城兵として召喚されたんだが俺はもう駄目かもしれない   作:ブロx

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各城壁の概況。
サレンダーオアダーイ! フォーオナー! チャァァァァジ!









第31話 ゴーデス

 

 

 

「――ぬああぁあああああ!!!!」

 

正門が弾け、その余波と衝撃で仰向けに倒れながら。私は周囲を確認した。

 

 聖都を構築していた石片、正門の欠片。倒れている同僚と我が愛槍。 視界から手に入るこれら情報状況を鑑み、すぐさま立ち上がるべきだと理解した私は咄嗟に声を上げた。

 

「――隊列!隊列を組みなおせッッ!!!」

 

「――・・・、ケテル1」

 

「――了解・・・ッ」

 

 膝を思い切り叩き、皆と同じように脚に千人力を込めて立ち上がる。見えない敵が近くにいるらしいが、それがどうした。

 

「――聖都の門は破られた。ガウェイン卿は討ち死にあそばされた。――・・・だからどうしたッ!!!!それがどうしたッ!!!!! 我らは我らの職務を全うせよ、我らが敵を撃ち滅ぼし!我らが王の敵を討ち滅ぼせ!!!」

 

「――、了解」

 

「――了解」

 

 粛正騎士総員が横隊を形成した。剣先と槍を敵前に。つま先眼光真っ直ぐに。 それはかつてキャメロットで仕事をした者達が、皆等しく習った突撃陣だった。

 

「――正しき人の為に!!」

 

「――王の為に!!!!」

 

我らの誓いを今ここに。

 

「――突撃(チャージ)!!!!!!」

 

正門跡から進撃して来た敵軍目掛けて、我らは一心不乱に突き進んだ。

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

 ―――これまずいかも。

城兵Cである俺は自身の聴覚といった感覚から、聖都のどこかが突破された事に気付いた。もしかして正門かな。なんかすんごい光が北方から迸ってたし。  

 

「・・・・」

 

 西方城壁で敵兵と亡霊どもを薙ぎ払いながら考える。 さっきから聖都を覆っている砂嵐は、聖都内部には入って来ていない。つまり敵が進入してきたらこちらは視界良好、逆に弓で一掃できる寸法だ。騎士王(セイバー)とて弓(アーチャー)には弱い筈。

 

 ――まずもって我々の勝利条件は敵を殲滅する事ではなく時間を稼ぐ事。全ては聖槍が完全起動すれば良いのだ。

 

「一歩も退くな。我らが敵を根絶やしにせよ」

 

「・・・」

 

 了解、アグラヴェイン卿。

俺は即死したのか倒れている粛正騎士達を一目見て、敵に吶喊した。

 

 有象無象の区別なく、私の死霊は許しはしないわ。みたいな感じでワラワラ迫る敵の化け物ども。こいつらを滅殺する為に必要な事とは?

 

 一、なるべく諦めない。

 二、なせば大抵なんとかなる。

 三、やめない勇気こそ強さ。

 

最後ネタ変わってんじゃん?何のこったよ。

 

「・・・」

 

俺は槍を鳴らしながら死霊を振り祓った。

 

「…その槍は一体……。いかに傲岸なる獅子王の兵といえど、可愛い死霊もとい我が宝具の開放すら耐え切るとは……っ」

 

 古のファラオがそう呟く。こっちはいっぱいいっぱいだけど兜っていいモンだよな。どんなに苦しくてもこっちの顔色が敵に見えないから。

 

「そしてその素早い槍の捌き。手練手管とはよく言ったもの――」

 

 敵は古のファラオであり大軍であるが、未だこの西方の城壁を一歩たりと越えさせる事は出来ていないしさせていない。よし、この調子この調子。耐えてみせるさ。

 

「敵の宝具は対軍のようだが、この程度ならばどの城壁も越えられまい。敵の万策尽かせてやれ・・・」

 

無論です、一匹残らず。

 

「・・・・・・、」

 

・・・・・。

 

「?・・・」

 

 む、どうしたんだろう。何だかアグラヴェイン卿がいつも以上に怪訝な顔をしておられる。何か気になる事でも?

 

「――アグラヴェイン卿。如何なさいましたか」

 

!剣持つビナー1の声。よかった無事だったか。

 

「・・・・先程から。聖都正門からの連絡が途絶している」

 

「――っ!」

 

「・・・・」

 

 成る程、卿は逐一伝令を飛ばして情報収集しておられましたからな。 しかし連絡が来ないというのはちょっと想定外。弓で一掃出来なかったのかな?それとも、

 

「・・・・すなわち。もはやこの戦、」

 

「――伝令!聖都正門第二防衛長ケテル1よりッ!!」

 

「――まさか」

 

「・・・言え」

 

「――正門破れり。防衛首将ガウェイン卿討死。ワレ残存兵力を纏め敵軍にあたるも、異邦者により損耗。突破を許す。聖都各方面の全戦力は、各個自らの任務を全うせよ。 ――以上」

 

「・・・」

 

了解。

 

「・・・ご苦労だった。持ち場に戻れ」

 

「――ははッ!」

 

「――なんですかそれは。…つまりどういう事ですか!!!」

 

「・・・」

 

 それは珍しい語気と姿だった。いつも冷静沈着な剣運びをするあのビナー1が、異常な闘気を迸らせて食ってかかったのだ。

 

 ビナー1。つまり正門の兵は任務を継続しますって事だよ。

たとえ守るべき門がぶっ壊されようと仲間と自分の死骸をそこかしこに晒そうと、最期まで戦うっていう意味だよ。

 

俺はビナー1の肩をパンと叩いた。

 

「――西方戦力の半数を正門方面に向かわせよ。出入口たる門から押し寄せる敵を正門の部隊と共に叩け。・・・聖槍起動までの時間稼ぎが我らの任務であり、ここ(西方)を放棄しなくては最早それがままならぬという事実を、」

 

「――理解出来ませぬ!!!西方は、未だ持ち堪えています!!!!」

 

「・・・・」

 

・・・・・。

 

肩をぎゅっと掴んだまま。俺は首を横に振った。

 

「――兵士殿!!?我々は負けてなどいません!!今度こそ貴方は、…我々は敗けるわけがないのです!!!!」

 

「・・・・・」

 

「話を聞け、ビナー1。・・・・我々騎士と兵卒は、ひとたび合戦の狼煙を上げれば最期まで務めを果たさなくてはならん。生前キャメロットの兵士だった貴様に解らぬわけがなかろうが」

 

「・・・」

 

 そうそう。俺達はまだここに居るし、負けてない。

俺達の敗北とは即ち王の聖槍起動が阻止される事。たとえ城の東西南北全てが突破されようとも、王が玉座におられれば我らの勝ち。それが絶対なんだよ。

 

「――……」

 

「・・・・」

 

・・・あれ? こんな感じの事、昔何処かで誰かと――。

 

「――。取り乱してしまい申し訳ありませぬ、アグラヴェイン卿。ここは私とビナー2、ホド2達の部隊で守護します。残りの戦力は正門に向かえ。 サー・アグラヴェイン、どうか最期までここはお任せを」

 

「私は玉座に向かう。・・・西方の雄姿、敵への手向けとするがいい」

 

「――了解」

 

「――了解!」

 

「――この位置を保て!!!」

 

「――了解!」

 

「――了解!」

 

「・・・」

 

 了解。さらばだビナー1、もう会う事は無いだろう。

俺はくるりと西方に背を向けた。ここでの城勤めは、割と良いものだったぜ。

 

「――フスカルさん」

 

「・・・・?」

 

ん?

 

「――また貴方と共に戦えて光栄でした。 …嬉しかった」

 

「・・・」

 

振り向かずに駆ける足。脳裏に浮かんだ誰かの顔。

 

綺麗なその面影を置き去りにして、俺は走り続けた。

 

 

 

 

 

 

『ロイヤルガードだ! これがおそらく最後の粛正騎士になるだろう。皆ッ!あと少しだ!!』

 

「了解!」

 

「マスター、指示を願います!」

 

 目標である王城まであと一歩と迫った。

ここを凌げば恐らく玉座までノンストップで辿り着き、自らの務めを果たせるだろうと誰もが強く思っている。

 

―――だがこういう時。一体どんな顔をすれば良いのだろう。

 

「……! 先輩ッ!!?」

 

「立香!」

 

 神妙な顔をすればいいだろうか?

…ここで逢ったが百年目、みたいな感じの顔をすればいいか?いっその事泣いてみるか?

 

―――いやもしくは。いや或いは。

 

「よお。 また逢ったな」

 

「貴女は――…っ!!」

 

笑ってみるか?

 

「前に言った通り、正々堂々と不意打ちしに来てやったぜ。まさかこんなに早く王城まで辿り着くとはな。 ――流石は、父上」

 

「…サー・モードレッド」

 

 脱力した五体と仄かに握る銀剣が、剣体一致の境地を世に顕す。

不意打ちを狙って振るった先程の攻撃は聖剣によって防がれたが、なに。想定どころか都合すらも悪くない。

 

今生のオレという存在は、この時だけの為に有るんだからな。

 

「――モードレッド卿、周囲はお任せを。アーサー様に」

 

「………」

 

「――いえ。父君にアナタの本懐を!」

 

 分隊長達(デクども)が駆けだす。誰もオレ達の邪魔なんてさせないように。オレ達の闘いの余波を、受けないように。

 

「……ここは私が。マスター、ベディヴィエール、マシュ。先に行って下さい」

 

「・・・セイバー」

 

「待ってるからねっ!」

 

「獅子王は、必ず」

 

「はい!」

 

 王城へと駆け上がる音。こちらを見詰める忘れもできない騎士の相貌。エメラルドの瞳と大地踏みしめる足が、こちらの肌がヒリつく間合を作り出す。剣が鋭く砥がれるように。

 

…ずっと。

 

「ずっとこの時を待っていました。ずっと、ずっと、ずっと。剣を持つアナタと切り結べるこの時を。このクラレントをアナタの血で、――真紅に染め上げてやるこの時をなッ!!!!!!!!!!」

 

「………」

 

剣を右脇に構える騎士王と、両腕を横に広げて構えるオレ。

 

待ちに待ったこの楽園に、オレは帰ってきた。

 

 

 

 

 

 

――我らの誓いを今ここに。

 

――突撃!

 

――正門跡から進撃して来た敵軍目掛けて、我らは一心不乱に突き進んだ。

 

――無論です。一匹残らず。

 

――この位置を保て!

 

――了解!

 

――さらばだビナー1、もう会う事は無いだろう。

 

――フスカルさん。

 

――今生のオレという存在は、この時だけの為に有るんだからな。

 

――待ちに待ったこの楽園に、オレは帰ってきた。

 

 

「---聖槍、圧縮」

 

最初から。そして今も聞こえている彼らの声、彼らの魂。

 

それはまるで瞬く星々。薫る外気。

 

望みを夢を。どうかこの手にと。

 

「---」

 

地に増え、都市を作り、海を渡り、空を割いた愛しい子ら。正しき人よ、大切な者たちよ。

 

「---残念だ。おまえ達は、聖槍に選ばれない」

 

「それでもオレ達は。お前を倒すために来た!!」

 

玉座の扉を開け入ってきた者達。その者らは英霊の残滓たる我が身を討つという。

 

理由、知る必要も無し。

 

意志、量る必要も無し。

 

「---生存の過程において、魂は善悪に振れる。しかし振れる事無き魂が確かにいる。揺れず、知らず、迷わず、清いおまえたちがこの理想都市に。継がねばならない、残さねばならないおまえたちが確実に。---私は永遠に、永久に、この世の何処にも無い最果て(ユートピア)で見守ろう。衛り継ごう、おまえたちを」

 

意味、有る必要も無し。

 

「そんなの、ただの標本だ!!!」

 

「---そう思うか? 藤丸立香。遥かなカルデアより訪れし最後のマスターの片割れよ」

 

『…立香!獅子王の精神構造は完全に神霊化しているわ!話し合いによる解決は不可能…つまりもう、戦闘でその聖槍を破壊するしか道はないってことよ!!それでこの時代は元に戻る!』

 

「---短慮だな、オルガマリー・アニムスフィア。実に貴女らしい。だが結論は私も同じだ。---おまえもそう思うか、盾の騎士よ」

 

『・・・!』

 

「………。わたしは」

 

「---始まりが有るものには終わりが有る。だがここで終えてよいものなどは無い。正しきものならば尚更。マシュ・キリエライト、おまえならば私の理想が。最果てが幾分分かるのではないか?」

 

「―――………」

 

 白状すれば、それは興味だった。

是であろうと否であろうと、そのどれでも無かろうと。この盾持つヒトの答えはきっと何かが違うと、我が槍から伝わってきた。

 

 眼を伏せ答えを探すその姿。弱々しいその姿。---だが見上げたその表情には、白く輝く何かが。

 

「…自分が生きている限り、お母さんの人生は続くと顔をあげた人がいました」

 

『・・・・・』

 

「子供を助ける為に命を落とした人がいました。その事を嘆く人がいました。―――それでも生き続けると、顔をあげた人がいました!」

 

・・・・・。

 

「貴女の理想は標本(ユートピア)です。 私は、命とはその場限りのものではなく先に続いてゆくものだと。いつまでもいつまでも、多くのものが失われてもっ、広く広く繋がってゆくものなのだと!私はそう思います!!」

 

『―――マシュ』

 

「---そうか。 では些事は終わりだ、ドゥン・スタリオン」

 

玉座から立ち上がると同時に、眼下を見下ろす。

 

小高い位置。鐙の上。相変わらずの嵐の馬の上に、私は跨っていた。

 

「フルフルル(我が誉れ。我が王よ、命令を)」

 

「---薙ぎ払え」

 

「フルルル!!(--我が王よ。震慄させる威厳の御方、救われるべきを無償で救う絶対の王よ。 委細承知!!)」

 

「---我が加護を受け入れよ。ここが、お前達の最果ての地だ」

 

『敵、獅子王アーサーペンドラゴン!いや、もう違う!!・・・敵は女神。女神ロンゴミニアドだ!!』

 

『頼んだわよ!皆!』

 

「敵、女神ロンゴミニアド戦闘態勢!マスター、指示をお願いします!!!」

 

 

 

 

 

 

 




幾星霜を見た神が呼んでいる。
全地上を敵にして、我が槍にくだるべし。
我は与えん、常しえの安らぎを。
我は伝えん、悠久の輝きを。
神なる者の壮大なる視点。
人たる者の壮絶なる決意。
いま聖都に、決戦の火蓋が切られる。
次回『Never say never』
何かを捨てるか、全てを捨てるか。


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