僕の個性はサービスマン 作:ちみっコぐらし335号
遅筆なのに軽率な二次創作投稿しちゃうマン。
前作に引き続き今作も頭おかしい(確信)。
人間はもっと、ゲテモノに転生してしまった際の対処法について、積極的に論じるべきだと思う。
失礼、僕の名前は
何てことはない。ただの転生者だ。
神様にも会わなかったし、トラックに轢かれたりもしなかったが、転生者なのである。
記憶は……まあ、この通り。
転生などと何を馬鹿な、と思うかもしれない。
しかし僕にとって状況は大変深刻だ。
僕が転生したのは、元々暮らしていた現代日本ではなかった。
一応日本ではあるのだが、現代ではなかった。もっと言うならフィクションの世界だった。
僕のヒーローアカデミア。
前世にそんな作品があった。
詳細は省くが、『敵《ヴィラン》』と呼ばれる危険人物が暴れたり、それを倒す『ヒーロー』がいたりする世界である。
危なっかしくて嫌になるが、それはそれとしてもっと重大なことがある。
この世界、『名は体を表す』のだ。それも、大袈裟でも何でもなく、ガチで。『個性』だなんて特殊能力めいた力が大多数の人に宿っているためか、人間のカタチの幅が広い。
馴染み深い人間の姿に『何か』をプラスアルファした者から、明らかに人の形を逸脱した者まで千差万別。文字通り『個性的』な人間が多いというわけだ。
無論、全部が全部というわけではない。極々普通の人間もいる。
だが、奇妙奇天烈珍妙な姓名の場合はまず間違いなく、名は体を表している。名字が『面構』で名前に『犬』が入っている人は、本当に顔がまんま犬だし。
さて、ここで問題となってくるのが僕の名前なわけだが。
もう一度言おう、袋皮奉仕郎である。『袋』で『皮』で『奉仕』だ。名字もヤバければ名前も大変
そして案の定、僕も『名は体を表す』類の人間だった。
体格は
それは、一言で言い表すならば――――――白い布。
身体全体に覆い被さる白い布のような物が、身体の一部分として存在しているのである。
パッと見は、出来の悪いハロウィンの仮装。まるで、場当たり的に白いカーテンを被り、オバケのフリでもしているかのようだ。
この白い布(正確に言うならば
頭部には、目や口などの顔パーツを出す穴。頭頂部よりやや後方寄りに髪の毛を出すスペースも若干存在する。
ここまで聞いて、普通の人は「さぞかし身動きが取り辛かろう」と思うはずだ。
が、そんなことはない。
身体のパーツとして認識されているからなのか、布(擬)は薄皮が張り付く感覚で顔に密着しており、視界は良好だ。穴の端がチラつくこともほとんどない。
また、白い布から両腕は出ているので、細かい作業にも支障はない。
ないのだが…………。
僕の姿と『個性』には、大きすぎる問題点がある。
……ここまでの説明で、気づく人は気づくかもしれないが。
白い布から手足が出た見た目の、あるキワモノキャラクターをご存知だろうか。
そのキャラクターの名は――――――サービスマン。
ボボボーボ・ボーボボという作品に登場した、言ってしまえば『変態』だ。
奇行の目立つキャラは、ギャグ作品には多々登場するが、コイツのインパクトはその中でも群を抜いている。
コイツは――――サービスマンは、白い布の下に何も着ていない。つまりは、裸だ。
そしてコイツは、手練手管を駆使して、他人に向けて白い布の中身を見せる傍迷惑な『サービス』を行うのだ。
布を捲ったり、肩に飛び乗ったり…………誰得である。いや、ギャグとして見れば得する人間はいるのだが、当事者になると全く笑えない。
オマケに『個性』までその影響を受けたと言わんばかりの――――いや、今は置いておこう。
ともかく、僕の今生での
このまま順当に歳を重ねれば、アニメ版サービスマンそのままの容姿になるだろう。全く嬉しくない。
幸いに、と言うべきか、額部分に『サービスマン』などという文字は存在しない。
だがまあ、そんなものは焼け石に水、単なる誤差だ。
なきたい。
◆
僕の『ドキッ☆転生個性ガチャ大爆死事件』から早いもので十五年が経っていた。
まあ、三歳頃までの記憶はほぼないので、体感としては十二年程度だが。
ありがたいことに、僕は『個性』さえ大っぴらにしなければ、ただの見た目が変な人間で済むので、人間関係は比較的良好な部類だと思う。
友人もそれなりにはできた。よく友人を作れたなぁと自分で思う。
どうもこの世界、『個性』の内容で虐められることはあっても、『個性的な見た目』で虐められることは少ないようだ。
原作主人公のことを思うとどこかモヤモヤするが、僕がごちゃごちゃ言ったって仕方ない。
そんな外見ネタキャラな僕も中学三年生。そろそろ進路について本格的に考える時期だ。
僕はいい加減通い慣れた通学路を歩きながら唸った。
前世であれば、高校でそこまで真剣に悩む学生も少なかったが、今生ではそうもいかない。
専門的学習の低年齢化、とでも言うべきか。あるいは社会的信頼性の二極化か。
下手な高校を選ぶとその後就職にありつけない、なんて事態が起こり得るのだ。
やっぱり転生なんてフ●ック。クーリングオフさせろよ。無理なの知ってるけど。
因みに僕が今生の高校選びで重視しているのは、学力と学歴だ。
身も蓋もないが、しょうがないじゃないか。酷いネタ『個性』なんだから。
ヒーローアカデミア世界の日本で有名な高等学校というとやはり――――――
「雄英か、士傑か」
知名度的にも学力的にも、この二校が圧倒的だ。
関東圏であれば雄英高校、関西圏であれば士傑高校、というぐらいそのネームバリューは強い。
この世界の日本人なら、誰もが一度は入学を夢見るだろう。
その人気も、ヒーローになるための『ヒーロー科』ありきな気もするが、社会的信頼性という意味でもこの二校は抜きん出ている。
例え普通科や経営科であっても、出身者は一目置かれるのだ。
入学倍率三百倍なんて話もある。
過酷な受験戦争を勝ち抜けば、それに見合った将来が約束される。この二校に関しては、そう思わせるだけの力があった。
一家五人で神奈川県に住んでいることを思えば、普通は雄英高校なのだろうが…………。
「どうするかな…………」
「――――その二校で悩むとは、随分と贅沢な悩みだな」
「っ、聞いてたのか」
振り向けばそこには僕の十年来の親友がいた。
その男の名前は――――
彼は頭がピンクのグルグル巻きなだけの、ただの人間だ。
…………失礼、彼も僕の同類である。ネタキャラ外見的な意味で。
彼の見た目も、ボボボーボ・ボーボボに登場するキャラクターに酷似している。
その名はソフトン。頭部がまるでマンガに出てくるテンプレ的大●のようになっているキャラクターである。
本人の名前、及び自己申告によると、彼の頭はソフトクリームとのことだが………………別の物に思えてならない。
なお原作ではチョコレート味のソフトクリームだったが、アニメ版では諸々の都合によって
ここで安直にバニラ味とかにしない辺り、スタッフのこだわりが感じ取れなくもない。…………親友の顔として見ると、バニラ味にしてあげてほしかったけど。
まあサービスマンとは違い、ソフトンは主人公サイドの人物であり、あのクレイジーな作品の中では常識的な方だ。『バビロン真拳』の使い手でもあり、ネタ以外でもかなり強い。
勿論、僕の親友の反太は『バビロン真拳』なんて使えないが、良識を持っており頼りになる男だ。
「お前ならどちらでも目指せるだろうさ」
反太は指の間に挟んだプリントをひらひらと揺らした。
「原因はこれか?」
「まあね」
反太が持っているのは、今日学校で配られた進路希望の調査用紙だ。
まだ決定ではないとはいえ、将来に関わる大事な選択。生まれた時点で蹴っ躓いている僕にとって、ここでの選択のミスは今後の人生に響く。決して妥協はできない。
「一体何を悩んでいるんだ、奉仕郎?」
「至極、個人的な懸念さ」
「そうか」
「ああ」
僕は肩を竦めた。
例え親友だろうが、こればかりは反太に言うわけにはいかない。
というか「原作がいつ始まるのかが気になっている」だなんて言えるわけがない。頭の具合を疑われそうだ。
そんな心配されたら僕は泣くぞ、間違いなく。
僕が原作の開始時期を気にしているのには一応理由がある。
まず原作が始まると、ただでさえ前世よりデンジャーな治安が加速度的に悪化する。特に物語の舞台となる雄英高校周辺は最悪だ。
平和で平凡に、人並みの幸福を享受したい僕にとって、原作主人公世代の雄英は避けなければならない。ヒーロー科なんて言語道断だ。
細かいところを注文すると、原作の流れによっては今後の日本を左右しそうなので、情報はそれなりに欲しい。………が、かといって自分から虎穴に入るほどでもない。
危険満載の原作時期は、関東圏からできるだけ離れたいところだ…………まあ、高望みはしないが。
それに、将来の安定的な職業とのトレードオフも嫌だし。一年か二年でも世代がズレていれば、そこまでヤバげなトラブルにも巻き込まれないだろう、多分。
いや、これも見積もりとしては甘い気がするが。
西の士傑高校にしたって、生徒が
うーん、結局どちらも安全じゃないという…………。
でもこれ以外の学校は、この二校と大きく水をあけられているからなぁ…………。
学歴か、安全か。嫌な二択を迫られている感覚だ。何とか両立できないんですかね。無理か、無理ですよね。うん知ってた。
主人公の周りはフラグが乱立してるってもう当たり前だからなぁ! サ●ク!
…………ともかく。僕が覚えている限り、原作時期を測るタイミングは三つだ。
一、原作の最初を飾った『ヘドロ事件』。
一、どこかのゴミだらけだった浜辺が綺麗になる(=主人公の修行の完了)。
一、オールマイトが雄英高校に赴任する(=主人公の雄英高校ヒーロー科入学)。
詳しいことは覚えていないが、雄英受験の十ヶ月ほど前にヘドロ事件があったはず。主人公の修行期間が確か十ヶ月だった。雄英高校の受験日から逆算するに、ヘドロ事件が起こったのは四月頃。主人公の学校でも進路希望を提出させていたから、そこまでズレてはいないと思う。
ヘドロ事件はかなり大々的に扱われていたようなので、原作が始まればニュースでわかる。
現在、四月も半ばにさしかかっている。
もしも僕が主人公と同世代なら、既にヘドロ事件が発生していてもおかしくないのだが…………もしや、僕の方が年上だったりするのか? だとすれば雄英でも大丈夫か? 主人公の先輩は『ビッグスリー』と呼ばれる三人以外はほぼ出番がないし。
どっちみち、ナンバーワンヒーローのオールマイトがまだ引退していない時点で、これから日本全国の治安が悪くなっていくことは確定している。
であればそこまで雄英を敬遠することもない、のか?
――――いや、原作主人公とその仲間たちを信じるんだ。
彼らならきっとすぐに日本に平穏をもたらしてくれる、と――――。
「………………………………まあ、雄英でいいか」
「そんな風に言えるのはお前ぐらいだろうな…………」
反太の溜め息が聞こえてくるようだ。
「これくらいしか取り柄がないからなぁ」
生まれ持った『個性』がハズレもいいところだったので、将来のために勉強するしかなかったのである。
勉学に関しては前世の記憶というボーナスがあった上に、余人よりも早く始めたので、それなりの知識量にはなっているだろう。
一部の理科や社会を除けば一度は学んだ内容だし。社会にしたって歴史は途中まで一緒だ、地理公民は面倒だったけど。
「雄英に行くなら応援するぞ」
「サンキュー」
普通科なら今のままでも十分合格圏内だろう。発想力が貧弱なのでサポート科は無理そうだが、経営科ならば選択肢としてはアリか。
帰ったらヒーローの経営実態について少し調べてみよう。経営者の年収や休日数や安定性が良ければ、そちらの方向も悪くないかもしれない。
そんなことをぼんやりと考えつつ、僕は反太と別れた。
で、
「兄さん! ヒーローを目指すというのは本当ですか!?」
何で身に覚えのないことで家族に詰め寄られているんですかね。
家に帰って早々、ものすごい剣幕で僕を出迎えたのは
白い布の上からピコピコ覗く耳っぽい物と、コロコロ変わる布上の表情が愛らしい、僕の一つ下の妹である。
…………エジプト神話に登場するメジェド様に瓜二つだけど、気にしてはいけない。
あと中身が某女ファラオっぽかったりなんてことはない、ないったらない。
「ははは、奉仕郎は頭がいいからなぁ」
新聞を脇に抱えながら、脳天気に笑っているのが僕の父親である
低い等身に身体全体を覆う白い布と、まるでどこぞのマスコットキャラクターのようだが、一家を支える立派な大黒柱だ。
…………オバ●のQ太郎にしか見えないけど、突っ込んではいけない。
「あらあら、今夜はお赤飯かしらね」
父の後ろでのほほんとしているのが僕の母親のドラ子。
旧姓である
…………ドラ●もんと見紛うフォルムとカラーだが、気にしたら負けだ。
というか何で黄色のド●ミちゃんじゃないんだ。性別的に違和感ががが。
『ヒーローになれなかったらぬっころす』
威圧感を発しながら『個性』で看板を取り出したのが我が姉、
白い布を被ったペンギンに近い容姿。『個性』の影響でほとんど喋らないが、家族の誰よりも雄弁だ――――主に暴力的な方面で。
…………某大江戸人情コメディのエ●ザベスとクリソツだが、当然何の関係性もない。
「ま、待って! 何の話!?」
ヒーローなんて、僕から最も遠い職業だぞ!? どうしてそんなことになってるんだ!?
玄関の思わぬ人口密度に辟易しつつ、急いで理由を問う。
「雄英に行くと聞きましたよ! もっと早く言ってくれれば良かったのに!」
ヒーローに憧れを持っているからだろう、「応援します!」なんて期待に満ちた声を上げた。
違う。
確かに雄英だけど、ヒーロー科じゃない。
「ていうか誰から聞いたのさ!?」
「
美由…………って、反太の妹か!
思わぬ情報の出所に僕があんぐり口を開けている間にも、周りは勝手に盛り上がっていく。
「これで合格すれば、一族で最初のヒーローの誕生だな」
「あらやだ、奉仕郎なら合格するに決まってるじゃない」
「それもそうか」
さも嬉しそうに言葉を交わし合う両親。二人ともスマホと家電の受話器を片手に興奮した様子だ。ピポパとボタンを押す音が聞こえる。
え、ちょ、誰に連絡取ってるの!?
――――誤解です、僕はヒーロー科志望ではありません!
しかし、そんな風に否定する隙もなく畳み掛けられる。
「合格確定だなんて…………さすが兄さんです!」
妹からの視線が眩しい。そんなキラキラした目を向けないでほしい。
だから誤解なんだってば!
何とか勘違いを正そうとするが、直後ぬぅっと眼前に何かが差し込まれた。
これはまさか…………。
『おう、いっぱい稼いでこいよ』
想像通り、姉の『発言』が文字となって踊っていた。
姉の看板からは鬼気迫るプレッシャーをひしひしと感じる。
――――あ、これ誤解だって言ったらボコボコにされるやつだ。
この場に僕の味方はいない。「ヒーロー科志望ではない」と言える雰囲気ではない。血の気が引いていくような感覚がした。
待って、本当に待って。
不意にスマホが振動した。もしやと思いアプリを立ち上げると、やはり反太からのメールだった。
そうだ、反太からの口添えがあれば、コラテラルダメージは回避できるかもしれない。まだ挽回のチャンスはある!
僕は
文面は簡潔だった。
『すまん、お前が雄英志望だと美由にバレた』
ふむふむ、なるほど。
そこから美由ちゃんに「雄英志望=ヒーロー科志望」だと思われた、と。
で、それがうちの召慈衣経由で家族全員に伝わった、と。
兄妹二人で応援することになったから、
ほほう。
よし、よくわかった。
「反太ォォォォォォォオオオッ!!」
――――――お前のせいかッ!!
僕の魂からのシャウトが、近所迷惑な音量で木霊した。
この世界のヒーローとは、主に『個性』を使った犯罪者『
一般的な印象はどうあれ、警察のお手伝いさんのような職だと思えばいい。
就くためには資格が必要で、ヒーローを目指す『ヒーロー科』はどの学校でも大人気だ。ヒーローは何といっても、今の時代の花形職業だから。
そして、僕の個性は――――――『サービス』。
簡単に言うと、白い布状の物の下に隠れている下半身の『あの部分』を晒すことで相手を硬直させる、犯罪者一歩手前の変態的な『個性』である。
…………こんな『個性』でヒーロー目指すとか、マジかよ!?
◆
なお、三日後テレビでヘドロ事件が報道されたことをここに追記しておく。
ははは………………主人公と同世代だったとか…………。
しんだな、これ。
なお反太くんにも何科志望か伝えていなかった模様。
■
■ 個性:サービス
不可視化・フラッシュ・妨害電流からなる複合個性。布を捲りあの部分を晒すことが発動のトリガーとなっている。脱げば脱ぐほど効果アップ。
その視覚的なダメージ()は計り知れない。
使えば相手の動きを精神的にも肉体的にも止めることができるぞ!!
袋皮's布:白い布のような性質だが、身体の一部で皮の一種。捲れるが剥がし取ることはできないぞ!
袋皮's身体:布で隠れているが、ごく一般的な体つき。これから頑張って鍛えよう!
袋皮's髪:布の小さい穴から一束だけ出ている。先端は髪ゴムで結んでいる。
袋皮's顔:顔のパーツごとに布に開いた穴から見えている。ほぼ布と一体化しているような状態だ!
袋皮'sアソコ:『個性』のおかげで全く見えないぞ! 安心して『個性』を使うんだ奉仕郎くん!