城兵として召喚されたんだが俺はもう駄目かもしれない   作:ブロx

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 ひょんな事からテンションが上がったので以下語尾を変えてみました。
新サクラ大戦とかいうパワーワードほんと大好き絶対正義。黒鬼会五行衆を超える敵キャラとかラスボスとか超期待しちゃう絶対正義!

・・・帝国華撃団が言わないとパッとしないな。









第28話 絶対防衛線

 

 

 

 

 ――聖槍の一撃が弓兵一人の矢によって相殺された。その事実は獅子の円卓総員に伝播した。

 

「トリスタン卿、任務ご苦労様でした。しかし察するに叛乱者には逃げられましたか」

 

まさか、一体どこの誰が、どうやって。 

 

 ・・・といった風な意見がここ玉座の間で少しは口の端にのぼると思ったがしかし、我々獅子の爪牙は普段通り状況報告を行っていた。

 

「王よ、まことに申し訳ございません。 賜りし任務をこのトリスタン、全う出来ませんでした。なのでガウェイン卿、すぐさま私の首をその聖剣で切り落として下さいますよう」

 

「---止めよ。私が命じたのは山の民の撃滅であって、叛乱者の討滅ではない。---卿は見事任務を全うした」

 

「・・・何と。感謝致します、我らが獅子王よ」

 

 眼前におわす王の槍は、振るえば回避不能の文字通り神罰の一撃。それを相殺するなど神業でもなければ実現不可能。言うなれば自力で奇跡を起こす事に等しい。

 

 だがその槍撃は聖槍の一側面(つまり只のオマケ)でしかなく、本番真価はこれからだという事を我々は十二分に理解していた。

 

獅子の爪牙はうろたえないのだ。

 

「王よ。 ――何ゆえ集落に聖の槍撃を落としになられたのか」

 

 そして『凄烈』なる湖の騎士が王の御前でこんな事をのたまってしまうのも、私には想定内の事だった。

 

「・・・貴様。王の行動に異を唱えるか」

 

「異ではない。 そんな無意味な事をして何になるのですと、確認しているのだ補佐官殿」

 

「ああ、何という言葉か。敵であるなら皆殺さねばならないのに貴方もまた何時如何なる時も変わらない。ランスロット卿、私は悲しい」

 

 王の御前なので脱力している騎士トリスタンは、いつ何時でも弓弦を爪弾く事が出来る姿勢で口を開く。 それを一瞥し、我らが獅子王は細い首と視線を跪く騎士に向けた。

 

「トリスタン、弓を弾くのはお待ちなさい。 王が言葉をランスロット卿に」

 

「・・・・王よ。どうかッ」

 

「---面を上げよ、我が騎士。卿の問いに答えるならばそれは只の一つ、全ては必要なくなったからだ」

 

 ランスロット卿以外の獅子の円卓はこの時全く同じ思考をしていただろう。――まあそうだろうなと。

 

「必要、ない? そんな理由で、・・・・そのような理由でッ王は聖槍を使用したと言うのですか!!」

 

「---何を激高している?サー・ランスロット。山の民は今まで、これといって大規模な行動をしてこなかった。---だが先日の砦襲撃と異邦者カルデアとの繋がり、太陽王の動き。百人が百人見て、もはや看過する必要が無いのは明らかだろう。---だから落としたのだ」

 

「さりとて!!!集落一つ跡形なく潰される事は無用の筈ッ!! 聖槍に選ばれるべき正しき人を、その可能性ごとッ!王は自ら灰燼に帰したのですぞ!?」

 

「---それも同じ事だ。言ったであろう、全て必要無くなったと」

 

「なん・・・ですと?」

 

 ランスロット卿が目を見開いて王を見詰める。そんな表情を作れるのは、遊撃騎士として聖都の外にいる事が多かったからこそなのか。降って湧いた新鮮な感覚を切り捨て、今度は私が口を開いた。

 

「節目が来たのですよ、ランスロット卿。聖都が出来て半年、今や王の聖槍は最終段階に入りました。――つまりもう、此処に人は必要ないという事です」

 

「・・・・、まさか」

 

「---其れは全ての存在に与えられているが、買う事は出来ない。ヒトは往々にして其れを、無駄にし其れを惜しみ、其れに追われる。

 ---私が必要としていたのは其れだ。残すべき人の選抜、槍の起動準備、聖都の構築。今やその全てが最終工程となった。どのような敵がやってこようとも、たとえ冠位が全騎やってこようとも、我が槍はこの世を旅立てる。---首尾は万全であろう?アグラヴェイン」

 

「・・・は。各城壁方面には充分すぎる兵が陣を敷いており、特に弓兵は天空を漆黒で塗り潰す程の矢を射る事が常に可能です。加えてこの円形城壁は悪意ある者を通さぬ力が働き、何人たりとも陛下の道を妨げることは不可能と私は断言します」

 

「王よ、更に加えて現在遊撃騎士・モードレッド卿が西の砦の衆と共に太陽王の兵と交戦中。卿の活躍は目覚しく、遊撃部隊の任務である時間稼ぎは成功と言って良いでしょう」

 

「---アレはそういった戦が得意だ。それぐらい出来て当然だろう」

 

・・・王の言葉はどんな時でも嘘偽り、起伏も無かった。

 

「・・・・。 聖都各方面の概況ですが、正門がある北方方面はガウェイン卿がおりますゆえ問題は有りません。東方と南方にはトリスタン卿を配置する手筈です。二方面ですが、卿ならばやり遂げましょう。問題は西方です」

 

「・・・ええ、補佐官殿。本来ならばガレス卿に指揮を任せたかったのですが。―――残念です」

 

 円卓自慢の騎士にして我が妹、ガレスが敗れ去った事はアグラヴェイン卿より聞かされていた。その最後、その戦ぶりも。

 

あとは任せなさい。

 

「---続けよ、サー・アグラヴェイン」

 

「聖都にとって、砂漠に最も面している西方は絶対防衛線です。 敵は必然多くの兵を差し向けてくる事が予測できます。太陽王らの力は未知数であり、城壁を突破できる手段が全く無いとも限りません。・・・ここを突破されれば、聖都は裸同然です。その前に遊撃騎士・ランスロット卿を砂漠へ出陣させ、我が方の兵達の士気を極限にまで上げる。結果、王と聖都を難なく護る事が出来ましょう。 違わないな?サー・ランスロット」

 

「・・・・。無論」

 

 ランスロット卿は無表情を装いながらそう言った。私にはそのように見えたが真面目なランスロット卿の事、必ずや任務を果たすだろう。

 

「---サー・ランスロット。卿の働きに期待する」

 

「――はッ。では私はこれにて。 モードレッド卿と合流し大事を成します」

 

「---励むがよい」

 

「では獅子王よ、私は正門にて責務を全う致します。王の獣たる我らは、為すべき事を為すまで」

 

「・・・陛下。ここには何人たりとも近付けさせませぬ。私は、聖都西方にて指揮を執ります」

 

あの鉄の騎士が前線にとは。成る程これは負けられない。

 

「---全て卿らに任せよう。時を稼げ、我が爪牙達。---全て遠かった理想の郷(ユートピア)は、人の最果ては眼の前だ」

 

「ははッ!」

 

 ・・・もう二度とここに戻ってくる事は無い。

絶対の確信と、陽炎のように仄明るい今までの思い出がこの手を見つめさせ、

 

私は聖剣の柄頭を軽く叩いた。

 

 

 

 

 

 

 ―――王命を聞く兵士達は、皆意気軒昂だった。ある者は戦慄き、ある者は口から気を吹き、またある者は得物を強く握り締めて。

 

これが最終。これが今生最後の大見せ場。全ては獅子王陛下と仲間の為に。

 

「――聞いたな、西方の衆よ。王の御命令は以上だ。現時刻をもって北方も東方も南方も、我々もこれよりは最終臨戦態勢となる。各員抜かるな」

 

「・・・」

 

「――我々の聖都を守れ!!!」

 

「――了解!」

 

「・・・」

 

応とも。極めて了解。死が互いを別つまで。

 

「――今度は最期まで一緒だ。共に、ここで王と人の旅立ちを見送ろうぞ。我が戦友達」

 

「・・・」

 

勿論。

 

「――了解!」

 

「――了解!」

 

「――了解!」

 

「・・・」

 

 配置に就く兵士達。さて、俺も持ち場へ向かうとしよう。

医務室で休んだおかげですっかり体調が良くなったし、もはや負ける気がしないぜ。ふはははっはは。

 

「――兵士殿。よろしいですか」

 

「・・・・?」

 

? 兵Bが得物を手に持ちながら俺に話しかけてきた。

 

「――昨日の肉料理は本当に美味でした。改めて、作って頂きありがとうございます」

 

「・・・」

 

はは、いいってことよ。俺は手を左右に振った。

 

「――…私は、ここが好きです。王と騎士様と共にいられて、同僚と切磋琢磨できるこの西方が。かつての正門で私は生前働いておりましたが、やはりキャメロットは私にとって最上の居場所のようです」

 

「・・・・」

 

 俺もそう思うな。ここはパラダイスみたいな場所だよ。俺達兵士の家、全てを包み癒してくれる故郷。だから俺達はここを守るのさ。 

 

 ・・・・ん? ていうか待って。生前の君って正門担当だったの?俺と同僚?え、本当に?

 

「――……」

 

「・・・・」

 

居たかい? 君。俺は首を傾げて兵Bを見つめた。

 

「――…失礼、貴方の前だとどうも口が軽くなる。おしゃべりが過ぎたようです。職務を成し遂げましょう」

 

「・・・・」

 

 むう、思い出せん。当時はこんなフルプレートな鎧兜なんて皆つけていなかったしな。我が王と騎士様は別として。ちょっと顔見せてくれない?

 

「――……」

 

「・・・・」

 

 得物を持ちながら直視し合う俺達。これ立ち合いか何かかな? 傍から見ればそう捉えられるかもよこれ。

 

「――ではこれにて」

 

踵を返した兵Bがしずと歩き去る。うーん誰だったっけなあ・・・・。  

 意外と大きくない後ろ姿を見て物思いに沈もうとした時。

聖都の外、西の果てからゆっくりと迫り来る砂漠が眼に入り、俺は思考を閉じて奮起した。

 

 

 

 

 

 

「――最期の鍛錬を後でお願いしてみよう」

 

震える体の芯を深呼吸する事で、腑に落とす。

 

 西方方面第2小隊隊長・ビナー1。

王から賜ったこの名を私は気に入っているが、今でも王と対面したあの時を思い出すと体が震え出してしまう。

 

「――今更ながら。まさか本当に全兵士の名を憶えているとは。流石は獅子王陛下」

 

 

『---ビナー1。それが今の其方(そなた)の名だ』

 

『――は』

 

『---アグラヴェイン卿から既に聞いているとは思うが、其方は城壁西方小隊長の任に就く。1の名とはそういう意味だ。---何か質問はあるか?』

 

『――何一つございません。何処であろうとも、我が職務を全うするのみにて』

 

『---応えてみせよ。 西方には懐かしき其方の同僚が配置されている。我が兵士ビルギットよ、今生も励むがよい』

 

『――は。――…は?』

 

…誰ですその名前。いや、待て。それはたしか。

 

かつて私が。

 

『---合っていなかったか?それとも其方、生来の名の方が好かったか』

 

『――! …は、ははっ!!滅相もありませぬ!忘れていた我が身の名を教えて頂き、感謝しております』

 

 

「――…あの時から薄ぼんやりと。 だんだんと思い出されゆく記憶など、このビナー1には必要ない。今も昔も私は王の剣。……その筈だったのですが」

 

 …流す目線の先にはジッと西を見据える槍兵士。馬で疾駆するランスロット卿ら遊撃隊の姿と、ゆっくり近付く砂の海。

 

来るなら来い、返り討ちにしてやる。

 

「――獅子王陛下。もう今の私はその名ではありませんよ。 あの人に、また逢えましたから」

 

 そうこうして持ち回りで来た聖都で過ごす最期の休息時間。

私は鍛錬を願い出て、あの兵士からようやく一本を取ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




ここを去れば、誰かを護れぬとするなら、
大地に根を張る堅牢なる巨木となろう。
戦いの果てにしか我らに安らぎは来ないものなら、
心すら機械仕掛けの獣となろう。
それぞれの運命を担い、城兵達が昂然と顔を上げる。
次回『包囲』
放たれた矢は標的を射るか、地に溶けるか。



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