城兵として召喚されたんだが俺はもう駄目かもしれない   作:ブロx

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MTG風キャラ紹介です。何なりと無視、もといご覧下さい。

 【南方方面―剣の粛正騎士】無色④ 4/3
Enforcement knight of the south side(sword) 
クリーチャー―殿下・レジェンド。速攻。
 【聖都の獅子王】があなたの手札か場か墓地にある限り、あなたはレジェンドと付くパーマネントを何枚でもプレイできる。南方方面粛正騎士は召喚酔いに影響されない。
 ―――この聖都は世界の歪だ。遠からず誰かがこれを修正しに現れるだろう。たとえその者らに勝っても、我々は真の勝利を得られないのかもしれない。より悪い未来が待っているかもしれない。王の為に戦っても、犬死になのかもしれない。・・・しかし。
『カミトヒトノ差ガチカラノ差ダケナラバ!!カミノソンザイナド不要ラ!!!』
『…あの者達は皆優秀なのに何故標準語を話さないのだ?』
――聖都南方の兵達を見て。西方方面第2小隊隊長ビナー1の言葉。
 






第22話 アウターヘブン

 

 

 

―――そこは砦というよりは、地上要塞というべき造りであった。

 

「ようこそ我が砦へ。歓迎しますよ」

 

「――助かりました、ガレス卿」

 

 所々凹凸が目立つ小高い塁壁は上空から見れば星型を形成しており、ここより東方に位置する聖都とは真逆の造りである。 聖都と同じ円形にしなかったのは、主である獅子王がおわす場所に似せるなど獅子の円卓の矜持が許せなかったのか。はたまた前線基地(バトルフォート)であるならこれ以上の形は無いと判断を下したからなのか。

 

 いずれにせよ、銃砲火器が無い軍勢がここを落とす事は至難の技なのは間違いなかった。

 

 ・・・・ちなみに。

星型の要塞ってここ五稜郭かどこぞの宇宙要塞グランドキャスターじゃない?と思ったなら、ここが落ちたら全部お終いだという事は分かって頂けるかもしれません。

 

「――? ガレス卿?今何かおっしゃいましたか?」

 

「?いいえ何も。……話を戻しましょう。聞けば太陽王がついに我らに反旗を翻したとか。しかし心配は要りません。 聖都の戦力とこの砦の戦力とがあれば、問題は無いのですから」

 

「――そんなにも軍勢が集まっているのですか? こちらに来るときに少々見て取れましたが、何やら我らだけでなく元々この地に居たヒトも部隊に加わっているようでしたが」

 

「ええ、その通り。この世界のヒトも一枚岩ではないという事です。 …現状を打開したい、家族にもっと良い暮らしをさせたい、自分だけが助かりたい。ここは粛正騎士の数こそ聖都未満ですが、兵の数ならば引けをとりません」

 

「――脅威的ですな。しかしそのような大軍、如何にして兵站を?」

 

「定期的に聖都からの補給が届いています。モードレッド卿ら、遊撃部隊のおかげです」

 

「――恐れながら。 ヒトは大食らいです、それだけで賄えるとは到底・・・」

 

「……流石は王の粛正騎士。その通り、それらは全て備蓄分なのです」

 

「――備蓄、と言いますと?」

 

その時サー・ガレスが浮かべた表情は、どこか聖都の獅子王に似ていた。

 

「ここに居る者達は腹も空かず喉も渇かないのです。…わたしのギフト(祝福)ある限り」

 

「――何ですと?・・・失礼ガレス卿それは初耳ですが、」

 

「それ以上は貴方がたにも言えません。 ―――偵察ご苦労様でした、今は休息を取りなさい」

 

「――・・・はッ」

 

 敬礼し、ケテル1をはじめ退出する砂漠偵察隊の六名。サー・ガレスはこの場にいない最後の一名を慮り、やりかけの執務を頭から消した。

 

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

 眼を開けると、そこはどこか懐かしい石造りの壁と匂いだった。

ぉお?気絶していたのかな? なんだか前にもこんな事があったような。・・・ここは一体? ていうか何このベッド柔らか。

 

「――気がつきましたか、兵士殿」

 

「・・・・」

 

兵B!察するに隊は無事だったか。

 

「――ここはガレス卿とランスロット卿が指揮を取る砦内の一室です。 …我らは一時ガレス卿の指揮下に入り、休息。偵察隊七名全員で聖都に帰還し、太陽王との決戦に備えよとの王命です」

 

「・・・」

 

王命、了解。

 

「――兵士殿。私は先程ガレス卿とお会いしました。…一目見て、卿は以前とはまるで別人のような力を付けられたご様子。 それで私は、……なんと申しますか、あのお方が心配です」

 

「・・・・」

 

「それは有り難い事ですね。ここの兵達は、そんな心配も言葉も口にしませんから」

 

 音も無く開く部屋の扉。お懐かしいガレス卿のご登場である。

しかしはて?兵Bこのお方に別段おかしい所は無いが・・・・。

 

「! これは…。――出すぎた言葉、申し訳ありませんガレス卿」

 

「よいのです。 …わたしは王より賜ったギフトをトリスタン卿の次に長く使用していますから。あなたの知らぬ間に違う扉が開いたと思って頂ければ」

 

「――…はい」

 

「・・・」

 

「それにしてもお久しぶりですね、兵士さん。体調は如何ですか?砂漠の兵との戦で急に倒れたと聞きましたが」

 

「・・・」

 

 俺は五体満足健康第一を示す為、立ち上がって片腕を伸ばして曲げて最後にグイと目一杯伸ばした。

 

エイエイオー!ぶおおおおおーっ!!!ぶおおおおおおっ!!!

 

「相変わらずの軒昂ぶり。 …何だか最後に貴方達と会った日が、遠い昔の事のように思えてきます」

 

「・・・・」

 

「――ガレス卿。我々は貴方がた円卓の騎士様と王に忠を尽くすと決めた爪牙です。今我々は貴女の指揮下にある。何なりとお申し付け下さい」

 

「・・・」

 

兵Cです。何なりとお使い下さい。

 

「…ではその言葉に甘えましょう。 まもなくこちらにアグラヴェイン卿が来られます。貴方がたには地下室の警護をお願いしたいのですが」

 

「――了解。 何とこの砦に地下があるとは」

 

「意外ですか?この下には空洞が広がっているのです。そこには捕らえた捕虜達が収容されています。安易に盗られぬように」

 

「――成るほど、周到ですな」

 

ん?捕虜達?地下には山の翁以外にも誰かいるのかな?

 

「・・・・」

 

「――やはりガレス卿は捕虜の奪還がここに来ると思っておられるのですか?」

 

「間違いなく。 …では残りの偵察隊の方をここに呼んできて下さい。地下へ案内します」

 

 

 

 

 地下は地上と違って明かりが松明だけなので薄暗いが、不思議とカビ臭いとか汚いといった感覚は無かった。

 何かで清められていると言ったらいいのか、掃除が行き届いているのか。・・・ここは思いのほか綺麗だった。

 

「ここが地下室の出入り口です。中には山の翁がいますので、皆さんはここで警備をお願いします」

 

「――ッは。職務を全う致します」

 

「・・・」

 

任せて下さい。動くモノは全て殺します。

 

「兵士さん。ちょっとこちらへ」

 

「・・・・?」

 

 え、何だろう。伝説の武器でも見せてくれるのかな?配置に就いたケテル1や兵B達にお辞儀し、俺はガレス卿に付いていった。

 

「・・・」

 

「………、さて兵士さん。壮健ですか?」

 

「・・・・」

 

? ええまあ。俺は槍をクルリと回転した。不備無し。

 

「このような状況は久しぶりですね。…憶えてますか?貴方が急に倒れたのは以前聖地の幕舎でわたしと居た時。そして、今回」

 

「・・・・」

 

 実はガレス卿が聖都にいない折に私は職務を離れていた時期があったのですが、・・・・あれは王の一撃という明確な理由がありましたな。

 

「…そのどれもが王の聖槍が関係しています。宝具開放という共通点が。これは単なる偶然ですか?」

 

「・・・」

 

「………」

 

・・・・・。

 

俺は首を横に振った。

 

「―――分かりました。 さて兵士さん、実は間もなくここに敵がやってきます」

 

「・・・・!?」

 

「目的は一つ。ここに捕えてある山の翁、毒のハサンの奪還。 その後戦力を拡充し、聖都への大規模な反抗作戦を始めるつもりでしょう。

 ―――そんな事はさせません。たとえこの砦を破壊してでも、わたしは。わたしは王に身を捧げた獣なのです」

 

「・・・」

 

 それは私も同じです、ガレス卿。早く配置に就かねば。

しかし踏み出す俺の足に合わせて、ガレス卿は白い指を奥の通路に向けた。

 

「この先を行くと砦の正門に出られます。貴方はそのままここを脱出、聖都へ向かって下さい」

 

「・・・・」

 

逃げて生き恥を晒せと? 私は職務を全うします。

 

「止まりなさい。一兵卒」

 

「・・・・」

 

・・・ガレス卿?

 

「これは騎士の勘ですが、十中八九この砦は獲られるでしょう。…貴方がたの報告にあった太陽王の力は凄まじく、ここ数日反乱分子達の動きには無視できない何かがある。―――わたしはここで聖都へ向かう敵戦力の減退をはかります」

 

「・・・・」

 

それは私がここにいなくていい理由になってませんぞガレス卿。

 

「貴方は不思議な兵士さんです。 …懐かしいような、見覚えのないような。…まるで昔(生前)お世話になった厨房長を思い出します」

 

「・・・」

 

 厨房長?あの無口の?

料理上手いくせに俺の真似するなって言ったのに聞かなかったあいつですか?

 

「……、兵士さん。これは女の勘ですが、貴方はわたしよりも聖都に必要な兵です。 どうかご武運を」

 

「・・・・・」

 

聞けません、ガレス様。 俺は一歩も動かなかった。

 

「―――これは命令である。 聖都キャメロット西方方面兵士。我は獅子の円卓が一人、ガレス。背くは獅子王陛下に弓引く行為と心得よ」

 

「・・・・」

 

「貴方の馬はこの先に控えています。…佳い馬です、振り向かず駆けなさい」

 

「・・・・、・・・」

 

・・・・・・。

 

「もう逢う事は無いでしょう。さようなら。……兵士さんのおかげで、あたし。少しはこの世界で生きるのも楽しかった」

 

「・・・・」

 

「懐かしい頃を思い出させてくれてありがとう。正門のローナルドさん」

 

 

 

 

 

 

 ――カッポカッポと通路に響く蹄音。俺は愛馬に跨り、この道をただ無心で進んでいた。

 

「・・・・」

 

「ブルブルルルル(良いのですか?これで)」

 

「・・・・」

 

「ブル、ブルブルゥウ…(命令は古今東西絶対遵守です。それは貴方も誰もが歩いた通り道。馬の耳に念仏とお思いでしょうが、それでも私は尋ねます。…本当に、これで良いのですか?)」

 

「・・・・」

 

「ブルァア!ブルルブル!(偵察隊の仲間達とあの騎士を見捨て、命令だから聖都で一人王の為王の為ですか。 自分とそれ以外が全員死のうと、王さえ生きていれば大満足ですか。城兵フスカル・ローナルド。貴方はずっと…護る者ではなかったのですか?)」

 

「・・・」

 

「ブルヒヒヒン!!(私が蹄を預けた御仁は、そんな朽ち果てたノッポの古時計でしたか。なるほど確かに貴方らしい。………胸で何かが叫んでいるのに、気付かない振りして王の為に生きるが賢い生き方。 過程に出た犠牲は、致し方ない王の為と)」

 

「・・・・・」

 

「ブルゥール(ではどうぞ往かれるがよろしい。存分に本懐を遂げられよ。―――血潮を絶対零度で燃え尽くし、自分が自分で無くなる事に気付かぬほど没頭すればよろしい。それもまた良し)」

 

「・・・」

 

「ブルブルブル(だって他には何も。要らないのでしょう?)」

 

「・・・・・」

 

・・・我が馬よ。さっきからお前なに勘違いしてるんだ?

 

「ブル?(ひょ?)」

 

 君は知らないだろうが、我が王はな。俺達に全員で、我が元に、帰還せよと命じられたのだぞ?俺一人聖都に帰還出来るわけないだろう。

 

「………」

 

「・・・」

 

そうこうして砦の正門に出て、まず俺がした事といえば。

 

「?何だ貴様。 一体どこから湧いて出た!?」

 

「・・・」

 

「――!? 貴方はたしか聖都西方兵士殿。ガレス卿と共に地下の防備にあたっていた筈では!? そこは危険です!今この砦は山の民の攻撃を受けていて―――!」

 

「邪魔だ貴様ア!!!! 我らの邪魔はさせんぞ!!!」

 

「・・・」

 

的盧。君は砦の正門へ。

 

「ブルッブル(足が必要な折はいつでも。我が主)」

 

「・・・」

 

皆で聖都に凱旋する時はよろしく。

 

「ォォ!!!」

 

「・・・・・」

 

 気迫迫る黒い敵達。それに俺が槍を振るうと、俺の周囲にいた黒づくめの敵達は軒並み吹き飛んだ。・・・そうさ、俺は君に言われんでも分かってるのさ。

 

俺の使命は昔も今もただ一つ。ただ敵を殺し、護る。

 

「こやつッ粛正騎士か!」 

 

「たった一人で何が出来る!!」

 

「私の強みは、大勢の私がいることだ」

 

「お前の強みは?ミスターソルジャー?」

 

「・・・」

 

俺の強み?う~ん強いて挙げるなら、

 

「・・・・・」

 

王への忠心。それがここで燃えるなら。

 

「死ねッ!!!」

 

ただそれだけで何もいらねえんだよ。

 

 

 

 

 

 

「何だこいつは・・・?」

 

「何だあの槍捌きは」

 

「劣勢を、数を圧倒するスキルでも持っているのか?」

 

「乱戦の心得?いや違う」

 

「説明がつかん」

 

「まるでおとぎ話にある孤人要塞だな」

 

「…闇雲に立ち向かうな。我らが本分、忘れたか」

 

「誰にモノを言っている?」

 

「お前だが」

 

「誰だ?」

 

「私だ」

 

「私、私」

 

「・・・・・」

 

迫る槍の穂先。…呪腕の、時間稼ぎは任された。

 

 

 

 

 

 

「よし。無事で何よりだ、静謐の」

 

「長居は無用です、早く行きましょう先輩!」

 

「急ごうっ!」

 

 山の翁・静謐のハサンさんを何とか助け出したオレ達。意外な仲間も増えたし、後は皆でここから逃げるだけだ。・・・カルデアの一員として、人間として、オレ達はこの特異点を修復しなければ。

 

「…まあまあ。 そんな慌てずゆっくりしていけばいいではないですか。旧交を温めましょうよ」

 

「マシュっ!構えて!」

 

「・・・貴様。円卓の騎士か」

 

「! 貴女は………っ!?」

 

 立香が令呪をマシュに向け、補助の姿勢。対してオレの指(ガンド)は敵を指す。 そして盾が皆を護るように、不動の根を張った。

 

・・・そして敵の騎士は口を開き、

 

「獅子の円卓・『不浄』のガレス。 お見知りおきを、懐かしい貌のお嬢さん?」

 

 鎌も持っていないのに。――まるで白い神様みたいだと、オレは場違いにも思った。

 

 

 

 

 

 

 

 




愛、望み、笑い、涙。
かつてこの胸に息づき、溢れていた物。
それらはある日焼かれて、一握りの炭となった。
炭は風に舞われて一周し、雷霆となった。
今、雷声が全てを呑み込み明かす。
怒りと哀しみと騎士の素顔が、天国の外側に晒される。
次回『Awkward Justice』
真白な落雷が、心に刺さる。




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