城兵として召喚されたんだが俺はもう駄目かもしれない 作:ブロx
Enforcement knight of the main gate side(sword)
クリーチャー―騎士・レジェンド・ホラー。
【聖都の獅子王】があなたの手札か場か墓地にある限り、あなたはレジェンドと付くパーマネントを何枚でもプレイできる。
(1):このパーマネントはターン終了時まで+1/+1の修整を受ける。
――死は忠節をやめる理由にはならん。
正門はいつにも増して静かだった。
城壁の上から外を眺めてみれば、そこには人っ子一人どころか生き物の屍骸一つない炭色荒野(グランヴァニッシュ)。風もなく、誰かが残した足跡や残り香もない澄み切ったアトモスフィアが漂っていた。
「――ガウェイン卿。前方に砂、敵兵を視認」
「――加えて西方より伝令。ワレ会敵、開戦」
「弓の間合に敵が入り次第撃ち殺しなさい。 敵を城壁にへばり付かせてはなりません。全ては我らが王の為、一人残らずの殲滅を」
「――了解」
・・・先程までの静けさなど何処へやら。中空を埋め尽くす投げ槍と矢の応酬が始まった。
火蓋を切り、宙で激しくぶつかり合うその戟音はまるで火花の連鎖光。常人がこれを見続ければ網膜にしっかと焼き付いて、自分で剥がす事はできなくなる。
・・・しかし我ら粛正を担う超常の騎士と兵卒。 ここ正門を炙る開戦の号火など、皆悉く掻き消してくれる。
「――西方のアグラヴェイン卿より伝令。敵は数多かれども烏合の衆。王命に従い滅殺継続(obliterate)。以上」
「――ガウェイン卿、敵は投槍による攻撃で各戦線に攻め入っています。加えて聖都西方を第一線、南方東方を第二線となす事で我らの連携を阻害せしめている模様」
「・・・・」
・・・・・。
「――敵・投石部隊を視認。投石、来ます」
「避けなさい。あの程度の飛礫、我らがキャメロットが傷付く事はない」
「――回避了解」
飛来する巨大な石。直撃するだろうそれを私は避けなかった。 避けるまでもなかった。・・・・そんな事よりも。
「――おおッ流石はガウェイン卿。石よりも尚硬いとはッ」
「――不動。正しく太陽の騎士・・・!」
「――遅れをとるな。奴らを殲滅せよ」
「――了解」
「・・・・。妙ですね」
意気軒昂な粛正騎士達に反して。戦場を俯瞰する私は何処か違和感を覚えていた。
「――?如何なさいましたか。ガウェイン卿」
「各方面からの情報を纏めると、一見敵は西方を主攻として各城壁に雪崩れ込んでいます。 聖都唯一の門があるここは特に堅牢。それゆえ他方を重点的に攻める事は、定石といえば定石。・・・しかし」
「――正門に対する敵兵が、いくら何でも少なすぎると?」
「その通り。そして未だあの異邦者達の発見情報もない。・・・すなわちこれは、」
私は剣を鞘から抜き、城壁に足をかけた。
「――ガウェイン卿!」
「門は閉じていなさい。何があろうとも開けてはなりません。 そう、たとえこれから何が起ころうとも」
「――・・・ははッ!!」
「良い返事ですケテル1。貴方は城壁右方にて迎撃を。 では、私は出撃します」
城壁から跳んで着地。
まるで魚群のような敵兵が私という名のエサ目掛けて群がって来る。
「時間稼ぎ等させませんよ。―――その呼吸を乱す」
私が剣を一文字に振ると、森羅を燃やす灼熱が発生した。まるで太陽のようなそれは地面も砂も何もかも、動けるモノは命すら。跡形すべなく燃え尽きる事を望んでいる。
一振り、二振り十重二十重。
無駄な力を足に込めず、骨盤にて前進しながら砂から生まれた敵兵を切り倒す。
―――上半身と下半身に両断された者、頭と胴体に別たれた者。
それすら燃え散り、後には何も残さない太陽は燦々と照り付いて我が道の埒を明け続ける。
「この剣は太陽の映し身。もう一振りの星の聖剣」
正門前が我が熱剣によって落ち着きを取り戻す。 しかし敵を屠り悠々閉じた正門に私が戻ると、不意に砂と風が舞い始めた。
「・・・・これは」
「――ガウェイン卿!聖都全体を包む砂嵐です!加えてアグラヴェイン卿らが敵・サーヴァントと交戦に入ったとの由。 ――まずいです、これでは弓が意味を成しません!」
「落ち着いて敵を屠りなさい。我が命令は最初から何一つ変わっていません。 さあ復唱を」
「――はは! 我らは敵を屠りま」
・・・・・。
・・・・・。
「? どうしました。もう一度復唱を」
城壁中央から頭を出して答えていた粛正騎士が、突如見えなくなった。この至近距離ならば砂嵐の中でも見えなくなる事は、まず無いというのに。
・・・・まさか。
「――・・・・・・」
「復唱を!」
「もらった!」
城壁を見上げる私のこめかみに当たる何か。弾かれたそれに見向きせず、私は声の主に振り返った。
「OH!ゴリラモンドゥ!輝きのデストロイヤー!」
「一体全体何で出来ているんだ?君は」
「身体だけでなく脳みそまで筋肉で出来ているわけか?」
「円卓の騎士ならぬ円卓のゴリラ、というわけだ」
「・・・・。貴方達は」
「ゴリラに名乗る名前なぞ無い」
短剣。
この砂嵐の中で寸分狂わずに、やかましいほど漆黒色のダガーが全方位から襲来する。 ――眼球、頸、耳、後頭部。瞬きせずに力む事でそれらを弾くと、私は聖剣をビョゥと振った。
「邪魔を。 山の翁なぞに我が剣を止められるものかッ」
聖剣から発した陽風(フレア)が砂嵐ごと、敵ごと眼前を薙ぎ払う。
アサシンなど我ら超常の騎士の敵にあらず。この場で全て討滅せしめて御覧に入れよう。
私は剣を振り続けた。
「・・・・・」
――神伝、開眼と云う言葉がある。
それらは東洋の言葉であるらしく、戦士が武器を振り続けていると時たま声が聞こえてきて、地方によっては聞いて損する事はまず無いのだという。
―――太陽の騎士よ。汝が闘う理由とは何か。
「愚問。全ては我らが獅子王の為」
しかし何と。 ここでは問い掛けてくるようだ。
―――汝が聖剣を執った理由は何か。
「我が道を貫く為」
―――では最期に問う。その道は果たして何処に続いている。
「我が故郷キャメロット」
砂塵と敵を切り払う。焔の如く我が身が燃え、陽炎のように孤影がユラと舞い続ける。我が忠義今度こそ、今この時こそ必ずや。
―――然れば。その道を示すがよい。
「貴方を切った後に、ね」
自身の影に振り向き横薙ぎに叩っ切る。
しかしそこには誰もいなかった。周囲に敵影も残影もなく、そこにはただ私の影が一つこちらを見ていた。
―――全霊を。
語る影が指し示す。見よ、見よ、前を見よ。振り返り見詰める先には純銀の鎧。金色の剣。静かなる聖緑の瞳がいざそこに。
「お久しぶりです。騎士王よ」
今もこの胸に仰ぐ、騎士の王がそこにいた。
◆
「セイバー!あともう少しで正門だよ!」
「はい、共に駆け抜けましょう」
「絶対に獅子王に会うぞ!マシュ!!」
「了解。押し切ります、マスター!!」
英霊と人間が、大地を走る。 心強い仲間この特異点の真実、やり遂げねばならない信念と目的。それら全てを胸に宿し、カルデアの者達は走っていた。
『・・・皆ッ!オジマンディアスの軍勢が先行してるけど、山の翁率いる連合軍も聖都を攻撃中だ!君たちは一直線に正門へ突撃、獅子王を目指してくれ!!』
「了解、ロマニ。お土産は期待してていいよ?」
『期待しないでここで待ってるよ、レオナルド!』
『初代山の翁も協力を受諾してくれた以上、今日でこの特異点と決着をつけなさい、ぐだーズ。………ところで正門の対処だけれど、』
「――お任せを。門はこの私が。メイガス」
『………』
「…本当に良いの?セイバー」
「聖都って貴女の家なんじゃ・・・」
「いいえ。違います、マスター」
「――はい。あの聖都は騎士達の故郷キャメロットではありません。酷似していますが、今なら解かります。わたしの胸が、霊基がずっとそう教え続けていました」
セイバーとシールダーが答える。次いで隻腕の騎士もまた首肯した。
『成る程…、貴女達が言うのなら間違いないわね』
『三蔵法師と俵藤太、そして新たに仲間になったサー・ランスロットと百貌のハサンは各自遊撃に向かった!・・・・頼んだぞ、皆!』
「了解!!」
槍と弓矢が宙を飛び交い、具足の音と戦士達の声が嵐のようにこの世界を覆う。そこかしこで木霊する断末魔、投石の轟音、ひしゃげる何か。激突により軋む時空すらも覆い隠す砂の風。
―――駆け抜ける嵐。未来を掴むのは。
「お久しぶりです。騎士王よ」
◇
「・・・一つだけ。騎士王よ一つだけ、この私に教えて頂きたいのですが」
「何か。サー・ガウェイン」
瞳の色も力強さも、その五体に溢るる闘気すら。ありし日のまま輝く太陽の騎士がセイバーを見る。それは高貴なる戦士だけが放てる芳香。純粋なる剣気だった。
「あなたは何ゆえ今この地に現れたのです?」
「我が責務を全うする為」
「―――させません。 と申せば何とします?」
立香たちはセイバーと共に素早く構えた。
同時に隻腕の騎士・べディヴィエールはありし日を想いながら、二人の騎士を見つめる。この目蓋は決して閉ざさないと誓って。
「一つだけと言った筈。サー・ガウェイン」
「これは無礼を。 どうもこのガウェイン、昂っているようです」
セイバーの聖剣が月光の如く煌めいて聖都正門と城壁を照らす。サー・ガウェインは己の剣を地に刺して、閉じた正門を背にただただ前を見ていた。
「この門は正しき者にしか触れる事は出来ません。それでもやると? 今更来たあなたに、このキャメロットに剣の切っ先を向ける事が出来ると言うのですか?」
「無論。だから私はこの剣を今も手に執っている。それは貴方も同じ筈。………ガウェイン卿、我ら円卓の誇り、忘れたか」
「さてどうでしょう。・・・・・私は獅子王の爪牙、『不夜』の獣ですから」
聖剣の柄に収まる太陽の放射熱が地を、人を、天を焦がす。うだる熱波は砂嵐すらも火の粉に変え、まるで中天の太陽が彼らのすぐ頭上に有るかのように。
―――いや、在った。
「では騎士王よ。あなたはこの聖都にとって、まこと我々獅子の円卓にとって敵となりました」
その証拠に聖剣ガラティーンが獣の手を離れ中空に飛んでいた。
そしてもう一つの聖剣は、今や大上段に構えられ。
「――この剣は太陽の映し身。あらゆる不浄を清める焔の陽炎」
「――束ねるは星の息吹。輝ける命の奔流」
承認・風王結界解除。
シールサーティーン・デシジョンスタート。
サー・ケイ 承認
サー・ガヘリス 承認
サー・パロミデス 承認
サー・ギャラハッド 承認
サー・ランスロット 承認
アーサー 承認
溢れる月光が収束し、約束された勝利の剣は光の奔流へ。しかしもう一つの姉妹聖剣・転輪する勝利の剣は更に眩しい陽光へと変生した。
「 エクスカリバー・ 」
「 エクス――― 」
彼と彼女の髪色と同じ。金色の閃光が彼我に引導を渡さんと同時に大きく振り切った。
「 ガラティーン―――ッ!!! 」
「 カリバー――!!! 」
拮抗する光と光。
かたや人を、かたや聖都を。後ろを護ると決めた騎士達が振り放つ聖なる剣の一撃は、周囲のありとあらゆる事物を呑み込んで奔る炎の波となった。
状況は目下勢力伯仲。乾坤一擲。
・・・しかし不滅の夜をも踏破せし陽炎の騎士は、右に振り抜いた己の剣を両手でしっかと握り直し。肩に担いでまるで貴婦人がするように気持ち腰を捻った。
「あれはガレス卿の――――」
そんな声が、彼には聞こえた。
「 転輪する勝利の剣ッ!!!!! 」
――再び振り抜かれる陽炎の剣身。舞い上がる焔は三千世界の有為転変、千古不易すらも絶対の真実に塗り潰さんとする『死』の耀き。
勝機。・・・その証拠にサー・ガウェインは見た。
眼前の騎士王が耀光に照らされ塗り変えらる様。それでもなお歯を食いしばり全身全霊見つめる眼光。今際の際とも言える悠久幽玄の中で、確かに太陽の騎士は。
『この戦いが誉れ高き戦いである事』
家族の声を、聞いた。
「 エクス―――! 」
光が見える。輝きが見える。・・・この心と身体と魂で。
サー・ガレス 承認。
忘却など出来ない其れは。尊き眩い黄金の、
「 カリバーッッッ―――!!!!! 」
我が光。
◆
「―――御見事でした」
「サー・ガウェイン。貴方も」
――幾つかの足音が背後を通り過ぎる音。
不様に倒れ伏して勝者を見送れぬ事がないように、開けた正門前で私は立ち続ける。
懐かしい気配の盾持つ騎士、サーヴァント、かつての旧友、王。そして良い眼をしている人間達に対する敬意を胸に宿して。
「足どころか下半身が動かぬとは。二足歩行ゴリラの名が廃りますね」
・・・全霊の一撃だった。たとえこの世界を焼却してでも聖都を護ると決めた我が一振り。それを凌ぐ聖剣の光の、何と美しかった事か。
「―――ガウェイン。てめえ負けたのか」
「・・・・、」
もう眼が見えない。しかしこの声は忘れようもない。・・・ならば、
「貴女の道を、本懐を果たしなさい。あの騎士王ならば応えてくれる」
「うるせえ負け犬。オレが帰って来るまで保てなかったクセによ」
「・・・・。頑張りなさい」
返事の代わりに走り往く足音で答える誰か。
家族に幸あらんことを祈り、私は最期までここに立ち続けた。
人の世の喜びも悲しみも、一瞬の星の瞬き。
―――万物流転。全てが時計仕掛けに仕組まれた、巨大なイルミネーションだとしたら。
底知れぬ光の中にしつらえられた、ただ一つの椅子に座り、
いつ果てるとも知れぬ無数の命の星雲を見続ける者。
それは誰か。
次回『ゴーデス』
それが、私の運命なら。