、二人の間にほんの少しだけ距離ができた。

 

「千尋さんから聞いたよ。僕に関する噂の真偽を、一之瀬さんは随分と気にしていらっしゃるそうで」

 

 そんなつもりじゃなかったんだけど、なんだか嫌味な言い方になってしまった。

 一之瀬さんは俯いてしまう。

 

「……ごめん」

「どうして謝るの?」

「それは……友達なのに、疑っちゃって」

「僕は別に一之瀬さんを責めてるわけじゃないよ。クラスを率いるリーダーとして、何も間違ったことはしていないんだから」

 

 もし逆の立場だったなら、僕も同じようにしていたはずだ。

 

「で、でも!」

「でも?」

「友達としては、間違ってたと思う」

 

 その言葉に僕は小さく溜息を溢す。

 

 優しいね。優しすぎるね。

 そりゃあ千尋さんも不安になるわけだ。

 

「僕が本来の入学者を蹴落としたというのは完全な作り話だよ。噂を流した()()()()の妄想だね」

「や、やっぱりそうだよねっ」

「ただ、僕は中学時代に同級生を一人転校に追い込んでいるし、不登校にも一人追いやっている。そういう人間だ。それは間違いない」

「えっ……」

 

 一之瀬さんが例の噂のことを隠したまま僕と友達をしていたように、僕もまた自分の人間性を隠したまま一之瀬さんの友達であろうとした。お互い様ってやつだ。

 でもそんな上辺だけの仲良しごっこは、もう終わりにしたい。

 

「軽蔑した?」

「や、そんなことは……」

 

 博愛主義者の彼女には少々酷な話題だろうけど、だからと言って逃げるわけにはいかない。逃がすわけにもいかない。

 

「正直に言うとね、一之瀬さんたちとは打算込々で仲良くしてる部分もあるんだよね。最初は非常時に助けてくれる生命線が他クラスに欲しかったから。今はAクラスを目指すための戦略として。あと最近は、星之宮先生と対峙するためのカードとしてというのもある。あはは。純粋な友情とは程遠いよね」

 

 こうしてまとめてみると、我ながらなんと利己的なことか。こんな奴がよく『告白には真正面から向き合え』だなんて言えたものだ。

 

「申し訳ないんだけど、この打算抜きで一之瀬さんと仲良くするってのは僕には難しい」

「それは……クラスが違うんだし、仕方ない、のかな」

 

 もし一之瀬さんと同じクラスだったらと想像してみる。

 さっき挙げた打算が全部無かったとしたら、そもそも彼女に近付きすらしなかったかもしれない。でも、もっと純粋な友情を築くことも出来たかもしれない。

 ……無意味な仮定だな。

 

「なんでこんな話をしているのかというとね、一之瀬さんに決めてほしいんだよ。僕たちの今後の関係を」

「関係……?」

「醜い部分まで全て認めあう『友達』か、互いに互いを利用しあう『同盟』か」

 

 本当は『敵対』と『無関係』という選択肢もあるのだけれど、ここは我が友人への配慮を見せておく。

 

「もし『友達』を選ぶなら今回みたいに変な噂が流れた時、一々それに惑わされないでほしい。僕が碌でもない人間なのは事実だから、相当難しいだろうけどね」

「……」

「自信がないなら友情なんかは抜きにして、『同盟』を選んでくれればいい。利害関係だけの分かりやすいお付き合いだ」

「そ、そんな寂しいこと言わないでよ……」

 

 一之瀬さんとの間で、仲が深まるようなイベントが何かあったわけではない。チャットのやり取りはよくするけれど、休日に遊びに行くほどではない。

 それなのに僕と友達でなくなることを「寂しい」と言ってくれた。

 嬉しくはあるけれど、多分彼女は誰に対しても()()なのだろう。

 

 それこそが彼女の魅力であり、不安の種だ。

 

「結論はすぐに出さなくていいから、よく考えてほしい。須藤君の件で色々やってくれてるところ悪いけど、僕にとっては正直こっちの方が大事な問題だから」

「……うん」

 

 彼女の性格を考えると、ほぼ間違いなく『友達』を選んでくれるだろう。まあ別に『同盟』を選んでくれても構わない。

 この会話の目的の一つは、誰にでも無条件に友愛を向けている一之瀬さんに、人との関係性や距離感について一度よく考えてもらうことだ。

 

 Bクラスのリーダーがただの博愛主義者では困る。そんなんじゃ()に簡単に潰されてしまう。

 僕が2000万でAクラスに移籍するとき、そこは一之瀬さんのクラスの予定なのだ。まずはそこまで上がってもらわないと。

 

「一之瀬さんが納得できる答えを出せるまで、僕は待つから」

 

 寮が見えてきた。このお喋りもそろそろ終わりだ。

 

「ごめんね。本当は即断で『友達』を選ぶべきなのに」

「いやいや、大事なのは結論よりもそこに至るまでの過程だから。急ぐ必要も焦る必要も、気に病む必要もないよ」

「……千尋ちゃんが言ってた通りだ。優しいね、緒祈くんは」

「だとしても、優しいだけの人間ではないよ」

「うん。そういうところを考えろって話だよね」

 

 僕の意図が伝わったようで何よりだ。

 後は一之瀬さんの中で処理してくれればいい。

 

「そういえばさっき星之宮先生と対峙するって――」

「例の噂の件でね。優先度は高くないから気にしないで」

 

 僕にとっての優先度は高いし、後々一之瀬さんに協力をお願いする可能性は大いにある。

 でも今は黙っておく。余計なことに頭を悩ませてほしくない。

 

 ……余計というなら千尋さんが言っていた『恋のキューピッド計画』だな。約束した以上、しばらくは大人しくしてくれるはずだけど。

 こればっかりは彼女を信じるしかない。

 

 程なくして寮に着いた。

 斜陽がロビーを橙に染めている。

 

 僕の部屋は3階なので普段は階段で行くのだけれど、今日はエレベーターを使う人が隣にいるので一緒に乗り込む。

 彼女の部屋は16階らしい。

 

「私、ちゃんと考えるから」

「うん。よろしく」

 

 エレベーターを降りる前に、一度彼女の方を振り返る。

 

「僕はともかく千尋さんは一週間しか待ってくれないみたいだから、そのつもりで」

 

 一瞬何のことか分からなかったようだけれど、すぐに思い至ったようだ。

 今日はずっと暗い表情だったけれど、最後に少し笑ってくれた。

 

「あははっ。りょーかい」

「じゃあ、また」

「うん。またね」

 

 

 

 040

 

 

 

 翌日、土曜日。

 

「急に悪いね」

「気にするな。然程忙しい身でもない」

 

 今日は僕の部屋に神崎(かんざき)君を呼んでいた。昨日一之瀬さんにしたのと同じ話をするためだ。

 

 と言っても彼に関してはそこまで気にしていない。というか、一之瀬さん以外の相手なら本来そこまで気にすることでもない。

 昨日あれだけ丁寧に話したのは彼女が人並み外れた博愛主義者だったからだ。人間関係をある程度割り切って考えられる人には、もっと雑な説明でいい。

 

 というわけで神崎君には、僕は本当はこんな人間ですよという自己紹介と、こんな目的があって近付いていましたよというネタバラシを簡潔に行った。

 その結果――

 

「こちらにも色々と思惑はあったからな。敵対するつもりがないのなら、それでいいだろう」

「じゃあこれからも仲良くお友達ってことで?」

「ああ。それで構わない」

 

 山も谷もなくあっさりと終わった。

 ちょっとあっさりしすぎな気もするけれど、無意味に長引くよりはいい。

 

「神崎君は午後も暇だったりする? 僕はちょっと出かけるつもりなんだけど、もしよかったら一緒にどう?」

「ああ、問題ない。どこに行くんだ?」

「カメラシティだよ。欲しい物というか、値段を知りたい物があってね。あ、でもその前にお昼食べに行こっか」

「そうだな。いい時間だ」

 

 そんな会話もあって、二人で出かけることになった。

 これなら部屋じゃなくて最初から外で落ち合えばよかったかもしれない。まあ、別に何か損をしたわけでもないし、いっか。

 

 外に出ると7月なだけあって中々の熱気だった。

 

 現在時刻は11時30分。

 今日は雲が出ないという予報なので、気温はこれからまだまだ上がる。

 

「これは暑いねえ。どうする? 無理して付いて来なくてもいいんだよ?」

「……いや、大丈夫だ」

 

 ちょっと迷っての返答だった。

 真夏日の並木道。碌に会話をする気になれないまま黙々と、いつもよりいくらか速いペースで歩く。

 

 10分程して、大型複合商業施設ケヤキモールに到着する。

 クーラーの風が気持ちいいね!

 

 でもこれからの季節、屋内外の温度差に体調を崩さないよう注意が必要だ。僕はあんまり体が強くないから。

 期末テスト前に風邪ひいたんじゃあ笑えない。

 

 上に着る物を一枚常備しておくべきかなあとか考えながら、食事エリアに向かう。

 

「あらあら」

 

 お昼には丁度良い時間なのだけれど、あまりにも丁度良すぎたようだ。

 

「どこも混雑しているな」

「本当だね。いつもこうなの?」

「俺もそんなによく来るわけではないが、これは流石に多すぎると思うぞ」

「今月のポイント支給がまだの一年生は、たとえ所持ポイントに余裕があってもなんとなく出費を控えそうなものだけど――」

「それを見越した上級生が大勢来て逆に普段より多くなった、と言ったところか」

「なるほどねえ」

 

 昼食を一旦諦め、僕の目的を先に済ませることにした。

 

 ケヤキモールを出て少し歩くと、大きな青い看板が見える。家電量販店カメラシティだ。

 その隣には因縁のシマネガーデンの姿。結局一回も入ったことはない。今後もおそらくないだろう。在学中に、島根県のアンテナショップに用事ができるとは思えない。

 

「さむっ」

 

 カメラシティの中は、ケヤキモールより一段強く冷房が効いていた。やっぱり上に一枚必要だなこりゃ。

 

 入り口そばの館内マップで、目当ての物がどこにあるか当たりを付ける。

 一つはAV(オーディオ・ヴィジュアル)機器のエリアだろうけど、もう一つが分からない。カメラのエリアでいいのかな……? 防犯エリアがあればそこで間違いないんだけど。

 ま、適当に見て回るか。

 

「何を探してるんだ?」

「行けば分かるよ」

 

 まずはエスカレーターで3階に上る。

 携帯音楽プレーヤーとかその辺りにあると思うんだけど……

 

「あ、これこれ」

「ボイスレコーダーか」

「イエス」

 

 星之宮先生に挑むにあたり、これは絶対に欠かせない。

 

 置いてあるのは4種類。

 一番高いものだと1.5万もするのか。今の僕にはギリギリだな。次に安いのが8千、その次が6千、そして一番安いものが3千だ。

 

 果たして3千ポイントのボイスレコーダーはどれだけ使い物になるのか。とりあえず一つ買って性能を確かめよう。場合によっては策を練り直す必要がある。

 

「ちなみに神崎君って既に持ってたりする?」

「いや、まだだな」

「まだということは、いつかは買うつもり?」

「必要になればな」

 

 少し考えてみる。

 後で千尋さんには協力を頼むつもりだったけれど、神崎君にも力を借りようかな? でも借りるのは力ではなくポイントなんだよな。うーん……。

 

「ボイスレコーダーがどうしても必要だが手持ちのポイントでは厳しい、ということか?」

「まあ、そんな感じかな」

「借りるならポイントよりもボイスレコーダー自体の方が互いに抵抗がないだろう、ということか?」

「さすが名探偵」

 

 見事な推理を見せた神崎君は、1.5万の高級ボイスレコーダーを手に取った。

 どんな物か気になってちょっと手に取ってみた――という感じではない。

 

「え、ええっ! まさか!?」

「これは俺が俺の為に買うものだ。使わない時には()()に貸すかもしれんが、それだけのことだ。気にするな」

「そう言われても、話の流れ的に僕が買わせたみたいじゃん」

「なら先行投資と思ってくれ。緒祈には友人として、同盟者として期待している」

「……その言葉は嬉しいけど、なんでそんなに評価してくれるの?」

「少なくとも中学時代の俺には、同級生を転校させるなんてできなかった。その点だけでも十分評価に値するだろう」

「うーん、複雑ぅ」

 

 人間性は全く評価できない出来事なんだけどね、それ。一見まともそうだけど、神崎君も実はちょっと変な性格してる?

 まあ協力してくれるなら渡りに船だ。甘えさせてもらおう。

 

 Bクラスの神崎君は一番高いものを、Dクラスの僕は一番安いものを持ってレジに向かった。

 

 彼が今どれくらいのポイントを所有しているのか気になるところだけれど、それを聞くのはさすがに躊躇われる。

 僕の10倍くらいあるんだろうな。いや、もっとか。

 

 会計を終え、レシートに印字されたポイント残高を確認する。

 星之宮先生対策が完了する頃には3桁になってそうだな。やっべー。

 

「じゃあ、ご飯行こうか。混雑も少しは落ち着いたでしょ」

「そうだな」

 

 さっきより数段暑くなった炎天下を歩き、ケヤキモールに戻る。

 昼食を終えた人が店から出てきた所為か、館内はさっきより賑わっているように見える。

 

「おっ」

「うん?」

 

 神崎君が何かを見付けたようなのでその視線を辿ると、おやおや。

 ドーナツ屋さんの中に一之瀬さんと、見知った顔がもう一つ。

 

 フラれた翌日にその相手とデートとはね。

 やるじゃん千尋さん。

 

 

 

 

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