僕の個性はサービスマン   作:ちみっコぐらし335号

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 昨日の日間短編四位、ルーキー日間十三位ってマジっすか(驚愕)
 しかもさっき見たら短編週間十五位入ってたし(ガクブル)
 好みの作品探そうとランキング見てたら、自作見つけた時の何とも言えないこの感覚

 嫌いじゃないぜ(白目)



02.姉の指導はスパルタン

 

『ペース落ちてんぞ。さっさと終わらせろ』

 

「ちょっ、文字見えな、確認できてないから殴るのは待っ――――――ゴフッ」

 

『量倍にすんぞ。しゃべってないで動け』

 

「り、理不尽なこと書いてあるだろ絶対――――――って痛い痛い! 姉さんの『個性』、そんな攻撃的な使用法じゃないでしょ!?」

 

『九割コロコロで勘弁してやる』

 

「あっ、た、タンマ! 死ぬッ、そこ殴ったら死んじゃうぅぅぅぅぅうう!!」

 

 

 

 

 

 誤解と勘違いの四重奏(カルテット)からのウルトラCで、僕が雄英高校のヒーロー科を受験することになってから早一ヶ月。

 

 僕の意思がほぼ介在しない進路調査のプリントを提出したところ、先生やクラスメイトからは驚かれた。

 が、最終的に温かい励ましの言葉を数多く頂戴した。

 その大多数からは「袋皮(ふくろがわ)は頭良いから『個性』もきっとすごいんだろ、絶対ヒーローになれよな」みたいなことを言われた。

 …………うん、確かにすごいっちゃすごいよ。多分みんなが想像しているものとは百八十度ベクトルが違うけど。

 

 で、あれから僕は毎日(エリザ)からの凄まじい折檻を受けていた。

 違った、スパルタな猛特訓を受けていた。

 

『ヒーローは身体が資本だ。なのにテメーの身体は貧弱すぎる』

 

 ひと月前、そんなもっともらしいことを看板に掲げたのは、我が姉絵利覚(えりざ)

 彼女の個性は『発言看板』。話そうとした言葉が書かれた看板を作り出す『個性』だ。

 ちなみに文字の画数が少ない方が看板を作りやすいらしい。作った看板は姉本人が回収するまで残り続ける。

 

 それにしても、見た目も『個性』も銀●のエリ●ベスそっくりだな、ちくせう。神様の悪意を感じるぞ。この世界に神様いるのか知らないけれども。

 

「貧弱すぎるとか言われても…………」

 

 元々ヒーローになるつもりなんて毛頭ございませんし。今だって逃げられるなら逃げたいし。

 

 後ろ向きな気持ちで呟いた僕の前に、新たな看板が差し出された。

 

『だからこれから鍛えてやる』

 

「えっ」

 

 誰が、誰を?

 

 ポカンとしていると、(アゴ)の下にグイッと先ほどの看板をねじ込まれた。

 

『わたしがお前をだ、覚悟しろよ』

 

 姉の手元には新しい看板が出現していた。

 心なしかいつも無表情な姉が(わら)っている気がする。

 

 ――――ヤバい。

 そう(ささや)いた僕の直感は、正しかった。

 

「ガッ、ゲホッ………………し、しぬかとおもった…………」

 

『そらヒーローは命がけだからな』

 

 息も絶え絶えな僕に、姉は白々しく看板を見せつけた。

 原作の燃えるシチュエーションで聞いたような台詞が台無しである。僕はげんなりした。

 

『クールダウンしたら次腕立てな。今日はわたしが乗ってやる、喜べ』

 

「ね、姉さんの体重って確か召慈衣(めじえ)より二十キロぐらい重ぃぃィィイ!?」

 

『そのきたねぇ口閉じろや愚弟』

 

「さっ、サーイェッサーッ!!」

 

 受験勉強も並行しつつ、姉さんのしごきに耐える生活。

 

 たったのひと月で僕はグロッキーになっていた。

 

 僕の修行と称した暴力の雨霰が激しいことも勿論ある。

 妹の召慈衣を始めとした周りからの期待に、胃がシクシク痛むことも関係している。

 

 しかし何よりも致命的だったのが、原作主人公と同世代という事実が判明したことである。

 ヘドロ事件があと数日早く起きていれば、まだギリギリ回避できたのに……! 恨むぞヘドロォ!

 

 これから原作という嵐の中に飛び込むようなものだ。揉まれればそりゃ(たくま)しくなるだろうが、僕はそんなこと望んじゃいない。

 普通に働いて、それなりに裕福な暮らしができればそれで満足なのだ。『個性』だって、もっとありきたりなものが良かったのに。

 

 しかし、家も学校も、僕の所属する集団内の外堀を埋められてしまった。「今から変えます」なんて、とてもではないが言い出せない。そう、僕はチキンなのである。

 もう、いっそ『個性:チキン』とかでいいのに。変えられない? 無理か、そっかぁ…………。

 

 実技試験でわざと手を抜くことも考えたが、バレたら姉に抹殺されるのは明白だった。

 姉はあれで顔も広く、地味にハイスペックだ。僕と同じ試験会場だった受験生を探し出し、買収なりして聞き出すぐらいのことはするだろう。

 そこで「僕がただ突っ立っているだけだった」とでも判明したら――――――想像するだに恐ろしい。

 

 もしくは物理的ではなく、社会的に抹殺しようとするかもしれない。むしろ、そちらの方が僕に効く。

 知り合いに僕の『個性』を事細かに暴露するとか。ネットに僕の『個性』の仔細を晒すとか。

 そんなことされたら軽く死ねるぞ。

 

 僕に残された活路はただ一つ。

 

 雄英の実技試験で思いっきり目立ち、そして雄英サイドから『ヒーローとして不適格』だと言い渡されること 。

 

 一体どういうことか。何、単純な話だ。

 いくら懐の広い雄英高校ヒーロー科とて、ヒーローとしてデビューすればイメージダウンを免れないような『個性』の持ち主は入学させないだろう。

 いや、きっとそうに違いない。

 

 …………体育祭で脱げちゃった先輩もいた覚えがあるが、それはそれ。

 あれは『個性』のコントロールが上手くできなかったがための不可抗力だったはずだし。『個性』自体に規制が必要な類ではないので除外。

 

 だからまずは実技試験で目立つ。確実に目を付けられるように暴れまくる。

 そして「こいつには問題がある」と思わせられれば僕の勝利だ。

 

 名付けて『お祈り作戦』。

 

「キミの個性はすごいね。でもウチとは方向性がちょーっと違うんじゃないかな? 他で成功できるようにお祈りしてるよ☆」

 

 これだ。これで完璧だ。

 前世の就活で幾度となく涙を飲まされてきた悪魔の言葉(お祈り)に、まさか希望を見いだす時が来ようとは。

 やはり人生は何があるかわからないものだ。僕の訳わからない転生とか。

 

 うちの凶暴な姉とて、全力でやった結果相手に拒否られれば文句は言えまい。むしろ怒りの矛先が雄英側(あちら)に向くだろう。いや、向いてくれなきゃ僕が困る。

 こんな不確実極まりない作戦が、姉の説教(物理)から逃れる唯一の手立てだというね。酷すぎる現実に絶望しそうになるぞ。

 

「きゅ、九百九十九………………千回………………ッ!!」

 

 ようやく腕立て伏せが終わり、僕はビチャッと崩れ落ちた。

 腕は痙攣(けいれん)して動かせそうにないし、全身汗塗(あせまみ)れ。

 おまけに被っている白い布がグジャグジャ湿気ていて大変気持ち悪い。めちゃくちゃ蒸れる。あとモワッと汗臭い。

 じ、地獄だ…………!

 

『ノルマお疲れさん』

 

 僕の上に乗っていた姉はヒラリと舞い降りた。すぐそばで潰れた(カエル)状態の僕を見下ろしている。

 

 姉はゲシゲシと二、三回僕を踏みつけた後、看板とボトルを取り出した。

 

『そんなお前に、心やさしいわたしの特製プロテインドリンクを進呈してやろう。心して飲み干せ』

 

「ま、そこ鼻……! 口じゃなくて鼻だからプロテイン流し込むのらめぇぇぇぇぇぇぇえええ!!」

 

 こんな調子で、果たして僕はこの先生きのこれるのか――――――!

 

 

 

 





 区切りが良いので今回はここまでです。当初の予定より短いなんてことはなかった。
 雄英高校受験ぐらいまでは逝きたい(遠い目)


袋皮(ふくろがわ)絵利覚(えりざ)
■ 個性:発言看板
 言葉を発する代わりに看板を作り、会話を成り立たせる個性。看板は基本的には木製。木材の種類はランダム。
 看板の生成は一瞬だ! 自衛手段にも用いれるぞ!


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