城兵として召喚されたんだが俺はもう駄目かもしれない   作:ブロx

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城の攻防戦なんてやった事ないので今回はいつも以上に妄想増し増しです。それとBF1942要素がめいっぱい含まれています。ご注意下さい。












第29話 包囲

 

 

 

 漂う空気が速度と時間を手中に収めて風になる。風は頬を斬り、顔を覆い隠し、鼻と口に匂いを運ぶ。

 

呼吸をする度に味わうこの感触。いつもいつも、この只中に居たと肌が声もなく叫ぶ。

 

そう。この風、この肌触りこそ。

 

この匂いこそ。

 

今この時こそが。

 

「敵に情けを掛けるな。彼も我も、情けなど知らぬ奴腹だ」

 

「・・・」

 

 槍の石突をズンと地に叩き付ける。

弓隊が城壁の上下に陣取り、誰も彼も弓矢を手に持って敵を待ち構える。・・・瞬間移動でもするなら話は別だが、守る側である我々は基本的に城から打って出ない。

 

 戦いとはまず遠距離戦から始まるのが必定。

ならば矢を射掛ける事こそが戦の戦端であり、その為に全兵に弓矢を渡す事は基本だった。

 

「・・・・。来たか」

 

「・・・」

 

 そのようで。

鉄の騎士が歩きながら我らを鼓舞したその言葉と共に、砂が俺の視界を遮った。

 

 砂塵が脚を、胴を、首を。五体を形作りそれらはあっという間に眼下に広がる。広がり続ける。その数、脈拍一回でざっと二百、三百、千、三千、一万。

 

いやもっと。

 

「弓構え!!!合図と共に各個射撃。 動く者は全て殺せ」

 

「――委細了解。サー・アグラヴェイン」

 

「ここは何処だ。お前達はどなたの為に武器を振るう。我らの主は、何処におわす?・・・言え、叫べ、答えよ!!!!」

 

「・・・」

 

ここは聖都。俺の居場所。我が王が戻られる場所にして、騎士様達の故郷。

 

「――キャメロット!」

 

「――キャメロット!」

 

「――キャメロット!!!」

 

「――獅子王!」

 

「――獅子王!」

 

「――獅子王アーサー!!!」

 

「・・・敵は太陽王の配下だが元は砂。砂粒というモノは、数が多い。眼前の光景はただそれだけの事だ」

 

「・・・」

 

然り。数だけは多いぜ。

 

「吼えろ、此度の我らが敵はカスであると。我らが王の敵とは、ただの砂礫の屑の山だと!!!」

 

「――ォオおおおおおおおお!!!!!!」

 

「・・・・・!」

 

然り。然り。・・・だから然るに、一匹残らず粉微塵に。

 

「我らが王の敵を撃ち殺せ!!!!!!」

 

「――キルゼム!!!オール!!!!」

 

 合図と共に矢が一斉に放たれた。

怒涛とは正にこれ。疾風とは正にこれ。青天の空を漆黒の鏃で染め上げ、敵は武器を構える前に次々と射抜かれてゆく。

 

耳で音を拾えば、北方も南方も同じく矢を放って戦端を開いた模様。

 

「・・・」

 

 撃て、撃ち殺せ。俺も皆と同じく矢を撃つ。

弓矢なんて超久々だけど王に召喚されし我ら、皆一騎当千の兵士なれば。

 

「――ヷ!?」

 

「・・・・?」

 

 隣りに立っていた粛正騎士の顔面が、凹の形で潰れて仰向く。

?何だこれ。 驚いたのは別にそこじゃないけども。・・・敵兵は弓なんて構えてない筈なのに、どうやって遠距離戦をやってのけたのだ。敵は一体、何を我々に撃っているんだ?

 

「――ァァアアィイ!!!」

 

「――衛生兵ええええーーー!!!」

 

「――アアゥ」

 

「――アィィィ!」

 

 みるみる内に頭と顔を射抜かれる同僚達。なんという精度と貫通力か。しかし敵は一体・・・・? いや待て、これと似たような状況がたしか前にもあった筈。

 

「・・・・」

 

矢を番えて弓を引き絞り、敵を狙うその只中。―――見えた、あれは。

 

「――弓兵隊向けの標的がある!」

 

「――敵軍部隊を発見!」

 

「――敵の歩兵隊を発見!」

 

「――友軍の支援を要請する!」

 

「――了解!」

 

「――了解!」

 

「――了解!」

 

 ・・・間違いない。あれは砂漠偵察の折、東方粛正騎士を昏倒させた短槍の一撃。そうか、投げていたのか。

 

え?あんな遠くから? 

 

「――敵は手強すぎる!!」

 

「――我々は犠牲者を連れている!!」

 

「――敵が来たぞ!!!」

 

「――敵の投擲兵を発見!!」

 

「――了解!」

 

「――了解!」

 

「――敵の潜水艦を発見!!」

 

「――駄目だ!駄目だ!駄目だ!」

 

砂漠にんなモンあるかボケ。

 

「――アグラヴェイン卿。 敵は短槍を投げながら戦線を広げつつあります。さらに敵の投槍は我が方の弓よりも飛距離が出る模様。一体どうやって・・・・」

 

「――正門より伝令。ガウェイン卿、出陣。突出」

 

「・・・姿勢を低くしろ。歩兵隊はまだ動くな。敵の攻撃は古代の投槍器、アトラトルによるものだろう。 東方に伝令、弓隊の半数を西方に回せ」

 

「――了解!」

 

「急げよ。・・・敵は、カーリマンか」

 

「・・・」

 

 ―――投槍器・アトラトルという。 テコの原理かつ片手で遠距離戦を我が物に出来る、弓が出現する以前まで猛威を振るっていたと云われる兵器。そういえば昔、祖父さんが俺に教えてくれたな。間合の大切さもその時教わった。

 

 それはさておき遠距離戦は一進一退といった所。

城壁に敵が辿り着くのも時間の問題となりそうだ。定石通り敵は雲梯やらハシゴを持ち込んでいるようだけど、奴らこの壁を登る気か?

 

「・・・・」

 

 させるかよ。 

矢を射る、射続ける。攻城兵器を担う敵どもを優先して再起不能にしなくては。あ、外した。

 

「ハシゴを持つ敵を優先して射殺せ。数だけは多いようだが、ひるむな。矢を撃ち続けよ」

 

「――了解!」

 

「――了解!」

 

「歩兵隊は近接戦闘用意。敵に城壁を登らせるな。弓隊は散開、各個射撃」

 

「――了解!」 

 

「――我々の聖都を守れ!!!」

 

投げ槍が疾風のように舞い踊る中、ハシゴをかけようと敵が壁下に辿り着く。

 

 俺達は抜剣・抜槍。城壁に掛けられたハシゴを物理的に壊し、またはハシゴを登ってきた敵を一匹残らず根絶やしにする。

 

「ビナー1、左方が甘い。二個中隊を率いて往け。 第二弓隊は全隊構え、山なりに撃て」

 

「――了解」

 

 城壁後方の弓隊が壁を飛び超えるよう山なりに矢を放つ。射出の速度と落下の運動エネルギーが確実に敵兵を射貫き、その矢勢は敵を攻勢になど絶対に移らせなかった。

 

 ・・・アグラヴェイン卿の指示は的確だ。

この西方全ての空間を認識しているんじゃないかってレベルの差配、そして各城壁方面の情報を逐一収集する抜け目なさ。

 

 ・・・あれ?そういえば。 とかいう思考の無駄を、鉄の騎士は頭に浮かび上がる前に一切排除しているのだろう。力と手腕で。

 

「・・・」

 

相も変わらず頼もしい。

 

 そして俺達を鼓舞してくれるかのように、風色が変わった。空を逆巻き疾風のように嵐のように。

 

・・・聖都全域が突然の砂嵐の渦中に変わり、俺達は城壁の外が何も見えなくなった。

 

「・・・・」

 

え、何これ。

 

「――アグラヴェイン卿、これは一体。この状況下、この機に偶々砂嵐など。――おかしいとは思いませぬか」

 

「だから何だ? 砂風如きにひるむな。右方と正面はこのままを維持。足下に煮え油を浴びせかけろ、城壁を奴らに踏ませるな。弓兵は下を狙い撃て」

 

「――了解!」

 

「・・・」

 

了解。

 

「――! 敵機発見!!!」

 

「・・・何?」

 

「・・・・」

 

敵機? 人間が空を飛べるかよ。

 

「――スフィンクスだー!!!!」

 

「――危なーああああい!!!!」

 

 雄叫びと共に俺の足元を揺らす衝撃。 羽ばたく翼を持ち、粛正騎士を蹴り飛ばす四つ足の人面神獣・スフィンクスが俺達の眼前に降り立った。

 

「――ッッ! 歩兵!来てくれえええええッ!!!!」

 

 マジかよ。あいつら砂嵐の中飛べんのか。って、うおおお!!!敵兵がハシゴを登ってッ!!

 

俺は防衛を行う!!!

 

「・・・成る程。そういう事か」

 

「・・・・」

 

 ええ!?何ですかアグラヴェイン卿!? あと貴方指揮官なんですからもう少し後方に下がってください!

 

「妙だとは思っていたが、まさかな。この敵共、悪意といった意思がない。太陽王に何か細工でもされているのか、ただ敵を殺すだけのモノとはな。・・・このキャメロットにたかるだけはある」

 

「・・・」

 

 え、そうなんですか。成る程ですね。 でもこちとらそんな事どうだっていいんですよ。敵が何考えてようと、考えるだけの意思やら力やらが有ろうと無かろうと、・・・ここに土足で上がりやがった野郎は生かして帰さねえよ。

 

俺はスフィンクスの前脚にしがみ付いた。

 

「―――細工?ただ敵を殺すだけのモノ? …なんと愚かな。愚かな」

 

「! ・・・貴様は」

 

 短く持った槍をぶっ刺して抉って神獣の顔面へよじ登りながら。・・・俺はその時懐かしい怖気を感じた。

 

「我らは太陽王オジマンディアスの手足。我らが思い仰ぐは、善でも悪でも殺意でも愛でもなく、信のみ」

 

 鏡が見える。

暗く冷たい漆黒色の冥鏡が。そしてふわりと天空の隼のような女性が、俺達の城壁に降り立っていた。

 

「平伏し道を開けよ、俗人ども。我らは神兵。神王(ファラオ)を信仰し、神王の御心のままに事を為す神の兵団。 疾くそこを退きなさい、―――汝らは神の御前なり!!」

 

「・・・・」

 

「――・・・」

 

「――・・・」

 

・・・・・。

 

「………? どうしたのです耳が聞こえないのですか!汝らは神の御前にっ、」

 

「何処に退けと言っているのだ? 貴女は」

 

俺は槍で人面の鼻っ面をぶん殴り、首に刺して顔を掴んで引き倒す。

 

そこに粛正騎士達が群がり、人面獅子は拘束された。

 

「・・・貴女達は過ちを犯したのだ。神であれ何であれ、罰は受けてもらおう。ここは我らが王がおわすキャメロットなのだからな」

 

「――討滅の誓い」

 

「――撃滅の誓い」

 

「――殲滅の誓い」

 

「・・・・・」

 

 槍が、剣先が一斉に敵を。古きファラオ・ニトクリスに向けられた。

退くのは貴様らだ。おとぎ話のティルナノグへ、遥か西方の彼方へ失せやがれ。

 

ここは俺達の家だ。

 

「………成る程。我らに罰を与えると」

 

「歩兵着剣、突撃態勢」

 

「――着剣ッ!」

 

「…我らに罰を、与えるだと?」

 

「突撃」

 

古き神王は不届き、とだけ呟いた。少なくとも俺はそう聞こえた。

 

 

。鏡の屍。鏡の黒暗、てりなと扉。へ処此を怖恐

 

 

 ・・・しかしそれはおよそ、聖都に住む一切が聞いた事も見た事も無い、言葉と姿だった。

 

「 upnA,beN-aT-resejD 」

 

 煮え繰り返る腸の更に奥みたいな色。

冥い鏡が宝の典として、はっきりと俺達に道を指し示した。滅びろと、落ちろと。常しえの闇底に沈んで往けと。

 

それが定めだと。

 

「・・・・・」

 

「我らを愚弄したその罪、兵(つわもの)といえど許し難し。出ませい、この浮世から」

 

「それは此方の台詞だ」

 

突撃する兵卒。迫る死霊と神兵達。西方の戦は混沌を極めようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 




膨大な、あまりにも膨大なるエネルギーの放出。
城塞を突き抜ける極光。塵も残さず消え去る兵卒。
忘れられない伝説の彼方から、古代の剣が爆裂する。
陽光か、月光か、光芒か。
闘いの決着を意味するものは何か。
次回『Sword and Faith』
キャメロットの空が燃える。




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