城兵として召喚されたんだが俺はもう駄目かもしれない   作:ブロx

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次回予告がボトムズチックなのは作者の趣味です。予告集を目覚ましにして朝日を浴びるとむせる。モーニングコーヒーを飲んでもむせる。
でもおめめパッチリ!明日に繋がる今日ぐらいそっと無事に過ごしたいあなたにお勧めです。









第2話 祝福

 

 

 

「---騎士達よ。よくぞ我が元に集った」

 

「・・・・」

 

「---私は卿らに選択を与えた。それは私の元か私の外か。 結果、円卓同士での戦いとなった」

 

「・・・」

 

燦然と純銀に輝く我が王のお姿を、俺はずっと見続けていた。

 

 え?なんでお前円卓の騎士でもなんでもねえのに黙ってここに突っ立ってるのかって? 今は動いちゃいけない雰囲気雰囲気。

 

「---仲間同士で殺しあうなぞ、サーヴァントといえど狂気の沙汰。 だが、私には必要なことであった」

 

「・・・」

 

「---獅子王たるこの私に付き従う円卓の騎士達よ。卿らに我が祝福(ギフト)を授けたい。

それは何でも構わぬ。欲しい力を申してみよ。 今後はより一層、私の為に剣を振るうがよい」

 

「・・・・」

 

ん? 今なんでもって

 

「王よ、我が身には『不要』と存ずる」

 

 言ってませんね、申し訳有りませぬ我が王。そしてアグラヴェイン卿こちらを睨まないで下さい死んでしまいます。眼光で。 

 

・・・しかしながら『不要』とは。 流石は鉄の男、全霊ですな。

 

「獅子王よ。 我が身には、」

 

皆思い思いのギフトを述べ、我が王より頂いている。

 

『不夜』『暴走』『凄烈』『反転』。 

 

 べ、べつに羨ましくなんてないんだからね!?!? 我が王からモノをねだるなんて、そんな贅沢は明確な敵!

そう!!炭酸水を一気飲みしたらゲップが出るくらい確実な! 

 

「…わたしは、『不浄』を賜わりたく存じます」

 

 『不浄』。つまり汚いってこと。 可愛、げふんげふん!美しく格好良いガレス卿にしてはこれまた正反対な祝福。

 

「・・・・」

 

 これ以上汚れない為に、穢れそのものになるという事だろうか?なんという凄まじい決意か。

 

「・・・」

 

ガレス卿!貴方のその漆黒の意志と言動ッ!!俺は敬意を表するッ!

 

「………?」

 

あ、やべ目が合った。何か恥ずかしい。そそくさ!

 

「---ここに我がギフトは為された。来たる聖抜の為、卿らの注力に期待する」

 

王のお言葉に、俺達は皆一斉に頭を下げた。

 

「・・・」

 

 我が王の言うところによれば、聖抜を行うには広くて由緒ある土地が必要との事。つまり今後の目標は聖地の奪取だ。そこは何もしなくても人が集まってくるからね。

 

 聖なる場所(パワースポット)ってやつは、今そこで誰が何をしているのかはあまり重要視されない。 何故今そこが聖地と呼ばれているのかという歴史が力となっているからだ。

 

そう!簡単に言うと力こそがパワー! 

 

 現在聖地では十字軍、ディバイン・クルセイダーズ(以下DC)が押しくら饅頭してるようだが、ここでは我が王こそが正義だ!!!王に逆らうような輩は王の爪牙たる俺達が倒す! たとえ相手が地球防衛用人型機動兵器(究極ロボ)や、間接攻撃無効を持った憎いあんちくしょう(ブラックホールクラスター)を持ち出してこようとも、須らく一掃する。 ・・・・なんの話だって?例え話だよ。

 

「・・・」

 

 思考を落ち着かせる為、眼を瞑って深呼吸。全集中。ヒュウウウウ。

只でさえ万夫不当な豪傑の円卓の騎士達が、今や我が王のギフトによってお前こそ真の三國無双よみたいになってるんだから、我々が有象無象如きに後れを取るとは思わないけども。

 

 いかんせん情報が少ない。やるんであれば万全を期したい所だね。

 

「---貴公」

 

「・・・?」

 

 いつのまに円卓会議が終わったのか。

畏れ多くも我が王が、この俺の前におわす。しかも直に話しかけておられる!

 

「---私が最後に召喚した兵よ。望むのであれば、貴公にも我が祝福を授けよう」

 

「・・・・・」

 

 あ、やべえ。 何がやべえって目の前がやべえ。我が王が神々しすぎる事案が発生今現在。

 

神だ。

 

我が王は神であらせられる。人は神には勝てない、力の違いを見せつけられた。今までもこれからも。跪き、平伏する事しか出来ない。

 

「---無言とは。 要らぬのか?」

 

「・・・」

 

 アグラヴェイン卿が例の如くこちらをものすごい睨んでくる。

ははは無言とは。これは不敬ですな、王よ。処すべきかと処すべきかと。今すぐ。この私が。早速。弾指。 

 

 ・・・貴方様はもしやマハーカーラー様では? 怖すぎてご尊顔を拝謁することすら出来やしねえ。

 

「・・・、・・・」

 

 でもちょっと想像してごらんよ。自分の主がさ、比類なき力をお前にくれるって仰るんだぜ?

 

途轍もなく嬉しいじゃん。でもさ、これを受け取ってしまうと、俺は多分満足しちゃうと思うわけなんだよ。

 

―――ご褒美、ありがたき幸せ!末代までの宝とさせて頂きます!

 

 我が王の手足すなわち兵士たるものが、そんなすぐ満足しちゃって歩みを止めたら末代まで恥をさらすんじゃないか?

 

「・・・・」

 

 こんなんじゃ満足できねえぜ!俺の満足はこれからだ!!でも満足って?

 

ああ!

 

結論。俺は重厚な兜で包まれた頭を左右に振った。

 

「---貴公も『不要』というのだな。 分かった」

 

我が槍はとうの昔に王に捧げている。その栄誉以上の祝福なんて。

 

「…………、」

 

「テメエちょっとツラ貸せや」

 

 !? ガレス卿が養豚場の家畜を見るような目をしている。なんか目覚めそう。

そしてモードレッド卿、ツラでも何でも貸しますが俺は金持ってないです明日もないです。

 

 しかしそういえば、貴方とお話するの生前も含めてこれが初めてじゃないでしょうか、光栄です。兜を取ったそのお顔も凛々しくてとてもとても素敵ですね!

 

「ぁア?」

 

 ドシンという落下音。地に突き刺さる大剣。月光よりも白い銀光と赤色の万雷が、早く来いと俺を手招きした。

 

・・・・召喚されて早々俺はもう駄目かもしれない。

 

 

 

 

 

 




人は、戦場に何を求める。
ある者は、ただその日の誇りの為、剣を振るう。
ある者は、理想の為に己の手を死臭に染める。
またある者は、実りなき野心の為に愛と憎悪にまみれる。
足跡は汚れた大地を踏みならし、礎石となり、歴史となって常に過去を目指す。
次回『血潮』
人は歴史に逆らい、そして力尽きて風になる。



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