城兵として召喚されたんだが俺はもう駄目かもしれない   作:ブロx

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 おかげさまで拙作は20話まで進みました。ここまでお読み頂き本当にありがとうございます。










第20話 熱砂の回廊

 

 

 

 聖都南部より遥か西。荒廃した山脈の尾根を越えるとその境界線はあった。

 

 そう、砂漠と荒地のコントラスト。 地に伏せながら砂の粒一つ一つを見て取っても、まるで金剛石(ダイヤモンド)で敷き詰められてるとしか言いようのない、この世の物とは思えぬおぞましさと美しさの甘美な誘惑。

 

 ・・・あの宝石達に触れてみたい。が、今はここで偵察が第一。 太陽王と呼ばれる異国の王は、この地の果てに居を構えているのだ。

 

「・・・」

 

 うーむ、敵影なし。現在俺達偵察隊七名は敵地視察を目視にて敢行中。敵軍がたむろしてるとか何かしらの軍事行動も見受けられない。

 

「・・・・」

 

「――異常なし」

 

兵Bの声。・・・・どうやら取り越し苦労だったかな?

 

「――異常なし?タコが。敵地のすぐそばで軍事行動する奴がいるわけ無いだろうがッ」

 

「――しかし。ここで聖都へ帰還、報告しても任務完了ではある」

 

「――ダガ敵が今後ドウウゴクカ、コレガワカラナイ」

 

「ブルブルルゥ(何処までやれるのか?ただそれだけを私は知りたい)」

 

「――馬も我らも意気軒昂。隊長、ご指示を」

 

「――・・・ここを超えれば太陽王の領地となる。行くぞ」

 

「――、何だと?」

 

「・・・・」

 

 俺は思わずケテル1の顔を見つめる。

え?マジですか?誰がどう見てもこれ以上近づくのは危険です。もっとここらで情報を集めてからでも。

 

「――臆病者は付いて来なくてもよい」

 

「・・・」

 

 兜越しにケテル1との視線が交錯する。 隊長としての責務、皆の安全、聖都の利益。そして王への献身。それを強く感じる視線と言葉。

 

・・・仰せのままに、ボス。俺はゆっくりと頷いた。

 

「――では出発だ。五メートル間隔、音を立てるな」

 

「――相棒。弓矢(チェーンガン)をバッグから出しなよ」

 

 

 ―――様式美も終わったところで、さて。

砂漠へと足を踏み入れた浅はかな俺達を待っていたのは、嵐だった。

 

 宙を飛び交う砂の粒全てを照らす太陽光。その放射は俺達の眼球を熱く叩き。 甲冑が無ければ肌がどうなっていたか分からないほど斬り吹く風はまるで蹄鉄の様。

 

そんな嵐蹄の中を、俺達は進んでいた。

 

「・・・・、」

 

 熱い砂漠にむせる。 が、歩みは止めない俺達偵察隊。

しかし参った参った・・・。こんなひでえ砂漠は流石の俺も初めてだ。

 

「――総員停止。・・・・これ以上は進めんな。皆、ここで敵地を調査・観察する」

 

「――了解」

 

ここで隊とはぐれたら、間違いなく死ぬな。俺達は地に伏せた。

 

「――よお兵士殿。何か見えるかい?」

 

「・・・・」

 

 東方の。うーん、何か気配を感じるがいまいち・・・。

俺は頭をゆっくり左右に振った。

 

「――そっちもか。まあ俺もだけどよ。 しかしこの砂漠、何か創作意欲を催さねえか?例えば音楽とか!」

 

「・・・・?」

 

「――!ビナー1、南方の。これを見てくれ」

 

「――何だ?」

 

「――俺はどうやら生前多趣味だったみてえでよ、特に曲作りが好きなんだ。 いつまでも獅子王陛下とアグラヴェイン様に頭下げて音楽聴いてもらう俺様じゃないッ。――自分でアルバムを出す!ジャンルは・・・、ケルト農民のラップだ分かるか?」

 

「・・・・」

 

さ、さあ?ていうか君タフだね。粛正騎士(弓兵)だから3/6くらい?

 

 【東方方面―弓の粛正騎士】 無色④

Enforcement knight of the east side(bow) 

クリーチャー―組合員・レジェンド。トランプル。

 【聖都の獅子王】があなたの手札か場か墓地にある限り、あなたはレジェンドと付くパーマネントを何枚でもプレイできる。

『組合を舐めんじゃねえよ。』――東方聖都労働者組合員一同 

 

 

「――ちょっと聴いてみるか」

 

「・・・」

 

小さく頷く。別に構わんよ。上の毒電波は無視してね。

 

「――もう少し聴きたそうな顔(雰囲気)してもいいんじゃねえかっ?・・・まあいいや」

 

「――!魔力・酸素濃度78%。 気圧も通常の4倍?この砂漠一体どうなって、」

 

「――更にだビナー1。・・・あの方角の奥を見てみろ」

 

「――ブンツクツ、ブンツピツゥピ。ベボベボベボ、ハッハッッハッッッ!ゲリラ・スリラ・連れてってマニラ・口当たりいいのは?バニラ~。どれ?あれ?それ?そう! 言ぇるもんなら獅子王陛下に言えよ、さっさと出てけってな! ・・・・どう思う?」

 

「・・・!!」

 

 最高だよ、きっと大物になれる。 俺は無音で拍手した。ただの粛正騎士で終わってちゃ駄目だ。

 

「――、――マジかよ」

 

「――何なんだあれは……」

 

「――我々が可能性として考えていたのは、もっとミクロな軍事的行動だった。――だが、実際は見ての通りだ」

 

「――ケテル1。それでは………あれはまさか宇宙生物?」

 

「――イヤ。アレは恐らくスフィンクスの大軍だろう。ジンメンシシンノ神獣ダトカ。・・・見るノハハジメテダガ」

 

「――やっぱりそうか俺もずっと前からそう思ってたんだ!ヘヘ!――って、おい? 今あっち何か光ってな、」

 

 東方の彼が口から続きを吐く前に。

 

 彼の鉄兜の炸裂音が、俺の耳と眼に届いた。

 

 パァァンと空気を響かせて。

 

「――ッ、敵襲!!!円陣防御!!しかるのち後退!!」

 

「・・・!」

 

了解!!

 

「―――こんな所に入り込むとは。 獅子王の兵卒は礼も節度も恥も無いと見えるっ!!!」

 

「・・・・!?」

 

い、いつの間に。・・・この褐色肌の人何奴!?

 

「下郎めらに話す舌は持ちません。相応の惨めさで死ぬがいい!!!」

 

「・・・」

 

 やっぱり威力偵察になるじゃないですかーやだー!! 強行偵察ってレベルじゃねえぞ!しかも何か背後に黒いの浮かんでるし!

 

 俺達は東方の粛正騎士をズルズル引きずりながら後退し始めた。・・・死んでんじゃない? 生きてるよ。

 

 変な棒が飛んできて彼の頭に当たったのは見えたんだが。あ、これだ。・・・ひのきの棒か?いや、短槍? 敵影は見えなかったのに、一体誰がどこからどうやって―――。

 

「出ませいっ!」

 

「・・・・!?」

 

 うおお??何あのワラワラ飛んで来る黒いの!! もしかしなくても触ったら死ぬの?このお方シシガミ様なの?しかも女性の背後にうっすら鏡があるし。 どうやらあそこから出てきてるようだね!

 

「? ――お前、これが見えているのですか?」

 

「・・・・」

 

やっべ。

 

「――西方兵士!後退しろ!!」

 

「成る程。…数多の死線を潜ってきた兵(つわもの)と見ました。ですがここが貴方の、………この世界でのお前の死に場所です。覚悟は必要ありません、ただ委ねなさい。 私の鏡が見えたのなら――お前ももうお終いです」

 

 Are you ready?

女性の眼光と黒色の鏡がそう告げていた。

 

「・・・」

 

駄目です!!! 俺は一目散に駆け出した。

 

「無駄な事をっ!!!」

 

「――兵士殿!?」

 

 気絶した東方の兵士を皆に預け、一人囮となってジグザグに動く俺。

鏡から伸びる黒い何かが俺を捕らえようと迫るが、動きはそんなに速くない。間合を図れば少しはなんとかなる、かも。

 

問題はこの槍だ。効くかな?効くかな?試しに薙ぎ払ってみよう。

 

「千切れたあ!!?」

 

「・・・」

 

やったぜ。我が王万歳!!!

 

「冥界の可愛い死霊たちが……。こやつ一体何者!!!」

 

「――お待ちあれ!私は聖都・獅子王が兵卒ケテル1ッ! 貴女は砂漠の王国が守護者、ファラオ・ニトクリス殿とお見受けしたが如何に!!」

 

「・・・」

 

 おお。仁王立ちした隊長殿が砂漠の嵐蹄を引き裂かんとばかりに大声を出した。有り難い。

 

「…むむ。立場を弁えている者が少しはいるようですね。 ――その問いには答えぬわけにはいきません。いかにも、私がファラオ・ニトクリスです」

 

「――我らは聖都が主の使いとして参った! ニトクリス殿、聖都とそなたら砂漠の王国は不可侵の盟を結んでいる事は承知か!!」

 

「…何を言うかと思えば。無論、その事は承知です。その確認をする為に、お前達は我が領土を侵したのですか?」

 

「――領土に踏み入った事は謝罪する。が、貴女は誤解している。――実は先日、我らが聖都が賊に襲われたのだ。異邦から訪れし、星読みの者によって」

 

「……っ! それは真ですか?」

 

「――この世を跡形なく滅ぼすカルデアの者達である。ゆえ、我らはここへ通達と確認に参ったのだ。――ニトクリス殿。 砂漠の王は聖都襲撃をご存知なのか?もしや指図をしたのか?」

 

「さ、さあ…?」

 

「――さあ?」

 

・・・・・。

 

「私はただこの砂漠の守護を仰せつかった身なれば。 ファラオ・オジマンディアスの御心は、私には推し量る事すらできません。―――ただ、これだけは言えます。もしもファラオの手によって聖都襲撃が行われたとしたら、」

 

「・・・・」

 

「一撃で、一切合財に決着をつけることでしょう。 それが太陽王たる所以、神たるファラオの矜持です。…ゆえ、聖都襲撃に我らは関わっていないと断言できます」

 

「――成る程。貴君らがもし関わっていれば、既に聖都は無き物と。 ――その言葉、信ずる証拠は」

 

「異な事を。 …そちらの言う聖都襲撃を信じなければ始まらぬ話でしょう?この会話は」

 

「――。・・・・承知した」

 

「・・・」

 

 何か隠してるね、この綺麗な女性。まあ、見たところ軍勢が居るわけで無し。戦支度をしてる気配も無し証拠も無し。 今すぐ事を起こすわけではないと見るのが妥当かな。

 

「――貴君らを疑った事は詫びよう。・・・だが獅子王の手足たる我が部隊に損害を出した事、これはどう償って頂けるのか!!!」

 

「・・・!」

 

「………それは、」

 

 強気だなうちの隊長。偵察した時点で攻撃も同然なんだけど。・・・しかし生物的な損害が出てるのは我々のみだから、多少強気でもいいか。

 

「――我らは盟を結んだ貴国にも、異邦からの襲撃を急ぎ伝えに参った獅子王直轄の部隊である。この落とし前はどうつけて頂けるのか!! ――我らの盟、まさか反故にするつもりではあるまいな?」

 

「む、むむむむ……」

 

 おお!見事見事!すげえ屁理屈!こういう時はちょっと言い過ぎじゃない?ってぐらいが丁度いいからね!流石は聖都正門城兵粛正騎士・ケテル1! 

 

 昔(生前)を想い出す懐かしい啖呵。そういえば居たなあこういう強気な兵士。

 よし、あとは引いて押してのやり取りさ。イニシアチブは勿論こっち持ちで。

 

「………――分かりました。ニトクリスの名において、深くお詫び致しま、」

 

 

『―――よい。 ファラオたるものが軽々に詫びなどを口にするものではない。ファラオ・ニトクリス』

 

 

「――! 何と・・・」

 

「・・・・」

 

この声は。

 

『獅子王の配下よ。 ニトクリスは我が命令を守りそちらと交戦したまで。―――よって非はこの余に有るものである』

 

「――太陽王自らとは!これは頭が下がる・・・」

 

「御声のみとはいえ神王たるファラオの、砂漠の主の御前ですよ!平身低頭なさい!!」

 

「・・・」

 

 なんと砂漠の王のエントリーだ!

皆、ここはヒザをついてやり過ごす以外にないぜ。

 

『―――知ってのとおり余はファラオ、人の上に立つ者だ。そちらの人的被害、決して少なくはないと余は痛感している。

 よって余自ら聖都に赴き、正式な謝罪をしようと考えている。それで盟を結んだ獅子王の面目は保たれよう』

 

「――何と。我が王に対してそこまでして頂けるとは。流石は神王、賢明な判断です」

 

「…ファラオよ!何も御身がそこまでせずともっ! 代わりに私が参ります!!」

 

『よいと言っている。 ニトクリス、貴女は余を主と認め、公言もした。ならば余が出張るのは当然である。そうであろう?』

 

「………、それは」

 

「・・・・」

 

 何だか雲行きが怪しい気配。信用していいものかな。・・・あちらのトップが、こちら(聖都)にわざわざ来るだって?

 

『具体的な日取りは追って使者を使わせるゆえ、待たれるがよかろう』

 

「――感謝致します。必ずやその言葉我が王に伝えましょう。――失礼致します」

 

「・・・」

 

 ケテル1と同じく頭を下げる。まあ、今はそうするしかないよね。

気絶から戻った東方・粛正騎士を連れ、俺達はこの場から急いで立ち去った。

 

 

 

 

 

 

「―――よいのですか。ファラオ・オジマンディアスよ」

 

『何も言うな、天空と冥界の神よ。この地は全て、我が領土なのだ』

 

 砂嵐の中でも地を照らし続ける太陽。それは今までただの一度も旅人と、彼の砂漠に影を落とした事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




砂漠という陸の海に、見え隠れする流砂という名の泥穴。
どうやら、眼下に浮かぶ謎の入り口の果ては厚く、重い。
我等の運命は神が遊ぶ双六だとしても、上がりまでは一天地六の賽の目次第。
鬼と出るか、蛇と出るか。
謎を掻きわく敵中横断。
次回『地平を喰らう手』
任務とは。あえて火中の栗を拾ってでも。




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